舞い上がった土煙が晴れるのを待たずに、敵が仕掛けてきた。
棘状の発光体を作り出して、そのまま跳躍した。
狙いは・・・・・・
眼球だけで敵の動きを追って、敵の行動を先読みする。
これは・・・・・・
「コウタ、避けて!!」
叫びながら、僕はコウタが立っている方に向けてガトリングを2掃射分ぶち込んだ。
計8発の光弾が、コウタをめがけて飛んでいく。
コウタが、右斜め前に向かって前転回避。
刹那、さっきまでコウタがいた場所に敵が例の棘を突き立てた。
続けざまに、僕が放った光弾が全て、敵の側腹部にめり込んだ。
そして、次の瞬間敵が消えた。
「!?」
さっきまで奴がいた場所には、何もなく、ただ土埃が少し舞い上がっているだけだ。
どこに消えた!?
「上だ、避けろイリス!!」
ソーマの警告に、僕は言葉の意味を理解するよりも早く体を動かした。
そして、それは少しばかり遅かった。
刹那、強烈な振動と爆音、激痛が僕の体に走った。
「ぅぐっ」
「イリス!」
「リーダー!!」
ソーマとコウタの声が何故か下から聞こえる。
・・・・・・あぁ、そうか僕は吹き飛ばされているんだ。
スローモーションに映る世界と思考回路の中で僕はそう認識した。
そして、時間の早さが元に戻ってきて
「がはっ」
僕は背中から地面に叩き付けられた。
体の感覚の全てが一瞬鈍重になる。
鈍痛は少し遅れて実感に追い付いてきた。
息が、出来ない。
「このヤロー!!」
コウタが雷属性弾をこの敵に向かって乱射している。
「リーダーから離れろっ!」
コウタの神機の銃口が、幾度も火を噴き出し、弾を吐き出しまくる。
「っ・・・っ・・・・・・っはぁっ」
体を動かそうとしても、なかなかうまく動かない。
そもそも、ちゃんと呼吸が出来ていない。
「コウタ! 距離を取りつつ挑発しろ! 俺が背後から斬り込む!」
「分かった!」
僕は辛うじてまともに動く首をひねって、そして敵の背中を見た。
・・・・・・何だ、コイツは・・・?
僕は、そこでようやく敵のシルエットをちゃんと見れた。
形態はハンニバル種に属し、見た目で言うと全身がかすかに黒く霞んでいる。
まるで、黒いオーラをまとっているような、それこそ地獄からの使者と言った風な後ろ姿だ。
そして、その黒い敵の横顔を見た。
見た瞬間、僕は理性というものをかなぐり捨てて叫んだ。
「ソーマ! 踏み込むな!!」
「何っ!?」
僕の精一杯の警告にソーマが反応して、すぐさまバックステップを踏んだ。
そして、次の瞬間、ソーマが踏み込もうとした場所が黒い“何か”に呑み込まれた。
そして、僕達はその黒い“何か”の正体をほぼ勘だけで理解した。
・・・・・・オラクル細胞・・・!!
そう、霧状のオラクル細胞なのだ。
やっと体が動き始めた僕は、すぐに起き上がって節々の痛みを無視してその場を跳び退いた。
そして、僕は背中に冷たいものが走るのを感じた。
その冷たさは、次第に右腕へと集中していく。
おそるおそる右腕を見ると・・・・・・
「クソっ、喰らった・・・・・・!」
僕の右腕が、ブスブスと嫌な音を立てながら黒い霧を発していた。
奴が作った黒い球があった場所にもうソレはなく、ついでにそこにはポッカリと何もない空間が出来上がっていた。
やっぱりか・・・・・・
そこで、僕は敵が発する黒い霧がオラクル細胞であると確信した。
その証拠に、黒い霧が付着していた地面が捕食された。
「二人とも! 迂闊に距離を積めないで! 奴は霧状のオラクル細胞を発生させてる。うっかりソレが付いたりしたらやばいことになる!!」
実際、僕の右腕がいきなりヤバい。
痺れ、とか鈍痛、とかそう言うのをとうに通り越してもはや何も感じない。
感覚が消えている。
その途端、僕の視界にノイズが走り出した。
一緒に偏頭痛も。
その痛みは、僕の集中力を根こそぎ奪っていくのには充分すぎるくらいで。
「イリス、構えろ!」
頭を抱えてふらつく僕に、ソーマの警告は届いていなかった。
そして、今度こそ敵の攻撃を直でこの身に受で止めてしまった。
地面の感触が離れ、その代わりに眠気すら誘うような気持ち悪い浮遊感が全身を包む。
そして、僕の視界から色彩というものが根絶やしにされ
残った色は白と黒の2だけになった。
時間がスローモーションに流れていく。
やけに色んな音がハッキリと感じられた。
空に近付いて、そして空にやんわりと拒否された。
僕の体は地面に打ち捨てられた。
視界が、次第に黒に塗り潰されていく。
周りの音が、むしろうるさく感じる。
僕の感覚は、そこで闇に沈んだ。
そして意識の方は、冷たい空間の中で覚醒した。
・・・・・・ヨウ。チャントアイサツスルノハコレガハジメテカ・・・・・・
誰?
・・・・・・ドウコタエテホシイ?・・・・・・
どうって、どう言うこと?
・・・・・・オマエニナントイッタラツウジルカヲ、シラナイ・・・・・・
訳が分からないよ。
・・・・・・ワケガワカラナイ、カ。ジブンデウミダシテオイテヨクイウ・・・・・・
生み出す? 君を? 僕が? 何のことだい?
・・・・・・オボエテイナイノカ? ナラシカタガナナ・・・・・・
本当に君は何者何だい?
・・・・・・トコロデオマエニシツモンダ・・・・・・
は?
・・・・・・オマエハダレダ?・・・・・・
・・・神谷・イリス。
・・・・・・シヌノカ?・・・・・・
死にたくない。
・・・・・・コワイノカ?・・・・・・
怖いね。
・・・・・・チカラハホシイカ?・・・・・・
欲しい。
・・・・・・ナンノタメニ?・・・・・・
それは・・・・・・戦うため。
・・・・・・ホントウニ?・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・ナラバキキカタヲカエヨウ・・・・・・
?
・・・・・・ナンノタメニタタカウ?・・・・・・
そんなの、荒神から皆をまも・・・るた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ふっ。そんなのシるわけなイじゃン。
ナンでもイイ、コわセレバソレでイイ。
ソウサ、コワシタイダケダ。
ヤットカワレタナ、イリス。
オレガナニモノカダト?
オレハ、オマエノアルジデオマエノシモベダ。
・・・・・・ソレイガイノカンケイガアルカ?
そして、僕の体は立ち上がった。