車掌「切符を拝見致します」
4人で盛り上がっていると車掌が切符確認に巡回してきた。
カ「こういう時は...あっ、ありました」
カフェがスカートのポケットから灰色のチケットを取り出して見せる。
アルとアドマイヤベガもポケットから灰色のチケットを取り出して見せた。
車掌「そこのお客さん?」
左のポケットにはタキオンから渡されたルービックキューブ、右のポケットにはチケットが入っている。
緑色のチケットを渡すと車掌は一瞬驚いた顔をしたがすぐに元に戻った。
車掌「ご協力に感謝します。終点の南十字座はさそり座を通過して1時間後の到着となります」
アル「トレーナーさんの持っているチケットは幻想チケットだよね、すごいなぁ」
ア「幻想チケット?」
アル「過去未来から死後の世界まで何処でも行き来出来るフリーパス!私も本物は初めて見たよ!」
カ「四次元世界では好きなところに行ける話をタキオンさんがしていましたね」
ア「ここは仮想世界よ。面白い設定ね...」
アル「仮想世界?」
アルに自分達がここに来た経緯について説明した。
アル「なるほどー!私がこうしているのもVRウマレーターのおかげなんだね!」
ウマ娘は未解明な部分が多く神秘への様々なアプローチが試みられている。
視覚化出来ない霊体をこのような形で再現する事も理論上可能なのだろう。
ト「タキオンが考えるじゃない、感じるんだと言っていた事が分かった気がする...」
ア「荒唐無稽な話ね......」
車窓の景色からはさそり座と赤い炎が見えてきた。
ア「さそり座ね......幾多の命を奪ったさそりは最後に井戸に落ちてしまうのだけど誰の糧にもなれず孤独で死ぬのを後悔して神様に祈り導く炎となって永遠と輝き続けている物語があるわ...」
カ「命を奪い続けたさそりも最後は誰かの役に立ちたいと願う...」
アル「......」
さそり座を抜ける頃、車内に交響楽新世界よりが聞こえてきた。
乗客「ハレルヤ、ハレルヤ」
他の乗客が立ち上がり南十字座に祈りを捧げている。
「間もなくぅ南十字座ですぅ、お降りのお客様はぁお忘れ物等無いようぅお気をつけくださぁい」
車窓から見える南十字座駅前広場から南十字座に続く道には行列が出来ている。
駅前広場にはオーケストラを奏でる音楽団が演奏を行い露店が立ち並んでいる。
「当車両はぁ点検のためぇ30分程停車ぁ致しますぅ」
カ「すごい活気ですね...」
ア「......人が多いところは苦手なのよ...」
アル「さて!私もそろそろ行かなくちゃ!」
ア「アル......行ってしまうのね...」
ア「...ついて行ったらどうなるのかしら...」
カ「生者が扉を抜けても現実に戻るだけだと思います...」
左ポケットにはルービックキューブが入っている。これを使えばアルを留めておけるのではないだろうか。
カ「...トレーナーさん...良からぬことを考えてますね...運命に反する行いは災いをもたらします...」
ト「たしかに...」
アル「心配しなくてもいつでも会えるよ」
ア「......そうね、また星を見に行くわ」
アル「それじゃあ、バイバイ!」
アルは車両を出て広場に駆け出して行った。
ア「VRにしてはやたら手が込んでいるのね...」
少し目元が潤んでいる。そっとしておこう。
車両が動き出し天の川に大きく空いた黒い面に近付いて行く。
ア「石炭袋ね...このシュミレーションが銀河鉄道の夜モチーフならそろそろ終わりかしら」
ト「そうみたいだね」
ア「...先に戻るわ」
そう言うとアドマイヤベガは手を動かしてメニュー画面を出しログアウトをタップした。
ア「.....二人ともありがとう。このお礼はする」
カ「...いぇいぇ、私もアヤベさんと一緒で楽しかったです」
ト「アヤベさん、お疲れ様」
アドマイヤベガは粒子状になって消えた。
~VRウマレーター室内~
アドマイヤベガが目を開くと開かれたコフィン内で横たわっていた。
タ「やぁゃぁ!アヤベくん!どうだったかな。VRウマレーターは!詳しい話を聞かせてほしいものだ」
ア「今日は疲れたからまた今度にして...」
アドマイヤベガは早歩きでVRウマレーター室を去る。
タ「これは...どうやら実験は上手くいったようだねぇ」
職員棟を出ると雲が晴れて夜空が広がっていた。
たまらず駆け出していつもの丘に向かう。
ア「...変な機械であなたに似た人に会えたのだけどきっと別人よね...」
ア「...でも少しだけ嬉しかったわ...」
夜空に星空は輝く。