「ルナ、何してんの?」
「あらリサ、見ての通り編み物してんのよ」
「誰に上げるの? 女の子? 彼女?」
「目が笑ってないわよ。そうねぇ、リサにも上げるけど、Roseliaのみんなにあげようかしらね」
「ならいいけど、他の女の子にはあげないの?」
「だからなんでそこまでこだわるのよ……そうねぇ、
「美咲? ハロハピの?」
「ええ、編み物のついでに羊毛フェルトもやろうと思っててね。最初にフェルトを教えてくれたのは他でも無い美咲なのよね」
「……へぇ」
「何でそんなに目を細めるのよ?」
「だって浮気性だからねルナは」
「冗談じゃないわよぉ、何で私が浮気とか濡れ衣とか着せられるわけ? 彼氏も彼女もいないわよ」
「彼氏いたら少し困惑するなぁ……でもルナって紗夜がいるのにたまによく美咲といるからね」
「燐子もリサもどうして私と紗夜をくっ付けたがるのよ? それこそ冗・談・じゃないわよぉ!」
「あんなに話してるのに?」
「ちょっとあの子とは話が合っただけよ。お互いの境遇が似てたからね」
「境遇って……日菜の事?」
「そうね、姉妹や姉弟のくだりもあるけど……凡人と天才、
ルナがそう言うとリサはハッとした表情で顔を下に向けた。
「ごめんね、ルナ。友希那も悪気があったわけじゃないから……」
「何でアンタが謝んのよ。友希那が吹っ掛けた事じゃない。まぁ、もう気にしてないけどね」
「私もどうかしてたわ。ガールズバンドで頂点を目指す。友希那のお父さんの無念を晴らして。そんなの聞いたら普通はそこに男が入るなんてそんな考え……無いのにね」
「……アタシもルナじゃなくて友希那を優先した……だから、泣いていたルナを止められなくて……」
『楽器も弾けない男の貴方じゃ私達の邪魔になるだけよ。分かったら帰って』
あの時、俺……いえ、私が少し我慢してしまえばこうはならなかったなんて……
「……フフフ、言うのも野暮よね」
「……何で笑ってるの?」
「友希那にそう言われて良かったって思ってるのよ」
「え? どうして!?」
「ガキだった私はどんな時もリサと友希那について行こうとした。パーソナルスペースとかそんなの気にしないで、2人と仲良くしたかったから真っ直ぐに2人に話しかけたりしてた。でも、歳を重ねるとそんな仲良しこよしなんてしないで男女の関係に変化する」
「そんなこともわからず私は2人について行った。2人が……いえ、リサよりも友希那の精神状態すら知らずに、時間が経って知ってしまっても何とかしてあげたいってそんな脆い考えのせいで、友希那が怒った」
「……ルナ」
「そしてもう一つ愚かだった事……友希那に言われたからと言って、憧れや目標の人を勝手に作ってこの口調になった事。そんな事をしてても男と女は変わらないのにね。本気で下をちぎっちゃおうかなんて思ってたけど、それじゃ報われない」
そう苦笑するルナにリサは言う。
「……じゃあ、その口調やめたら?」
「嫌よ」
即答だった。
「でもその口調って要はルナの心に縛りついてるだけじゃん。邪魔なだけじゃん。なのになんで辞めないの?」
「今こうして仲良くできてるからよ」
「……え?」
「友希那はどう思ってるかわからないけど、この経験でリサや友希那だけじゃなく、紗夜と本気で話したり、燐子やあこと仲良くなったり……ああ、そうねこの口調のおかげで性格も昔よりは明るくなったの。美咲と話をしたり、花音って迷子を探したり、なんなら弦巻の黒服と殴り合った事もあったわね」
「ちょっと待って、後半アタシ知らない。え? 黒服の人と殴り合ったの!? しかも花音と知り合い!?」
「正確には暴走して美咲もといミッシェルを危険に晒しそうになったからこころを説得したのよ。その途中で怒鳴った私が黒服に危険人物と誤解を受けてね。あれは楽しかったわ」
「楽しくないよ、全然楽しくない」
「それに、私の憧れは偶々あった漫画のキャラクターなのよ。運命的な出会いだとは思わない?」
『テメェの安直な考えで、生き物を危険にさらすんじゃねぇよ!』
そんな自分の言った言葉を思い出す。我ながらよく弦巻の娘に言えたもんだとルナは苦笑する。
「まぁそんな訳でね、私は今満足してるのよ。偶々憧れた人がオネエキャラだっただけ。それも良かったのよ。後、自分のこの性格と口調にね。そう考えたら嫌味みたいに聞こえるかもしれないけど、友希那には感謝ね」
「……ルナ」
「そんな辛気臭い顔するんじゃないわよ……なんの話だったっけ? ああ、紗夜の話ね」
「そんな訳でね、あの経験が今紗夜と交流出来てるの。だから昔の私がムカついても、恨んでいても。今の私はムカついてないし恨まないわ」
「だって私達、あんな事があってもなんやかんや幼馴染じゃないのよ」
「……っ! ルナは……バンドに入らなかった事……アタシ達の輪から外れた事……どう思うの?」
「さっきも言ったわよ。あの時は悔しかったし、悲しかった。でも、今は違う方法で仲良く出来て、リサとも話せてるんだから、もう何も言わないわ」
そう言って笑うルナにリサは涙を流した。
「姉のアンタが泣いてるんじゃないわよ」
「……うぅ、だって……ごめんね、ごめんね! ルナぁぁぁぁぁ!!」
「……全く、家族や仲間思いなお嬢様だこと」
そう言ってルナはリサの頭を撫でたのだった。
「……ルナ……私も……っ!」
そして、リサをあやすのに意識を向けていたルナは鍵の開いていた玄関から入った1人の少女の言葉に気が付かなかった。
オマケ
「わぁ! この眼帯付けた熊可愛いよルナ兄!」
「……これは! NFOの超激レア装備の手袋!?」
「……ポテトの被り物をした犬……」
「……にゃんちゃーん!」
「喜んでくれて何よりだわ」
「ねぇ、ルナ。何でアタシだけ夏なのにマフラーで『nice boat』って書いてるの?」
「アンタにピッタリだからよ」
「冗談じゃ無いよ!?」
「発音が違うわよ。冗っ談じゃ、ないっわよ! って感じのリズムよ」
「知らないよ!?」
その数週間後、Roseliaに編んだものをあげたルナであった。
(……ルナがこうして、私達と向き合ってくれているのだから……私もいつか話さないといけないわね)