二つ名鬼神   作:ザタキシード

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会敵

 

歩き始めてから何時間くらい経過したんだろうか?

 

そんなことを考えてふと空を見上げる、と言う動作もさっきので何回目になるのやら・・・・・・

 

僕達は荒野の真っ直中を、ただひたすらに歩き続けていた。

 

空が曇っているせいで、太陽の位置も分からない。

 

空が地味に明るいからまだ日中だ、と判断できる程度だ。

 

精神的な疲労のなせる技だろうか、僕達が歩き始めてからずっと、戦闘時を除いて一切口を聞いていない。

 

嫌な空気だな・・・・・・

 

僕は、自分の背後に居座る何とも重たい雰囲気を感じてそう思った。

 

理由は僕でも分かる。

 

でも、今それを引きずられても困る、と言うのもまた事実なわけで。

 

恐らく8㎞弱移動したところで、僕は歩くのを止めた。

 

訝しげな空気がビシビシ伝わってくる。

 

「皆、一端ここで休憩。時間は・・・15分くらい」

 

僕は、努めて明るめの声でそう言った。

 

そこで、初めて皆が盛大に息を吐いた。

 

ストレスだけがしっかりと蓄積されて、それをキレイに晴らす機会はまだ訪れていない。

 

これは、精神的にかなりキツかったりする。

 

僕も含めて、ソーマやコウタの顔も程度の差こそ有れそれなりにやつれている。

 

僕は神機を地面に突き立てて、それを背に座り込んだ。

 

と同時に、フェンリル支給の軍用腕時計を15分にセットした。

 

少し首をひねっただけで、ゴキゴキと不健康極まりない音が響く。

 

座ったまま軽くストレッチをすると、それだけで僕の体内に不健康な音楽が奏でられる。

 

・・・コレが、仲間を失ったときの感覚ってやつ・・・なのかな・・・・・・

 

一通りストレッチをし終えて、ぼんやりとしながら僕はそう思った。

 

小川・シュン。

 

リンドウさんの剣筋を、本人はとりあえずと言い張っていたが、それを目標に鍛練を積んでいた僕より年下の神機使いの先輩。

 

戦闘時の手口は、とにかく不意打ち。

 

不意打ちに不意打ちを重ね、さらに不意打ちをかけるそのやり口はむしろ強かさを感じていた。

 

流石に10代の少年と言うだけあって、色々突っかかりたい年頃だったみたいだけど、僕は彼のことが嫌いではなかった。

 

さっきも言ったように、彼はリンドウさんを目標にしていた。

 

彼とリンドウさんの間にある、経験やその他にまつわる決定的な溝の存在を知った上で、それでも埋めようとする態度は、尊敬すらしていた。

 

それに、彼は何のかんの言いながらも優しい人物であった。

 

僕が箱舟への乗船を決めかねていたとき、彼が人目に付かないところで乗員リストに入っていなかった人達のことを考えていたのは、今でも覚えている。

 

皆の前でこそあんな風に強がっていたけど、根は心配性だったんだと思う。

 

ブレンダンさんとカノンさんがロストした時も、地味に率先して捜索していた。

 

そんな実は優かった彼が死んでしまった、と言う事実は僕にも少なくない衝撃を与えていた。

 

関わりはそんなに無かったんだけどなぁ・・・・・・

 

そう、僕と彼との間に同僚という関係が結ばれていても友達の関係は結ばれていなかった。

 

なのに、これだ。

 

ならば、普段から関わりの深かった、それこそカレルさんやジーナさんは一体どれだけキツいんだろうか?

 

・・・・・・まぁ、そこは考えても分からないけど。

 

想像できる範囲としては、たぶんリンドウさんがロストしたときの、あの感覚以上だろう。

 

つまり、かなり堪えると言うことだ。

 

こう言うとき、ソーマの平然(語弊はあるけど)とした態度は、少し怖かったりする。

 

一体、何人の仲間の死を体験してきたのだろうって、そう考えてしまうのだ。

 

無論、彼とて無心でいられるはずがない。

 

ただ、その感情を表に出さないだけだ。

 

僕は、ソーマが持っているその術を欲しいとは思わない。

 

と言うか、本来なら持っちゃいけない類の術だと思う。

 

でも、いちいち感傷に浸っているわけにもいかないって言うのもまた事実。

 

つまるところ、早く立ち直らなきゃやってられない、と言うことだ。

 

と、僕の思考回路にひとまずの結論が出たとき、小さなアラーム音が鳴った。

 

15分が経過した。

 

「皆、休憩終了! 進むよ」

 

僕が地面から神機を引っこ抜こうとしたその時だった。

 

地面が、動いた。

 

「っ!?」

 

「何だ!?」

 

周りが慌てる中、僕とソーマの表情には緊張が駆け巡っていた。

 

・・・・・・何かいる

 

漠然と、しかし確信を持って、僕はそう判断した。

 

「タツミさん、皆を連れて嘆きの平原まで急いで走って下さい」

 

「何でだ!?」

 

「良いから! 早く行って下さい!!」

 

タツミさんの不満げな反応に、僕は声を荒げた。

 

ヤバいのがいる。

 

それも、すぐ近くに。

 

「嘆きの平原のLZ8。あそこなら、ジャミングの圏外のはずです。そこで回収ヘリを要請して下さい。チャンネルは・・・・・・これにあるやつで合わせて下さい。さあ早く!」

 

僕は、航空通信用のチャンネル表をタツミさんに渡してそのまま走らせた。

 

タツミさん達の影が小さくなる頃、周囲を包んでいた異様な気配が明確な殺意を僕達に向けてきた。

 

今までにないタイプの気配。

 

油断したら、喰われる。

 

僕の本能は、けたたましくそう叫んでいた。

 

「・・・・・・来るぞ」

 

ソーマがそう言った瞬間、大地が爆発した。

 

土煙の中に、殺気の主のシルエットがうっすらと浮かび上がっていた。

 

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