リサ姉の弟はルナ姉?   作:初見さん

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 ルナ君のモデルはあの海賊オカマですけど、男口調になる頻度とか、迷いや闇を抱えてる部分とかは割と人間らしくなる様にしてます。


紗夜×ルナ、過去編

『何辛気臭い顔してんのよ』

『気持ち? そんなの分かるわよ。あの時……私が踵を返した時、アンタもいたじゃない。所詮男は女になれないのよ」

『アンタにはまだ可能性がある。天才と凡人でも、アンタは努力して追いつこうとしてるんでしょ? だったらいつか越えられるわよ』

『まぁ、私は無理だけどね。男と女の壁はそれよりも不可能なんだから』

 

 そんな彼の台詞には一つ一つ重みがあった。

 

 ♪♪♪ 

 

 そもそも私が彼……今井ルナさんと出会ったのはRoselia結成中の時だ。

 湊さんと今井さんから話は聞いていた。特に今井さんからは自分の弟で、いつも自分や湊さんそして今井さんの三人が仲良く出来るように、色んな話をしてくれていたと。楽しい事をしてくれたと。そう話していた。

 

『リサ、友希那。新しいメンバー見つけたんだな』

 

 そう言って微笑んだ彼は私達と同じ花咲川の制服を着ていた。今井さんとは高校が違うのでRoseliaを組まなければ私は彼の事も最初は知らなかったのだ。

 

『友希那、頑張ってな。俺はお前の歌好きだからさ』

 

 そんな優しい言葉をかけた彼。当然私は湊さんがお礼でも言って終わるのかと思っていた……でも、

 

『貴方には関係無いわ。ルナ』

 

 なんて事を言うのだろう。そう思った。そこにルナさんが少し苛立ちながら湊さんに反論をしていたが、最後は湊さんが言葉を言って終わった。

 

『楽器も弾けない男の貴方じゃ私達の邪魔になるだけよ。分かったら帰って』

『もう一度言うわ。Roseliaはガールズバンドなの。男の貴方は要らない。ルナは私の、私達Roseliaには必要ない』

 

 その一言で、彼は踵を返した。あの場に残された私達は、彼らの事をRoselia五人中二人しか知らなかったのだ。

 しばらくしてから湊さんの話を今井さんから聞いた。湊さんのお父さんのバンドの話、そこで今井さんはベースで湊さんの力になる。でも、楽器を弾けない彼は別の方法……即ちコミュニケーションなどで力になろうとしていた事。もしも今の私ならきっと何か知恵を出していただろう。でも、私もその時は病んでいたのだ。

 私の妹、氷川日菜との圧倒的な実力差と私の真似をしてギターやバンドに手を出した事。それに私は嫉妬や苛立ちを覚えてガムシャラになっていた。

 そして、ある日私が日菜や宇田川さんに怒鳴って、大雨の中歩いていた時にまた彼と会った。

 

『……あら? アンタ確かRoseliaのギターの子よね? 何辛気臭い顔してんのよ?』

『……ナンパですか?』

『ほら、私よ! リサの弟よ! 今井ルナって言ったら分かるかしら?』

『……は?』

 

 意味がわからない。彼は男で、こんな口調では無かったはずだ。でも、そこにいたのは前に踵を返して眼に涙を浮かべていた彼、今井ルナであった。

 

『ふざけてるんですか?』

『この口調の事を言ってるのなら真面目だと答えるわ。少し憧れた人物がいてね。その人の口調なのよ』

『それで? アンタは何してるのよ?』

『放っておいて下さい』

『釣れないわね、お生憎様この土砂降りの中で傘を差さない女の子を見捨てるほど腐ってないのよ私は』

『心配はありがたいですけど結構です。貴方には私の気持ちなんて分からないでしょうから』

『そりゃ言われないと分からないわよ。馬鹿みたいに考えるな察しろなんて馬鹿のやる事だしね。言葉使えるなら言葉使いなさいよ。アンタウチの学校で学年一位じゃない』

『……っ!』

 

 彼の言葉に私はつい彼の胸ぐらを掴んでしまった。

 

『あらあら、別に私はアンタを挑発したつもりは無いんだけど。事実を言っただけなのにそこまで怒るなんてクールビューティーなアンタらしくないわね。女は笑顔が1番よ?』

『笑える訳ないでしょう! 散々私を馬鹿にして、貴方は何をしたいんですか!?』

『アンタに何があったか聞きたいだけよ。そもそもこんな土砂降りの中にいる時点で、家出とかの可能性を考えたらリサに頼んで家に来させないと私がリサに怒られるのよ。私がアンタを知らなくても、リサからすればアンタはバンドメンバーだからね』

『……余計なお世話です』

『家族も心配するじゃない。親とか……()さんとか』

『……っ! 日菜の話をしないで!』

『……え? 何よ急に……』

『なんなのよ! みんなして日菜日菜日菜日菜! 私だって……日菜に負けたくない! でも……追いつけない! もう……限界なの……日菜なんて……あの子なんて! いなくな『おい、それ以上言うんじゃねぇ!』……!』

 

 彼の突然の大きな声に驚いて言葉が途切れる。

 

『妹のこと言ってんなら口に気をつけろよ。お前が、唯一の姉のお前が、1番言っちゃいけねぇ言葉を言うんじゃねぇよ』

 

 その時の彼の表情はきっと忘れられないくらいに怒っていた。それと同時に私がとんでもない言葉。言ってしまったら取り返しのつかない事になってしまう言葉を言おうとした事を自分自身が分かってしまった。

 

『……お前が仮に家族の誰かを恨んで、悔やんで、嫉妬して、何を考えたとしてもだ。言葉は凶器で、言った自分もその後後悔して、狂気になる。だから、いなくなれなんて、死んでも言うな』

『……貴方に、天才の妹と比較される私の気持ちが分かりますか? 分からないでしょ!』

『分かる……わよ』

『……え?』

『気持ち? そんなの分かるわよ。あの時……私が踵を返した時、アンタもいたじゃない。所詮男は女になれないのよ」

『アンタにはまだ可能性がある。天才と凡人でも、アンタは努力して追いつこうとしてるんでしょ? だったらいつか越えられるわよ』

『まぁ、私は無理だけどね。男と女の壁はそれよりも不可能なんだから』

『……それとコレとは話が違うのでは?』

『確かに厳密に言うと天才と凡人の壁の話は私にはわからないわ。私が悩んでいるのは男と女の壁だからね。でも、その壁を必死こいて埋めようとしている者同士何か分かるんじゃない?』

『……あ……』

 

 その時に思い出した。彼が湊さんに傷つけられた事を。彼はその後、どんな想いでこの口調を目指したのか、何でこんな話し方をしているのか分からないけど、彼も私みたいに悩んで、泣いて、悔しくて、それでもどうにかしようとしていたんだと思う。結果、彼の口調や性格が変わったのだから。

 彼はさっき言ったのだ。

 

【この口調の事を言ってるのなら真面目だと答えるわ。少し憧れた人物がいてね。その人の口調なのよ】

 

 そんな言葉を発した彼の表情は笑っていたか? おちゃらけていたか? 冗談で言っていたか? 全て否。彼は本気の声のトーン、表情で言っていた。

 

『別に私のこと信用しなくてもいいのよ。でもね、うちの姉、リサに相談してみなさい。あの子は凄いわよ。誰とも仲良くなって、みんなの悩みを聞いて、笑顔にしちゃうんだから。だから女なら女同士で話すのも一つの手よ。私は一人で結論出せたけど、貴方には助けを出す人が必要そうだから』

 

 そう言って彼は私に手を出した。

 

『ずぶ濡れじゃない。リサが面倒見てくれるからうち来なさいよ』

 

 そう言った彼の優しい微笑みは生涯忘れる事は無い。だってその時の笑顔は、微笑みは慈愛の女神の今井さんすらも超えられるくらい安心できる、そんな笑顔だったから……だから私は彼の手を……

 

 ♪♪♪ 

 

「紗夜! 後ろ行ったわよ!」

「私に命令しないで下さい! 寧ろもっと貴方が動いて下さいよ!」

「冗談じゃないわよぉ! 何で前衛の私が気が狂ったかのように動き回らないといけないのよ!」

「前衛ならドロップくらいして下さいよ! なんでスマッシュしかしないんですか!?」

「スマッシュは……漢のバドミントンを示すためのものなのよ!」

「『漢のバドミントン』の部分だけやたら素のイケメンボイス出さないで下さい!」

「……イケメンとか……照れるじゃねぇか」

「口調変わってますって! ほらスマッシュ来た!」

「危ねぇ!?」

「だから言ったじゃない! 何してんのよ!」

「うるさいわねぇ! 私がどんなプレーしようが勝手でしょ!?」

「ダブルスで個人プレーしないで頂戴! だから貴方と組みたく無かったのよ……」

「くじを恨みなさい! 知らないわよぉ! 私だってアンタと組む気無かったのよぉ!」

「……市ヶ谷さん……」

「何ですか? 燐子先輩」

「……ルナさんが男の口調になってるのって怒ってる時と、氷川さんと話してる時以外ありましたっけ……」

「無いですね。何なら氷川先輩がタメ口になるのもルナ先輩相手しか聞いた事ないです」

「……これってもう……」

「考えることは一緒ですね、燐子先輩」

「「何で付き合って無いんだろ(でしょう)??」」

 

 そんな過去を持った氷川紗夜と今井ルナはバドミントンダブルスで口喧嘩しながら得点を稼ぎ続けた。因みにダントツで優勝したらしいが、試合中に何度か

 

「「冗談じゃないわよぉ! (じゃありませんよ!)」」

 

 なんて息ぴったりの声が聞こえたそうな。

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