「ソーマ、コウタ。今回の任務がどれくらい長くなるのかが分からない。だから、今の内に僕達それぞれの役割を今の内に決めておきたい」
僕は輸送ヘリの中で2人にそう言った。
旧世代最後に開発されたこの機体は、機内の静かさが売りで、実際こうやって話が出来るくらいだ。
まあ、ヘリの外はそれほど静かじゃないんだろうけど。
「あぁっと、その前にまず知らせておくことがあるんだった」
僕は額をペチンと叩いて言った。
「何だ?」
勿体ぶらずに言え、とソーマが言外に示した。
「僕は今回の任務では基本的に2人のバックアップに専念することにするよ。・・・気付いてるかも知れないけど僕の神機の調子が最近おかしくてね」
言いながら僕は自分の神機を見やった。
そこには、僕の神機が素っ気なく鎮座していた。
「僕の神機、盾の調子がすこぶるよろしくなくてね。
それに、剣形態から銃形態へのスイッチもかなり鈍くなっちゃってね」
コツンと僕の神機の盾を軽く小突いた。
気のせいなんだろうけれど、小突いたときの音も前と比べたら余所余所しくなった感じがする。
2人に向き直ると、どっちも神妙な顔をしていて少し居心地の悪さを感じた。
コウタは難しそうな顔をしながら、唇を何回か舐めている。
「リーダーが隊の足を引っ張る、なんてことにはならねぇよな?」
ソーマが僕の方をジロリと睨みながら訊いてきた。
「無論。神機が全く動かないわけじゃな・・・」
「神機の不調があるならリッカのところに行けよ!」
僕の話を荒い声で遮ったのはコウタだった。
何か言いたげにしていたのは、これを言うためだったらしい。
「・・・・・・もうそのレベルを通り越してるんだよ、コウタ。とうの昔にね」
僕は落ち着いた声でそう返した。
「リッカちゃんも僕の神機の不調、と言うか僕の適合率の低下については知ってるんだ」
「!?」
「おい、どう言うことだ? 説明しろ」
コウタの心を代弁するが如く、ソーマが若干の怒気を含んだ声で訊いてきた。
「そうだね・・・・・・いずれ皆が知ることだから言っても構わないか。えぇっとね・・・・・・なんて言うかね、原因は分からないけど僕の神機適合率が下がってるみたいなんだ。どれくらいかって言うと、さっき説明した通り」
言った後、僕はもう一度僕の神機を数回小突いた。
冷たい感触しか返ってこない。
「今のところは戦力として稼働する状態だから僕も駆り出されてるってわけ」
OK? と僕は訊きながら2人を見据えた。
2人とも眉間にしわを寄せるだけで何も言ってこない
しばしの沈黙。が居座る
「・・・・・・ちっ、分かった。じゃあ、今回の任務、攻撃は俺が主体になるわけだな?」
沈黙を破ったのはソーマだった。
「そう言うこと。コータはソーマの援護とトラップの敷設をお願いするよ」
「・・・・・・分かった」
コウタも渋々ながらも了解してくれた。
「で、僕は少し離れたところから君達の援護。主に回復と攻撃をやることにするよ。2人ともヤバくなったら僕を呼んで。回復弾撃つから。・・・・・・まぁ、何かあったら僕も攻撃に加わるけどね」
「そう言う状況にならないように努力する」
淡々とした口調でソーマが言った。
ソーマはソーマなりに僕のことを心配している、と言うことが伝わってくる。
「助かるよ。ありがとうね、ソーマ」
僕は本心のお礼を返した。
「ふん。貸しにしといてやる」
僕のお礼にソーマは、そっぽを向きながらそうかぶせてきた。
「はは、いつ返せるか分からないよ?」
「死ななきゃいつでも返せるだろ」
!
確かにそうだ。
死にさえしなければ、どうにでもなる。
例え莫大な貸しであろうと何であろうと、生きてさえいれば必ず返せるのだ。
ソーマの言葉に、僕は今更ながらその事実を再確認した。
しばらく時間が経った頃。
「もうすぐ作戦エリアに到着します。備えて下さい」
機長がそう言ってきた。
僕達の表情筋に緊張の電流が流れた。
「・・・・・・作戦内容の再確認をするよ」
2人の目が僕を向いている。
「任務内容は、ロストした第2、3部隊メンバーによる混成部隊の捜索及び救助。作戦期間は無期限。もしかすると新種や接触禁忌種との戦闘も有り得るからそのつもりでいて。他に質問は?」
「任務の完遂条件は分かったが、失敗条件は何だ?」
ソーマだった。
「簡単だよ。・・・・・・僕達が死ぬこと」
「・・・・・・愚問だったか」
「いや、そうでもないよ。ソーマは良い質問をした。
言い忘れていたけど、皆死ぬなよ。これ、隊長命令ね」
僕は平然とした口調でそう言った。
すると、だんだん機内の気圧が上がってきた。
耳の中に違和感を感じる。
降下しているみたいで、窓の外の景色が段々と近付いてきていた。
そして・・・・・・
「着陸しました」
機長の声を聞いて、僕はヘリのハッチを開いた。
「健闘を祈ります」
その声と僕が地面に降りたった瞬間はほぼ同時だった。
最後に降りた僕はヘリのハッチを閉めて、そのまま敬礼しながらヘリの離陸を見守っていた。
嘆きの平原名物、作戦エリア中心部の謎の竜巻が良く見える。
風は、やはり穏やかではなかった。