「ねぇ、ルー君はいつあたしのオネエちゃんになるの?」
「一旦貴方のアクセントを叩き直す必要があるわね。後ここ花咲川よ? 貴方の通っている羽丘学校じゃないけど」
花咲川高校にて、ルナが話しているのは、水色と緑が入り混じっている綺麗なショートヘアーで、犬のように人懐っこくルナに話しかけている紗夜の妹、
「えー? 別におかしくないじゃんルー君オネエでしょ? 後、今日は燐子ちゃんと生徒会の打ち合わせなんだ!」
「なるほどね……まぁ、間違っちゃいないけどオネエ系男子を自称してるだけで別に本場の方とは訳が違うわよ? やってる事にわかだしね」
「にわかの人がここまで家庭的で花咲川の慈愛の女神とか言われないと思うよ」
「え? 何私そんなあだ名つけられてたの?」
「因みにおねーちゃんはルー君の旦那さんだよ! おねーちゃんが働いて、ルー君が専業主婦してる予定!」
「そんな予定は消しなさいよ。紗夜が働くなんて冗談じゃないわよぉ」
「じゃあルー君がはたらくの?」
「ええ、そうね……ってなんで私と紗夜が結婚する前提なのよぉ! 意味わかんないわ」
「でもルー君おねーちゃんと相性良いじゃん。この前の体育、二人三脚で100メートル何秒?」
「15秒よ」
「全力疾走だよね。よく転ばなかったね」
「大変だったわ。あの子遅いんだもん。ちょっと速めたら「貴方には人の心が無いんですか! 鬼、悪魔、ルナ!」って失礼しちゃうわね。私は鬼でも悪魔でもないわ、オネエよ!」
「本当に仲良いよね」
「アンタだってPastel*Palettesのピンクとかと仲いいじゃない。
日菜はアイドルである。最近になってデビューしたPastel*Palettesというアイドルバンドのギターとして活動をしており、同じボーカルのフワフワまんまるお山のピンク、丸山彩とは仲がいい。だが、日菜が言いたいのはその事ではなかった。
「そうじゃなくてさ……おねーちゃんの事だよ」
「紗夜? また喧嘩したの?」
「いや、そうじゃなくて……おねーちゃんを救ってくれたのはルー君だから」
「救う? 何意味不明な事言ってんのよ。私はメシアでもなんでもないわ。あの子が勝手にイラついて、自爆しただけよ。でも、たった一言、あの子が、紗夜が言ってはいけないことを言おうとしたから、それを止めた。私はオネエなの、オカマでもいいけど。だから私は救うとか、そんなつもりは無かったのよ」
「それでも、ルー君のおかげであたし達は仲直りできた。結果論でも、それがルー君のおかげなのって変わらなくない?」
「そう思ってんならありがたく受け取っておくわ。ただし、アンタの中ではね。私はただムカついたのよ紗夜に」
「ムカついた?」
「ええ、私とリサは男と女で方やRoseliaのベーシスト、方やただの一般人よ。同じギターが弾けて、妹に負けないようにしているなんて私からしたら憧れで、羨ましくて、でも、日菜に勝てないからなんて聞いたらそりゃムカつくわよ。贅沢すぎだろアンタ! ってね」
「……ルー君」
「でも、紗夜が一回さり気なく言ったセリフ「今井さんと仲が良いんですね」なんて言われたら、所詮私の考えって隣の芝生だったって事なのよ」
「私は切磋琢磨できる氷川姉妹が羨ましいけど、氷川姉妹はいつまでも仲が良い私とリサが羨ましいってね」
「だから今はムカつかないわ。友希那の件もそうだし、紗夜の事も、今ムカついていい事なんてないじゃない。だったら割り切って、私は前を進むの。やれることをやるのよ」
「それを私に教えてくれたのは、この口調で喋る、ある漫画の敵だったオカマキャラだったけどね。でも、あの人は真っ直ぐで仲間想いで、一度友になった人を助ける。そんな姿に憧れたの。厨二病だと笑えば良いわ。でも、私はそんな人になりたいのよ。心からね」
そう、言った。それを聞いて日菜がどう思ったか分からないが、真剣に聞いている姿から、彼を揶揄う事なんて無いと確信できる。
「……ルー君は今まで後悔とか無いの?」
「あるわよ。あの時もう少し私が……とか。あるけど、そんなの考えるより、それを反省して生きる方が、きっと楽しいわよ。私はそう信じているの」
「無理矢理とは言わないけど、後悔したなら取り返せば良いのよ。誰かを傷つけたのなら、ごめんなさいって言って、また修復出来るならそうすれば良いの。そこから友が増えるのよ。それが、オネエ
その微笑みに、日菜は眼を見開いて、やがて笑いながら言った。
「……アハハ! やっぱりおねーちゃんにはルー君みたいなオネエちゃんが似合うよ!」
「何を言ってんのよ?」
「……おねーちゃんに言わないと、こんなに良い男の人なんていないってね」
「なんか言った? 文句ならはっきり言いなさい。喧嘩なら買うわよ」
「文句じゃないよ! ……ルー君、ありがとう!」
「なんで急にお礼なんて……」
「そりゃ、るん! って来たから! やっぱりルー君はカッコいいよ、るるるんってする!」
「……そう、ありがとう日菜」
そんな会話をして、ルナと日菜は別れるのだった。
おまけ
「なんでアンタと別れたばっかなのに生徒会の仕事しないといけないのよぉ! 冗談じゃないわよぉ! 私関係ないじゃない!」
「市ヶ谷さんが……また体調不良なんです」
「市ヶ谷この野郎ぉぉぉぉ!!」
「うるさいですルナさん」
「アハハ! ルー君やっぱ面白い!」
「早く……仕事して下さい……じゃないと……氷川……紗夜さんが……ルナさんとデートに行く羽目になりますよ?」
「ちょっと待ちなさいよ!? なんで私がこんな堅物とデートなんて……」
「堅物で悪かったですね!? 私こそこんな男でも女でもない人お断りですよ!」
「はぁ!? 何よ貧乳のくせに!」
「な!? 人の身体的特徴をバカにするとは、やはり貴方人の心が無いわね!」
「うるせぇ! 性別を弄るのも人の心がねぇだろ!」
「少なくとも貴方よりは人間です! これ以上言うと踏んづけますよ!」
「それはこっちのセリフよ! アンタこそ踏んづけて……あ、そこ漢字間違えてるわよ」
「せめて最後まで行ってくださいよ……ありがとうございます。あ、そういえば昨日借りた消しゴム返しますね。助かりました」
「そんなのお礼言われるもんでもないわよ……あ、昨日貰った弁当箱洗ったから返すわね。最近上達してるんじゃない? 正確に目分量測るのも良いけど、アレンジとかも大事よ。卵焼きにレモンかけたのは中々斬新だったけど美味しかったわ」
「お礼言われることでもないですよ。私もルナさんに料理教えてもらってる身ですし、お礼は私が言う方です」
「いいえ、食べさせてもらったんだから私が……」
「いえいえ、そもそも最初に作って貰った私が……」
「……テメェらもう付き合えよ……あ、日菜さん、ここハンコお願いします……」
「燐子ちゃん、キャラぶっ壊れてるよ。でも、あたしも思う」
「「結婚しろ」」
「「はぁ!? 冗談じゃないわよぉ(じゃありませんよ)!?」」
白金燐子はやっぱり強い。