「はい美咲、この前作ったミッシェルのフェルトよ」
「え? これルナさんが作ったんですか?」
「そうよ? 何か悪いかしら?」
「いえ、あたしより上手なので驚いただけです。教えたのほんの数ヶ月前なのに……女として負けた気がします」
「性別や得意分野に勝ち負けなんかないわよ。出来るものを最高まで出来るようにするのが私のモットーだからね。狭く深くよ」
「そう言うもんですかね?」
「そう言うもんだと私は思うわよ。男だから、女だから、天才だから、凡人だから、そんな理由で物事や趣味を縮小されるくらいならこんな世界踏んづけてやるわ!」
「なんか、前よりも逞しいですね。いや、黒服さんと殴り合ってた時も逞しかったですけど……」
「あんなのアイツらが悪いじゃない。こっちは真剣に美咲の命を……失礼、あの時はミッシェルよね。ミッシェルの命を考えてこころに注意したのに、あのバカどもが勘違いして襲ってきたからね。正当防衛ってやつよ」
「正直、肝が冷えました」
♪♪♪
ルナが
『アンタ危ないわね、どうしちゃったの下なんて向いて?』
『……ごめんなさい……寝てなくて、ぼーっとしてました』
『寝なさい』
『……え?』
『寝なさい! 夜ふかしはお肌の敵よ!』
『え? あ、ちょ、え!?』
ルナはそう言って美咲を抱えて保健室へ向かった。
『……んん……あれ? あたし』
『あら、早かったわね目を覚ますの』
保健室に運んだ瞬間美咲はすぐに目を閉じた。美咲が目を開けると、茶髪の短髪で身長が170程の男が立っていた。口調はオネエである。美咲は困惑していた。
『……アンタベッドですぐ寝たのよ。全く、そんなに眠いなら寝ればいいのに。何してんのよ?』
『……すみません、ご迷惑おかけして』
『別に良いわよ。寝坊助の銀髪幼馴染をよく運んでるから。それで、何があったの?』
『……少し命に関わる考え事を』
『……え? 生活厳しいの? 自殺とかするもんじゃないわよ?』
『ああ、いえ、そう言うわけじゃなくて、いや……でも殺されるのかな?』
『穏やかじゃないわね。ここで会ったのもなんかの縁よ、言ってみなさい』
『……実は』
美咲はルナの言葉を聞いて話をする。
美咲のバンド『ハロー、ハッピーワールド!』のリーダーからミッシェルの着ぐるみを着て、ヘリコプターで空を飛び降りる演出を提案された事、そのこころはかのお金持ち
『……頭イカれてるわね』
『ですよね……説得しようにもこころは聞く耳持たないし……』
『なら私が言おうか?』
『無理ですよ、知り合いのあたしでも聞く耳持たないのに、赤の他人の貴方なんて……』
『分かってないわね。赤の他人だからこそ言えることもあるのよ』
『……はい?』
『そのこころってやつの所に案内しなさい。踏んづけてやるわ』
『いや、踏んづけたら黒服さんに踏んづけられますよ? 貴方が』
『本気でそれをやる気はないわよ。ちょっと灸を入れるだけだからね?』
そして、すがれる人もいなかった美咲は疲れからか彼をこころの元に連れて行ったのだった。
♪♪♪
『単刀直入に言うわ。ヘリコプターの空中ダイブをやめなさい』
『どうして? みんなが笑顔になるならそれで良いじゃない?』
弦巻家に連れられたルナはこころに言うがこころは質問で返した。
『仮にお客さんが笑顔になってもみさ……ミッシェルに何かあったらどうするの?』
『ミッシェルなら大丈夫よ!』
『どこからその自信が来るのよ?』
『ミッシェルだからよ! ミッシェルは何をしても平気なの!』
『……こころ……』
ルナの質問に純粋な眼で答えるこころがいた。ルナは確信する。この子は、この弦巻こころという人間はあまり闇を知らないと。大方黒服がワザとそういった事を隠しているのだと。そして隣には少し悲しそうな、諦めかけている、そんな眼をした美咲がいた。
『お生憎様だけどね、ミッシェルも元々は熊なのよ。貴方動物が死んじゃった事件とか知らないでしょう?」
『ミッシェルだって無敵の存在じゃないのよ。ヘリコプターから飛び降りて、仮に縄とかで繋がっても、何かあって落下でもしたらどうするの?』
『でも、ミッシェルなら……』
『……ふざけんなよ金髪』
『え?』
『ちょっと、ルナさん!? それ以上は……』
その言葉でルナはキレた。美咲の言葉も彼には聞こえない。
『何がミッシェルならミッシェルならだよ。お前がそう思ってるだけでミッシェルの気持ち考えたことあんのか? 絶対に死なないなんて、危険じゃないなんて言えるのか? そりゃお前には黒服の人がいるからなんとかなるだろうさ。でもよ、ミッシェルだってお前の奴隷じゃねぇんだ。仲間なんだ。友なんだ。仮に何とかなっても、友を危険に晒す事をやって良いと思ってんのか?』
『テメェの安直な考えで、生き物を危険にさらすんじゃねぇよ!』
その時、ドアが急に開き、何人かの黒服が現れた。
『貴様! こころ様になんて口を聞いているんだ!』
『ルナさん! まずいですよ!?』
『……テメェらが黒服か。まずはアンタらから説教してやるよ』
『黙れ!』
『黙んのはテメェだよ! 何が黒服だ、何がSPだ! 黒服の役割がこころ……コイツを守る事なのは分かる。でも、それと同時にこいつにやっちゃいけない事とか、危ない事とか、忙しい親の代わりに教えてやるのがお前らの仕事の一つじゃねぇのか! コイツが安全に生活するために見張るのは良いけどよ、そう言うの教えないといつまでもお前らにおんぶに抱っこのガキだぞ!』
『仕事しろやテメェらぁぁぁぁぁ!!』
『貴様黙って聞いてれば……こいつをくらえ!』
『遅いわよぉ!』
キレたルナに対して銃を向けた黒服の一人にルナは飛び蹴りを食らわせる。
『美咲! 離れてなさい』
『いや、でもルナさんが……』
『
『お前ら、行くぞ! あのオカマを止めろ!』
『……かかって、こいや』
そう言って、ルナは黒服の元に走り、殴り合って、最後は取り押さえられる寸前で……
【バァン!】
そんな乾いた銃声が一発、響いたのだった。
♪♪♪
「まぁ、波瀾万丈だったわね」
「ルナさん回想止めるとこおかしいです。この話だとルナさんが撃たれてます」
「撃たれたのはミッシェルだけどね」
あの時黒服が銃を向けた時、咄嗟にルナはしゃがみ込んで事なきを得た。だが、黒服が放った銃の弾が置いてあったミッシェルの着ぐるみに当たり、こころがそれを見てしまったのだ。そこからこころを落ち着かせるのに必死になった黒服達。
そこにルナは
『因果応報ね。今までそう言う知識に手を出させなかった貴方たちの責任よ。後は、美咲と話し合いなさい』
そう言って部屋を出て行ったのだ。
「正直拳銃が怖かったから退散しただけだけど、何とかなって良かったわ」
「勘弁して下さいよ。あの後こころを宥めるの大変だったんですから。……でも、ありがとうございました」
「気にしないで。
そう言ったルナに美咲は聞いた。
「そういえばあたし達っていつから友達になったんですか?」
「そんなの出会って話した時に決まってるじゃない。もし
「でも、あの時そんなに出会って時間も経ってないですよね?」
「
「美咲! ルナ! 何を話してるのかしら?」
「「こころ!」」
ルナと美咲の会話に入ってきたのは弦巻財閥の御令嬢にして、ルナが叱りつけた相手、ハロハピのボーカル
「美咲との出会いを話してたのよ」
「あら、そうなのね……ねぇルナ? まだ怒ってる?」
「なんでよ?」
「あたし、ルナに謝ってないわ。世界やみんなを笑顔にするって言って、ミッシェルを笑顔にしてなかったから。それをルナは教えてくれたわ」
「謝って来なくたって良いのよ、こころがミッシェルのためを本気で考えるようにしてくれたなら私も言うことはないもの」
「……あの時はごめんなさい。ルナ」
「良いわよ。別に。そのかわり、今度ライブ見せてくれるかしら? 私ミッシェルの火の輪くぐり見たいわ」
「殺す気ですか!?」
「ヘリコプターダイブよりは安全よ。男見せなさい、ミッシェル」
「ミッシェルは女ですけど」
「ミッシェルはミッシェルよ? そうでしょう? こころ』
「……ええ、そうね! ルナ、今度ライブに招待するわ!」
「ええ、友のライブ楽しみにしてるわよ!」
「……友……かぁ、まぁこういう関係あたし好きかもね……これからもよろしく、ルナさん」
そんな三人の会話は放課後に美咲とルナが羊毛フェルトを完成すると同時に終わったのだった。
オカマ道、『道』と書いて『ウェイ』と読むのは天才ですか。