Hertz-Maschine @ Metropolis 作:深山瀬怜/浅谷てるる
「
「時計の人とか地球儀の人とか色々いるけど、どうして?」
「栗の人とかいるのかなーと思って」
「栗はいないね……でもかぼちゃはいるよ。ハロウィンの……ジャック・オ・ランタンだっけ。あれの形してるの」
「年中ハロウィンみたいだね。そっかぁ、ちなみにどんな人?」
「カボチャ頭とほとんど話したことないし、誰かと話してるところも見たことないな……あ、でも燐灰のことは心配してくれた」
興行主の中ではいい人なのかもしれないと思うこともある。だが発言権はそこまでなさそうだ。やはり時計男の力が強いのだ。
「でも、自分達で戦いもしないくせに私たちの戦争を見て楽しんでるんだから、あいつらみんなクズだよ」
たとえ発作を起こした仲間を心配するような人間であったとしてもだ。琥珀は吐き捨てるように言って、足を組み替えた。
「でもある程度媚売っとかないとね。早く塔に行きたいし」
遺伝子操作された子供たちは、たとえそれが失敗であっても、塔の外の空気が有害になり、長くは生きられない。琥珀を始め、悧国の近衛兵は、生きるために塔に住む権利を求めて戦い続けてきた。けれど興行主が臍を曲げれば今までの努力が水泡に帰してしまう。
「媚とか一番無理なんだけど」
「私も。可愛く振る舞うとか無理だわ……
「あれは真似できないよ……」
可愛く振る舞えば、果てしない道は縮まるのだろうか。だが、例えそうだとしても今の自分自身を曲げることはできない、と琥珀は思っていた。ただ強さを見せることしか琥珀にはできない。興行主の勝手な言葉も勝ち続けることで塞ぐことができると信じるしかないのだ。
「……あの人たちの頭の被り物、全員剥ぎ取ってやりたいな」
緑簾が言う。琥珀も同じ気持ちだった。くすりと笑ってそれに応える。
「だってこっちは顔出してんのにあいつら顔隠してんのなんかムカつくじゃん。いつか絶対剥ぎ取ってやろ……どうせキモいオヤジとかだよあんなん」
「見てみないとわかないけど……でも剥ぎ取りたいのはわかるよ」
命懸けの戦いを安全圏から見下ろされるのは腹が立つ。いつか緑簾の言うように頭の被り物を剥ぎ取って、戦場まで引き摺り下ろしてやりたい。
そうしたら、少しはこの痛みをわかってもらえるだろうから。