「という訳でルナを軟禁するわ」
「ちょっと待ちなさいよ。真面目にイミワカンナイんだけど」
ルナは紗夜に誘われて紗夜の家に泊まりに来た。名目は勉強という話をしていたが、実際は違う。急に紗夜のベッドに座らされて仁王立ちの紗夜に言われた。
「3日間貴方にはここで生活してもらうわ。大丈夫よ。今井さんから許可は貰っているし、両親にも挨拶を済ませたし、ご飯もお風呂も寝室も、しっかりついているから」
「何も安心できないわ。勉強するのに3日も要らないじゃない。しかも、テスト終わったばかりで暇なのに勉強する意味……あるけどなく無い?」
「あれは嘘よ」
「はい?」
そう言って紗夜は自分の部屋に置いてあるギターを取り出して……
「これからルナにはこのギターを3日で出来るとこまで完全なものにしてもらうわ。因みに今井さんにはただの勉強会で強引に貫き通したわ。因みに携帯も没収よ。今井さんと連絡したらバレるから」
「……はぁ!?」
紗夜の発言にルナはオネエなど忘れて本気のトーンで返す。
「……冗談じゃないわよぉ、そもそも、私楽器弾けないわよ。今更弾いても……」
「湊さん達とセッションしたくない? 陰で練習した方がカッコいいわよ」
「……急になんなのよ。過去の話をしてるならもう結構よ」
「……過去なんてどうでもいいわ。貴方が心の中で楽器が弾きたいなら、私が教えるわ。ギターは割と簡単な部類だから」
「……なんか、いつもの紗夜じゃないわね。結構強引だし、今私と話す時もタメだし、何より呼び捨て……何か悪い物でも……」
「食べてないわ。……話を逸らさないでルナ。私は貴方と演奏したいわ」
「っ!? ど、どうしたのよ……紗夜いつもの貴方じゃ……」
「私の眼を見なさいルナ……ほら、もっとこっちに来て……」
「さ、紗夜……ちょっと待っ……」
そう言って、紗夜はルナを真剣に見つめる。そんな紗夜の瞳に吸い込まれそうになるルナ。その瞬間
「おねーちゃん! ルー君! 早速ギター弾こうよ! ……って、え?」
「……日菜?」
「……ちっ、後少しだったのに」
「なんでアンタ舌打ちしてんのよ!?」
「おねーちゃんがルー君を獣のように襲ってる」
「誤解よ、多分」
「多分ってなによ!?」
その後色々あって日菜を納得させた。そして、ルナは
「……弾きたいかと聞かれたら弾きたいわ。紗夜は私に音楽から逃げてるって言ったけど、見せてあげるわ。私の手先の器用さを。オネエに後退はないのよ」
紗夜の安い挑発に乗り、ギターに挑戦するのだった。
♪♪♪
「少し、休憩にしましょうか」
「指が痛いわね。縫い物してる時に毎回針に刺されてるみたい」
「そんな拷問じゃないわよ」
「でも、あたしも最初は少し指痛かったかなー」
「というかなによこれ、難しすぎて料理の方が楽だわ」
「料理が危なかった私への当てつけ?」
「違うわよ。でも、砂時計とか携帯のタイマーで精密に測ってる紗夜は割と危ないと思ったわ」
「でも、ルー君手先器用だから初心者の割には弦を弾くの様になってたよ」
「そうね、初心者にしては割と弾けてるんじゃない? かなりコード抑えるのは力強いけど、しばらく弾いてたら弾けるわね」
「……そういえばなんで急にギターなんで私に教えようと思ったのよ」
「別に、大した事じゃないわ。貴方が寝言で楽器出来ないことに対して謝ってたとか、今井さんから昔の話を聞いて、恩を返すチャンスとか思ってないから」
「ほぼ核心言ってるわよ。隠す気ないじゃない……でも、やっぱり口では気にしてないって言っても、悔しかったのは事実よね」
「だって、リサも友希那も遠くに行っちゃいそうだし」
そう言いながら苦笑したルナ。
「大丈夫よ」
「え?」
「貴方は、湊さん達の距離から遠くに離れないわ。私達が楽器を教えて、ルナが弾けたら、もう貴方は今井さん達と同じ舞台に立つのよ。実力に差はあっても、音楽好きなのは変わらないから」
「というか、リサちーと友希那ちゃんは別にルー君の事離そうとしてるとか絶対ないと思うよ。なんならルー君が2人を繋ぎ止めてるなら、遠くに行く事はないと思うなー。だって、ルー君とリサちーと友希那ちゃん、三人でいる時の雰囲気、るんってするもん!」
「ええ、なんか、絶対に三人の中には入れない壁みたいな堅いものがあるわね」
「……実感はないわね」
「だから、大丈夫よ。ルナと湊さん達は切っても切れない関係だって、貴方だけじゃなく向こうも思ってるから。だってそうじゃないと謝ってこないでしょう?」
ルナは考えて、確かにと頷いた。離れたいなら話しかけないでと言えばいいのだ、でも、友希那やリサは2人きりになってまでルナに謝って来た。
これはルナと関係をこれからも持ちたいと思わなければ出来ないことだった。
「……羨ましい」
「「……え?」」
「羨ましいわよちくしょう!」
「ルー君?」
「ずっと思ってた! 友希那もリサも楽器弾いて楽しそうに、でも、俺は弾かなかった。羨ましいって思ってたのに、あの2人に入る勇気が無かっただけだ! でも、今は違う。仲直りした。だからこれからも俺は友希那と姉さんと一緒にいたいし、今度は俺も……2人と弾きたい!」
そう言ったルナは少し息を整えて。
「……やってやるわよ……これは幼馴染のためじゃない、友のためじゃない。私が……俺が大好きな友希那やリサと心の底から、楽器を通して笑い合うための、自分のためのエゴ。でも、今回はそれでいい。逃げて来たのは俺の方。だから、今度は逃げない」
「ルナ……」
「ああ……もうオネエとか今はどうでもいい。この三日間は俺は俺だ。ここまで紗夜に情けないとこ見せるんならもう繕わねぇ……紗夜、日菜。ギター、教えて下さい。絶対弾くんで。弾けるようになるので。教えて下さい」
今までに聞いたことのないルナの叫びと言葉を聞いた姉妹。最初は何も関わりを持たなかった幼馴染の知り合いだっただけの姉妹は一つの仲違いからオネエと出会い、今井ルナという男に助けられた。
そんな男が恥を凌ぎ、プライドを捨て、過去を振り返って、羨ましさ、悔しさを感じても、前を向こうとしている。
そんな彼に、姉妹は言った。
「何辛気臭い顔してるのよ」
「そうだね、冗談じゃないよ、ルー君」
「……何だよ急に」
「私はルナのためならなんでもする女よ、舐めないで」
「おねーちゃんは急に家に監禁してやり過ぎだけど、あたしもルー君の頼みなら聞くよ。仲直りのお礼もあるしさ。だから」
「「任せて(任せなさい)」」
「……アンタ達」
「あたしとルー君は
「私はそれ以上がいいんだけどね」
「紗夜はどういう話してるのよ……まぁいいわ。2人ともありがとうね」
「ちょっと!? 今井さんの弟のくせになんで私の頭撫でてるのよ!」
「うるさいわねぇ、減るもんじゃないでしょ。よくリサや友希那にしてたのよ」
「おねーちゃんに撫でられるより安心する。昔のおねーちゃん……グスン」
「心が痛いわ、泣いていいかしら? 妹からトラウマが呼び起こされたのだけど」
「今が仲良けりゃ良いんだよ」
そう言って涙を浮かべながら2人の姉妹の頭を撫でたのだった。