ガチャッ、バタン
秀吉から話があるって言われて屋上に来たんだけど…。
「秀吉~? 話したいことって何…優子さん?」
「あ、吉井君。来てくれたのね」
だけどそこにいたのは優子さんだった。
辺りを見回しても秀吉の姿はなく、優子さんしかいないみたいだ。
「ねぇ優子さん。秀吉に言われて来たんだけど秀吉がどこにいるか知らない?」
だから優子さんに秀吉を知らないか聞いてみたんだけど…返ってきたのは僕にとって予想外の答えだった。
「…ごめんなさいね。アタシが秀吉に頼んで吉井君を呼んでもらったのよ」
「へ? なんで優子さんが僕を?」
優子さんに僕を呼ぶ理由があるとは思えない。
そう思って優子さんの様子を伺ってみると、優子さんの頬には何故か朱が差していた。
そして優子さんは何かを決心したかのような表情をすると口を開く。
「あ、あのね。吉井君 アタシ、あなたのことが…」
優子さんが何かを言おうとしたとき――
ガチャッ…キィィィ…
――突然、屋上のドアが開いた。
そしてその奥から見えたのは…。
「…優子」
「抜け駆けはさせません…!」
翔子ちゃんと瑞希ちゃんだった。
「えっ…!?」
「…? どうしたの? 二人とも屋上に何か用でもあるの?」
突然現れた2人は、声を掛けた僕の方を見ないで優子さんの方を睨んでいた。
「…優子。明久は渡さない」
「わ、私だって負けません…!」
渡さない? 負けない? なんのことだろう。
と考えていると2人は僕に近づいてきて…。
ぎゅむっ。ぎゅむむっ。
…って、えっ!?
「な、なんで2人とも僕の腕に抱きついてるの!?」
「なっ…! アタシだって負けないわっ」
そう言って優子さんも。
ぎゅむぅっ。
正面から抱き着いてきた。……えええええええええっ!?
「ゆ、優子さんまで! 皆どうしちゃったの!?」
「…明久は渡さない」
「…! わ、私だって譲れません…!」
「ア、 アタシだって!」
皆は僕に抱き着いたまま何か言い争って…。
ぎゅうう、ぎゅうううううううっ…!
ってあ、あれ…? なんだか皆の力が強く…?
ミシ、ミシミシミシ…。
…いっ、痛あああああああああぁっ!?
「ちょっ、3人とも落ち着いてっ!?」
極まってる! 腕も首も極まってるぅぅぅぅっ!?
…あっ、意識が…遠…く…。
カクンッ
「…明久?」
「あ、明久くん!」
「吉井君! しっかりして!」
「…う…んっ」
うーん…あれ…? 僕、なにしてたんだっけ…。
「…明久!」
「よかったです~…」
「…目を醒ましたのね。良かったわ」
…あれっ? なんで翔子ちゃんの声が上から…っていうか枕なんてどこから…この枕気持ちいいなぁ…って!
「な、ななな、何してるの!? 翔子ちゃん!」
「…膝枕」
いや、それはわかってるけどさ!
とりあえず僕は慌てて起き上がった。
「そうじゃなくて、どうして膝枕なんかしてるの!?」
「…明久が倒れた。だから膝枕してる」
「…え? 僕倒れたの?」
倒れたときの記憶がないんだけど…。
「…アタシ達が力入れ過ぎちゃったのよ」
「ごめんなさい…」
「えっと…うん。僕は大丈夫だからさ。ね?」
とりあえず僕は心配させないように最大限の笑みを見せる。
すると、翔子ちゃん達はピシリと動きを止めて…。
そして、一気に顔が赤くなっていった。
「えっ! だ、大丈夫!? 熱でもあるの!?」
ぴとっ ぴとっ ぴとっ
僕は順番に3人のおでこにおでこをくっつけて熱を測る。
うーん…。熱はない…かな?
「…あ、明久」
「だ、大丈夫ですから…」
「………」
でも翔子ちゃん達は余計に顔が赤くなったみたいだ。
「も、もしかして吉井君って…」
「えっと、はい 昔から…」
「…明久は鈍感」
「ええ!? そ、そんなことないと思うけどなぁ…」
確かに他の人にはよく鈍感だって言われるけど。
「…だって、私達の気持ちに気付いていない」
「…へ?」
「ちょ、ちょっと代表!」
「しょ、翔子ちゃん…! こっちに来てください…!」
「…なんだったのかな」
翔子ちゃんは2人に引き摺られて行ってしまった。
そして見えなくなると向こうから声が聞こえてきたから何か話してるみたいだ。
そして少ししたら話が終わったのか翔子ちゃん達が戻ってきた。
「…あ、お話終わったの?」
「…(コクリ)」
「…お、お待たせしました」
「んんっ…ねぇ、吉井君」
? 改まってどうしたんだろう。
「その…ですね。先ほど話し合って決めたのですが…」
「ア、 アタシ達ね。吉井君のことが好きなのよ。だからその…」
「…明久。私達と付き合って」
翔子ちゃんは可愛らしくコテンと首を傾げてる…じゃなくて!
え? 誰が、誰を? 翔子ちゃん達が、僕を?
「え、ええええええええっ!?」
「そ、そんなに驚かなくても…」
「アタシ達が吉井君のこと好きなのってそんなにおかしいかしら…」
「…私はずっと言ってる」
「えっと、で、でもやっぱり3人なんて」
いけないと思うわけで。でも彼女達はそこも承知の上みたいだ。
「先ほども言いましたけど、話し合った結果なので」
「吉井君が良ければアタシ達と」
「…付き合って」
…! こ、ここまで女の子に言わせてるんだ。僕も男を見せなきゃ…!
「そ、その、こんな僕でいいならこっちこそ、よろしくお願いします…!」
返事をした途端、彼女達は表情をパァァ、と嬉しそうに輝かせた。
「…明久。じゃあ、目を閉じて」
「うん? これでいいの?」
僕は言われたように目を瞑る ちゅっ …ってこ、これは。
「んっ!? ちゅっ… っはぁ、し、翔子ちゃん。いったい何を…」
「…ファーストキス」
翔子ちゃんは何事もなかったかのように告げる。
「翔子ちゃんずるいです~! 明久くん。私ともしましょう!」
「よ、吉井君。アタシもいいかしら!」
そしてそれに反応して優子さんと瑞希ちゃんも僕に迫って…って、う、嬉しいけど2人とも落ち着いてえええええええっ!?
こうしてこの日。僕には彼女が3人出来ました。
そしてその時、屋上の扉の裏では。
「…うわー 面白くなりそうだと思って代表たちに教えたけど、これは想像以上かなー」
「あ、姉上も意外と大胆じゃのう」
「明久の奴も、言う時は言うんだな…」
「……可愛いのに男らしい」 カシャカシャ、カシャカシャッ
愛子、秀吉、雄二、ムッツリーニの4人がその様子を覗き見してましたとさ。