【急募】私達が世界を滅ぼさずに済む方法   作:アキ山

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お待たせしました。

闇鍋小説の完成でございます。

ぶっちゃけ、読者の皆様がマニアックなネタにどれだけついてこれているか不安ですが、暇つぶしに使っていただければ幸いです。


早く日本から脱出しないといけない気がする(エレイン・ダイアナ)

 カルト教団ドルド日本支部……現在では総本部というべきか。

 

 そこには一つの巨大な甲冑が安置されている。

 

 兜と両肩に獣の顔をモチーフにした意匠が施され、全長4mにも及ぶ巨大な代物。

 

 これこそがドルドが信奉する神、邪神サルドゥの鎧なのだ。

 

「さあ、邪神サルドゥよ! 貴方に極上の贄を捧げよう!! その依り代の身体を介して蘇るがいい!!」

 

 邪悪なエネルギーを放ちながら兜と両肩の獣の両眼を紅く光らせる鎧に向けて、ドルドの司祭は喜悦の籠った声をかける。

 

 司祭の言う通りサルドゥの鎧は歓喜していた。

 

 新鮮かつ適合率の高い依り代が捧げられた事に。

 

 しかしそれは鎧に取り込まれた出久にとって地獄以外の何物でもなかった。

 

「ぐぁ……がぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 彼は今、自らの身体を強制的に作り替えられる苦痛と悍ましさの中で咆哮にも似た悲鳴を上げていた、

 

 鎧の内部で蠢いていたアステナイト製の無数の触手は彼の腕や胴、顔から体内へ侵入して神経と絡みつく。

 

 そして出久の中を巡る氣、エレイン達ならヴァジュラと呼ぶ生命エネルギーを介して彼の身体と融合を果たしていくのだ。

 

 これはアステナイトと親和性の高い出久だからこそ起こる事だった。

 

 仮に取り込まれた依り代が個性持ちや親和性の低い者ならば触手によって内部から食い荒らされ、数分と立たずに骨となって吐き出されるだろう。

 

 実際サルドゥの鎧が祀られる祭壇の周りには、そういった不適合者達の屍が転がっている。

 

 そして出久の精神をさらに責め立てたのは、神経接続を利用して掘り起こされる過去の忌まわしい記憶だった。

 

 自身が無個性ゆえに『まともに産んであげられなかった』と嘆く母を何度見ただろう。

 

 無個性だからと同年代の人間は悪びれる事無く自分を見下してきた。

 

 学力で上を行けば、それをきっかけに『無個性の癖に生意気だ』と陰湿ないじめに遭ったこともある。

 

 担任に相談すれば『緑谷は無個性だからな。目立ったお前が悪い』とふざけた答えが返って来たものだ。

 

 どれだけ結果を出しても、どれだけ力を示しても『無個性』だからと色眼鏡で見られる。

 

 ここに至って緑谷出久は気が付いた。

 

 ……いや、今まで見ないふりをしていたという方が正しいか。

 

 自分が個性社会という今の世が大嫌いだという事に。

 

 それでも彼がそれを守るヒーローを目指していたのは、ひとえにエレイン達の言葉があったからだ。

 

 自分の憧れを、夢を肯定してくれた彼女達の遺志を無駄にしたくない。

 

 その一念で彼はここまで努力を積み重ねてきたのだ。

 

 しかし失ったと思っていた二人は戻って来たものの、個性社会は彼女達を受け入れる事は無く排除するだけだという。

 

 自分達無個性が当たり前のように差別される世界。

 

 個性と異なる異能を持つ従姉妹達が排除される世界。

 

 虐げられる側の出久がどうしてそんな物を守らねばならないのか?

 

 ゆっくりと、だが確実に出久の精神は負の方面へと傾いていく。 

 

 もちろん、これは彼の考えによるものではない。

 

 サルドゥの鎧は憎悪や怒りといった想念を原動力とする。

 

 それ故に出久の苦い記憶を刺激して現世を憎ませる事で、それを担保しようとしているのだ。

 

 そんな中、サルドゥに取り込まれつつある出久を助けようと手を伸ばすモノがあった。

 

 ドルドの聖堂を飾るステンドグラスを突き破って内部へ突入したのは、トトの制御で稼働するファイテックスのプロダクション・モデルだった。

 

「あれは……緑谷出久が開発していたパワードスーツか! 総員、奴を破壊せよ! 儀式の邪魔をさせるな!!」

 

 司祭の号令によって、手隙の信者達から様々な魔術が放たれる。

 

 それをなんとか躱しながら、トトはカメラアイで体の大半を触手に絡めとられた出久の姿を見つけ出す。

 

『マスター! 今助けます!!』

 

 脚部のロケットブースターを全開にしてサルドゥの鎧へと突撃するファイテックス。

 

「させん! 消え失せよ、ガラクタ!!」

 

 しかし司祭が放った黒雷を背部に食らったファイテックスは失速して出久に被さるようにサルドゥの鎧の内部へ墜落してしまう。

 

 そしてサルドゥの鎧はファイテックスにも触手を伸ばし、その身に取り込んでいく。

 

『マ…まス…た……』

 

 ノイズが混じり掠れた電子音声で絞り出すように呟くトト。

 

 こうして出久はファイテックスと共に鎧に取り込まれてしまったのだった。

 

 

 

 

 どうも、グランマの目隠しする手に力がこもり過ぎてアイアンクローになりつつある状況に悶絶している魔獣幼女・姉です。

 

 さて、癖の強い霊能関係の中でも別方向にブッチギリでヤバい男が私達の前でヴァジュラノイドを蹂躙している……らしい。

 

 はっきりしない物言いなのは彼の戦いがRどころかX指定で、私達には『見せられないよ!』案件だからだ。

 

「そら、お前に込められた怨念が晴れてきたぞ! 人体実験で化け物にされた恨み辛みは分かるが、操り人形となって生者に害を為しては悪霊と変わらん! このまま成仏するがいい!!」

 

「お”っ!? すごっ! 逝っちゃう! 逝っちゃう!!」

 

 カムイとやらの言っている事は至極真っ当なのだが、やっている行為に問題があり過ぎてギャグに聞こえてしまう。

 

 というか、ヴァジュラノイドのあんな声聞きたくねえよ!!

 

「すげぇ! 腰が円を描くように高速回転してやがる!」

 

「あ…あの腰使いは!?」

 

「知っているんですか、チョーさん?」

 

「あ…あれはザ・レ●プマンが使った性技スクリュードライバー!!」 

    

「ザ・●イプマンって、初代18禁ヒーローの!」

 

「たしか女性を性的に絶頂させると洗脳できるっていう、どう考えてもヴィラン用としか思えない個性『メス堕ち』を使って多くの女性ヴィランを更生させたザ・レイ●マン!!」

 

「そうじゃ! 18禁ヒーローの座を譲ったのが女性だった所為で奴の性技は絶えたものと思っておったが、まさか継承している者がいようとは!!」

 

 ……待ってくれ、待ってくれ!

 

 この世界のヒーローってどうなってんの!?

 

『お姉ちゃんが驚いてるってことは、もしかしてレ●プマンって』

 

『ああ、マンガの主人公だ』

 

 つーか、原作通りなら●イプマンなんてヒーローとか絶対無理だろ!!

 

「どうしたんだい、相澤君。変な顔をして」

 

「いや、18禁ヒーロー関連で香山先輩から愚痴を聞かされたのを思い出したんです。なんか歴代と比べて肌色が少ないとか刺激が足りないってファンの掲示板で文句言われたって、酒の席で」

 

「ああ、そうか。初代はともかく2代目や3代目はねぇ……」

 

「彼等はほぼ隠してなかったからなぁ。私も警察がどう対応していいか悩んでいるのを現場でよく見たよ」

 

 明らかに疲れている声の相澤先生に、げっ歯類校長とオールマイトが遠い目をした……ような気がする。

 

 というか殆ど隠してないって、どんなヒーローなんだ、それは!?

 

 そして私達と一緒に降りてきた面々も平静ではいられないようだ。

 

「クレイジーだ! ジャパニーズはクレイジーだ!!」

 

「ダディ! 落ち着いて!!」

 

 自分の頭を掻きむしるような声を上げるグランパをキャシーが慌てて制止の声をかけている。

 

 まあ、化け物といたしている男を指して『これがエクソシズムです』だなんて言われてたら、そりゃあ欧米の人は狂気の沙汰だと思うわ。

 

「あ…阿修羅! 見ちゃだめだ!!」

 

「孔雀、私いつまでも子供じゃないんだけど」  

   

「うわ…うわわ……って後鬼?」

 

「マスターには刺激が強すぎると思います」

 

「ほぉ、まぐわいで聖のエネルギーを送り込んでるのか。幾ら妖怪でも子袋は無防備だからな、やるじゃねえか」

 

「人間ってすごいですね、父さん」

 

「うむ。この退魔法はワシも初めてみるわい」

 

 とまぁ、こんな感じで初っ端に説明をかました胎蔵氏とレイ以外は割とカオスだった。

 

「すみません! すみません!! あの人は悪霊や妖怪にしか発情しない変態ですけど、あれは除霊なんです! 間違っても青●じゃないんです!! だからタイーホだけは勘弁してください!!」

 

 あと聞き慣れない女の子がマジ泣きの声で必死に懇願していたっけ。

 

 弁解しているところを聞くにカムイの知り合いみたいだけど、ご愁傷様だ。

 

 ちなみにカムイさんは本当にヴァジュラノイドの中の負の想念というか、ヴァジュラパワーを霧散させてしまった。

 

 グランマに目を塞がれていたから余計に分かったけど、やり方は兎も角として彼はマジで凄い霊能力者だぞ。

 

「命を助けてもらったし凄い物を見せてもらったが、法律は法律だからなぁ」

 

「流石に我々の前で公然わいせつは……」

 

「先輩、これって強●罪って適応されるんですか?」

 

「どうだろうな……」

 

「待ってください! お…お慈悲を! 弁解のチャンスを!!」

 

 まあ、そんな凄い男はグランマの手から解放された頃には全裸の肩に上着を被せられて警察に連行されていたんだけど。

 

 知り合いの高校生っぽい女の子もガチ土下座してるし、アレ過ぎる光景だった。

 

 色々と問題はあったが、何はともあれヴァジュラノイドは無事に駆逐された。

 

 そして騒動が収まれば私達にはやらねばならない事がある。

 

『ダイアナ、そろそろ動こう』

 

『そうだね』

 

 なのでグランマから離れた私達はまずキャシーへテレパシーを飛ばす。

 

『キャシー、少し相談したいことがあるんだけど』

 

『テレパスを使うという事は他の人間に聞かれたくないのね。なにかしら?』

 

 応じてくれた彼女に私達は頭の中で練っていた案を提示する。

 

『……なるほど。それなら日本に大きな貸しを作ることも可能だわ。でも本当にできるの?』

 

『できるのは確かだよ。まあ、やり方によっては別の問題が発生するかもだけど』

 

『上手く事が運ぶように努力するよ』

 

『分かったわ。頑張って』

 

 キャシーからお墨付きをもらった私達は次にオールマイトへ思念を飛ばす。

 

『オールマイト、聞こえるか?』

 

「これは……緑谷少───」

 

『少し内緒で相談したいことがあるの。声を出さないで、頭で考えてくれたら伝わるから』

 

 ダイアナがそう注意するとオールマイトは慌てて大きな手で口元を押さえた。

 

「どうしました?」

 

「い…いや、何でもないよ」

 

 というかNo1ヒーローなら、もう少し腹芸を身に着けようよ。

 

 相澤教諭が思いっきり不審な目で見ているぞ。

 

『それで私に相談とは何かな?』

 

『さっき、公安で私達がアメリカに帰れないって話を聞いたよね?』

 

『ああ、政治的配慮が絡んだ件だね。幼い君達を大人の事情で振り回して申し訳なく思っている』

 

『それで出国許可を得る為に交渉しようと思っているんだ。キャシーの知り合いは米軍関係らしいし、そこの手を借りたらきっと大事になるから。それで私達が提示するカードは貴方の身体を治すこと』

 

『オールマイトが万全になれば、イッくんや引子叔母さんも安全だからね』

 

「なんだっ……もごっ!?」

 

 よほど驚いたのだろう、思わず声を上げそうになる口を再度押さえるオールマイト。

 

 本当にこの人は隠し事とか苦手なんだなぁ。

 

『……それは本当に可能なのかい?』

 

『ああ。失礼だけど貴方の身体は透視でどんな状態かを把握しているし、損傷を復元する方法だって複数ある』

 

 実際、ヴァジュラを使えばアークドグラン壊滅の時みたいに自白剤の過剰摂取で廃人になったリュウを元に戻せるし、なんだったら死んだメルとお腹の子のように死者蘇生も不可能じゃない。

 

 もっとも後者を行うには私達では出力不足なので、魔獣たんに出てきてもらう必要あるけどね。

 

 だから古傷と言えど、単純な肉体の損傷なら十分に手は打てるはずだ。

 

『ただ、これについては貴方の意思を確認したいと思った。身体が治れば貴方はまた長い間平和の象徴として日本の治安を背負う事になる』

 

『言い方は悪いけど、体が動かなくなっている今が普通の人に戻れるチャンスだと思うの。だからオールマイトが嫌なら私達はこの提案はしないよ』

 

 ダイアナの言う通り、今が彼にとって平和という重荷を下ろす恐らく唯一の機会だ。

 

 いくら無責任な民衆とはいえ、オールマイトの肉体の損傷具合を発表すれば引退を反対する者はいないだろうしな。

 

 一国の治安を一身に背負うのはどれだけ大変な事か、正直私達には想像もつかない。

 

 それはきっとギリシャ神話のアトラスのように長い苦難を伴うモノだろう。

 

 如何に人間が嫌いとはいえ、自分達の為に彼にそれを背負わせ続けるのは気が引ける。

 

 だからこそ、私達は彼の意思を問うたのだ。

 

 けれどオールマイトは少しも迷うそぶりを見せなかった。

 

『出来るのなら是非お願いしたい』

 

『いいの?』

 

『君達の心遣いは本当に嬉しい。だけど、私はこう生きると決めているんだ。たとえ身体が動かなくても、この命が尽きるまで平和の象徴として戦い続けると。なら身体が治るチャンスがあれば、ありがたいと思っても拒否はしないさ。それが君たちの役に立つなら猶更ね』

 

 ───本当にこの人は善人だ。

 

 レイが言ったように魔獣たんがカルキの役割を果たすなら、きっと彼は生き残る事ができるだろう。

 

『わかった。あと貴方を出汁に使う事を許してほしい』

 

『ごめんなさい』

 

 私は回りの人が気づかない程度にオールマイトへ向かって頭を下げる。

 

 それに対して彼は何時もの笑顔でヒラヒラと手を振っていた。

 

 これで事前の仕込みは終わった。

 

「グランパ、ちょっと手を握っていいかな?」

 

「……なにか大事な事をするつもりなんだな。いいとも」

 

「グランマ」

 

「ええ。行きましょう、ダイアナ」

 

 こちらの顔を見て察したのだろう、グランパ達やキャシーは何を問う事もなく私達に付いてきてくれた。

 

 話が分かる家族を持って私達は本当に幸せだ。   

 

 そして私達が立ったのは黎と胎蔵氏の前だった。

 

「おう、いったいどうした?」

 

「御不動様を出してくれ。あの子を見抜いたのは、貴方じゃなくて御不動様だろう?」

 

 

 黎に向かってそう言うと彼の雰囲気が明らかに変わった。

 

 今までの何処か射に構えた青年から、泰然とした大樹を連想させる強大な気配を纏うナニカに。

 

「この威圧感、この神氣……間違いありません、あれは不動明王です!」

 

「まさか、レイが呼ぶ事無く不動が降りてくるとは……」

 

 後鬼の言葉に胎蔵氏をはじめここにいる面々全てが息を呑む。

 

 それほどまでに不動明王の格は絶大だった。

 

『何用か? 裁きの獣、その祝福を受けし人の子よ』

 

 鷹揚に言葉を語る超存在。

 

 『明王伝レイ』というマンガの中では日輪黎は不動の転生だが、同時に人の身に神を降ろし、その姿へと変身する変化霊媒体質を持つ人間と描かれていた。

 

 それ故に黎と不動の人格は完全に合一しておらず、彼の意思で不動を降ろした時以外にも人間の姿のまま仏の意識が前に出る事があった。

 

 姿が代わっていない事を見るに今はその状態なのだろう。 

 

 私とダイアナは後光まで差している彼へと脚を踏み出す。

 

 正直、その一歩は酷く重い。

 

 気を抜けば平伏してしまう程に、眼前の存在の圧は強烈だった。

 

「妙な勘繰りをされて揉める前に言っておく。私達は人間として生きて幸せになる。そして人間として死ぬ」

 

「それがパパとママの最後の願いなの。だから余計な心配はしないで」

 

 それでも私達はありったけのヴァジュラと意思を込めて不動へそう言い放つ。

 

 口約束と侮る事なかれ、神の前では書類など役に立たない。

 

 絶対の覚悟を込めた言葉こそ信用が得られるのだ。

    

『……その決意、確かに受け取った。だが、人の子はお前達を放っておきはすまい。その時はどうする?』

 

「手を出されれば全力で殴り返すさ。左の頬を殴られて、右の頬を出すほど物好きじゃない」

 

「私達はもうパパとママを人間に奪われてる。───だから二度目はないよ」

 

「それが嫌ならしっかり見張っていてくれ。人を導くことがアンタ達の役目だろう」

 

『よかろう。だが、お前達が悪しきモノに堕ちた時は迷わず降伏する。ゆめ忘れぬ事だ』

 

 そう言い終わると、黎が纏っていた気配と後光は消え失せる。

 

 そして彼は一度目を閉じると呆れたようにこう言った。

 

「とんでもねえガキ共だ。明王に啖呵を切るかよ」

 

「追い詰められればネズミだってネコを咬む。こっちも必死なのさ」

 

「私達が背負っているのってどっちかって言うと祟り神だから。当たると痛いって注意しとかないとね」

 

 そう言って黎に背を向けた私達は、二人して大きく欠伸をするフリをした。

 

『び…びびったぁ! ここで襲い掛かられらたどうしようかと思った!!』

 

『あんなガンをいたいけな女の子に向けるとか、アイツは鬼か! ちょっとちびったんだけど!!』

 

 見た目は強気に出ていようが所詮私達は限界オタク、中身なんてこんなモンである。

 

 さっきの欠伸だって安心してちょちょ切れそうになった涙を誤魔化す為のモノだし!

 

 とはいえ、魔獣たんの存在が露見した以上このパフォーマンスは必要だった。

 

 安全弁がありますよと周知しておかないと、宗教界のヤバい面々から危険物扱いで消される危険もあるからな。

 

「エレイン、ダイアナ。セレナ達はお前たちに何を願ったんだい?」

 

 グランパの問いかけに私はあの時の事を思い返しながら答えを返す。

 

「私達は霊魂が見れるんだ。だからお父さん達が天に召される前に、最後の言葉を交わす事が出来た」

 

「パパもママももっと一緒に居たかったって言ってたよ。何時までもお前達の事を見守っているから幸せになれって」

 

 こちらの答えにキャシー達は目を潤ませる。

 

 あの時、魂だけになっても二人は私達を抱きしめて言葉を掛けてくれた。 

 

 それを憶えているからギリギリまで魔獣たんを出さないし、叶えるためにアメリカに行ったら片田舎で静かに暮らす。

 

 二人に恥じないように生きるつもりではあるけれど、目的の為には善悪に拘るつもりはない。

 

 ヒーロー・ヴィラン・国家・神仏。

 

 誰が相手だろうと幸せになる事を邪魔をするなら容赦なく叩き潰す。

 

 それが人間の溢れる世界の中を魔獣たんを背負って生きる私達の覚悟だ。

 

 こうして厄介な連中への防波堤を立ておえれば、次に待っているのは帰国の為の交渉だ。

 

「公安委員長、こちらから提案がある」 

 

 キャシーは雄英の面々の近くに立っている公安委員長へ声を掛ける。

 

 この件に関しては私達よりも全米No1ヒーローである彼女の方が説得力があるだろう。

 

 申し訳ないが、よろしくお願いします。

 

「なんでしょうか?」

 

「私たち家族の早期帰国を認めるように政府へ掛け合ってほしい」

 

「それは勿論です。しかし先程も言ったように、向こうも簡単に首を縦に振るとは……」 

「帰国を認めるのなら、こちらはオールマイトの傷を癒し体調を万全にする準備がある」 

 

 続けて放ったキャシーの言葉に、委員長は思わずといった感じで息を呑んだ。

 

 やはりオールマイトの不調は彼に治安を担保している政府にとって重い問題だったようだ。

 

「リカバリーガールや国のどんな名医でも匙を投げたのに……本当に出来るのですか?」

 

「私達の能力は究極的に言うと生命力の操作だからね」

 

「少なくとも今よりはマシになるのは間違いないと思うよ」

 

 そう答えを返すと委員長は携帯を取り出して何処かへ連絡を取り始めた。

 

 何やら随分と言い合いをしていたようだが、最後に『お前の都合よりこの国の平和だろうが! このスカタン!!』と委員長が怒鳴って話は終了した。

 

「総理大臣から許可を取りました。オールマイトを快癒させる事が出来たなら、すぐにでも出国していいそうです」

 

「そんな簡単に許可が出るなんて、この一週間の苦労は何だったのよ……」

 

 酷くさわやかな笑顔の公安委員長に半眼を向けながら愚痴るキャシー。

 

 うん、本当にお疲れ様です。

 

 キャシーのメンタルケアはグランマに任せるとして、そうと決まれば善は急げである。

 

 私達はオールマイトの傍まで行くと左右から彼の脇腹に手を添える。

 

「み…緑谷少女?」

 

「今から始めるから身体の力を抜いてくれ」

 

「途中で痛い事もあるかもだけど、我慢してね」

 

 戸惑う当人に注意事項を告げると、私達はゆっくりと彼にヴァジュラエネルギーを送り込む。

 

『先ずはどうする、お姉ちゃん』

 

『オールマイトの生命を維持している力にアクセスしよう。この力に元の場所へ戻ってもらわないと身体を弄れない』

 

 という訳でヴァジュラノイド式有機体干渉術を応用して、彼の身体の奥底にある力へ触れる。

 

 ……なるほど、これは悪霊や妖魔にも効くわけだ。

 

『ダイアナ、彼の力が祈りや願いの結晶だって知ってたか?』 

 

『うん。オールマイトの個性『ワン・フォー・オール』は何人ものヒーロー達に継承されてきた救いを求める祈りと義勇の心の集合体なんだ。けど、こんな風になってるとは知らなかったよ』

 

 これは言わばある種の信仰だ。

 

 『ワン・フォー・オール』とやらは元々は大きな力ではなかったのだろう。

 

 けれど、歴代の人々やオールマイトが平和の担い手となり続けた事で人々の願いや祈りを受け続けた結果、神や悪魔などの高位存在に通用しうる程の力へと昇華したんだ。

 

 本来なら立って歩くのも無理な彼が今でも一線でヒーローをやっていられるのも、この力が命を支えていると思えば納得がいく。

 

 私は彼の心臓に宿って身体を支えている力にこちらの意思を伝える。

 

 すると力は女性の声で一言言い残すと、本来あるべき場所へと帰って行った。

 

 そしてオールマイトは筋骨隆々な身体からガリガリにやせ細った姿になり、喀血と共に膝をつく。

 

『あ、トゥルー・フォームになっちゃった』

 

『トゥルー・フォーム……これが本来の姿という事か』

 

 まったくもってよくやるよ。

 

 ここまでくると尊敬を通り越して呆れてしまう。

 

「いったいなにが……」

 

『貴方の命を支えていた個性の力に元の場所へ戻ってもらったんだ』

 

 妹曰くオールマイトの個性は基本的に秘密らしいので、ここは念話に切り替えておく。

 

『私の命を支える? 個性が?』

 

『そう。貴方の個性は受け継がれてきた人々の願いの結晶なんだろう? だから力そのものに意思が宿っているみたいなんだ』

 

『それで大怪我を負ったオールマイトの命を個性が支えていたってワケ。けど、それだと治療するのに問題があるから元の場所へ戻ってもらったわけ』

 

『なるほど。けど、どうして君たちは私の力の本質がわかったんだい?』

 

『さっきも言ったけど、私達の力は端的に言えば生命力を操ることだからね』

 

『あと霊魂とか見えますから。物や人から意思を感じやすいんだよ』

 

『……オカルトの世界は深いなぁ』

 

 半分くらいはダイアナの知識なんだけど、その辺を話すと面倒なので訂正は避けよう。

 

『あと、力が動くときにこうも言われたよ』

 

『なんだい?』  

 

『俊典を頼むって。笑顔が似合う黒髪のお姉さんから』

 

 妹がそう言うと彼は目元を押さえて感極まったように細く吐息を吐いた。

 

『あれって誰なんだ?』

 

『オールマイトのお師匠さんで力の先代継承者』

 

 なるほどね、そりゃあ大人でもなくわ。

 

 さて、男の涙を見るのはレディとしてマナー違反だ。 

 

 私達は身体の再生へと取り掛かろう。

 

 という訳で改めて彼の身体を精査したんだが、全身傷まみれなので治すのは滅茶苦茶手間が掛かりそうだ。

 

 というか、臓器を再生したら反動で死ぬんじゃね?

 

『お姉ちゃん、どうする?』

 

『ここまで来て、できませんでしたとは言えんしなぁ……』

 

 私がミニマム脳みそをクルクルと回転させていると、不意に天啓が舞い降りてきた。

 

『大丈夫だ、私にいい考えがある』

 

『おう、コンボイ司令やめーや』

 

 ナイスツッコミをくれる妹へ案の概要を伝え、私達は早速作業へ取り掛かる。

 

 そう、傷を治すのが難しいなら傷を負っていない時まで戻せばいいのである。

 

 幸い、時空間に干渉するのはオールマイトの身体のみ。

 

 なので魔獣たんが飛び出てくる心配もない。

 

 力を行使するにあたって問題になるのはちんまい体に見合う出力とスタミナだけで、ヴァジュラに関しては無尽蔵だしな、私達。

 

 という訳でヴァジュラエネルギーをギュンギュン循環させて、オールマイトの体内時間を巻き戻していく。

 

 5年くらい戻したら肺や胃は元に戻ったんだけど、なんというか加減が難しいな。

 

 他にも地味に動くのに支障が出そうな傷もあるし……やべ、力加減間違えた。

 

 そうして力を巡らせること10分ほど。

 

 私達が身体から手を放すとオールマイトはすくっと立ち上がる。

 

「ありがとう、緑谷少女達。まるで生まれ変わったような気分だよ」

 

「それはよかっ…た……」

 

 そう笑顔を向けてくるオールマイトを見た私は思わず言葉を失った。

 

『姉者ぁ! やっちまったぁ!?』 

 

『うそやん! 皺が無くなってちゃんと目が見えるようになってるぞ!!』

 

 何故なら今の彼は20代半ばの若々しい青年だったからだ。

 

 これはいくら何でもアカン!

 

「すんません! しくじりました!!」

 

「ロスアラモス・アトミックスマッシュでも何でも食らうんで、勘弁してください!!」

 

「ちょっ!? 二人とも顔上げて! あとそんな物騒な技は無いからね!!」

 

 地面に平伏する私達に焦るオールマイト。

 

「相澤君、私はどうなっているんだ?」 

 

 彼が問いかけると相澤教諭は何とも言えない顔でこう返す。

 

「若返っています」

 

「……は?」

 

「だから若返ってます。俺がガキの時にテレビで見た貴方くらいに」

 

 二の句も告げられないオールマイトに私は事の次第を説明した。

 

 体中の傷が多すぎる事に加えて、臓器云々を再生しようとしたら衰えた彼では耐えられない可能性があったこと。

 

 そこで再生ではなく、オールマイトの身体を限定にして時間を巻き戻す事で怪我を無かったことにしようとしたこと。

 

 そして時空間操作は思った以上に扱いが難しく、手違いで巻き戻し過ぎたことも。

 

 全てを聞き終えたオールマイトは私達を責めることはなかった。

 

 それどころか、土下座状態の私達をヒョイと持ち上げてしまった。

 

「二人は私を生かす為に色々と考えてくれたんだろう? なら感謝はすれど怒る理由はないよ」

 

 唖然とする私達を笑い飛ばすオールマイト。

 

 なんというか、本当に出来た人である。

 

 しかし、そんなほのぼのした雰囲気も突然の悪意で霧散してしまう。 

 

「! いたっ!」

 

 咄嗟にこの場にいる全員を覆うように結界を張るが、如何せん急ごしらえだったのが悪かったのだろう。

 

 放たれたカマイタチを防いだものの結界は音を立てて砕け、破られた反動で私の右手は薄く切られてしまう。

 

「エレイン少女! いったい何が!?」 

 

「みんな、敵だよ! かなり強力な奴!!」

 

 ダイアナの警告に続き風の音を伴って、野太い男の声が辺りに響き渡る。

 

『見つけたぜぇ、不動! よくも俺達をあんな穴倉に閉じ込めてくれたなぁ!!』

 

「この妖気、風毒竜王か!」

 

「なんじゃと!? 奴なら法水によって倒されたはずじゃろ!」

 

 黎の言葉に驚く胎蔵氏。

 

 そして私も彼が告げた敵の名に聞き覚えがあった。

 

 私達に牙を剥いたのは、五代元素を司り世界に災厄を振りまく五大毒竜王の一体だったのだ。

 

 

 

 

 ヒーロー公安が人非ざる者に襲撃されているのと時を同じくして、日本に残された数少ない暴力団組織『死穢八斎會』でも動きがあった。

 

「カシラ、それが例のモノですかい?」

 

「ああ、鬼道会とかいう弱小組織が持っていた宝刀だ」

 

 若頭補佐である玄野針の言葉に応えながら、眼前に置かれた呪が一面に描かれた包みに覆われた棒状のモノを見るのは同組織の若頭である治崎廻だ。

 

「聞いた話じゃあ、こいつを抜けば鬼の王になれるって話だがな」

 

「カシラは試さないんで?」

 

「俺は潔癖症なんだ。こんな怪しい包みに入った小汚い剣に触れるか」

 

「その為にあのガキを連れてきたんですね」

 

「ああ。蛾王って鬼道会の頭が言ってたからな。ソイツは例のガキじゃないと抜けないらしい」 

 

 そう呟くと治崎は胡坐を解いて立ち上がる。

 

「ヴィラン連合とやらが化け物を使ってデカい花火を上げたんだ、俺達も負けてられねえ。その剣と個性消失弾を使って、この国の裏を支配するのは極道だって事を世に知らしめてやる!!」

 

 その言葉からは信念と今の世の中に対する憎悪がにじみ出ていた。

 

 

 

 

 死穢八斎會で謀り事が進む中、東京の保須市でも異変が起こっていた。

 

 路地裏でヒーロー殺しの異名を持つステインの襲撃を受けたターボヒーロー・インゲニウム。

 

 不意打ちによって一太刀を受けたものの、歴戦のヒーローであるインゲニウムは得意の高速戦闘でステインと互角に渡り合っていた。

 

「くっ! 何人ものヒーローを倒しただけはある。手強い!!」

 

「そう感じるのはお前が偽物だからだ。本物の英雄なら、俺程度の悪に手こずりはしない」

 

 はぁぁという深い呼気と共に、インゲニウムを斬りつけた際にサバイバルナイフの刃に付いた血へ舌を伸ばすステイン。

 

 しかしヒーロー殺しの舌が紅い雫へ触れる寸前、彼等に大きな影が覆いかぶさった。

 

 反射的にその出所へ目を向ける二人。

 

 そこにあったのは怪しい光を放つ月を背に立つ一人の巨漢だった。

 

 腐肉のような悪臭を放ち、その肌は死人のように蒼や紫に染まっている。

 

 身の丈は3mに届くほどであり、その巨体を僧兵の衣で包み、背には様々な武具を収めた箱を背負っている。

 

 その威容を目にした日本人は、ほぼ全員がある男を思い浮かべるだろう。

 

 それはステインたちも同様だった。

 

「……武蔵坊弁慶」

 

 インゲニウムがそう呟くのと同時に、異形の僧兵は長刀を手に月へと咆哮を上げた。  




【悲報】サルドゥの鎧の復活が目前です(聖獣機サイガード)

【悲報】カムイさんがタイーホされました(後ろの正面カムイさん)

【朗報】オールマイト復活! オールマイト復活!!(僕のヒーローアカデミア)

【悲報】武蔵坊弁慶(不死人)も復活しました(孔雀王・退魔聖伝)





おまけ【歴代18禁ヒーローの系譜】

初代 ザ・レ●プマン 【個性・メス堕ち】性的に絶頂させると、その相手を洗脳する事ができる。

2代目 けっこう仮面【個性・全裸】肌を覆う布が少なければ少ない程身体能力が増す。

3代目 変態仮面【個性・変態】女ものの下着を被ると超人的な身体能力を得られる。下着は着用者が愛情を感じているモノであればあるほど効果が高い。SMなどの変態道具を自分の体のように扱える。

4代目 ミッドナイト【個性・眠り香】自身の肌から放たれる香りによって、吸い込んだ周囲の者を眠らせる。女性よりも男性相手の方が効きやすい。

5代目候補 葉隠透 ミッドナイトが18禁ヒーローという重い十字架を押し付け……託そうとしている逸材。
 
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