玉兎の憂鬱   作:残解

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序章・第十六話

 

 

久しぶりに自分の目の中に入ってきた光により、俺の視界は奪われ、それと共に痛みを感じる。そのせいで、俺は咄嗟に目をつぶる。

 

 

痛ったい………

 

 

俺が目を開けていたのは、今の一瞬だけだったのに、ここまで痛いとは思わなかった。痛う………涙が出てきたよ………

 

 

「ごめんなさい。大丈夫?」

 

 

「は、はい。大丈夫です」

 

 

向こうが心配した声で謝ってくる。波長を見ても、波の振りは高く、少々短い。心配してくれているのだろう。それは分かる………分かるのだが………

 

 

どうせなら、とらないで欲しかったなぁ………目隠し。

 

 

だが、そんなことを言っても、俺の目が痛いのには変わりはない。取り敢えずは視界を回復させよう。目に万能妖力薬(ただの妖力)を流し、回復を早める。

 

生き物の目はほとんどが、何かから反射された光を受けて、回りが()()ことが出来るようになっている。が、俺は目隠しをし、回りが見えなくても、能力により回りの状況は確認出来るようになっているのだが、俺の基本見ている()()はただの電波だ。だから、その波長を当てている対象の色までは、残念ながら分からない。

 

あることで俺はそれを痛感した。少し前、キッチンに置いてあった紅茶と間違えて、シンクを掃除するために用意していた洗剤を飲んでしまったのだ。しかも結構の量。

 

苦かったな………洗剤。

 

 

あの時の俺はホントにバカだったと思う。その後、そんな苦さをのけようと思ったのだろう。少し洗剤の入っていたコップにその洗剤を捨てることなく、そのまま蛇口から水を注いて、それを勢い良く飲み干した!

 

当然ながら洗剤は俺の口の中で泡立ち、それを吐き出したせいで、キッチンは泡だらけになってしまった。それのせいで、二週間位は味を全く感じれなかったよ………

 

またこのような目に遭うのは絶対に嫌。だから、さっさと回復させたいのだ。今だって、色が分からないせいで、誰が誰だか分からないので速く回復したいのだ。月詠様は波長で分かるけど。

 

さて、こういうときは少しずつ光に慣れていくしかない。それも数十年分。そうと決まれば早速少し目を開けて………

 

 

ブワッ

 

 

「あれ?」

 

 

目を開けたとたんに、目から大量の涙が決壊したダムのように溢れてきた。そのせいで、少し時間がたって回復していたはずの視界は曇り、ほとんど何もみえない。

 

 

「あら?涙が出てるじゃない」

 

 

「んぅ!?」

 

 

いつの間にか俺の目の前に来て、涙を布の様なものでふいてくれた。そのおかげで、どばどば流れ出てくる涙が少し収まった。しかし、おかしいな、いつの間にこの人は俺の目の前に来たのだろうか?おかげで、驚いて変な声をだしてしまったではないか。

 

俺はいつも探知用の波長は出し続けている。さっきだって、波長は出していたのだけれど、揺らぎさえしなかった。本来、何か行動する時は音だったり、熱だったりと何かしらの波長を出す。がしかし、ここまで一度も、この人はそれを俺に感知されずに俺の目の前に来たり、気付いたら後ろにいたりと、まるでワープでもしているかのような動きをしている。

 

こんな世界だ、ワープとか瞬間移動とかが出来る人は沢山とは言わないが、少しはいるだろう。恐らくは何かしらの能力だと思うけど、どのような能力だろうか?案外そのままで『ワープをする程度の能力』とか?そんな簡単な能力ではないと思うけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当、ごめんなさいね」

 

 

「いえ、大丈夫ですよ。ちゃんと見えますしね」

 

 

先ほどの大量の涙が収まった頃、再び向こうが謝ってきた。波長はさっきと変わらず波は高く、短い。まだ、心配………というか申し訳ないとかそう言う感情だろう。

 

相手は結構気にしているかもしれないが、俺自信余り気にはしていない。どうせ目が見えなくても波長でなんとかなるし、妖怪だからすぐ治る。だから、余り気にはしていない。痛いのは余り好きじゃないけど。

 

視界が回復したので、相手の方を見る。髪は金髪でとても長く、腰あたりまである。頭に被っている帽子の上にはそこそこ大きな桃が二つ。不安定そうにグラグラと揺れて、今にも落ちそうである。なんで落ちないのかが不思議な位だ。

 

さて、久しぶりにひとの顔を見たからか。もしくは元から思っていたような気もするけれど………

 

 

この世界、美男美女が多すぎではなかろうか。

 

 

たまたま自分の近くに沢山いるだけかもしれないが、それを考えても逢う人逢う人とても顔が整っている。月詠様は白色と言う珍しい髪の色に似合う位イケメンだ。目の前の人に至っては、顔は日本人のようなのに染めたような金髪ではない。月の化学力のおかげかもしれないが。

 

 

「それで、覚えているかしら?」

 

 

当然覚えている。

 

俺がこの世界に転生してきた初日、いきなり襲われたことは今でも鮮明に覚えている。もっとも、襲いかかってきたのは目の前の方ではなく、もう一人のビンク色の髪の人だったが。

 

インパクトとしてはそちらの方が強かったけど、襲われて、心が疲弊しているところに甘くてジューシーな桃。疲れた精神を建て直してくれたことは今でも感謝してもしきれない。

 

でも、いきなり桃を渡してきたときは正直驚いた。なんの予兆もなく目の前ににきて、桃を差し出してくるのだから驚くと言うか混乱した。が、桃が美味しかったので、そんな考えはすぐに吹っ飛んだ。

 

そういえば、あの時早く部屋に行きたかったから、名前を聞くのを忘れていた。いつも、この方を廊下で見かけることはないし、聞くことが出来ていなかった。

 

だから、今がチャンスであろう。

 

 

「すみません覚えてはいるんですが、お名前が分からないので、教えて貰えませんか?」

 

 

「あら、教えてなかった?」

 

 

「自分が忘れているだけかもしれませんが、間違えるのは失礼だと思っていますので」

 

 

「まじめねえ」

 

 

よく言われる。が、別に自分は別に真面目ではないと思っている。今生でどう思われているかはわからないが、前世ではよく言われていた。

 

母親や友達に「△△△は毎朝早くに起きて真面目ねぇ」とか「△△△お前宿題終わらせるの早すぎだろ………真面目か!」といった感じに言われていた。母親に「あなたそんなので、辛くないの?」と心配までさせてしまっていた覚えさえある。

 

しかし、自分は好き勝手にやっているだけと思っている。宿題は残っているといやで、早く終わらせて他のことに時間を使いたかっただけだし、早起きするのは大学の講義で寝ないようにするためだし………

 

自分でやりたいことをやっているだけ。だから、真面目とは違うと思っている。そう自分で思っていても、他の人は思ってはくれないみたいだ。

 

相手の真面目と言われたことに対し「そんなことないです」と返したら、「真面目よ」と帰ってきた。いくら自分が真面目なのを否定したとしても、確実に肯定されるのは前世で経験済。よって、これ以上言っても『俺=真面目』のレッテルが貼られるのは止められない。どうにかなんないかなぁ………

 

 

 




アップロード完了したので、出します。

レイ


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レイ(刀持ち)


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