玉兎の憂鬱   作:残解

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すみません、投稿遅れました。投稿済みの小説を編集してたら思いの外、時間がかかってしまいました。


序章・第十七話

 

 

 

 

「綿月豊姫よ。よろしく」

 

 

「レイと申します。よろしくお願いします」

 

 

少し強ばった声で自己紹介をする。いつもこんな風に自分の名前を言うとき、少しだけれど緊張してしまう。たまに噛んでしまったり、詰まってしまったりと言うことが前世では良くあった。

 

………まあ、俗に言う人見知りと言うやつであろう。初めて話す人、逢った人に対してこのようなことになっているので、間違ってはいないと思う。

 

さて、名前がわかったところで次に大事なのはどう呼ぶかである。さんとか様とか………そう言う風に目上の人だけではなく、初めて話す人には付けた方が良いと思っているので、自分にとってはとても大事だ。幸い、目上の人かどうかは首もとに有る階級章というもので分かるので問題はない。

 

目隠しを外され見えるようになった目で確認する。

 

 

『えっと………線なしの星2つだから、上から三番目の使()()………』

 

 

自分よりも圧倒的に目上のお方である。どれくらい離れているかを自分の階級と比較して言うと、自分の階級は線が一本入った准尉と呼ばれる、中間管理職みたいな物である。おおよそ上から10番目ぐらい。使()()と言うのは属に月の使者と呼ばれる月の民の幹部中の幹部であり、地上に出向くことの出来る唯一の役職である。とはいえ実際に地上に行くのは配下の玉兎だけだが。まあ、そんな上流階級とは自分は無縁なぐらい離れているのだ。

 

それに、この准尉と言う役職は月詠様が月を統治する権力を利用して、俺に与えた物であり、その階級がするような仕事は一切行っていないので、実質形だけあるため意味は余りない。

 

 

これから分かるように、滅茶苦茶上のお方である。

 

 

が、そんな人が目の前にいても特に驚きはない。急に消えたり現れたり、波長のレーダーが全く反応しなかったりと言うような異常なことが有った時点で『あーこの人月の使者かも』と予想していたので、余り驚きはしない。

 

 

でも、さすがに目隠しを外してくるとは予想出来なかったけど。

 

 

豊姫様が月の使者だと言うことを予想出来たのは、月の使者が上層部のように権力や血筋からではなく、実力で選ばれているからだ。それを考えれば、自然と豊姫様が月の使者であると言うことが分かってくるだろう。

 

あ、波長レーダーが反応しないってことは、廊下とか道場とかどっかであっていたのかも。そうしたら桃のこと、お礼が言えたのになあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン

 

 

そんな風に考えていたら、急に静かな道場内に大きな、竹刀と竹刀が勢い良くぶつかり合う音が響く。何事かと音がなった方向に目を向ける。

 

………するとそこでは、先ほどまでは月詠様に全力謝っていたポニーテールの人がおもいっきり月詠様の竹刀に己の竹刀を打ち付けていた。結構離れているのに、ここからでも両方の竹刀がとんでもなく曲がっているのが良く分かるくらいに曲がりまくっている。良く折れないな、あの竹刀。

 

まあ、波長を見る限り霊力もしくは神力で強化しているのであろうが、限度があると思う。自分だって武器が壊れないように妖力を纏わせることはあるのだが、精々固くして壊れにくくするだけである。なのに、あの竹刀はどうか?一向に折れる素振りを見せようともしない。むしろもっと曲がっていきそうな位だ。

 

さて、一体どうしたら謝っている相手に対して竹刀を打ち付けることになるのだろうか?普通、謝っている相手に対して竹刀を打ち付けることなどないと思うのだけれど、今にも打ち合いが始まりそうにガンを飛ばし合うといった感じにはならないはずなのだけれど………

 

 

ダァン

 

 

あぁ、始まっちゃった。

 

月詠様がピンク色の髪を持つ、ポニーテールの人を竹刀ごと弾き飛ばした。それによりポニーテールの人は一気に道場の壁までとばされた。しかし、それに負けじと飛ばされて近付いてきた壁に対し目にも止まらぬ早さで蹴りを入れる。それで一気に月詠様の目の前まで接近し、竹刀を振るう。

 

 

ブンッ

 

 

が、それは空を切る。月詠様は横に一歩だけ下がり、その攻撃を回避した。攻撃を避けられ、体勢を崩したポニーテールの人に今度は月詠様が後ろに回り、打ち込もうとする。俺は避けることが出来ずに打ち込まれたと思ったが、すぐさま反転しその攻撃を防いでいた。

 

バァン

 

 

次の瞬間大きな音が響き、二人の姿が消える。

 

 

「え、」

 

 

あれ?どこにいった?と急に消えたことに驚きを隠せず、声が出てしまった。波長を出して、今もどこにいるかは()()()()分かるのだが、目が見えるとそちらの方への意識が強くなってしまう。

 

意識がそちらの方に引っ張られてしまうのは、まだ視覚に頼っている証拠だ。両立出来るように頑張らないと。まあ、目隠しのけたばっかりだし、仕方ない面もあると思うけれど、慣れていかなくては。

 

 

バァン

 

 

さて、あの二人はどこに行ったのか波長で見ているが、道場内を点々としていて、位置が捉え切れない。現れては消え、現れては消えの繰り返しで、正確に位置を捉えれていない。つまり、二人はとんでもなく速く移動しているのだろう。………ことごとく前世の常識をこの世界はぶっ壊してくるなぁ。

 

俺が出している電波の波長は、強さによって差はあるけれど、おおよそ秒速30万キロメートルほど。俺はその波長を対象に当て、跳ね返ってきた電波を受けて対象の位置を特定する。が、この二人は速過ぎるため、お互いの竹刀が当たり、減速した時にだけ電波が跳ね返されて位置が分かる。だから、点々でしか分からないのだ。

 

速すぎて、波長が全く追い付けていない。無論、肉眼では見えない。たまにチラッと白とピンクの影が見えるだけだ。そのせいで、道場内は誰も居ないところから馬鹿みたいに大きな竹刀の打ち合いの音が聞こえ、軽く心霊現象みたいな状況になっている。

 

 

どうしたものか………

 

 

一応自分は月詠様に呼ばれてここにきたのに、こんな状況では話すら出来ない。止めた方が良いだろうか?いや、止めるにしても自分だと止めるどころか、巻き込まれてブッ飛ばされてベッド行きになる結末しか見えない。

 

それは勘弁したいところだし、やらない方が良いのだろうか?いや、止めないと全く話が進まない気がする。止めた方が良いのではないだろうか?何で呼ばれたか気になるし。しかし、止めるにしても、自分一人ではどうにか出来る気がしない。誰かに手伝って貰えたら良いのだけれど………

 

 

「あ」

 

 

そう考えていたらふと、この場に自分一人ではないことを思い出した。直ぐ様もう一人の方をみる。

 

 

「?」

 

 

急に見たせいか、顔にはてなマークを浮かべ、不思議そうにこちらを見てくる豊姫様。その顔を見て、豊姫様に手伝って貰えばいいのでは?と考えた。豊姫様は実力のある月の使者であり、俺の波長をくぐり抜けてくるような人だ。あのヤバい二人をきっと、止めてくれるはずだ。

 

………だけど、もし止めれるとして、俺が頼んで止めてくれるだろうか。俺はただの玉兎だし、階級もかなり下。そんなやつの頼みを聞いてくれるかどうかを考えると、少々不安である。

 

が、行動もせずに決めつけるのは駄目だ。まずは頼んでみないと何も始まらないし、何か変わるようなことはない。だから、ダメ元でも良いから頼んでみよう。

 

 

「あの、月詠様を止めるの手伝ってもらっても良いですか?」

 

 

 

 

 

 




最近は中途半端に終わることが多いですね。

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