これを乗り切って、来年には懐かしいACの戦場に出るんだ……実力はカラスじゃなくて雀だけど
太陽が姿を消し、辺りが夜闇に包まれて数時間。
人工の光も乏しい路地裏を一人の少年が息を切らしながら走っている。
「はぁっ! はぁっ!! なんだよ……なんなんだよ!?」
彼の顔には普段浮かべている傲慢さを滲ませる余裕の笑みはなく、代わりに張り付いているのは得体のしれないモノへの恐怖だ。
少年は稀に見る強個性を手に生まれてきた。
両親は温度変化とはまったく関係ない個性の持ち主にも関わらず、彼は『猛炎極寒』という炎と氷を操る個性を発現させたのだ。
医師から個性の突然変異と診断された少年は年不相応の聡明さも相まって、末はトップヒーローと周囲から持て囃された。
彼自身もその頂を目指しており、来年には日本最高峰の育成校である雄英入りは確実と言われていた。
さて少年の力や聡明さだが、もちろん偶然ではない。
彼はいわゆる転生者という類の人間だ。
前世で不慮の事故によって若い命を散らした少年は神を名乗る光の手によって、創作物でだったこの世界へと生まれ落ちたのだ。
年齢に見合わない知識や精神性は前世の人生経験を引き継いだもので、個性も神から与えられた特典だった。
「くそっ! 本当ならデク達と一緒に雄英へ入って、ヤオモモとイチャイチャするはずだったのに!!」
年頃の男性なら多くが持つ色欲と虚栄心、その二つを胸に秘めていた少年だが口にした面々とは一年遅れで生まれてしまった。我が身を何度も呪っていた。
そんな運命を呪いながらも彼は同級がダメなら後輩としてお近づきになろうと奮起した。
今夜のように自警団紛いの活動を行う事でヴィランとの実戦経験を積むのも、その一環だった。
とはいえ後にヴィラン連合の幹部となる者や異能解放戦線など、強者を相手にするには不安がある。
少年がターゲットとしたのは街に裏街道に屯しているチンピラ達だった。
そうして自分より力のない者を打ちのめし、正義を成したと悦に浸る。
ステインという男が少年を見たならば、間違いなく偽物と唾棄するだろう。
しかしそんな彼は今狩る側から狩られる側になっている。
相手は強個性を持ったヴィランか?
否である。
それは炎の化身だった。
エンデヴァーのヘルフレイムを軽く凌駕する獄炎を煮え滾るマグマで覆った4mを超す巨人。
その者の名は火毒龍王といった。
『どうした、小僧? お前はヒーローなんだろう、英雄なんだろう? なら竜殺しに挑戦しない手は無いよなぁ!!』
げらげらと笑いながら袋小路に追い詰められた少年を煽る龍王。
その心底見下した言葉は少年のプライドを痛く刺激する。
「舐めるなよ、化け物め! 俺はこの世界の主人公なんだ!! くらえ、フリージング・ブラスター!!」
少年は右手に炎、左手に氷塊を生み出すとそれを猛烈な勢いで巨人へと放つ!
熱気と凍気、二つの相反するエネルギーを同時に浴びせる事で物質の強度を下げ、目標を粉砕する彼の必殺技だ。
しかしそんな渾身の一撃は巨人の向けた右手によって容易く受け止められてしまう。
「う…うそだろ!?」
『おつむが足りてねえなぁ。いくら熱かろうが寒かろうが、俺にただの物理現象は効かねえんだよ』
渾身の一撃がかすり傷すら与えなかった事に絶望する少年、そんな彼に巨人は左手を向ける。
『冥途の土産に教えてやるぜ、必殺技ってのはこうやるんだ。───龍気熱波ッ!!』
そして放たれるのは少年の炎など比ではない程の焦熱だ。
「ぎゃああああああっ!?」
摂氏6000度を超える灼熱を浴びた少年は跡形も無く消え去ってしまった。
そうして死した少年の魂を食らいながら火毒龍王は嗤う。
「明王共の封印の中で人間が進化したって聞いちゃあいたが、こりゃあどう見ても退化だろ。なにせ、大道芸の代わりに霊力を失っちまったんだからなぁ!!」
憶えているよりも随分と薄味で食いでが無くなった魂に満足できなかった炎の魔物は、次なる獲物を探して闇の中へ消えるのだった。
そして場面は別の場所へと移る。
ビル群の中でポッカリと開いた空き地ではホークスに匹敵する期待の新人と謳われるヒーローが、人とトカゲが混ざり合ったような土色の巨人とシノギを削っていた。
「なんて硬さだ!? それに重力操作の個性なんて聞いてないぞ!!」
『この地毒龍王様の力をそんなチャチなモノと一緒にするんじゃねえぜ!!』
そう怒鳴りながら地毒龍王は口から長く伸びた舌先を向ける。
すると指し示された場所は、まるで不可視のハンマーで殴られたかのように巨大なクレーターが発生する。
その破壊エネルギーを間一髪で躱したヒーローだが、生み出された大地の傷痕の酷さに戦慄を隠せない。
「こうなったら出し惜しみをしている場合じゃない! スタープラチナ・ザ・ワールド!!」
ヒーローがそう吼えるとと、同時に今まで届いていた街の喧騒が消える。
そう、これこそ彼がプロヒーローとして躍進を遂げた理由。
転生時に特典として幽波紋スタープラチナの力を個性として手に入れていたのだ。
その能力は超パワーと精密動作、そして時を止める能力。
今まで彼と対峙したヴィランは次の瞬間には、何が起こったか理解できないままに全身をボコボコにされて地面に沈む事となった。
故に時間停止という切り札を切れば目の前の厄介なヴィランも倒せる、そう思っていた。
「さあ、貴様の罪を───ごぶぉっ!?」
しかしヒーローの必勝を期した思惑は、彼の口から吐き出された鮮血と共に崩れ落ちる事となる。
肺の部分を始めとして全身から突如湧き出した激痛。
「な…なにが……!?」
それに耐えきれずに吐き出した己が血だまりに目を向けたヒーローは戦慄した。
何故なら大地に吸われていく紅の中で蠢くモノがあったからだ。
闇夜を見通さんとした彼の瞳に飛び込んできたモノはダニ。
それもタダのダニではない、ゴキブリ並みに巨大化したダニだった。
「う…あ……こんな……! ぐばぁっ!?」
彼が自分の置かれた境遇の危険さを理解した時にはもう遅かった。
ヒーローは全身をダニに食い破られて無残に息絶えたのだ。
術者の死によって時間停止が解除されると、地毒龍王はニヤリと笑う。
「時間停止とは驚いたが、テメエが動けるって事は体内にいる者もその影響を逃れるってこった。普段は吸い込んでも分からないダニが巨大化するのはオツなもんだろ」
そう手向けの言葉を口にすると、異形はその舌を伸ばしてヒーローの血肉で肥え太ったダニをぺろりと平らげた。
そう、無害なダニが巨大化した原因は地毒龍王にあった。
奴は戦闘の最中にヒーローの体内へ大地の氣を送り込み、肺や内臓の中に吸い込まれていた眼にも見えない微細なダニを全て巨大化させたのだ。
「しかし個性ってのは罪なもんだぜ。時間停止なんて大技かます術者には、こんな手は絶対に通じないからな。ところが個性使いはその辺が完全無防備ときた。何考えてこんな馬鹿な力を得たんだ、サル共は?」
カラカラと笑いながら地毒龍王は空き地の地面へと沈んでいく。
久々の自由と人の血肉を味わう為に。
一連の闇の中で繰り広げられた悲劇、その様を夜空に浮かぶ暗雲の中から見ている者がいた。
彼の姿は一言で言うと耳が生えた空飛ぶ目玉。
手も足も無いが、彼等はそれでよかった。
卑妖と呼ばれる異形の役目は、己が主に目に映した光景と聞いた音を届ける事なのだから。
卑妖から念波を受け取った彼等の主はヒーロー達を襲った惨劇に怖気を誘う笑みを浮かべる。
それは純白の獣。
深き海の中、日本列島を支える柱に九尾をねじ込む形で動きを封じられた巨獣であった。
獣は眼前で自らを封じ護る結界を張り続けている黒髪の女に告げる。
『甘露、甘露。今の世は悍ましいなぁ、楽しいなぁ。我の好むモノが山と積んであるぞ。恐怖、憎悪、絶望、悲嘆。その全てが甘露よ!』
ヒーロー飽和社会の中、ヴィランの起こした犯罪に巻き込まれる人間は後を絶たない。
傷つけられた者がいる、手足を失った者がいる。
命を落とした者も、掛け替えのない人を失った者もいるだろう。
彼等は悲しみ、嘆き、犯人や世を憎み恨む。
そしてそれは一般人だけではない。
ヒーローもヴィランも不幸に遭えば悪想念を吐き出すのだ。
その全てが彼女にとって活力となる。
『須磨子よ、我の傷は間もなく癒えるぞ。我が力はじきに満ちるぞ。その時、この日ノ本は無残に海の中へ沈むのだ。お前の息子は間に合うか? 獣の槍は間に合うかなぁ!?』
厳しい顔で沈黙を貫く女を煽りながらも純白の獣は冷静に頭を回す。
嫌がらせでお役目の女にはああ言ったが、地上には彼女を以てしても油断ならないモノ達がいる。
(不動に孔雀王、さらには鬼神や魔神もいるか。あとは十年前に島一つを吹き飛ばしたナニカも気になる。もう少しここで力を蓄えるべきだな)
そう自らの中で結論付けた妖の主は再び沈黙に没するのだった。
◆
緑谷出久を狙うカルト教団ドルド、その襲撃に巻き込まれた轟焦凍。
彼はクラスメイトである出久と肩を並べながら、眼前で起こる奇妙な現象に奥歯を軋ませる。
「このぉっ!!」
右手を振るって産み出した氷は地を這いながら剣山のような鋭さを以て教団員へと襲い掛かる。
「我が一族を護りし栄誉なる存在よ! 闇なるものをその聖なる御手を以て光の彼方へ消し去りたまえ!!」
だが教団員が呪文を唱えると、彼等の身体を包む光の膜によって氷は全て消し去られてしまうのだ。
「どうなってんだ、いったい!?」
「馬鹿め、個性など我等が魔術の前では塵芥も同然よ! 火よ、轟焦凍まで届いて焼き尽くせ!!」
そして教団員達は手にした杖から呪文と共に黒炎を放つ。
轟は咄嗟に氷を生み出して盾にするが、黒炎は分厚い氷壁を障子紙のように食い破って彼に襲い掛かってくる。
「クソッ! 本当に魔法だって言うのか!?」
オカルトなど欠片も信じていなかった轟だが、何度も理不尽な光景を見せられればその存在を認めざるを得ない。
一方の出久の方は教祖と一進一退の攻防を繰り広げていた。
手にした御神刀の蒼い刃は教祖の魔術を切り裂き、一方の教祖も出久の放つ斬撃を柔毛に覆われた手から張った紫紺の障壁を以て受け止める。
「その蒼い輝き、聞いた事があるぞ。かつてこの国には魔神を討った刀があると」
「くっ!? いったい何の事だ!」
教祖から繰り出された拳を紙一重で躱す出久。
その一撃は余波だけでコンクリートでできた壁面に穴を穿つ。
背後から響く破壊音を置き去りに闇を掛ける出久は、中国武術の中で教わった短刀術を駆使して御神刀を振るう。
袈裟斬りを空振れば身体を回転させての回し蹴り、それが空を切れば腹への刺突。
流れるように放たれる連続攻撃は、教祖の滑らかな足捌きと障壁によって全て阻まれていく。
「ふふ……サルドゥ復活の方法を探る関係上、私はその手の話には詳しいのだ。その剣は忍の源流に伝わる三種の妖刀、その一振りに間違いあるまい」
饒舌に言葉を紡ぎながら突き出した右手、そこから放たれた不可視の衝撃に出久は大きく後退してしまう。
「記録によれば戦国末期、安土城に現れた黒の魔神をその妖刀は城ごと吹き飛ばしたとある。そして忍の源流の血を引く者しか真価は発揮できんともな」
教祖の言葉に出久は内心で驚きを噛み殺す。
何故なら奴の口にした事が母が出久に御神刀を託した時に伝えられた事と符合するからだ。
「刀が力を発揮しているという事は、貴様はその末裔といったところか。しかし奇縁よな。サルドゥの依り代に選んだ小僧が魔を断つ剣を持つのだから」
「この剣は母さんが僕にヒーローの道を諦めるなと託してくれたものだ! お前の言う伝説が事実なら、僕はその悪しき野望を断つ!!」
出久の決意に応じるかのように蒼い輝きを強める御神刀。
その一撃は、先ほどまで歯が立たなかった教祖の障壁に刃を通す程に強化されている。
「何故そこまで抗う? 世界の破滅はすでに始まっているのだぞ」
徐々に食い込んでくる蒼い刃に抗いながら、教祖は出久へ問いを投げる。
「ふざけるなっ! 何を根拠にそんな事を!」
「10年前、日本に破壊神が降臨した事よ。貴様も知らぬとは言うまい、四国消滅事件を」
獣の仮面の奥で暗く光る教祖の眼光、それと共に浴びせられた言葉に出久の瞳が不安定に揺れる。
「当時邪神復活の為にアステナイトを研究していた私は、彼の金属を通して爆発的なサイキックパワーを感知した。それは全ての計器が破砕され、感知したアステナイト自身も崩壊する程のものだった。貴様は未知の金属と言っているが、アステナイトは遥か太古から存在する神の金属だ。それが周囲へ破壊を振りまき自壊する程の共振を示すなど、神が降臨した以外に何がある?」
「神の金属だと!?」
「そうだ! 現に個性を持つ奇形種共にはアステナイトは応えん! 神の金属を扱えるのは駆逐されつつある真なる人類のみ! それはこの魔術も同じことよ!!」
咆哮にも似た怒声と共に障壁を解除して雷撃を放つ教祖。
「ぐああっ!?」
出久は咄嗟に御神刀を掲げて防御にまわすが、八俣に分かれた雷蛇の牙の全ては防ぎきれずに後ろへ吹き飛ばされてしまう。
「だからこそ私はアメリカの地を捨て、この極東へと降り立った。神を蘇らせる手はここにあると確信してな。そして十年の時を経て破壊神は再び現れた。雄英高校襲撃事件の元凶である怪異を滅する為に」
「……まさか」
そう、ファイテックスを装備していた出久には分かっていたのだ。
あの時、本当の意味で怪人を葬ったのは誰であるかを。
真実を口にしなかったのは荒唐無稽であるのも然ることながら、個性とは異なる超常の力を持つ従姉妹を護る為でもあった。
「雄英にいたお前は知っている筈だ、四国を消し飛ばした破壊神が誰かを! それも答えてもらおうか!!」
出久は否定したかった。
目の前の男の妄執はイヤと言うほど知っている故に、奴の戯言もそこから来た世迷い事だと。
「……だまれ」
だがいくら心が否定しようとも、科学者としての自分は真実を見つめろと囁く。
プロトタイプに残された記録、そしてトトが観測したデータは如実に示していたのだ。
教祖の言がデタラメでも何でもない事を。
「黙れぇぇぇぇぇ!!」
体育祭から今まで目を背けていた事実を突きつけてきた教祖に、出久が喉が破れんばかりに憎悪の声を上げる。
そして主から負の感情を込められた御神刀は、その刃から強烈な波動を放ったのだ。
「いかん!」
アスファルトを砕きながら襲い来る蒼光を見た教祖は、とっさの判断で残された魔力を行使する。
それに一瞬間を置いて、波動は彼の背後に控えていた2人の教団員を飲み込んだ。
「ぎゃあああああああっ!?」
膨大なエネルギーの中、断末魔の声を上げて消滅する犠牲者。
「……ッ! ダメだ!!」
その声によって我に返った出久は御神刀を天へと掲げる。
路地の右側に立つ民家を飲み込む寸前で方向を変えられた波動は、夜闇を切り裂きながら空の彼方へと消えていった。
「はぁ…はぁ……」
波動が消えた後、出久は息を切らせながらその場に膝を付いた。
体力を大きく削られた事もそうだが、何より人を殺した事実が心に重く圧し掛かったのだ。
「まだだ…轟君が……」
罪悪感で萎えそうな意識を奮い立たせて、身体を起こそうとしたその時だ。
「妖刀の力、確かに見せてもらったぞ」
背後から聞こえた教祖の声と共に首筋へ衝撃を受けた出久は、その意識を闇へと落としてしまった。
奇妙な技で個性を封じてくる教団員達に苦戦していた轟は、力なく教祖に俵担ぎにされた出久の姿に息を呑む。
「緑谷!」
「貴様には何の興味も無い。エンデヴァーは最高傑作と言っていたようだが質の悪い冗談だ」
「うるせえ! 緑谷を返せ!!」
教祖のゴミを見るような目に氷山のような圧倒的大質量の氷で返す轟。
だが、それも教祖が無詠唱で放った黒い炎の前に消え去ってしまう。
「お前達は全て粗悪品だ。神からの愛を失った失敗作共め」
「うわあああああっ!?」
そして黒い炎に弾き飛ばされていく轟を一瞥すると、教祖はテレポートでその場から消え去るのだった。
◆
どうも、エネルギー極限発生装置どころかキョーダインパワーも絶対に使ってはならない鋼鉄姉妹の姉です。
冗談はさておき、現在私はイケメンから熱い熱い視線を受けている。
普通の女性なら泣いて喜ぶシチュエーションなんだろうが、これが絶対にバレてはならない秘密を暴く人生終了メンチビームというなら話は別だ。
というか、黎の後ろで後方守護神ヅラをしているのは御不動様でございますか?
霊体のくせにバッチリ見えてて草も生えないんですが!!
『姉上、どないしまひょ! 腕が2本だったり6本だったりする謎の筋肉メーンがこっちをメッチャ見てる!!』
『眼を逸らすな! 眼を逸らしたら『破邪ぁぁっ!!』されるぞ!!』
平静を装いながらも内部でテンパりまくっている私とダイアナ、そんな窮地を救ってくれる思わぬ人物が現れる。
「こりゃ、お主等! 彼女達の後ろにいる者を調べる前に先ずは謝らんか!!」
それは鬼太郎の頭の上で飛び跳ねながら黎を叱りつける目玉のおやじさんだった。
「謝る…ですか?」
「そうじゃ! ワシ等はお嬢さん達にあらぬ疑いを掛けておったのじゃぞ! 裏高野にいたっては危害まで加えようとする始末! それが晴れたのなら、今までの非礼を詫びるのが当然じゃろ!!」
戸惑いがちな公安委員長の問いかけに強い口調で返すと、おやじさんはあの身体を器用に折り曲げてこちらへ深々と頭を下げた。
「ベイト殿であったな。お孫さんへの無礼、深くお詫び申し上げる。騙し討ちのような形でここへ呼び寄せ、お二人の内面まで覗き込むような真似をした。事情があるとはいえ、此方の態度は非難されて当然のことじゃ。本当に申し訳ない!!」
さすがは、このメンツの中ではブッチギリで年長者のおやじさん。
妖怪だけど人間性がぐう聖すぎる!
そして年長者が真っ先に頭を下げたのなら、それに従ってしまうのが日本人の性というモノ。
「疑いの視線を向けてしまい、すみませんでした」
おやじさんに続いて最初に頭を下げたのは鬼太郎だった。
まあ彼には何もされていないし、逆に謝られても困るんだがな。
「えっと……なにも知ろうとしないで、皆さんを警戒してました。ごめんなさい」
「僕もマスターと同様です。もう少し皆さんの事を真っ直ぐ見るべきでした。申し訳ありません」
「けっ! ガキがバケモンじゃなかったんだ、それでよかったじゃねえか」
千明さんと後鬼がペコリと頭を下げ、童子姿の前鬼はプイと顔を背ける。
性格が原作通りなら前鬼の方は人間に謝るとかほぼあり得ないので仕方ないね。
ちょっとバツが悪そうにしているあたり罪悪感は感じてくれているようなので、それで良しとしよう。
「愚息が申し訳ない事をした、本当に申し訳ない」
「たしかに順序を間違えていた。すまない」
でもって、父と共に会釈しながら謝罪の言葉を紡ぐ黎。
驚いたのは、その前に胎蔵氏が彼の頭を叩いた事だ。
不動と童子って主従のはずなんだけど、その辺は現世の親子関係を優先しているのだろうか?
「五輪坊の件も合わせまして大変ご迷惑をお掛けしました。この件は我が師慈空阿闍梨を通じて必ずや真言宗上層部へ伝え、改めて謝罪と賠償をさせていただきたく思います」
「ご…ごめんなさい!」
そして裏高野が色んな意味でやらかしたこともあり、孔雀は土下座せんばかりの勢いで頭を下げていた。
彼自身は何もしていないので、少し気の毒ではある。
阿修羅共々貧乏くじだなぁ。
「スターストライプ、そしてご家族の皆様。今までの対応に失礼な事があった事、謹んでお詫び申し上げます」
そして最後は公安委員長。
この人は立場やら何やらがあったのだから、正直しゃあないと思う。
「ここで聞いた事情を思えば、あなた方の態度はある程度仕方のないのは理解できる。我々の帰国を遅らせたのも、孫娘達の疑いが関係しているのだろう?」
「はい。お嬢様がたがそうであった場合、国外に逃亡されては我々に打つ手が無くなりますので」
グランパの確認に公安委員長は苦い顔で頷く。
恐らくは宗教方面、下手をすれば旧陰陽寮関連で宮内庁辺りからも圧が掛かっていたってところか。
「それで遅れていた手続きの方はやってくれるのか?」
「はい。ただ、お孫さん達は四国消滅事件唯一の生存者です。この事実が流れれば民衆やマスコミが黙っていないでしょう。さらには政府上層部はお二人がタイムスリップを行った事を知っています。中にはそう言った個性だと考えている者もいるので、出国拒否が解けない場合もあります。ですので伝手があるのならアメリカの方からも圧を掛けていただいた方がいいと思います」
『お姉ちゃん、私達大人気だよ(棒)』
『悪い方向で国の重要人物だぞ、嬉しいなぁ(白目)』
つーか、キャシー達が来なかったら早々に私達を雄英から引っ張り上げるつもりだったろ、日本政府。
妖魔の皇疑惑のゴタゴタで有耶無耶になったみたいだけど、それが無かったら研究所にGOコースだったんじゃなかろうか。
……うん、魔獣たんは落ち着こうね。
私達がモルモットになる事は無いから今は顔を出さないでくれ。
「ところで話は戻るんじゃが、この子達の後ろにおるのがカルキというのは本当なのか?」
むこうの謝罪で緊張していた場が少し和んだところで、胎蔵氏の言葉で話題は再び魔獣たんの事になった。
するとオールマイトがデカい身体を小さくさせながらゆっくりと手を上げる。
「すまないが、そのカルキというのは何なのだろうか? 随分と物騒な神様のようだが……浅学で申し訳ない」
そうかしこまる国の英雄に胎蔵氏が教鞭をとる。
「カルキというのはヒンドゥー教の三大神ヴィシュヌ神が世界を救うために変身する十種の化身、アヴァターラの最後の一つじゃ。その化身はカリ・ユガという滅びと悪徳の末世において人間が堕落の極地に達し、世界の終わりが来たときに顕現すると言われておる」
「さっきは救世主と言っていたけど、カルキとやらは悪徳の世を救うのかい?」
根津校長の言葉に頷く胎蔵氏だが、その表情は話題に反して固い。
「ある意味ではそうじゃ。彼の化身は末法の世に蔓延る悪と不道徳、不法を滅ぼし尽くす為に世の全てを破壊する。その対象には悪人は勿論のこと、善行を成さず悪行を見逃してきた者達も含まれる。そして善人のみを救い、世界に法と秩序を取り戻すのがカルキの役目なのじゃ」
なんとも凄まじい救済法である。
これなら破壊神と言われても納得がいくというモノだ。
「しかしカルキはヒンドゥー神話でも登場する事がない化身じゃ。それに黎君の言う事が確かなら彼女達はヴィシュヌ神と繋がりがある事になるぞ」
目玉のおやじさんの言葉に黎は首を横に振る。
「彼女達にヴィシュヌ神との繋がりは無い。俺がカルキと言ったのは見立てだ」
「見立て?」
「見立てというのは儀式などで人形や祭具などを神や神器の代用品とする事を言う。例えは悪いが丑の刻参りで藁人形に呪う相手の代わりに釘を打つじゃろ? あれも見立ての一種じゃ」
首を傾げる相澤教諭に胎蔵氏が説明を行う。
「そうだ。そして彼女達の後ろにいる存在はカルキと同じ事を成したということだ。だからこそ、霊視で俺はソレがカルキに見えたんだ」
『つまり魔獣たんがカルキに見立てられたってことは……うわぁ』
『あっちゃあ……そういうことか』
その言葉に皆は息を呑むなか、私と妹はストンと腑に落ちる気分を味わっていた。
なるほど、エレインやダイアナ、そして魔獣たんが行ってきた事はカルキと被るものがある。
あの世界は戦乱と悪徳が蔓延っていた。
世界的大企業な九竜財閥が経済的に国際社会を牛耳り、奴等が新兵器を売りさばく為に中東や発展途上国では意図的に戦争が引き起こされていた。
そして香港で研究されていたサイキッカーの子供達やヴァジュラノイドの材料として変質させられた犠牲者のように、新兵器開発の礎として社会的弱者が使い捨てにもされている。
そして大破壊の後に復興した独裁者が貧民たちを踏み躙る悪徳の都市アークド・グランも同様だった。
あの世界ではアークド・グランと九竜が遺した軍事衛星を破壊した後、魔獣たんは最後にリュウとメルという夫婦とお腹の中にいた赤ん坊を救っている。
死ぬほど運と間が悪い事を除けば、彼等は確かに善良な人物だった。
そう考えれば御不動さんが魔獣たんをカルキと見なしてもおかしくなのかもしれない。
そこまで考えを巡らせた私は決断を迫られている事に気が付いた。
ここで皆の心に楔を打っておかないと、絶対にエラい事になる!
どうしたものかと思っていたその時だ。
「長官! 敵襲です!」
警官の一人が叫びながら扉を開けたのだ。
「敵……ごばぁっ!?」
もっとも、次の瞬間には後ろから現れた脳をむき出しにした黒い怪人に上半身をガブリといかれてしまったが。
この気配はヴァジュラノイドに違いない。
「あれは!?」
「雄英を襲った怪人か!」
雄英の面々が殺気立つ中、切断面から咬み千切られた腸を垂らして赤い噴水を上げる警官だったモノ。
その後ろで朱に染まりながら美味そうに咀嚼する怪人へ私とダイアナは手を翳す。
『ぎゃばぁっ!?』
瞬時に怪人を捕らえたヴァジュラの結界、紫電が奔ると奴の肉体は沸騰した水のように膨れ上がって爆散する。
「ナイス、ダイアナ」
「なんの、これも双子のコンビネーションよ」
互いにサムズアップする私達だが、幼女がこんなスーパー惨殺技をカマしては周囲の大人達がいい顔をするわけがない。
一時でも担任だった関係か、相澤教諭が厳しい顔で声を掛けてくる。
「おい、何をしたんだ?」
「結界に閉じ込めて高出力のマイクロ波を全方向から浴びせた」
「簡単に言うと電子レンジだね」
ヴァジュラノイドと同型みたいだったし、この手の輩は全身の細胞を一気に死滅させるのが一番手っ取り早い。
「え…エゲツない」
「へっ! 少しはやるじゃねーか、あのガキ共」
もっとも内容を聞いた周囲は前鬼を除いてドン引きなワケだが。
「そんな物を躊躇なく使ったのか、お前等」
「私達は敵には容赦をしない主義でな。それとも手心を加えて雄英のような惨事を引き起こした方がいいのか、先生?」
普段の陰気そうな顔とは打って変わって怒りを露にする相澤教諭だが、私がそう返すと苦い顔で口ごもる。
ヒーローは殺しが御法度らしいが、そんなのは知った事じゃない。
私達や家族に手を出す奴は容赦なく叩き潰すまでだ。
まあ、そんな事よりも私達には考えるべき案件がある。
『お姉ちゃん、なんだか超能力の威力上がってない?』
ほら、ダイアナも気が付いて念話で話しかけてきた。
『それは多分、魔獣たんに生えたスキルのせいだろう』
先程の恐らく不動との会話の後、魔獣たんと繋がった回線から喜びの感情が送られてきた。
それと同封されたイメージには、見事な筆さばきで書かれた一つの単語があったのだ。
『悪滅って……なにこれ?』
『悪しきモノに対して攻守ともに絶対的な優位に立つ代物らしいな』
『要するにパワーアップって事ね。それで問題は───』
『ああ、悪認定の基準が魔獣たん次第ってことだ』
あの子からの説明だと現状悪認定を食らっているのは悪魔や妖物、私達に牙をむく存在、そして人間だ。
普通ならこう言った類の力には人間は除外される筈なんだが、思い切り突き刺さってるのが魔獣たんらしい。
でもって超能力の威力が上がったのは、コイツのおこぼれが私達に流れて来たからだろう。
『でも、これで魔獣たんの人間用スキルも三つめか。もう人類じゃ倒せないんじゃないの?』
『……言わないでくれ。万が一の際に備えるのは私達の義務なんだ』
ダイアナのいう魔獣たんが持つ対人間用のスキルとは以下の三つ。
ああ、スキルというのは便宜上の言い方だ。
その効果を考えるなら理、カルキ認定された事を思えば権能と称した方がいいかもしれん。
【1.霊長類絶対殺戮権】霊長類が相手なら、どんな強者だろうと問答無用で殺せるらしい(前の世界で人類をほぼ絶滅させた事で得た理)
【2.文明の否定】人類のみならず、全ての文明で造られた者に対して絶対的な防御力と攻撃力を持つ(前の世界で地球上の文明を崩壊させた事で得た理)
【3・悪滅】魔獣たんが悪と認識したモノが相手だと相手に多大なデバフが掛かって、魔獣たんには強烈なバフが掛かる(不動様からカルキ認定された所為で生えた権能)
うん、改めて考えると酷過ぎる。
『この一つ目って霊長類ってところがミソだよね。多少人間から外れても霊長類をブッちぎるのは難しそうだし』
『そうだな。魔獣たんに抜かりが無さすぎて涙が出そうだ』
意地でも人間には負けたくないという強い意志を感じます。
……さて、脇道な事を考えるのはここまでにしよう。
なにせ今は敵の襲撃を受けている最中だ。
『ダイアナ、建物をスキャンするぞ。化け物共がどれだけいるか、確かめる』
『もう終わってるよ。ヴァジュラノイドらしき反応が玄関に2体。こっちは警官隊と戦っているみたい。あとは屋上から2体こっちに向かってる』
『目標はヒーロー公安へのテロか。まずは屋上から近づいてくる奴等を、ここに引き寄せるぞ』
『あいあい』
妹とザックリ作戦を決めると、私は周囲の面々へ声を掛ける。
「今、気配を探った。このビルに襲撃を掛けている怪人は残り4体。2体は玄関で護衛の警察官と交戦中、もう2体は上からビルの中へ侵入しようとしている!」
「そうか! ならば私が……」
「奴等はみんな魔物に両足突っ込んでる連中だから、今のオールマイトじゃ役に立たないよ。そういうのは専門家に任せて!」
ネクタイを緩めるオールマイトへ冷や水を浴びせかけるダイアナ。
「し…しかしだね」
「無理なモノは無理なの! サメ退治に害虫駆除業者放り込んだってどうにもならないでしょ! 個性持ちの犯罪者が相手なら頼りにするから今回は待機!!」
反論しようとするオールマイトを勢いのままに押し込めるダイアナ。
普段なら小娘の言葉一つで引っ込むような御仁じゃないんだろうが、今はオカルトは専門外だと骨身に染みたばかりだ。
今回ばかりは流石に引っ込まざるを得ないだろう。
仮にオールマイトの体調が万全なら、ダイアナも止めはしなかっただろう。
実のところ、彼は個性持ちの中で唯一魔物を倒す可能性を秘めている。
何故なら彼の個性のみ、かなり強力なヴァジュラエネルギーを宿しているからだ。
だが残念ながら今のオールマイトはその力を彼自身に使われている。
これでは魔物に攻撃を加えても100分の1もダメージは通らない。
雄英でヴァジュラノイドを倒せたのは、奴が犠牲者から個性を奪い過ぎてヴァジュラエネルギーを失ったからだ。
というか透視して分かったけど、オールマイトは片肺と胃袋が無いし身体もボロボロじゃないか。
あれでは個性のヴァジュラだって生命維持に回るわ。
「というわけで上にいる奴はここに引き摺り下ろす。皆はそこを狙ってくれ」
「分かったわ! いくわよ、前鬼! 後鬼!!」
「おう!」
「分かりました!」
まず最初に動いたのは役千明と鬼神達だ。
「我解くる鬼神の呪縛、秘咒の刃にて封咒を断つ!」
千明が両手で印を組むと彼女が身に着けた腕輪に描かれた五芒星の中央にある宝珠が強い輝きを見せる。
「破咒! ヴァジュラ・オン・アーク! 現臨せよ、汝・前鬼!!」
彼女が呪を紡ぐと童子姿の前鬼が光に包まれる。
「鬼神前鬼、ここに現臨!!」
そして次に現れたのは鬼神の名に恥じない屈強な男だった。
「鬼神変現! アカーシャ・オン!!」
そして後鬼も自ら呪を紡ぐ事でその姿を人間から鬼神へと変える。
青い光の後で現れたのは、前鬼と似たデザインの鎧を纏った少年の鬼神だった。
他にも孔雀と黎は印を結び、阿修羅は力を行使しようとグッと踏ん張っている。
鬼太郎も戦闘態勢に移行し、おやじさんは息子の髪の中に納まっている。
「それじゃあ行くぞ!」
壁を奔る配線を伝って8フロア上の屋上をうろつく怪人共にヴァジュラの糸を絡めると、空間転移でオフィスの中心へと放り出す。
念動で引き摺り落とす方が楽なんだが、この上はホテルになっている。
ヒーローがいる手前、流石に宿泊客を巻き込むのは面倒になる。
そして突然のことに状況が掴めないのか、周囲をキョロキョロと見回すヴァジュラノイド達。
そこに取り囲んだ日本指折りの退魔師たちの攻撃が飛ぶ。
「「
「燃えちゃえーーー!!」
黎と孔雀は不動明王火炎呪を放ち、阿修羅はその権能による発火能力で炎を飛ばす。
その一撃はヴァジュラノイドの一体を瞬く間に火だるまに変える。
「お姉ちゃん! 結界、結界!!」
「この人達、上がホテルだって事忘れてるだろ!!」
私達は慌てて天井と床に空間転移の応用でワームホールを開く中、もう一匹の方には前鬼たちが襲い掛かる。
「鬼太郎! まずは奴の視界を封じるのじゃ!」
「はい! 行け、ちゃんちゃんこ!!」
おやじさんの指示のもと、鬼太郎が放った虎柄のちゃんちゃんこがヴァジュラノイドの顔に張り付く。
「今ですよ、前鬼!」
「憑依の実も取れねえんだ、とっとと片付けるぞ!!」
そして顔全体を覆われて焦る怪人の動きを後鬼が結界で止め、そこへ前鬼が襲い掛かる。
「前鬼、受け取って!」
そして千明が放った光弾を背に受けた前鬼は拳に光の角を生やし、それをヴァジュラノイドの腹へと突き刺した。
「くらえ、
前鬼が吐き出す気炎と共に突き刺さった角から奔る光のエネルギー。
それを受けたヴァジュラノイドの身体は膨張し、粉々に砕け散った。
「あの化け物をあっという間に……」
「退魔師というのは、ここまでの力があるのか」
唖然とする雄英教師達だが、この辺は相性の問題である。
もっとも魔獣たんの弱点にも通じるので、これについては教える気は無いが。
さて、少々目蓋が重くなってきたので手早く行こう。
「一階にも二匹いるんで、そっちも片付けるぞ」
そう言い残すと私は部屋から出ていく。
「待ちなさい。危ないんだから一人で行かないの」
颯爽と肩で風を切りながら廊下と進もうとしたのだが、後ろからひょいとキャシーに持ち上げられてしまった。
「キャシー、降ろしてくれ。抱っこされると目蓋が重くなる」
「グランパもお願い」
後ろを向くとダイアナがグランパに抱っこされていた。
正直グランパ達はここに残って欲しいんだが、皆が移動した後に二人だけ置いておくのも危ないか。
「後はワシ等が片付けておくから、眠いなら寝ていてよいのじゃぞ」
そんな私達の声を聞いた目玉の親父さんが気を使ってそう言ってくれる。
「今日はこのホテルで泊まる予定なんだ。厄介事が片付いたか確認せずに高いびきを掛ける程、私の肝は太くない」
「君って話し方が渋いよね。子供の口調じゃないよ」
「妹が軽いんでね、必然的にこうなったんだ」
「私のせいにすんなし」
話しかけてきた千明にそう返すとダイアナから抗議を食らった。
この喋り方は生まれる前からなので今更変える気にならん。
そうしてビルの入口へ近づくと玄関のドアが破られたのか、外の喧騒が聞こえてきた。
しかしそれは悲鳴や銃声に破壊音と言った類のものじゃない。
先ずは膝を平手で叩くような肉を打ち合わせるパンパンという音。
そしてくぐもった苦痛というには少し違う声。
そして最後に───
「焚ッ! 焚ッ! 焚ッ! 焚ッ!」
「ち…チクショウ! なんであれで起つんだ!?」
「こんな場所で……信じられん!」
「なんという容赦のない突き込み! 野郎……できる!!」
「おい、もう一匹行ったぞ!?」
「あぶな……なにぃっ!?」
「あの突進を片手で受け止め……いや違う!!」
「フィンガーテクだ! ヤロウ、フィンガーテクで止めやがった!!」
「まるで指が別の生き物のように! 一瞬で吹かせやがった!! 奴は伝説の鷹か!?」
「す……凄い漢だ」
恐らくは警官たちのものであろう、要領を得ない男性の叫び声だ。
「いったい何が起こっているんだ?」
そう首を傾げながら外へ出た私は、飛び込んできた光景に我が目を疑った。
「性ッ! 聖ッ! 生ッ! 性ッ!」
「おほぉぉぉぉぉぉっ!?」
薄い金髪をオールバックにした男が女性型ヴァジュラノイドをバックから攻めつつ、さらには隣にいるもう一体の股間に指を這わせているではないか!
「あ…あわわわわ……」
「エレイン! ダイアナ! 見ちゃダメよ!!」
余りの光景に唖然としていると私達の目をグランマが抑えてくれた。
「あ…あの男は!?」
「知っているのか、親父!」
「江戸時代に世を騒がせた怪僧『女犯坊・竜水』の流れを汲み、カーマスートラや房中術に中国の錬丹術等を学んで性技によって退魔除霊を可能とした稀代の大天才! その名をカムイ!!」
ヤバい霊能力者の最後の一人ってコイツかよ!?
ヤバいの意味が違うだろうが!!
【悲報】五毒龍王が明王達の封印から脱し、人間界に逃げ込みました(明王伝レイ)
【悲報】白面の御方がアップを始めました(うしおととら)
【悲報】緑谷出久が邪神サルドゥの依り代としてドルドに拉致されました(聖獣機サイガード・僕のヒーローアカデミア)
【朗報】カムイさんがヴァジュラノイドと戦えるようです(後ろの正面カムイさん)
【悲報】カムイさんがタイーホされそうです(後ろの正面カムイさん)
【凶報】ジェノサイバーがパワーアップしました(ジェノサイバー 虚界の魔獣)