肛門ダンジョン 〜超巨大モンスターの尻穴に挑む〜   作:フーツラ

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孫の病気

「ベン殿。本当にありがとうございました」

 

 ラムズヘルムに着くとディルは深々と頭を下げた。その身体は疲れ果てているはずだが、表情は明るい。

 

「やめてくれ。俺だって稼がせてもらったんだ。ただの善意でやったわけじゃない」

 

「ワシの話を聞いてくれたのはベン殿だけでした。本当に嬉しかったんです」

 

「俺だってディルから色々な話を聞かせてもらった」

 

 大体はダンジョンで興奮した話ばかりだったがな……。

 

「さぁ、孫のところへ行ってやれ。俺はギルドで魔結晶を売ってくる」

 

「ベン殿も一緒に孫のところへ行きませんか? 病と言っても人にうつるような類のものではありません。孫からもベン殿にお礼を……」

 

 ディルの真剣な眼差しが俺から選択肢を奪う。さっさと魔結晶を売っぱらってビッグホールで飲もうと思っていたが、それは少し後になりそうだ。

 

「……分かった。行こう」

 

「ありがとうございます! 息子夫妻はラムズヘルムの職人街におります。そんなに遠くはありません。さぁ」

 

 すっと背を伸ばしたディルが先導し始めると、いよいよ断れない。はぁ。少々面倒くさいが仕方ない。俺は渋々後をついて行った。

 

 

#

 

 

 ディルの息子は武具の工房で働く鍛冶師らしく、昼間は家に居なかった。居るのは留守を守る息子の嫁と7歳になる孫だけだ。

 

 居間に案内されると薄く味のついた茶を出された。決して美味いとは言えない。金がないのだろう。血色の悪い女──ディルの息子の嫁──はどこか居心地が悪そうだ。

 

「改めて、こちらがベン殿だ。ベン殿のおかげでアナルローズを採取することが出来た」

 

「あっ、ありがとうございます!」

 

「実際にアナルローズを採取したのはディルだ。俺は少し護衛をしただけだ」

 

「とんでもない! ベン殿の武神の如き活躍で無事に帰ってこられたのです。ドリルワームに肛門を塞がれた時はもう本当に駄目だと思いましたよ」

 

「……えっ。肛門を?」

 

 女は何事かと目を見開く。

 

「ダンジョンの入り口のことだ。そこをモンスターに塞がれそうになったんだ」

 

「し、失礼しましたっ! ……そんなに危なかったんですね。申し訳ないです」

 

 自分の子供のために危険な目にあったとでも思っているのだろう。だが違う。冒険者が危ないのはいつものことだ。

 

「気にするな。ハーピーダンジョンに行かなければ別のダンジョンに行っていただけだ。危険なのは変わらない」

 

「……そうなんですね。……冒険者ですものね」

 

 何かを理解するように女は言葉を噛み締める。

 

「シリーの様子はどうだ?」

 

「……今もうなされています」

 

 お茶なんてしてる場合じゃないな。さっさとアナルローズを処方した方がよさそうだ。

 

「おい、ディル。世間話は後にしようじゃないか。お前の孫、シリーと言ったか? そちらを優先しよう」

 

「はい。そうさせて頂きます」

 

 ディルは立ち上がり、女もそれに続く。

 

「行きましょう」

 

 あれ? 俺も行くのか?

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