リサ姉の弟はルナ姉?   作:初見さん

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 話長い。


ルナ×紗夜(中盤戦)

「まぁ、そんなわけでアンタのお陰で仲直りの卍固めされたわ」

「仲直りの卍固めってなんですか。まぁ、仲直り出来たのなら良かったですね」

「ええ、めでたしってやつね」

 

 友希那との件を話しながら喫茶店でお茶をする紗夜とルナ。

 

「……げっ、ルナ先輩」

「人の顔見て『げっ』て何よ」

「こんにちは市ヶ谷さん」

 

 ルナの顔を見て苦い表情と台詞を吐いたのはガールズバンド『Poppin'Party』のキーボードであり、花咲川の生徒会書記の市ヶ谷有咲(いちがやありさ)だった。風評被害の真面目系ツンデレ。

 

「……すみません」

「……もしかしなくてもアンタ男嫌いでしょ」

「え、いや、そう言うつもりじゃ……」

「分かるのよ、雰囲気で。しかも私の口調も男じゃないから尚更でしょ?」

「……」

 

 ルナの言葉に申し訳なさそうに頷く有咲。

 

「……燐子先輩から聞いてます。私の代わりによく生徒会の手伝いをしてくれるとか、口調はアレでも優しい人だって。でも……」

「まぁ、勝手にしなさい。私関係ないもの」

「いや、なんでよ、関係者でしょう」

「紗夜、考えなさい。私がなんかこの子に対して苦手意識持つような行動してたら関係者だけど、向こうが一方的に私に苦手意識持ってたらそれはもう一人相撲よ。だから私が治すとこなんて市ヶ谷と距離を置くしか方法は無いのよ」

「……市ヶ谷さん。大丈夫ですよ」

「……え?」

「この男が大きいのは口だけですから」

「はっ倒すわよアンタ」

「事実を言ったまでよ。強がり言っても本当は内心悲しんでるの分かるし」

「はぁ? 私が? 冗談じゃないわよぉ」

「眼、怯えてますよ」

「……アンタいつの間に心理学詳しくなったのよ」

「フフッ、さあいつでしょうね」

 

 この時有咲は一瞬で理解した。今井ルナはそこまで怖い存在では無いと。あの風紀委員で、堅物の氷川紗夜がルナに対して笑い一瞬でも敬語を抜いた事が信頼の証なのだと。

 

(この人達いつか付き合うな)

 

 ついでにこうも思った。

 

「何よ、こっち見て」

「いえ、何でも。仲良いなぁって」

「アンタと香澄には負けるわよ」

「はぁ!? べ、別に香澄なんかなんとも思ってねぇし!」

「結構お似合いじゃない? ねぇ紗夜?」

「ええ、そうですね。市ヶ谷さんも満更では無いので」

「べ、別に私は……」

「じゃあ嫌い?」

「き、嫌いってわけじゃ……」

「じゃあ好き?」

「……」

「無言でも頷いてくれただけで、貴方の気持ちが分かったわ」

「……あれ? これどっかで見たような? 気がするんですけど」

 

 既読感を覚えた紗夜だが、すぐに有咲が言う。

 

「紗夜先輩とルナ先輩だって理想のカップルじゃないですか!」

「冗談じゃないわよぉ!」

「……カップル」

「ちょっと!? 否定しなさいよ! いつもなら同時に言うでしょ!」

「……はっ! すみません私としたことが……」

「……っ! まさか」

 

 その時、有咲に電流が走る。こう見えても(見た目は金髪ロリ巨乳)試験は学年でかなりの上位である。そんな彼女が紗夜とルナを見て思った事ただ一つ……

 

「……紗夜先輩も大変ですね」

「……流石学年トップクラスの頭脳ですね」

「ちょっと待ちなさいよ、なんで私を置いてけぼりなのよ。私だって頭脳は多少上位よ」

「女の勘には勝てませんよルナ先輩」

 

 そんな悪気もなく言った有咲の言葉にルナは少しビクッと身体を震わせて

 

「……ええ、そうね」

 

 そう言った。

 

「ちょっと、市ヶ谷さん!」

「……え?」

 

 紗夜の言葉に有咲が疑問の言葉を言いながらルナを見ると……

 

「……別に良いわよ。いちいちそんなので気にするわけないでしょ」

「……何かやっちゃいました? 私」

「何もやってないわ。貴方の言葉に少し勝手に私が反応しただけよ」

「……なんか、ごめんなさい」

「謝らないで、私の一人相撲よ」

 

 そんな会話の後は、無言でお茶を続けた。

 

 ♪♪♪ 

 

「あれぇ、リサ? 何で髪の色緑なんだぁ?」

「私は今井さんじゃありません。ほら、寝なさい」

「……うー……ZZZ……」

 

 氷川紗夜はルナのキャラ崩壊に頭を抱える。カフェで飲み物を飲んだ後、有咲と別れルナの家で夕食をご馳走になる予定だった紗夜はリビングでくつろがせてもらっていた。

 温めるだけだから手伝う必要は無いと言われた紗夜がくつろいで数分後。

 

『バタっ!』

 

 そんな音と共に床に何かが当たった音も一緒に聞こえた。

 心配になって台所へ行くと、そこには倒れたルナと料理酒が入っていたボトルとプラスチックコップが転がっていたのだった。

 

「……全く、眠っているだけだったから良いものの、焦ったわ」

「……すぅ、すぅ」

「……何で寝ている人って子供みたいに純粋な顔で寝るのかしらね」

 

 そう言って、ベッドまで運んだ紗夜が、ルナの頭を撫でる。

 

「にしてもバカね。料理酒で酔うなんて……ってあれ?」

 

 そこら辺で、紗夜は違和感に気がつく。彼こと今井ルナは家庭的である。縫い物編み物はもちろんのこと、料理の腕も相当なはずだ。プロとまではいかなくとも、高校生の中では、どちらかと言うと男の中では上位の腕だろう。

 そんな男が、料理酒で酔うなんてあるのか? そもそも紗夜と作っていた時は料理酒なんて当たり前に使っていたのだ。当然ほんの少しだけだが味見もする。

 じゃあ何故、料理酒で酔うなんて出来たか、そんな事を考えていると

 

「……ゆき……な……がっ……き」

「寝言ですか?」

 

 舌ったらずな寝言から、紗夜はルナの寝言を聞いた。

 

「……がっ、き……ひかなくて……ごめん……なさい」

「……っ! ルナさん……貴方って人は……どこまでお人好しなんですか……しかも、この匂いって」

 

 その寝言を言った時に嗅いだ彼の吐息は甘く、少しだけアルコールの匂いがした。

 

「……まさかコッソリ料理酒とは別にお酒を飲んでいたとは……大方少し飲んで、キッチンに捨てて、他の缶と混ぜて入れたんでしょうね」

「そこまで市ヶ谷さんの言葉を間に受けるって貴方らしくないですよ」

「でも、貴方は悪い事をしても、最後までやり通す事は出来ないですから。途中でやめたんでしょう。なんて、今井さんが言ってただけで真意は分かりませんけど」

 

 紗夜はルナ頭を撫でながら、呟く。

 

「……ルナ、貴方はもう少し周りを頼りなさい。貴方が我慢すればいいわけじゃないのよ」

「私は貴方がいたから、日菜と仲直り出来たし、Roseliaでギターを弾いてる。いつもルナは堅物だとか言われ続けてる私に近寄って、話しかけてくれる、日菜の事も私の事も気にしながら明るく話してくれる人。オネエ口調とか私にとってはどうでもいい。でも、貴方は私の大切な人……だから、本当に耐えられなかったらせめて私を頼ってくれると、嬉しいのだけど」

「もう、隠したくない……いつも、素直になれないけど……」

 

 そう言って、紗夜は……ルナの甘く苦いアルコールの匂いを自分の唇に移して……

 

「……んっ……好きよ、ルナ。なんて、寝ている人にやってしまったけど、よく揶揄われてるからこれくらいは良いわよね」

「うん、大丈夫だと思うよ。ルナの事、幸せにしてね」

「ええ、任せて。これ以上はルナが私を恋人にしてくれた時にするわね。その前にルナの全てを私が……支えないと」

「うん。紗夜にならルナを任せるよ

「まだ、告白できる勇気は無いけど……って、え?」

「ヤッハロー、紗夜。早く告白しないと弟割と鈍感だから気をつけてね」

「……今井さん、どこから聞いてました?」

「紗夜がルナの頭を撫でてたところかな。後でルナには叱っておくとして、酔っ払いの介護ありがとうね」

 

 紗夜が後ろのリサを見ながら話をして数秒後……紗夜はルナの部屋の窓を開けて……

 

「……ルナ、貴方は死なないわ。私が死ぬもの」

「はい紗夜ストップしようか!?」

「離してください! 殺して下さい!」

「ダメだよ! ダメダメ! ねぇ、紗夜。今から言う事はルナの話。だから聞いて!」

「……ルナさんの過去?」

 

 少し暴れたが、紗夜はリサの言葉で正気を戻した。

 

「……ルナはね、楽器を弾かなかったんじゃなくて、弾けなかったの」

「弾けなかった? どう言う事ですか?」

「アタシがルナより先に楽器を始めたんだけどさ、ベースって高いじゃん? 最初小さいから手が出せないどころか買ってくれるかすら分からなかったんだ」

「でも、その時アタシはベースを買って貰った。何でだと思う?」

「……親御さんに何か言ったんですか?」

「うん。ルナがね。アタシの誕生日までやったテストで全部満点取るからアタシにベースを買ってくれって両親に言ったらしいんだ」

「とんでもない約束をしたんですね」

「でもルナのサプライズだったから、ルナとお母さん達は黙ってた。アタシがそれを知ったのは友希那とバンドを組んで少し経った時にたまたまお母さん達が教えてくれたの。それまで知らなかったんだよ。あの時確か……30回くらい小テストとか単元テストがあったけど、ルナがずっとアタシのために勉強ばかりして、結果的にほぼ全問満点だったの」

「……化け物か何かですか彼は。でも、ほぼとは?」

「多分小さい時はテスト簡単なものばかりだから取れたんだと思うよ。でも、ほぼって言うのは、最後の……アタシの誕生日当日のテストで、一問間違えたらしいんだ。その時両親に泣きながら謝ったんだって」

「あのルナさんが大泣きって……というかそんな事があったんですね」

「うん。聞いただけだけど驚いたよ。でも、確かにテストで失敗したけどルナが言ったのは誕生日までのテストで、アタシの誕生日当日のテストは条件に無いよねってお母さん達が言って、結局買ってくれたんだよね」

「ただ、アタシはその時は単純に両親がベースを買ってくれたのが嬉しかった。そして、友希那とセッション出来る嬉しさしか見えてなかった。弟が裏で、黙って努力してくれてたのに、アタシはルナじゃなくて、友希那しか見えてなかった。ルナが楽器を弾いてないとか、一緒に輪に入ってるようで、入ってない事に、気づけば良かったのに……」

 

 そして、悲しそうな目でリサは続きを言う。

 

「アタシの家も4人家族だけど、そんなに裕福では無いからさ。楽器なんて2つも無かった。両親がルナの事を言ってくれなかったら、ずっとアタシの我儘をお母さん達が叶えてくれたんだって、それしか思わなかったと思う」

「ルナは楽器を弾けなかった。多少は触らせてた事はあったけど、弦を少し弾くくらいで、演奏とかはしてないんだ。友希那のお父さんの件もあってアタシは友希那につきっきりになってた。アタシは……ルナに何もしてあげてないんだ」

「ルナはずっとアタシと友希那の近くにいて、話をしてくれた。ルナがアタシ達の仲を取り繕ってくれてた。その時からルナは楽器が弾けないから別の方法でアタシ達の仲を支えてくれてた」

「その結果が……楽器を弾けないではなく、弾かないというルナさんの言葉選びですか?」

 

 紗夜の言葉にリサが頷く。

 

「ルナはアタシ達の演奏を聞いてくれてたけど、心の中では自分も輪に入りたかったんだと思う。でも、楽器なんて買えないし、友希那の件とかアタシのせいもあって諦めてたんだよ。だから今、料理とか手芸で作ったものをアタシ達に差し入れしてくれて、必死で別の方法でアタシ達との仲が離れないようにしてるんだと思う」

「だから、紗夜。お願い。アタシが言うのも間違ってるけど」

 

 そう言ってリサは一呼吸おいて

 

「ルナを逃さないで、支えて、安心させて。何も出来なかったアタシの代わりに、紗夜がルナを甘えさせてあげて」

 

 そう言った。

 

「……正直、今のルナさんは音楽から逃げてます。楽器が弾けないなら貸し出しとかで弾けばいいのに、きっと今更弾いても湊さん達みたいに上手く出来ないとか、真剣にやってる私達に申し訳ないとか思っているんだと。まぁ、予想ですけど」

「それでは彼が音楽だけでなく、楽器を弾いて楽しんでいる幼馴染やその姉から逃げているだけになります。それを考えたらルナさんの方にも非はありますよ」

「……紗夜の言う通りかもね」

「ですから、任せてください」

「……紗夜」

「私はルナから返しきれない物を貰ったんです。だから、今度は私が彼に与える番です。何かしらの形で喝を入れて、支えられるようにします」

「……うん。お願い」

「それと、今井さんは何もしてないわけではないと思いますよ」

「……え?」

 

 その言葉の後に少し笑いながらリサに紗夜が言う。

 

「ルナはいつもお弁当や編み物をした時、今井さんに昔教えてもらったんだと、笑顔で言ってます。リサがいないと私は何も出来なかったのよ。って」

「だから、少なからず私もリサに何か私なりに出来ることをして支えてあげたいんだ……なんて、今井さんにそっくりですよ。自分の事は無頓着で心を無にしても辛さを隠して、他者の為に世話を焼く。これが姉弟と言わないで何というんですか」

「だから、今井さんはルナに何もしてない訳がないんです。ルナさんがこうしているのも今井さんのお陰なんですよ」

「……紗夜……アタシは……ルナのお姉ちゃんなんだよね?」

「そんなの本人に聞いてください。私は貴方の姉ではありません……ああ、でも」

「私と今井さんのどちらかがいつか姉呼びになるんですよね」

「……アハハ! 紗夜もそんなこと言うようになったんだね」

 

 そう言ったリサは涙を少し拭きながら笑った。そして、お互いに笑顔を向けた後、紗夜から口を開いた。

 

「それじゃあ、ルナを支える一歩として、まず手始めにルナさんを私の家に監禁したいんですけど宜しいですか?」

「分かったよ……ん?」

「いえ、別に睡眠姦をしてルナの唇と童貞を奪い取るとかじゃなくてですね」

「本気でそれ考えてるならアタシ紗夜との交友関係を見直す必要があるね」

「家の中でカンズメをさせようかと思いまして」

「監禁だねぇ、見直そうかな」

「今は今井さんに言えないので後で話しますけど」

「怪しさしか無いなぁ。え? 紗夜マジで何するつもりなの?」

「……強いて言うなら」

「ルナを私の手で男にします」

「さぁて、縁切るかぁ!」

「違います! 誤解です! 日菜も一緒ですから!」

「姉妹丼だねぇ、尚更安心出来なくなったよ」

「だから! 違うんです! ってか日菜には渡しません! ルナは私のMy sweet honeyなんです!」

「語彙力無いねぇ。しかももう隠さなくなったよね」

「ええ、何度でも言います。ルナが好きです。声も顔も不器用なオネエ口調も全部好きです。だからリサ義姉さん、とりあえずお願いします。3日程猶予を下さい」

「これでルナが紗夜の名前しか言わないで目が虚だったらアタシは紗夜をベースで殴るよ」

「信じてください! とっても気持ちよくさせるだけなんです! 快感を覚えてもらうだけなんです!」

「今の紗夜の言葉で弟預けるとか冗談じゃないよねぇ。ってかさりげなくさっきからルナって呼び捨てだし」

「信じてください! ちょっとある事を手取り足取り教えてショータイムするだけですから!」

「性奴隷のショータイムかな? 紗夜そこに直れ☆」

「どうして信じてくれないんですかぁ! 冗談じゃないわよぉ!!」

 

 この2人の言い争いはルナが目覚める数十分まで及んだ。

 友希那から翌日、性奴隷計画を発案する紗夜とそれを止めるリサがいたけど2人のオネエ保護者はどうしてたのと聞かれたそうな。

 

「「ルナ(さん)は保護者じゃないよ(ありません!)」」

「……え? 紗夜なにそれ怖いんだけど」

「ルナ、素に戻ってるわよ」

「……いや、ごめんなさいね……いや、冷静になれないわ……よ。というか昨日目が覚めたらリサにめっちゃ怒られたわ」

「自業自得じゃない?」

「……うん。そうね」

「……ルナさん」

「何よ?」

「今井さんの事どう思ってますか? 姉ですよね?」

「紗夜!?」

「え? 当然じゃない。姉よ。優しくて厳しいけど、私の姉よ。たまに妹に見えても姉なの。大事な家族よ」

「ですよね。ありがとうございます」

「……え? それがどうかしたの?」

「ルナ、姉弟って結婚出来ないんだよね」

「リサ落ち着きなさい急に何なのよ」

「……ルナー! 大好き!!」

「うわっ!? 危ないって急に抱きつくなよ!?」

 

 そう言って、ルナに抱きついたリサにルナは頭を撫でながら言った。

 

「……なんだか分からないけど、うるせぇ姉だな」




 ここまで来たらわかりますけどヒロインは紗夜です。犯人は毛利小五郎です。
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