二つ名鬼神   作:ザタキシード

12 / 19
臨戦

 

「本日、第2、第3の混成部隊がハンニバル討伐任務を完遂して、しばらくしてから消息を絶ってしまった」

 

僕達はいつになく真剣な口調の榊支部長からそう聞かされた。

 

「回収ヘリはどうしたんですか?」

 

「これも撃墜されてしまった。加えて悪いことに、その周辺地域が強力な電波障害が発生していてレーダーが使えなくなってしまっている」

 

ほんの少し、重たい沈黙がその場に座り込んだ。

 

「原因は何ですか?」

 

「・・・・・・分からない」

 

僕が訊くと、支部長は悔しそうな声色でそう返してきた。

 

今でこそ支部長と言う肩書きの持ち主だけど、元が科学者であるだけに「分からない」と答えるのは屈辱みたいだ。

 

「・・・・・・MIAかMIKかくらいは分かるだろ」

 

静かな口調でソーマが訊いた。

 

「幸い、全滅は免れたみたい」

 

ただ、と榊支部長は歯切れが悪い。

 

「ただ?」

 

「さっきも言った通りレーダーが使えなくなってしまったせいで彼等を事実上ロストしてしまった」

 

僕の促しに、榊支部長はそう続けた。

 

「混成部隊の作戦エリアはどこだったんですか?」

 

停滞しそうな雰囲気だったから、僕は無理矢理話を前に進めるように促した。

 

「嘆きの平原だよ。最後に確認できた場所はLZ3。恐らく、回収ヘリの到着を待っている間に襲われたんだろう」

 

榊支部長は地図を引き出して、件のエリア付近を棒でなぞった。

 

その周辺地域一帯が赤く塗りつぶされている。

 

それが意味するところは、「そこのあたりには強力な個体や接触禁忌種がいる」と言うことで。 

 

つまり、嘆きの平原もその地域に指定されている。

 

「・・・・・・最後の通信記録だ、聞いてみてくれ」

 

榊支部長がポケットから1つのテープを取り出した。

 

レコーダーに入れて、再生スイッチを押すと・・・・・・

 

『任務完了。こちら混成部隊、これより帰投準備に入る』

 

『お疲れさまでした。部隊の被害報告は?』

 

『シュンが負傷。程度は軽微だが、左肘周りをやられている。後は、俺を含めて何人かが火傷を負っている』

 

『分かりました。医療班を待機させておきまね』

 

『ああ、助かる・・・・・・ああ、後』

 

『? 何でしょうか?』

 

『内の隊長がヒバリさんと食事したいと喚いていた』

 

『はぁ・・・・・・』

 

『たまには相手してやってくれ。こっちが割を喰う羽目になる』

 

『・・・・・・分かりました。考えておきます』

 

『助かる』

 

「おい、ただのダベリじゃねぇか」

 

「待って! ここからなんだ・・・・・・来るよ」

 

『っ!! 何だ!?』

 

『どうしました!? 混成隊、応答して下さい!』

 

『何だ!? 各・・・ん戦・・・い勢! ジー・・・とカレ・・・は小川のフォ・・・ーを!』

 

『混成隊、応答して下さい!』

 

『ち・・・・・・ょう! カノンはジー・・・・・・交た・・・だ! ジーナ、・・・ん・・・射撃・・・のむ! み・・・な、ここはいっ・・・ん撤退だ、俺が・・・がり・・・務める! ブ・・・・・・ダンは皆・・・先・・・う・・・ろ!!』

 

『混成隊、混成隊!? 応答を! 応答願います!!』

 

『あ~、ヒバリちゃ・・・! 食事はま・・・こ・・・度にな・・・そうだ! そん・・・きはよ・・・しく頼むぜ!』

 

最後に聞こえたのは、僕達も聞いたことがないような異質な「音」だった。

 

テープが録音していたのはそこまでだった。

 

「・・・・・・以上だ。ジャミングのせいで向こうからの声がかなり飛んでいたけど、何かあったことは間違いない」

 

少しして、榊支部長が言った。

 

「何かが地中から湧いて出てきた、って感じですかね?」

 

さっきの音声を聞いて、僕が思った印象をそのまま口にしてみる。

 

「今の状況では何とも言い難いね」

 

反応はいまいちだったけど、真っ向からの否定はなかった。

 

「・・・・・・で? これを聞かせるためだけに俺達をここに呼び出した訳じゃないんだろ?」

 

ソーマが、いつも通りの口調で訊いた。

 

「勿論、そのためだけに呼び出したりなんかしないよ」

 

少し下がっていた眼鏡を押し上げながら、榊支部長は言った。

 

「君達第1部隊に頼みごとをしたくてね」

 

「命令、の間違いだろ」

 

「まあ、そうだね。第1部隊を2個の班に分けて片方を捜索任務に当てたいんだ」

 

「えぇと。部隊長として質問よろしいでしょうか?」

 

「何だい?」

 

「指揮下にいる人員に雨宮夫妻は数えて良いんですか?」

 

「あぁ、それは構わないよ。彼等も君の部下だから」

 

数秒の思案の後、僕は口を開いた。

 

「じゃあ・・・・・・ソーマ、コウタ。僕の指揮下に入って捜索任務に同行して。アリサはリンドウさんの指揮下に入って引き続き現状の任務を続行。・・・・・・これで問題ありませんね?」

 

僕は榊支部長の目を見据えて訊いた。

 

「問題ないね。それでいこう」

 

「ちょっと待って下さい!」

 

アリサだった。

 

「何で私は捜索班から外されてるんですか!?」

 

「それはアリサが新型神機使いだからだよ」

 

「だから何で!?」

 

「全部説明しなきゃ分からないほど、アリサは理解力が無いの?」

 

僕は静かに語気を強めて言った。

 

アリサが目に見えて狼狽する。

 

「戦力のバランスを取るため。それ以外に理由なんて無いよ。むしろ探す方が難しいくらいだ」

 

そう、本当に戦力の、いや、戦術面におけるバランスを取るための采配だ。

 

僕達捜索班に、遠距離型、近距離型、汎用型を配置するなら待機班にも同じ編成をしくのは自明の利なのだ。

 

片方に戦力を集中しすぎて、もう片方の戦力が脆弱化する事態だけは何としてでも避ける必要があったのだ。

 

「異論は認めないよ」

 

最後に、僕は冷たく硬質な声色でそう言った。

 

「・・・・・・話はまとまったかい?」

 

「はい。捜索班は僕とソーマとコウタ、待機班はリンドウさんサクヤさんアリサで編成します」

 

「分かった。待機班の指揮権はリンドウ君に渡しておくんだね?」

 

「はい、それでお願いします」

 

「了解したよ。じゃあ、正式な命令は追って出すから。解散してくれ」

 

僕達は敬礼して支部長室を出た。

 

僕がああ言ってから、終始アリサは納得いかなげな目で僕を睨んでいた。

 

正式な命令が下ったのは、解散してから2時間と少し経ったくらいの時だった。

 

『支部長直令 第遠征任務指令第137号。

 

 第1部隊選抜捜索班は明朝0400時をもって出撃。

 なお、待機班の指揮権は一時的に雨宮・リンドウ中尉 に譲渡。指揮権の有効期間は、捜索班の任務完遂後  帰還するまでの間とする』

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。