【書籍化!】『君は勇者になれる』才能ない子にノリで言ったら、本当に勇者になり始めたので後方師匠面して全部分かっていた感出した   作:流石ユユシタ

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10話 合格

 実技試験が終了し、次は面接試験である。しかし、試験と言ってもそこまで堅苦しいものではない。筆記と実技で合格をした者達は既にある程度の実力者として認められており、この時点で合格と言っても間違いはない。

 

 

 だからこそ、彼らはようやく一息吐けたと言っても過言ではない。ウィルはまだ若干の緊張はしているものの、先ほどまでの慌ただしい雰囲気は消えた。

 

 そして、面接が始まり、先ずはウィルが個別の部屋に呼ばれた。

 

 

「ウィルと言います。イシの村という所に住んでいて」

 

 

 ウィルは椅子に座り、前には机の上に資料を置いて彼の話に耳を傾けるギルド職員が三人。二人は何処にでも居る普通の職員、しかし、もう一人は世界的に有名であり伝説の勇者ダンを冒険者登録をしたトールである。

 

 

「君はなぜ、冒険者になろうと思った?」

「僕は勇者になりたいんです。だから、強くなりたくて」

「……勇者か。懐かしい、嘗ての私が送り出した勇者ダン……。君の考え方は恐らく酷似している」

「考え方?」

「今のは忘れてくれ。さて、質問はここまでだ……。退室してくれて結構だ」

 

 

 

 ギルド職員のトールがそう促すとウィルは退室して、今度はユージンが部屋に入った。ウィルと同じようにある程度の善悪の区別などがつくことを確認して、トールは再びあの質問をする。

 

「なぜ冒険者になろうと思ったのか、聞いても良いかね?」

「強くなるため、そしてたった一つの頂点の席を掴むためでもある。それに嘗ては勇者も冒険者だったと聞いたからな」

「なるほど、勇者を超すために同じように冒険者になろうと思ったわけか」

「そうだ。それよりグダグダ長い。早く終わらせろ」

「もういい、これで終了だ。退室してもらって構わない」

 

 

 ユージンも退室して、次なる実技試験合格者が入室した。ウィルと幼馴染であり、一緒の村に住むダイヤだ。

 

 そして、彼の面接が始まる、同時刻にて面接を終えたウィルの前に鉄仮面をかぶった勇者ダンが現れていた。

 

 

◆◆

 

 

 さて、どうやらウィルの面接が終わったようだ。きっと合格である事だろう。俺が聞いた話では面接までこぎつければ特に問題とかはないと聞いている。ウィルは真面目だしいきなり唾を吐いたりしないはずだ。なので合格は確実であり、仕方ないから褒めてやろうと思って家に一度帰って鉄仮面を持ってきた。

 

 結構距離あるが走れば直ぐだ。ウィルを褒める理由は二つある。一つは本当によくやったからだ。更には魔族との戦闘も無事こなしてちょっと厳格な顔つきになったような気もしなくはない。

 

 だから、ちょっとは褒めてやろう。一つ目の理由はそれくらいのちっぽけなものだ。

 

 つまり、正直に言えば一つ目の理由はオマケみたいなものだ。

 

 ――本当の理由はモチベーションの維持である。

 

 

 よく聞かれることがある。どうしてそんなに勇者として立ち居振る舞いが出来るのか、どこからそんな活力、つまりはモチベーションが湧いてくるのか。

 

 答えは簡単だ、活力(モチベーション)は湧いてはこないのだ。

 

 

 これは持論だが…… モチベーションは急激に上がることは殆どないが、急激に下がるのはよくあることである。

 

 つまり、育成で大事なのは弟子のモチベーションを上げるという事ではなく、下げないと言うこと。一度下がったモチベーションは止まることは知らず下がり、いくら勇者と言うカッコよくて前世からの憧れでも辞めたくなる。ソースは俺。

 ウィルは今の所物凄く勇者に成りたいと思っている。しかし、これもどこぞの勇者のように急に勇者とか面倒になるかもしれない。

 

 だから、よく出来たら褒める。ウィルは馬鹿(ピュア)だから喜ぶだろう。

 

 

「どうやら合格したようだな」

「ゆゆ、勇者様!? どうしてここに!?」

「忙しかったがわざわざ来てやったんだ」

「そそそ、そんな!? ありがとうございます!!」

 

 

 二日ずっと一緒に居たけどね。まぁ、俺もこの後、面接があるのに合間を縫ってウィルの下に来ているのだから嘘は言っていない。

 

 

「で、でもまだ合格か分かりません」

「面接まで行けば合格は間違いないだろう。お前にしては上出来だ、最も結果は分かり切っていたがな。全て俺の予想通りだ」

「ゆ、勇者様。僕の合格を信じてくれていただなんて!?」

 

 

 本当は不合格のパターンも考えていた。その場合もモチベを下げない方向で、『今は積み上げの時期』みたいな事言おうと思っていたんだが――

 

――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「当然だ」

「ゆ、勇者様……今回頑張れたのも色んな人の支えがあったからで……あと、勇者様から頂いた始まりの剣のおかげです!」

「全部を他人の報酬にするな。お前が勝ち取った合格だ。今はそれを誇れ」

「は、はい!」

 

 

 ウィル喜んでるなぁ。俺も高校受験の時、こんな心境だったような気がする。

 

 

「あ、それと勇者様」

「どうした?」

「あの、勇者様の名を使って、高値で中古の剣を売りつける手法がもしかしたら流行っているのかもしれません」

「なに?」

 

 

 ほぉ? そんなことをする商人が居るとは問い詰めたいと思う所だ。だが、勝手に鉄仮面フェイスの姿で絵画を書かれて売られたりもしているし、今更気にならないな。

 

「ど、どうしますか? 僕にはどうすることも出来ないのですが」

「放って置け」

「分かりました」

「……さて、そろそろ俺も行くか」

「この後、ご予定が?」

「あぁ、少しな」

「多忙な中、わざわざ僕の為にありがとうございます」

 

 

 軽く手をシュっと振って、ウィルの前から高速で消える。そして、高速で着替えをして再び、ウィルの前に現れた。

 

「やぁ、ウィル。面接はどうだった」

「あ、バンさん! 結構上手く行きました! バンさんも頑張ってください!」

「はいはい、サンキュー」

 

 

 ウィルは俺がバンって事を知らないけど、自分自身で一連の流れ振り返ると、俺って情緒ヤバくねって思うわ。

 

 だって、弟子の前で鉄仮面被って俺様キャラを三秒前までやってたのに、その数秒後に何処にでも居る青年で話しかけるって……控えめに行ってもヤバいよね?

 

 

 あ、ユージンも褒めて上げないと……。また早着替えをして今度はユージンの前に行って褒めて上げた。

 

 そうしたら、ユージンにも勝手に俺の名を語って中古の剣を売る商人が居るって聞いた。へぇ、そういうの流行ってるのかね?

 

 しかし、それは今は気にならない。それよりもそろそろ面接に行かないといけない。再び俺は着替えをして面接の部屋に入る。

 

 

「失礼します」

「入りたまえ」

 

 

 個室に入るとトールと言うギルド職員と一緒に二人の計三人が座っていた。俺は椅子に座ろうと思ったが、前世で面接は面接官が椅子に掛けて良いというまで腰を下ろしてはいけないと言われた事を思い出した。

 

「座らないのかね?」

「座って良いとの許可は下りていないので」

「……ほう? では、座りたまえ」

 

 

 そう言われて座った。すると、三人の職員から様々な質問が俺に投げかけられた。質問はさまざまであったが特に答えに詰まる事もなく、返答をすることが出来た。しかし、十問ほどされた後、次の質問で俺の返答は僅かに遅れることになる。

 

「バンさんは18歳ですか……今までどんな生活をされてきたのですか?」

 

 

 そうだ、今の俺は18歳であるという設定だったと今更ながら改めて言われると驚きに身を震わしてしまう。

 

 しかし、罷り通るんだなぁ。驚きである。これも俺自身の勇者としての活動方法と恩恵(ギフト)のおかげであるのだろう。

 

 恩恵(ギフト)とは人に宿る一種の性質のようなものである。魔法とかとは少しばかり違う別の力であるが、魔法の才能と同様に誰にでも分け隔てなく与えられるものではない。

 

 恩恵(ギフト)は先天的な物と後天的な物があるらしい。俺は後者を所有する。だが元パーティメンバーのリンリンは両方所有していた。

 

 多重魔法展開処理(マルチタスク)と言われる先天的な性質を持っていた彼女は魔法を同時に多数発動することが容易に可能だった。その分消費が大きいが最高で五つ出来るらしい。

 

 流石はフロンティア王国の第二王女と言った所だろう。しかし、彼女の場合は後天的にも恩恵(ギフト)を所有してしまった。それは魔力暴走(マジック・ワン)。簡単に言えば魔法を使うためにエネルギーである魔力の常時回復機能、更には反動はあるが一時的に本来の数十倍の力を引きだすことが出来る。

 

 本当に才能マンだったと今になって思う。しかし、幸いだったのが俺も所有、いや習得できた……と言った方が良いか。

 

 

 俺の恩恵(ギフト)……それは自称・勇者の加護(ブレイブ・スピリット)である。この名前を考えたのは俺である。

 

 後天的な恩恵(ギフト)は稀にその者の経験などによって所有できると言われてるが、これは的を射ていると結論付ける。

 

 なぜなら、俺自身がその典型例だからだ。

 

 嘗ての俺は弱かった。だからこそ、必死に訓練をしたのだ。更には前世の知識も使った。

 

 まず俺がしたことは身体作り、胸肉を中心としたバランスのとれた食事を徹底的に取った。更には効果的な筋トレ、健康状態を保つには体から老廃物を出さなくてはならないので水を毎日たくさん飲んで体の内側から綺麗にすることを心掛けた。

 

 ストレスが体に溜まるとよくないので瞑想をして毎日リラックスしながら、睡眠もしっかりとった。魔力を回復するにも瞑想は良い効果であったので瞑想は本当に効果的だった。

 

 瞑想マジ最高。効果的に回復、それによって効率よく回復し、再び魔力使用が出来て魔力が増えていった。しかし、こんなに魔力が増えたのは何年も続けたからである。

 

 他にもノートに自身の戦った者達との戦いの分析を描いた。負けたらどうして負けたのか、なぜ勝てなかったのか。

 

 勝ったらどうして勝てたのか、勝利の要因はなんであったのか。真面目に真面目にこれらを日々積み重ねながら何年も何年も過ごして12歳の時、恩恵(ギフト)を獲得出来た。

 

 それが自称・勇者の加護(ブレイブ・スピリット)。効果は常時魔力回復、傷回復、身体能力保有状態継続、状態異常無効。

 

 最初は微々たる効果であったが徐々に回復量や無効にできる範囲が増えて行ったのだ。魔力回復は瞑想による賜物であろう。リラックス状態が徐々に体に浸透して回復が他者より早くなったということだ。

 

 傷回復は何度も度重なる連戦で傷を負いすぎたから、その度にリンリンに回復してもらうのが申し訳なかったという想いと、過酷な戦いで体の生存本能がもっと回復しなければならないと判断したと考えられる。

 

 

 身体能力保有状態、若さを保つ効果がある。この効果発動は俺自身の覚悟が要因な気がしている。嘗てはずっと勇者として人の為に尽くすと考えていたからな。ずっと若いまま一生勇者をやっていたいって思っていた。

 

 そして、状態異常無効。これが自身で思うがチートだと思う。これを獲得する原因は水であるとすぐに分かった。水は体の老廃物を出す。ずっと繰り返すうちに体が老廃物を俺の体にとどめないという、その機能を向上させたのだ。そもそも人間には白血球と言った自身の体に有害な物を消すという免疫機能がある。

 

 これにより呪詛王の呪いも、最初気怠い、微熱みたいな感じあったが水沢山飲んで運動とかして汗を流し、トイレ行ったりしたら一時間半くらいで良くなった。

 

 やっぱり俺って強いんだなってあの時は思ったな。同時に呪詛王辺りから勇者飽き始めてしまったんだよ。

 

 しかも永遠現役みたいな能力あるからね。チートで辞められない。また、見た目が若く見える要因として鉄仮面を被っていたから太陽の紫外線をずっと浴びてこなかったという説もある。

 

 肌は凄く若い。水も沢山飲んで肌の内側から水分チャージしてるし。水最高。

 

 さて、ここまで僅か三秒の思考であるが……面接官になんと答えようか……。

 

 

「地元で野菜を育ててました。偶に狩りとかもしていましたね」

「なるほど」

 

 

 面接官はそう言うとまたメモをし始めた。色々記入して大変そうである。そのタイミングでトールとか言う人が何か語りだした。

 

「昔、私は勇者ダンを――」

 

 

 これはスルーしよう。筆記の時と同じようなことを言っているだけだ。この人当時は俺に対して微塵も興味ない感じだったんだけど、自分が生み出した感出してるな。   

 何とも思っていなかったのに結果出た途端に後方ギルド職員面みたいなことをするってちょっと良くないと思うわ。

 

 

 さてと、聞き流しながら考え事していたけどそろそろ話が終わるかな? そうしたら丁度終わったので適当に一礼とかして部屋を出て行った。

 

 その後、結果を確認すると結果は文句なしの合格であった。合格者である二十一人はこの後、冒険者カードなるものを発行してもらい、そして冒険者としての説明会に参加することになった。

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