玉兎の憂鬱   作:残解

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序章・第十五話

 

 

「終わった………」

 

 

道場の真ん中でそう呟く。

 

 

そんな俺の周りには、俺が竹刀を打ち込んで気絶している月の兵士たちで埋め尽くされている。中には起きている人もいるけど、打ち込まれた所が痛むのだろうか?動く気配がない。

 

試合だったとは言え、申し訳ない。俺も訓練で、いつも月詠様に打ち込まれた時は、死ぬかと思った。昔は一、二発当たっただけで気絶していたのだが、今ではある程度耐えれるようになってしまったので、何発も食らうことになるのでかなりボロボロになる。それでも、結構避けられるようにはなっているが。

 

いまさっきだって、何発か食らってしまったので、右腕の手首と、左の太ももがはれてしまっている。みえないが、多分赤くなっているだろう。動かしても痛くはないが、また同じところに当てられたら痛そうだ。

 

試合のルールには当てる場所に指定があって、それは急所だけ。他は当たっても問題は無い。どうせなら当たりたくなかったけどね!痛いから!因みに、急所と言うのは首のことで、当てるのはその試合の相手側の者でなくても良い。だから、自滅した兵士たちは気絶した時点で試合から離脱しなくてはならない。

 

 

「ふう」

 

 

このルールのおかげで、結構の数の兵士たちが自滅してくれたので、少しは楽になった。それに流石にあの量を一気に相手をして、生き残れるとは思えない。月の兵士たちの連携が取れてなくて良かったと思う。教えてくれた月詠様に感謝である。

 

 

そんな今日の試合で、分かったことがある。

 

 

『月の兵士たち、力が強い』と言うことだ。まあ、俺の力が弱いだけなのしれないけど。

 

理由としては試合中、竹刀と竹刀がぶつかり合った時、必ず俺がぶっ飛ばされるからだ。しかも、かなりの距離だった。他にも、体勢を崩したときに太ももに打ち込まれた一撃によって、足に激痛が走った上に、道場の端の壁に叩き付けられた。

 

 

死ぬほど痛かったよ………あれ。

 

 

もう、あの威力はトラックがぶつかってくるより強いと思う。ああ………もう受けたくない。もうあんな風にして吹っ飛ばされのはもう勘弁してくれ!である。

 

それにしても、前世から比べるとずいぶん頑丈な体を持ったものだ。トラックがぶつかってくるより強いと思われる攻撃で「ちょっと腫れちゃったなぁ」位で済んでいることに驚きだ。

 

自覚は余りなかったけれど、人間辞めちゃったんだよな、俺は。まあ、でも当てられた時に備えて、体自体を妖力で覆っていたから、軽症で済んだだけだが。覆っていなかったらどうなってたんだろう?

 

 

………怖いから想像するのは止めよう。

 

 

しかし、それを考えると妖力って便利だなとつくづく思う。身体強化もできるし、体守れるし、スマホ充電できるし、能力使えるし。万能である。

 

まあ、回復にはちょっと時間がかかるけど、そこまでじゃあない。時間がかかると言っても、1日しっかり寝たら完全に回復するので、本当にちょっとだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『プルルルルル』

 

 

「ん?」

 

 

頭の中にスマホの通知音が響く。これは波長による()()だ。スマホや通信機から出る電波などを受信し、それを頭のなかで流すものだ。因みに返すときは自分から波長をだすのだが、周波数が合わないと通信できないので、自分の周波数を決めている。

 

これが出来るようになったのは結構昔のことなのだが、どうにも頭に声が入って来るのに慣れず、余り使っていなかった。

 

が、周りの波長などを見たり感じたりしていたら、慣れてしまった。たぶん、慣れたのは通信じゃなくて、能力の方だと思う。元々無かったものが体に有るのだから、感覚が合わなかったり、自由に使えないのは仕方ないことだろう。それを考えると、慣れって怖いな。

 

あ、それよりも先に電話に出ないと。

 

 

『何ですか?月詠様』

 

 

さて、電話の相手だが、あいにく俺は月詠様の電話番号しか知らない。つまり、月詠様である。

 

 

『お疲れ様、良く頑張ったね。まさか、勝つとは思わなかったよ』

 

『ありがとうございます』

 

 

『そういえば、何発か喰らっていたけれど、大丈夫?』

 

 

『あ、はい。ちょっと腫れている位ですね』

 

 

なんかちょっと痛くなってきているけど。

 

まあいいか、そんなに気にする程の痛みじゃない。それよりも、わざわざ同じ道場内にいるのに連絡してくるとは、月詠様は何か俺に急な用ある………

 

 

『終わったばかりで疲れていると思うけれど、道場の入り口に来てくれるかい?』

 

 

みたいだ。

 

 

『次は何をやるんですか………』

 

 

『まあまあ、来てみれば分かるよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみませんでした!」

 

 

「大丈夫大丈夫、どちらにしても来てくれたしね」

 

 

さて、来てみたはいいが、これは一体どういう状況だろうか?何でか知らないけれど、月詠様に対して誰かが謝っている。何かやったのだろうか?それにしては月詠様の波長もそこまで短くないし………

 

まあ、月詠様が怒っている所なんて見たことないけれど。

 

 

「久しぶりね。百年ぶり位かしら」

 

 

「え?」

 

 

横から声がしたので振り向いて見ると、いつの間にか誰か立っていた。波長は月詠様に対してだけ飛ばしていたので、気付かないのは当然なのだが、足音が全くしなかった。視界がない分、俺は音を聴くことに関しては自信があったのだが、全く気付かなかった。

 

 

その事に少し背筋が凍る。

 

 

視界がない分、俺は音を聴くことに関しては自信がある。だと言うのに、全く気が付かなかった。まあ、足音が聞こえない神は近くにいるのだけれど、同じように足音が聞こえない人は初めて見た。

 

それで、久しぶり?とはどういうことか。残念ながら、俺は全く覚えていない。

 

 

「あら、覚えてないの?」

 

 

『はい、覚えてません。』などとは言う勇気はないので、全力で頭を回転させ思い出そうとするが、微塵も出てこない。人の波長は一度見たら大体は覚えているので、忘れる筈は無いのだが………

 

うーん、あったこと………

 

 

「あ、そういえば()()()はこんな目隠しついて無かったわね」

 

 

「あ」

 

 

なんて考えていたら、いつの間に後ろに回っていて、止める間もなく、目隠しをほどかれていた。

 

 

ピラッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動物の目には入ってくる光を調整する機関、瞳孔と言うものが付いている。明るいところにいると光の量を抑えるために狭まり、暗いところにいると光をなるべくたくさん得る為に大きく開く。

 

今のレイは目隠しにより、入ってくる光の量は少なく、瞳孔は大きく開いている。その上、いつも付けていることもあり、通常よりも開いている。その分、たくさんの光が入ってきて………

 

 

「目がぁ………目がぁ………」

 

 

網膜がダメージを受けてこうなる。

 

 

 

 

 

 




一応、挿し絵(未塗装)を描いてみたんですけど、アップロードがなんか出来なかったので、次に回します。すみません。色も塗れたら塗ります。

画力は期待しないで頂きたいです。


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