【書籍化!】『君は勇者になれる』才能ない子にノリで言ったら、本当に勇者になり始めたので後方師匠面して全部分かっていた感出した   作:流石ユユシタ

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3話 リンリン

 朝起きたら、俺は先ず顔を洗う。前世からそう言った行動をしていたが未だにこのルーチーンは変わらない。

 

 その後に着替えて椅子に座る。机には既に朝食が用意してあって、更には眼の前には両親が座っている。

 

 

「ほら、ダン。早く食べなさい」

 

 

 母親がそう言った。俺は勇者になって三十になっても未だに実家で暮らしている。なぜならば俺は一緒に住む人が居ないからだ。あとは家事をするのが無性に面倒くさい。

 

 母は普通の黒髪黒目の女性で父も黒髪黒目の男性。俺達は普通一家なのである。ご飯を食べていると母親が俺に言った。

 

 

「ダン、そろそろ勇者辞めて、結婚するべきじゃない」

「母さん、ダンはまだまだ現役だぞ」

「そうね。でもそろそろ孫がね……」

 

 

 俺も結婚したい。もう普通の一般家庭で暮らしたい。この家もどこにでもあるような普通のサイズの家だけどさ。ここにいつまでもずっと居てはいけないことくらい俺も分かっている。

 

 

「ダン、今日は騎士の学校で演説してくるんでしょ。しっかりね」

「あ、はい」

 

 

 外だと俺様系だが家だと俺は普通なのだ。両親は勇者であることは知っているがそれを吹聴しない。俺も別にどこ出身とか言わないようにしていた。個人情報だし。

 

 やっぱり前世だと個人情報保護法と言ったように法体系に置いて個人の尊厳などは手厚く保護されていた。それに引っ張られるのか、俺はあんまり人に自身のことを言ったりする癖は無かったのだ。

 

 だからこそ、俺の実家を誰も知らない、素顔も知らない。これは俺にとってプラスであった、引退をしてもどこに居るのか、周りが分からないのである。

 

 つまり勇者を辞めた後になんやかんやで色々と押し付けられる事もない。

 

 ずっと鉄仮面被っててよかったと最近思うようになったのだ。さて、朝食を済ませた事だし、騎士育成校に演説に行きましょうかね。

 

 他の三人も来るし……。

 

 

 家を出て、俺は直ぐに鉄仮面を被る……ということはしなかった。偶には素顔で外を歩きたいのだ。顔はフツメン、髪は黒髪のツンツンヘアー。どこにでも居るような平凡な顔。

 

 

 本当にモブの様な顔なので一度も勇者だとバレた事はない。

 

 

 今は演説をする、騎士育成校に向かっている。俺が住んでいるこのトレルバーナ王国の王都にその学校が存在しており、そこでは国を守る騎士を育成しているらしい。

 

 実家から王都に到着して、風に吹かれながら歩いていると、とある屋台の前に一人の女の子が見えた。

 

 いや、女の子と言うのは少しだけ語弊があるのかもしれない。年は27歳なのだから。

 

 そこには嘗てのパーティーメンバーであるリンリンが居た。妖精族(エルフ)と言われる、耳がちょっと尖っているよくある種族なのだ。

 

 黄金をそのまま髪にしたような綺麗な金色の髪を、肩くらいまで伸ばしてツインテールにしている。当然のことだが顔立ちも物凄く綺麗な女性だ。目つきがちょっと鋭いから強面に見えなくもないが、控えめに言っても超かわいい。

 

 本当に昔の話だが、一時期好きだったことがある。彼女の気を惹きたくて俺様系キャラを始めたくらいだ。今思えば痛々しいが当時はそれがイケてると本気で思っていたのだから若さと言うのは恐ろしい。

 

 

 彼女を通り過ぎる時に、顔を確認したがやっぱり美人だなと感じた。最近会ってなかったけど、色あせない可愛さがあった。

 

 彼女は俺に気付くことなく、過ぎていく。俺もあとでどうせ仮面をかぶって対面するし、そもそも素顔は絶対に見せないようにしているのでスルーである。

 

 彼女から離れると不思議と彼女の顔が頭に再び浮かぶ。やっぱり可愛かった。もう、好きとかではないし、本当に素直にそう思っただけだ。

 

 ただ、やはり過去の初恋を思い出して何とも言えない気持ちになるのはよくあることだ。今でも思い出す、リンリンは初恋だったことを……。

 

 まぁ、当時からもう一人のパーティーメンバーであるサクラと仲良かったからな。負け試合をしていたものだった。しかし、これも仕方がない。

 

 このサクラと言うのが本当に美人男子だったからだ。

 

 僕が一人称で、口調も柔らかい。コミュ力が高くて剣の達人で顔が良い

 

 

 超絶リア充男子(サクラ)。当時から彼が居たから正直リンリン諦めていた。もう一人、カグヤと言う女性メンバーもパーティーに居たがよく三人で話しているのも知っていた。

 

 あーあー、世の中顔かよって当時は愚痴ってたなぁ。俺、リンリン、カグヤ、サクラ。この四人でいろんな場所に行ったが結局、サクラと二人は良い感じだったし。

 

 もしかしたら、美人に好かれるんじゃないかってファンタジーの幻想があったから余計にガッカリして萎えたのを思い出した。

 

 サクラめ…‥。それにサクラは何気に俺に懐いていたから余計に微妙な心境だったんだよなぁ。

 

 最近、顔あわせてなかったけど、どうせまたあの顔見て、変わらずのイケメンであると俺は思うのだろう。

 

 ちょっとセンチメンタルになりながら俺は騎士育成校に向かって歩き続けた。

 

 

 

◆◆

 

 

 初恋、そう言えば思い出すのがあの鉄仮面だ。いつもどこでも鉄仮面を被って一度も顔すら見せない。表情も読めないから喜んでいるのか、悲しんでいるのか、照れてるのか、何一つ分からない。

 

 初めてあった時、なんだ、この変な奴はとアタシは思った。

 

 冒険者になったばかり、取りあえずパーティーを組みたくてメンバーを集めていた時にダンと邂逅した。

 

「アタシの名前は、リンリンよ」

「そうか」

「アンタは幸運よ、このアタシと組めるんだから」

「そうか、ならお前はもっと幸運だ。俺と言う未来の英雄と組めるんだからな」

「はぁ!?」

 

 

  訂正、初めて会ったとき以外も旅しながら一緒に冒険をしながら、ずっと変な奴だと思っていた。

 

 才能ないのにずっと頑張るし、一人だけ朝早くから訓練をするし、周りから色々言われて貶されてもめげないし

 

 

――気付いたら先に行ってるし。

 

 

 旅をしながら思っていた。アタシはこの人(ダン)と一緒にいつまでも居るって。でも、徐々に焦りもあった。だって、どんどん彼は離れていくから。

 

 彼は強くなり過ぎた。

 

 徐々に置いて行かれていった。

 

 魔王も一人で倒すようになった。アタシ達全員の手柄と言われていたけど、本当は違う。ダンが、勇者ダンが一人で全てを終わらせていたのだ。

 

 

 自分が釣り合わないように見えた。それに、他の二人もダンを好いていたから余計に彼にアピールがし辛い状況でもあった。

 

 

 四人で一緒にいつまでも仲良くいたかったからアタシはダンに好きと言えなかった。そして、最終的に彼とはそこまでの仲に発展しなかった。彼に好きと言えなかったことが、アタシの後悔だ。

 

 

 今日、再び会える。でも、きっとアタシは会えて、ちょっと話すだけで嬉しくて、もっと話したくて、

 

 でも、きっと……それで満足してしまうのだろう。

 

 

「リンちゃん」

「あら、サクラ」

 

 

 騎士育成校で伝説の勇者パーティーであるアタシ達は嘗ての偉業について話すことになっていた。そこに向かう途中、サクラにばったりあった。桃色の髪の毛、青い目、笑った顔がとてもキュートだった。

 

 

「まだ、()()してるのね。家の事情だっけ?」

「うんまぁ……そだね」

「そう、サクラちょっと背のびた?」

「そうなんだ、伸びたんだよ。でも、リンちゃんは全然変わらないね」

「エルフはあんまり変わらないのよ」

 

 サクラは家の事情でずっと男装をしていた。きっと今でも色々と解決せずにあるのだろう。

 

 彼女もダンが好きだった。アタシはサクラの事を仲間だと思っていたら、ダンの事で強く出れなかったのだ。カグヤと一緒によく女子会とかしたり、親密になり、余計に手が出せない。

 

 

「勇者君は?」

「ダンならまだ来てないわよ」

「ふーん」

 

 本人はバレてないと思っているようだが、アタシからするとダンが好きなのはバレバレである。

 

 周りもサクラが男装しているから、知らない人が多い。そもそも女性であると知っているのが僅かだ。まぁ、アタシとカグヤとダンはずっと一緒だったから分かっているけど。

 

 

 でも……そう言えばダンにサクラが実は女だって言ったことはなかったわね……

 

 

 まぁ、いくら鈍いダンでもそこには流石に気付いているでしょね。

 

 

「育成校まで一緒に行きましょう」

「うん!」

 

 

 サクラとアタシは一緒に育成校に向かった。再び会う、勇者に思いを馳せて。




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