「第二回戦を始めます。2人目の方は前に出てきてください」
少しのインターバルを置いて、高橋先生が次の代表選出を促す。
次の相手は…。
そう思ってAクラスの方を見てみると、Aクラス側から前に出てきたのは眼鏡をかけたボブカットの女の子だった。
「島田。こっちはお前が行け …科目は選択するなよ」
「……ふんっ」
そしてこっちからは美波ちゃんだ。
雄二に科目を選ぶなって忠告されてたけど…あの様子じゃ大丈夫かなぁ…。
「それでは、教科は何にしますか?」
「教科はそちらで選んでいいですよ。どの教科でも負けませんし」
分かりやすい挑発だ。でも今の状態の美波ちゃんなら…。
「なっ、数学でお願いします!」
「…! おい島田、おまっ「承認します」…ちっ…!」
…やっぱり。挑発に乗っちゃうよね…。
雄二が止めるのも間に合わず、数学のフィールドが展開されてしまった。
「それでは、召喚してください」
「「試獣召喚ッ!」」
数学 Fクラス 島田美波 214点
「どう? ウチは数学ならBクラス並の点数が取れるのよ!」
美波ちゃんの召喚獣の点数が表示されると、美波ちゃんは勝ち誇った表情をしていた。
でも美波ちゃんはどこを相手にしているのか分かってるのかな…。
「確かに、Fクラスにしては凄いですね。…ですが」
数学 Aクラス 佐藤美穂 321点
「…私はAクラスなんですよ」
そう。相手はAクラスなんだ。Bクラス並の点数で敵うはずがない。
「そんなっ…」
「では、行きますっ!」
佐藤さんの召喚獣が美波ちゃんの召喚獣に一気に迫る。
佐藤さんの召喚獣の武器は鎖鎌のようだけど分銅が付いていない。その代わりに同じ形の鎌が鎖に繋がれている。
多分、手数や攻撃速度ではトップクラスと言っていいだろう。
「くっ…きゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」
それに対して美波ちゃんの召喚獣の武器はレイピア。
攻撃速度は速い方だけど…あの鎖鎌が相手だと流石に分が悪いみたいだ。
数学 Fクラス 島田美波 0点 DEAD
点数差もある上に手数まで圧倒的に差がある攻撃に対処出来ずに美波ちゃんの点数は一瞬で削り取られていた。
…あれ? なんだか美波ちゃんの様子がおかしい…。
「な…なんで…なんで召喚獣が攻撃されてウチが痛いのよ…!?」
召喚獣のダメージが美波ちゃんに? これじゃまるで…。
「それについてはワタシが説明してやるよ」
『(ババァ)学園長っ!』
うわぁっ!びっくりした!
僕の背後には、いつの間にか学園長がいた。
「どういうことなんですか!? これじゃまるで観察処分者みたいじゃないですか…っ!」
突然現れた学園長に、美波ちゃんが詰め寄る。
…そうだ。まるで僕みたいなんだ。
「今から説明してやると言っただろう。静かに聞きな」
そう言うと学園長は一瞬、僕の方を見てから美波ちゃんの方に目線を戻した。
「簡潔に言わせてもらうよ。吉井、あんたは観察処分者から外された。そして島田、昨日の職員会議であんたは観察処分者になることが決まったのさね」
「なっ…なんでウチなんですか!」
僕が観察処分者じゃなくなった…? …美波ちゃんが観察処分者に…?
「ああ、吉井を観察処分者から外すというのは前から考えていたんだけどね。代わりの適任者がいなかったんだよ。だがそこに島田の吉井に対する仕打ちの証拠が挙がってきた…それが島田、あんたが観察処分者になった理由さね」
「そ、それはアキが悪いんです!」
「黙りなっ! …西村先生。あとは頼んだよ」
「はい。…島田っ! お前には特別補習を施してやる!」
「そんなっ! 横暴です! 全部アキが悪いのに…っ!」
「まだそんなことを言うか! 来い!」
…美波ちゃんは有無を言わさず西村先生に強制的に引きずられて行ってしまった。
AクラスもFクラスも皆ポカーンとしている。
「…気を取り直して、第三回戦を始めたいと思います。3人目の方は前に出てきてください」
そんな中、高橋先生が場の空気を換えるかのように第三回戦を宣言した。
「…次は誰に行ってもらうか…」
「……俺が行く」
「わかった。ムッツリーニ 科目は選択していいから勝ってこい!」
「……承知!」
ムッツリーニが前に出て行く。それに合わせるようにAクラスから出てきたのは…。
「やぁ、土屋くん。君の相手はボクだよ」
愛子さんだ。きっと保健体育勝負になるだろうな。
「それでは、科目を選択してください」
「……保健体育」
うん。予想通りだ。
「……工藤愛子。お前には負けない」
「ボクだって負けないよ。ボクも保健体育は得意なんだ。それも君と違って…『実技』でね」
「……じ、実技…(ブッシャアアアアァッ!)」
ムッツリーニが鼻血を噴き出した!?
「ムッツリーニ! 大丈夫!?」
「……何のこれしき」
未だに鼻血がダバダバと流れていて、とても大丈夫そうには見えないけど大丈夫らしい。
「土屋君 大丈夫ですか?」
「……問題ない」
この短い問答の間にムッツリーニはいつの間にか止血を終わらせていた。…いつの間に。
「…では、召喚獣を召喚してください」
「試獣召喚ッ!」
「……試獣召喚」
保健体育 Aクラス 工藤愛子 465点
愛子さんの召喚獣の腕に腕輪が光る。…なっ…!
「よ…400点オーバー…!?」
「すぐに終わらせてあげるよっ! バイバイ! 土屋くんっ!」
愛子さんの召喚獣が巨大な斧を振り上げてムッツリーニの召喚獣に迫る。あんなのに当たったら…!
「……加速」
「…え?」
当たるかと思ったその瞬間、ムッツリーニの召喚獣がぶれて消えた。
「……加速終了」
保健体育 Aクラス 工藤愛子 0点 DEAD
そして現れたかと思うと、愛子さんの召喚獣は倒れていた。
「なっ、なんで…!?」
「……工藤愛子 確かにお前は強い。…だが上には上がいる」
保健体育 Fクラス 土屋康太 572点
『ごっ…500点オーバーだとぉぉぉぉっ!?』
「あはは…土屋くんには敵いそうにないなぁ」
「……謙遜するな。お前は十分俺のライバル足る存在だ」
「…土屋くん…。うん。次は負けないよっ!」
「……次も負けない」
…ムッツリーニと愛子さんが握手してる。友情が芽生えたみたいだ。
いろいろあったけど、何はともあれこれでやっと僕達の1勝だ。
…残り2戦…負けられない戦いだけど、僕は2人を信じてるよ…!