戦闘シーンにしようと思ったんですけど、なりませんでしたね。すみません。
「うらぁ!!」
男の低い音の叫び声と共に目隠しをした一匹の玉兎に、ものすごい勢いと早さで竹刀が迫る。が
「……ふっ」
息を吹き、目にもとまら無い早さで、相手の迫る竹刀を跳ね返す。すると相手の男は一瞬驚いた顔を見せた、かと思う暇もなく
バァン
と容赦無く月の民の兵士である男は玉兎に頭の上から打ち込まれ、道場の床に倒れ伏す。周り見ると、今倒れ伏せられた男と同様に何十人も倒れ伏し、もう数人しか残っていない。道場の端の方では、玉兎に竹刀で打たれたのだろう、気絶している者たちでごった返している。
一体どういうことだろうか?
………私はいつも通りに玉兎の訓練と自分の鍛練を終わらせ、月詠様の屋敷の巡回をしていた。そんな中、普段は静かな道場前を通った時に、中から小さな音が聞こえたのでのぞいて見ると月の民の兵士たちが一匹の玉兎に対して試合をしているではないか。しかも、兵士たちが押されている。
いつも兵士たちが試合や鍛練をする時は、私は基本的に呼ばれることが多い。向こうから試合と言うかなんと言うかまあ、リベンジのようなものを挑まれているだけだが。「「「今日こそは勝つ!!!」」」と言う風にいつも全員でかかってくる。
バァン
断ることも出来るが、普段の相手の無い鍛練よりはましなのでいつも受けている。でも、手応えは余り無いのでいつも私が勝つ。何故かと言うと、兵士たちの一人一人の強さはそこまで高く無いからだ。威勢はいいのだが、連携も取れていないし………
バァン
正直私やお姉様、月詠様とお師匠様以外の兵士は基本的にこの月の科学力に戦闘の面でかなり頼ってしまっている。武器だって、戦闘になった時に兵士たちが使うのは、鍛練している剣術や槍術ではなく、銃や大砲、レーザー砲などの重火器で、訓練内容もそちらの方が多い。
このような試合などで使うのは剣や槍などの古典的な武具だけ。毎日剣術の鍛練をしている私にとって手応えがないのは当然だ。
しかし、いくら私に勝てないとはいえ、たった一匹の玉兎。しかも目隠しをしている玉兎にあれだけ押されるのはどういうことだろうか?ちょっと打ち合ってみたい。しかし、それになんで私が呼ばれなかったのだろうか?大体こういう試合をする時は月詠様が皆を集めるのだけれど………
私はなんで呼ばれなかったのだろうか?
兵士たちだけで鍛練がしたかったのだろうか?いや、違う。それは玉兎がいる時点でそれはない。私と戦いたくなかったのだろうか?いや、それも違う。あれだけ大きな声で「「「今日こそは勝つ!!!」」」と叫べるのだから、急に変わるとも思えない。
「うーん」
わざとらしく首を捻ってみるが、全く答えは出ない。一体どうしたものか。
「あら、依姫。なに扉の前で悩ましい顔をしてるの?」
「あ、お姉様」
そうだ、お姉様に聞けば良いだろう。いつも私が知らないことやわからないことを、良く教えて貰っているので今回も知っているかも知れない。
ガンッ
「お姉っ………」
「?」
なんでお姉様画ここに要るのだろう?この試合について聞こうとしたが、驚いて思わず覗いていた扉の隙間を勢い良くしめた上に、舌を噛んでしまった。
「ゴホッ……お姉様何でここにいるんですか?」
お姉様は大体いつも桃の収穫をしていて、道場に足を運ぶことはない。なのになんで今日、タイミング良く私と会うのだろうか?そんな素朴な疑問に対して、お姉様が答える。
「月詠様に呼ばれたからよ。『後で道場に来てくれるかな』って。用件は分からないけれどね」
「月詠様に呼ばれたんですか?」
となると………いや、なんで?なんで月詠様がお姉様を呼ぶ必要があるのだろうか?しかも道場。鍛練を基本しないお姉様とは、全くと言って良いほど無縁な場所だ。そんな場所にお姉様を呼んでなにをするのか?
「ええ。依姫も呼ばれたんじゃないの?」
「え?いや………私はただ巡回していただけです」
しかし、何故私は呼ばれていないのだろうか?お姉様は呼んで私は呼ばれないこととは一体……?
桃についてのこと?いや、違う。月詠様は桃のことをわざわざお姉様に聞いたりしないし、そんなことで道場に呼ぶ意味が分からない。
まさか、お姉様の鍛練?普段桃ばっかり食べていて鍛練する様子なんて想像できない。しかも、鍛練しなくてもお姉様は能力だけで十分過ぎるぐらい強いので、鍛練をする必要はない。いままでやってこなかったのに急にやりだすとも考えにくい。
「うーん?」
なんだか余計に分からなくなってきた。色々考えてみるが、頭がこんがらがるばかり。何で私は試合に呼ばれなかったのか?何でお姉様だけ呼んだのか?これは呼んだ月詠様に聞くのが一番良いかもしれない。
「お姉様私も付いていっても良いですか?」
悩んで立ち止まるより、まずは行動に移すことが大切!直接聞きにいくのが良いだろう。いつも月詠様は試合で兵士たちを集めたら、大体端っこの辺りで試合を見ているので道場内にはいるだろう。まあ、お姉様をここに呼んでいるということは、大体居ることはわかるのだけれど。
「ええ、良いわよ」
「では、行きましょう」
ズズズ……ドン
お姉様に許可を貰い、早速先ほど覗いていた扉を開ける。開けるときにはいつもこんな重そうな音がするのだが、そこまで重くないので片手で開けられる。
「やあ、
開けた瞬間に聞こえる落ち着いた感じの声。まあ、もちろん月詠様である。扉の前で仁王立ちしているところを見ると、私たちが来るのをまっていたのだろう。後ろには先ほどの目隠しをした玉兎がこちらを見ている?のだろうか?顔をこちらに向けている。
さて、月の兵士を打ちのめした玉兎も気になるところだが、それよりも先に確認しなくてはならないことができた。
「二人とも?」
「うん、そうだよ?」
私は驚いて思ったことが、うっかり口から零れてしまった。何故だろう?私には呼ばれた記憶がないのだが?まさか、忘れていた?いや、私はいつも予定等は聞いてから直ぐにメモなどに書くので、忘れることはない。その上月のトップ、月詠様との予定という大切な予定を忘れるわけがない。しかし、万が一も考えられる。もし、私が忘れていたのなら………
「ねえ依姫、メールじゃないの?」
そうお姉様に言われてその存在にを思い出した。月詠様は月の使者などの軍の全ての端末に、自分の電話番号や連絡先をいれている。これは緊急事態が発生した時や、月詠様に何かあった時に使用するためにあるものだ。月で何か有ること事態が珍しいので、使ったことはないけれど。
「失礼します」
月詠様にことわりを入れ、図ぐ様端末を起動する。私はいつも、月詠様屋敷を巡回したり、玉兎を訓練したりする時は通知音が出ないように設定している。月の使者としてのこともあるが、静かな月詠様の屋敷の中で通知が鳴るとか、恥ずかしいので切っているのだ。
まさか、それが災いするとは思ってもみなかった。
そんな感じに落ち込んでいる依姫のスマホには『ちょっと道場に来てくれる?』というメッセージが月詠様から届いていた。
通知を切っていると、たまに気付かないときありますよね………
各話のタイトルについてのアンケート
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いままで通り。
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◯章・◯◯話の後にその話の簡単な内容
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その話の簡単な内容だけ