「あら、紗夜奇遇ね」
「……その挨拶文章にしたら一瞬ルナさんと間違えますよね」
「……確かにそうね」
スタジオのカフェスペースにて、Roseliaボーカル湊友希那は同じバンドメンバーギター担当の氷川紗夜と会った。
「湊さんは自主練ですか?」
「ええ、そうよ。見た感じ紗夜もそのようね」
「ええ、と言ってももう終わらせてこれから別の所へ行きますけど」
「ルナとどこ行くの?」
「……なんでルナさんが出てくるんですか?」
「ルナと紗夜はセットのイメージがあるわ。それにルナも今日待ち合わせするって言ってたから貴方と待ち合わせかと思ったのだけど?」
「少なくとも私では無いですね。私は日菜と待ち合わせなんです。仕事が午前中に終わるらしいので」
「そう、じゃあルナは誰と会うのかしらね」
「知りませんよそんな事」
「奥沢さんかリサのどっちかかしらね」
「……今井さんはともかくどうして奥沢さんが……」
「あら? 聞いてないの? あの二人羊毛フェルト? とか編み物をしてお互い交換する仲らしいわよ。花咲川でカップルみたいに聞いた事あるけど」
「……へぇ、そうなんですね」
そう言って眉を動かす紗夜に友希那は微笑みながら言った。
「……紗夜って分かりやすいわよね」
「何がですか?」
「好きじゃないの? ルナの事」
「……はぁ!? 私が? あのオカマとですか?」
「確かに日菜の件ではお世話になりましたし、その後も何かと気にかけてくれたり、なんか知らないですけど近寄りづらいとか言われてる私とペア組んでくれたり編み物をプレゼントしてくれたり、最近料理教えてくれたりしてルナさんの家にお邪魔させて頂いたことがありますけど! ありますけど!」
「……続けなさい」
「それでも、口を開けば文句ばっかりで自由気ままで口喧嘩が絶えない人ですよ! オマケに最近私の顔色見て熱あるとか体調不良を当ててきますし、日菜とも仲良くしながら私の事を蔑ろにしないで構ってくれますし、あ、そう言えばこの前ルナさんとペットショップ行って子犬見てきたんです。見て下さい可愛いですよね。子犬に舐められてるルナさんも良いですけど犬の方が数百倍可愛いです。後これ、ルナさんと初めてプリクラというものを撮ったんですけど、やっぱり手慣れてますね。今井さん達とよく撮ったんですかね?」
「完全に語るに落ちてるわね」
「……何がですか」
「今言ったこともう一度思い返しなさいよ特大ブーメラン」
友希那の言葉にしばらく黙って、その後すぐに彼女は顔をtomatoにした。
「ちちちち、違いますよ!? 別にルナさんが好きとかそんな話じゃなくて……」
「じゃあ嫌い?」
「……嫌い、では無いです」
「好きかしら?」
「……」
「そう、首を縦に振ってくれただけでも良かったわ」
「……湊さん」
「何かしら?」
「湊さんは、ルナさんの事好きですか?」
紗夜がそう聞くと友希那は少し考えて言った。
「……ええ、大好きよ。と言っても幼馴染としてだけど。でも、私にはそんな事を言う資格なんて無いから」
「本当の詳細はあまり知らないんですけど……あの時の事ですか?」
「……ええ。感情的になって言った言葉とはいえ、今まで私達のことを真剣に考えて、距離が出来ないように振る舞ってくれて、リサの弟なのに、まるでお兄さんの様だったルナをあんな事にしてしまったのは、他でもない私だから」
「私があんな事を言わなければ、ルナはあんなオネエ男子じゃなく、男の人として、私達と向き合ってくれたかもしれない。でも、今のルナは……昔のルナじゃない」
「この間リサの家に忍び込んだ時、リサが泣いてたわ。でも、ルナは許してた。しかも私に感謝するって言うのよ」
「…・本人は満足しているそうですけど」
「それでも、その人格を、彼の大切な物を奪ったのは、私のせい」
そう言う友希那を見て紗夜はあの言葉を思い出す。
『お前が、唯一の姉のお前が、1番言っちゃいけねぇ言葉を言うんじゃねぇよ』
それを紗夜に言えたのは、大切な幼馴染から言ってはいけない言葉を言われたルナだからこそ言える言葉だったのだと、改めて考えた。
「……何辛気臭い顔してんのよ」
「……え? 紗夜?」
「なんて、あの人だったら言うんじゃないですか?」
「湊さんは確かにルナさんに取り返しのつかない事をしました。でも、それは取り返せないんですかね?」
「取り返す?」
「私も日菜に対して酷い扱いをしました。でも今はこうして修復できています。なんなら今も修復段階ですけど、日菜は楽しそうですよ」
「湊さんもルナさんと修復出来ると思いますよ。根拠は、ルナさんが貴方を許しているから。それだけでも大きいと思いますけど」
「……でも」
「でももなんでも無いでしょう? 湊さんが後ろめたいと思ってても、彼は湊さんに近づきますよ。だったら、腹括るしか無いのでは?」
「……そうね」
少し出た涙を袖で拭いた友希那は紗夜を見て言う。
「ありがとう紗夜。私謝るわ。ルナは許していても、私はまだルナと面と向かって本気で謝って無いもの」
「ええ、頑張って下さい」
「私がルナと和解したら、ルナを紗夜に上げることにするわ」
「要らないです」
「……本当に?」
「……頂きます」
「素直な子は好きよ私」
「なんだかルナさんが言いそうですね」
「狙って言ったもの」
「不思議な人ですよね、彼は」
「ええ、自慢の幼馴染だわ」
「……慈愛の女神の弟ですか。今井さんが羨ましいですね」
「姉弟は結婚出来ないわよ」
「け、結婚!? そそそそ、そんなつもりでは……」
「フフッ」
そんな会話をして二人は別れたのだった。
オマケ
「ブェクショイ! ……なによ、誰よ私のオネエ男子
「え? ルナってオネエ男子扱いだったの!?」
「知らないわよリサ、私はとにかくこの口調が良いだけ。オネエとかオカマとかどうでも良いわ! でも、自称オネエ系男子名乗ってもいいとは思ってる」
「……なんか凄いねルナって。料理はアタシと同じくらいだけど編み物とフェルトとかの衣装作り的な事はアタシよりも上手いし。ルナってもしかして良い意味で変態?」
「あのRoseliaでベース弾いてるアンタの方がど変態だと思うけどね。まぁ、褒め言葉として受け取っておくわ」
「そう言えば今日何食べる? 折角外いるから外食する?」
「それならファストフード店行きましょう! 新作のポテトが今日から始まるって紗夜から聞いたのよ!」
「……ねぇ、本当に紗夜と付き合ってないの?」
「しつこいわね、付き合って無いわよ。ちょっと馬があって、るんってしてるだけよ」
「燐子から聞いたけどこの前も卓球ダブルスで優勝したんでしょ? 紗夜と何回タッグ組んだの?」
「10から先は覚えてないわね」
「だから美咲と紗夜でオカマの正妻戦争とか言われるんだよ」
「うるさいわね、言わせておけば良いのよ。美咲とは
「紗夜は?」
「あの子は……友には勿体無いわね。相棒とかじゃない?」
「ふーん……まぁ、そう言う事にしとくね」
「何よそれ……まぁ良いわ、行くわよリサポテト食べに」
「はいはい……紗夜もアレだけどルナも分かりやすいよね……気づいてないけど紗夜の話してる時声のトーン明るいし……」
「何より耳、真っ赤だよ」
「何よ? なんか言った? リサ」
「何でもないよ! ほら、ポテト食べに行こう!」
「コラ! 危ないから腕引っ張るんじゃねぇよ! ……全く、どっちが姉か分からないわね」
「アタシだよ」
「よしよし」
そう言ってルナはリサの頭を撫でながら姉弟デートをするのだった。