バカとテストと男の娘?   作:清水樹

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問13 Aクラス戦前日

「あー、皆聞いてほしい」

 

SHR前、皆が教室に揃った頃。雄二が前に出てきてそう言葉を切り出した。

なんだろう? そう思って僕は耳を傾ける。

 

「何個か言うことはあるが…まずはお前達のおかげでここまで勝ち続けることが出来た。ありがとう」

 

…雄二が頭を下げてお礼を言った…。今日は雨でも降るのかな…?」

「……途中から声が出てる」

「え? ほんと? どこから声出てた!?」

「今日は雨でも降るのかな…ってところからじゃな。…まぁ気持ちは分かるがのう」

「……確かに珍しい」

「お前ら…好き勝手言いやがって」

 

…いやぁ、失敗したなぁ。声出ちゃってたなんて。気を付けないとねー。

 

「…そして次が本題だ。俺は昨日、Aクラスに宣戦布告した」

『は?』

 

皆の声が重なった。…まぁ、いきなりそんなこと言われたらびっくりするよねぇ。

 

「いつの間にしたんだ?」

「待てよ…? 誰も知らない…それはつまり坂本は昨日、Aクラス代表の霧島さんと密会したことに…」

『な、なにぃぃぃぃぃ! 許せん!!』

 

あれぇ…なんだか皆の後ろにどす黒い炎が見えるよ…?

 

「総員構えっ!」

「ま、待て! なんでお前ら須川の掛け声で上履きを構えてるんだ!?」

「黙れ! 男の敵め! 霧島さんと密会なんて羨ましいんじゃあ!」

 

…? なんで皆、怒ってるのかな。密会? どういうことなんだろう?

そう思った僕は、爆弾を投下してしまっていたらしい。

 

「翔子ちゃんとは幼馴染だから会うのくらい普通なのに。ねぇ、雄二」

『なっ、なにぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?』

「密会の上に幼馴染だとぉぉぉぉ!?」

「もはや…もはや許さんぞぉぉぉっ!」

「あ、明久ぁぁぁっ!? 余計なこと言うんじゃねぇぇぇぇっ!」

 

うーん…? なんでか余計に怒りが増してしまったようだ。

 

「……これはひどい」

「まぁ…これが明久じゃからのう…」

「あはは…」

 

秀吉達は何故か苦笑いしてるし…。

 

「うおぉぉぉぉっ!坂本ぉぉぉぉぉ!」

「いい加減にしやがれぇぇぇぇぇっ!」

 

「…さて、これを止めねば話が進まないのう」

「…これ、私達で止められるんでしょうか」

「……明久」

「へ? これを僕が? 無茶言わないでよ!?」

「……大丈夫だ。…明久が言えば止まる」

 

…え? そんなわけが…。

 

「すぅー…皆! そろそろ止めて雄二の話聞こうよ」

 

とりあえず言ってみたけど…。

 

「そ、そうだな」

「アキちゃんが言うなら…」

「命拾いしたな。坂本ぉ!」

 

…皆の動きがピタッと止まる。…ほんとに止まったよ。

 

「はぁ…はぁ…。な、なんだったんだ…」

「あはは…お疲れ様です」

「災難じゃったのう」

「ったく…明久のせいでひどい目にあったぜ…」

「えっ? 僕のせいなの!?」

 

…僕は助け船を出したはずなんだけどなぁ。

 

「明らかにお前の一言のせいだろうが」

「ま、まぁまぁ。落ち着きましょう」

「そうじゃぞ、雄二。明久がこうなのはもう分かりきっていることじゃ」

「……諦めが肝心」

 

…皆ひどくない…? 僕は雄二の方に恨めしそうな視線を送る。

 

「…あー…、とにかくだ。俺は昨日、宣戦布告した。そこで話し合った結果、Aクラスとの試召戦争は代表を選出して科目を指定しての5対5となった。何か質問はあるか」

 

…視線に気づいて露骨に話逸らしたね、雄二。

 

「なんで、今まで通りじゃなくて5対5なんだ?」

 

5対5なのは昨日聞いて知ってたけど…確かになんでなんだろう。

 

「…はっきり言って俺達がバカ正直に正攻法で挑んでもAクラスには勝てん。だから交渉してこのルールにさせてもらった」

「5対5にしても結局は変わらないんじゃないのか?」

「いいや、変わる。Fクラスには特定科目に限って言えば滅法強い奴がいるからな」

 

…なるほど。ムッツリーニの保健体育とかだね。

皆も一様に納得したようだ。

 

「なるほどな。姫路さんとアキちゃんとムッツリーニで3勝して俺達の勝ちか!」

「Aクラスも楽勝だな!」

「明日から俺達はシステムデスクだー!」

 

あー…雄二が凄く言い出しづらそうな顔してるなぁ…。

ここは僕から言うしかないよね。

 

「あー…皆、ごめんね? 僕はAクラス戦に出れないんだ」

 

『…へ?』

『な…なんだってぇぇぇぇぇぇ!?』

「どういうことだ、坂本!」

 

皆が騒ぎ立ててる。今にも雄二に掴みかからんばかり勢いだ。

 

「落ち着けお前ら! それにもちゃんと理由はある!」

「理由だと?」

「ああ、流石に一方的にこちらが有利になる条件は無理だったんでな。このルールを呑んでもらう代わりにこちらは明久が使えないことになった」

「…なるほど。それなら仕方ないな」

「じゃあどうするんだ?」

 

確かに…勝てそうなのは瑞希ちゃんとムッツリーニくらい…いや、雄二のことだから何か作戦があるんだろう・

 

「ああ、そこは問題ない。翔子とは俺が戦う」

「はぁ? 神童と言われてたって言っても落ちぶれた今じゃAクラス代表の霧島さんに勝てるわけ…うおっ!」

 

シャッ

…ドスッ!

 

雄二の投げたカッターが須川君の近くに刺さる。

 

「危ねぇじゃねぇか!」

「…まぁ、疑問も確かだ。だがそこで科目の指定が活きてくる」

 

だけど雄二は何事もなかったかのように話を続けた。

 

「ふむ? では雄二にもムッツリーニのような特異な科目があるということかの?」

「いや、俺の点数はほとんど同じくらいだ。得意なのも苦手なのもないと言っていい」

「じゃあどうするんだよ」

「簡単なことだ。科目を選択するって言うのは教科を決めるだけじゃない」

 

…どういうことだろう?

 

「俺が挑むのは日本史、しかも小学生レベルで100点満点の上限ありの召喚獣を使わない点数勝負だ」

「それじゃ決着つかないんじゃないのか? どっちも100点取るだろ」

 

確かに須川君の言う通りだ。決着なんて…、あっ…!

 

「…なるほどね。どっちも100点が当たり前。だからこそ些細なミスが勝敗に繋がるんだ」

「なるほどのう…集中力の勝負ということじゃな」

「…でも、あの翔子ちゃんがそう簡単にミスするかなぁ…」

「何言ってんだ。明久、お前も知ってるだろう? あいつが絶対に間違う問題を」

 

え? そんなのあったっけ? …小学生レベルの日本史で翔子ちゃんが絶対に間違う…ああ、あれかぁ!

 

「「大化の改新」」

「…大化の改新じゃと? 誰が何をしたかという問題かの」

「いいや、もっと簡単なところだ」

「……年号か」

「年号じゃと? だがAクラス代表がその程度、知らぬわけはないと思うがのう」

「ああ、普通ならな」

 

あの頃は僕も勉強は得意じゃなかったからねぇ…。

 

「…僕が嘘を教えちゃったんだよ。だから645年のところを翔子ちゃんは625年と覚えちゃってるんだ」

「えっ? でも普通はどこかで間違いに気付くんじゃ…」

「いや、翔子は一度覚えたことを忘れない。だから625年と覚えたのはもう忘れられないんだ」

「なるほどのう。ではメンバーはどうなるのじゃ?」

 

多分、秀吉・ムッツリーニ・瑞希ちゃん・雄二辺りは間違いないかな。あと1人は誰だろう?

 

「ああ、秀吉・ムッツリーニ・姫路・俺 …あとは、島田だ」

「…なんで島田さんが…(ボソッ」

「な、なによ。ウチじゃダメだっていうの」

「今までアキちゃんにどんな仕打ちしてきたか思い返してみろよ!」

「なっ! あれはアキがっ! それにそれはAクラス戦には関係ないじゃない!」

「まぁ、落ち着け。明久が使えないから代わりを考えたんだが代わりを出来そうな奴がいなかったんでな。要は誰でもよかったんだ」

 

そう聞いて一部除く皆は納得して美波ちゃんは怒りが増したようだ。

 

『なるほど』

「なっ、どういうことよ! ウチがアキに劣るっていうの!?」

「何を当たり前のことを言ってるんだ」

 

それは言いすぎじゃないかなぁ…雄二。

 

「ま、そこは気にするな。それよりも最後にもう一度ルールを確認するぞ。ルールは代表を選出して科目を指定しての5対5で科目選択権はこちらが3つ。Aクラスが2つだ。そしてメンバーは秀吉・島田・ムッツリーニ・姫路・俺だ。問題ないな?」

 

「うむ」

「わ、わかったわよ」

「……承知」

「は、はいっ!」

『おお!』

 

明日はついにAクラス戦だ…。僕は出れないけど、その分応援しないとね。

 

そして時は過ぎ翌日、ついにAクラス戦が始まる。

 

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