肛門ダンジョン 〜超巨大モンスターの尻穴に挑む〜   作:フーツラ

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第三章 ダンジョンに咲く薔薇
老人の願い


「お願いします。どうかワシの話を……」

 

 人気の酒場"ビッグホール"の脇で老人が道行く冒険者に声をかけている。ちゃんとした依頼ならギルドを通せばいい。それをやらないってことは報酬が低いかギルドが拒否するような危ない依頼、下手すると犯罪が絡むようなものだろう。

 

「そこの若い冒険者さん。ワシの話を聞いてはもらえんか?」

 

 俺のような駆け出しは声をかけ易いのか? 狙いを定めていたようだ。

 

「依頼ならギルドを通した方がいい」

 

「……ギルドを通すと手数料が取られてしまうので……」

 

 ふん。金がとにかくないってことか。普段なら無視して行ってしまうところだが、今日はダンジョンで稼いで気分がいい。

 

「話を聞くだけだぞ」

 

「おお! ありがとうございます!」

 

 よほど嬉しかったのか、老人は破顔して寄ってくる

 

「立ち話もなんだ。中で話そう」

 

「えっ、いや。ワシは……」

 

「金なら気にするな。今日は気分がいいんだ」

 

「……では、お言葉に甘えて……」

 

 一人で飲むのも味気ない。この時は老人の話を酒のつまみ程度にしか考えてはいなかった。

 

 

#

 

 

「ダンジョンの中に咲く薔薇?」

 

 いつものカウンターに通されてエールを一口飲むと、老人は早速話始めた。

 

「はい。一部では肛門の薔薇(アナルローズ)と呼ばれているものです。非常に貴重な花で、ある病気の特効薬の材料になります」

 

 ある病気の特効薬……。

 

「それが必要ってことは──」

 

「はい。ワシの孫がその"ある病気"にかかってしまって……」

 

 老人はつらさを紛らわすためにエール煽った。その瞳は少し潤んでいる。

 

「しかし、今は超巨大リザードマン(リザードダンジョン)にしか潜れない筈だぞ。俺も潜っているが、そんな花は見たことはない」

 

「もうすぐ、超巨大ハーピー(ハーピーダンジョン)が休眠に入る筈です。アナルローズはハーピーダンジョンに咲くと言われています。そこに1番乗り出来れば……」

 

 老人はエールのジョッキを持つ自分の腕を見つめている。痩せ細り、いかにも頼りない。こんな身体でモンスターと戦うことは無理だろう。

 

「ハーピーダンジョンはいつ休眠に入る? 場所は分かっているのか?」

 

「早ければ明後日。ラムズ平原の南にある小高い丘でいつも休眠します」

 

「じいさん、随分と詳しいな」

 

「ワシも昔は冒険者をやってましたから。ラムズ平原だけじゃなく、世界中のダンジョンに潜ったものですよ」

 

 世界中のダンジョンか。それは興味深い……。"この世で一番デカい肛門"のことも知っているかもしれない。

 

「じいさん。俺がそのアナルローズの採取を手伝ってやってもいい」

 

「本当ですか!」

 

 老人は立ち上がるほどの勢いで驚く。カウンターの奥のマスターが眉をぴくりと動かした。

 

「まぁ、落ち着け。俺の名はベンだ」

 

「ワシはディルといいます」

 

「明日準備して明後日はダンジョンだ。つまり、今日は飲むぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

 まだ何も手にしたわけではないのに、ディルは何度も礼をいいエールを美味そうに飲んだ。

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