【急募】私達が世界を滅ぼさずに済む方法   作:アキ山

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ルビコンで灰になったら、天啓(ネタ)が落ちてきました。

秋の夜長の暇潰しになれば幸いです。


この世界の地雷って、実は相当ヤバいかも……

【負け犬人生】夢破れた転生者の集うスレ【どうしてこうなった?】

 

657 Cボーイ

 

そんな訳で俺はこれ以上戦えなくなって、ヒーローになるのを諦めたんだ

 

 

658 名無しの負け犬

 

そうだった

 

ブレードって不完全なテッカマンなんだよな

 

 

659 名無しの負け犬

 

戦闘能力的に見たら間違いなく最強格なのにもったいねえ

 

 

660 名無しの負け犬

 

いくら強力だって言ってもテックセットする度に全身の体細胞が崩壊していくんだろ

 

そりゃあ無理だわ

 

 

661 Cボーイ

 

組織崩壊、マジでキツいぞ

 

初めて症状が出た時は全身が砕けるかと思ったし

 

 

662 名無しの負け犬

 

それで、あと何回変身できんの?

 

 

663 Cボーイ

 

そんなん怖くて調べられねーよ

 

ただでさえ、医者から余命5年くらいって言われてるのに

 

 

664 名無しの負け犬

 

ブラスター化はしないのか?

 

 

665 名無しの負け犬

 

ラダム樹がないだろ

 

 

666 名無しの負け犬

 

サンプルになる素体テッカマンもな

 

 

667 名無しの負け犬

 

仮にあってもテックシステムを解析できる科学力も無ければ技術者もいない

 

フリーマンチーフみたいな天才が生まれるのは稀なのだ

 

 

668 名無しの負け犬

 

Cボーイの人生が詰んでる件

 

 

669 Cボーイ

 

その辺はもう諦めた

 

リスクを考えずにブレードの力を使いまくった俺が馬鹿だったんだ

 

やっぱ、俺は相羽タカヤにもDボゥイにもなれん

 

残された命と変身は大切な人を守る為に使うよ

 

 

670 名無しの負け犬

 

そうだな

 

無理せずに余生はゆっくり過ごせよ

 

 

671 名無しの負け犬

 

因果の反動か何かで、家族が敵テッカマンになってないだけマシだと思おうぜ

 

 

672 名無しの負け犬

 

おい、やめろ

 

 

673 名無しの負け犬

 

リアル『マスカレード』とか人の心無さすぎやろ

 

 

674 名無しの負け犬

 

しかし蒼い勾玉が付いた化け物ねぇ……

 

そんな敵、原作にいたか?

 

 

675 名無しの負け犬

 

いや、いなかったはずだよ

 

少なくともボクが読んだところまでは

 

 

676 名無しの負け犬

 

そもそも、この世界って本当に『ヒロアカ』なのか?

 

原作始まったみたいだけど妙な事が多すぎるだろ 

 

 

677 名無しの負け犬

 

四国が吹っ飛んでるし、ヒーローの殉職率も妙に高いもんな

 

スタープラチナだって死んだんだろ? 

 

 

678:名無しの負け犬

 

例のスタンドと同じ能力を個性として持ってた転生者な

 

あんなのが負けるとしたらAFOしか考えられねえ 

 

 

679:名無しの負け犬

 

ニュースだと死体も見つかってないらしいぜ

 

現場に残っていたのは致死量の血痕だけとか

 

 

680:名無しの負け犬

 

ってことはやっぱりAFOの仕業なのか?

 

 

681:名無しの負け犬

 

雄英体育祭も地獄みたいな有様だったし、もう原作知識役に立たないだろ

 

 

682:名無しの負け犬

 

やっぱ、ヒーロー諦めて正解だわ

 

 

683:名無しの負け犬

 

ああ ヒロアカのキャラとかは好きだけど命を懸けるほどじゃないし

 

 

684:名無しの負け犬

 

この人生でも家族やツレがいるからな

 

なんだかんだ言ってもそっちの方が大事だよな

 

 

685:名無しの負け犬

 

 

んだんだ 俺達は名もなきモブとして物語の邪魔をしないようにひっそり生きていこうぜ

 

 

 

 

「まったくだ。所詮、俺達にはヒーローなんて似合わないのさ」

 

 スマホの画面に映る転生者しか見る事が出来ない不思議な掲示板の書き込みを目で追いながら、三浦陽介は皮肉げな笑みを顔に張り付ける。

 

 前世が一般人だった者がそれを逸脱するなど、よほどのことが無い限り無理だ。

 

 如何に力があったとしても、前回の人生で組み上げた一般人の精神性がそれを振るう事を躊躇させてしまう。

 

 自分が主人公だと勘違いした頭がお花畑な輩や狂人でもない限り、ヒーローなんて職業に就こうなんて奴はそうはいない。

 

 ああいった戦いを楽しめるのは安全が確保された上でエンターテイメントとして見ているからだ。

 

 その渦中にわざわざ飛び込むなど正気の沙汰ではない。

 

 この世界に転生して17年、陽介が得た悟りがこれだった。

 

 だからこそ彼は『無限の剣製』のデッドコピーである強個性『魔剣創造』を持っていても、ヒーロー課へ進学しなかった。

 

「陽介、歩きスマホは危ないぞ」

 

「うん。この頃は物騒なんだし気を付けないと」

 

 声を掛けられた方を見れば茶色の髪に眼鏡をかけた柔和な青年、相馬小次郎と金の豊かな髪が特徴的な美少女の八神咲が苦笑いを浮かべている。

 

 彼等は陽介の幼馴染だ。

 

 無個性と白眼視されてきた二人を陽介は自分の個性を盾にして偏見と差別から守り、その分振るわない学業の面では助けられてきた。

 

 陽介がこの世界の花形であるヒーローの道を捨てたのは彼等がいたからだ。

 

『赤の他人を助けてる間にコイツ等に何かあったら、後悔しても仕切れないからな』

 

 三人で高校へと向かう通学路の中、陽介は心の中で笑う。

 

 ここが『僕のヒーローアカデミア』という作品の世界なら、近い内に超常社会の崩壊が訪れるはずだ。

 

 掲示板で示された数々の異変を考えれば、その時期が早まる事や更なる惨劇が襲ってきてもおかしくはない。

 

 その時こそ二人の傍にいて、彼等を守ってやらねば。

 

「どうしたの、陽介?」

 

「いや、なんでもないさ」

 

 咲の問いかけに笑ってごまかす陽介、そしてそんな二人を温かく見守る小次郎。

 

 それはとある高校生たちのいつもと変わらない日常の風景だった。

 

 だが、そんな彼等を見下ろす影があった。

 

 通りを三つほど隔てた雑居ビルの屋上に立つ一人の男。

 

 その姿は普通とは相当にかけ離れている。

 

 長身痩躯に髪はさっぱりとした刈り上げで、長めの顔にはこけた頬にとがった顎。

 

 旧日本軍の軍服に軍帽を被り、その上から黒の外套を羽織っている。

 

 そして目を惹くのは黒い五芒星が描かれた白手袋と人の物とは思えぬ三白眼の眼差しだろう。

 

「新皇は未だ目覚めず。そして首塚にも強固な結界が張ってあった。呪術が廃れたとはいえ腐っても土御門という事か」

 

 そう呟く男の元に一羽の鳩が飛んでくる。

 

 軽くかざした手の上に降り立つと、鳩は白い紙で出来た形代へと化ける。

 

「高野、比叡だけではなく熊野も腰を上げるとはな。しかし託宣通り、滝夜叉の血族は大破壊より舞い戻った。こちらも本格的に動かねばなるまい」

 

 そう呟くと男は見ていた平和な日常に背を向け、闇へと歩み出す。

 

「今度こそ打ち滅ぼしてくれよう。さらに醜悪となったこの帝都を」

 

 言霊に乗せた禍々しい呪詛を残して。

 

 

 

 

 どうも。

 

 子供は寝る時間という言葉を守ってほしいと切に願うヘル幼女Aです。

 

 再会のジャブはさておき、今は流石にふざけてはいられない状況だ。

 

 なにせこちらへ襲い掛かってきたのは五代元素を司る邪竜の一体。

 

 原作ではかませ犬丸出しで良いトコ無く殺されたけど、その脅威度はヴァジュラノイドやヴィランなんかとは比べ物にならない。

 

『美味そうなガキや女がいるじゃねえか! 不動や邪魔な野郎どもをブチ殺して、遅めの晩餐としゃれこんでやるぜ!!』

 

 しゃがれた声と共に放たれるのは不可視の刃、奴の名前通り名刀並みに切れるカマイタチだ。

 

「皆さん、僕の回りに! 守護天蓋!!」

 

「ダイアナ!」

 

「うん、あの結界を補強する形で防護壁を張るよ!!」

 

 後鬼が部屋の中にいる全員を覆うように張った結界、それは風の刃を受けて甲高い軋みを上げる。

 

「姿が見えない! 敵はいったいどこにいるんだ!?」

 

「これは個性なのかい、相澤君!」  

 

「駄目です! こちらからも何も見えない! 奴の力は個性じゃない!!」

 

 結界の中で歯噛みするオールマイトと、根津校長の問いかけに髪の毛を逆立てて目を赤く光らせながら答える相澤教諭。

 

「奴は風を司る邪竜だ。おそらく己の体を風に変えているのだろう」

 

「人間ども、迂闊に空気を吸うなよ。その中に奴の身体の一部が混じっていたら、腹から食い破られるかもしれねえからな!!」

 

 黎と前鬼の忠告に息を呑むみんな。

 

 空気に奴が混じってるとか、シャレにならないって。

 

「グランパ達に妙な脅しはやめてくれ。風に変わっているいるからって、奴の体はそんな事になってない」

 

「ちゃんと竜の形を保っているよね」

 

「見えるの、エレイン?」

 

「私達の目は生命力を捉える事が出来るからね」

 

「あんなにバンバンオーラ出してるんだもん、見落とす方が難しいよ」

 

 キャシーに答えを返しながら、私はこの場を切り抜ける方法を考える。

 

「風には風だ! オン・バサラ・ニーラサーガ!!」

 

「前鬼、お願い!」

 

「颶風招来! 烈風竜!!」

 

 後鬼と私達の結界から出た孔雀、そして背に千明からの呪術援護を受けた前鬼が共に突風と横殴りの竜巻を放つ。

 

「馬鹿が! 風に風の攻撃が効くわけねーだろ!!」

 

 しかし、それらの攻撃は風毒竜にはまったく通用しない。

 

「風を操るってのはこうするんだよ!」

 

 二人の術を吸い込んだ風毒龍は己の体内でそれを増幅すると、口から烈風として吐き出した。

 

 余波ですら太い街路樹が折れ、強固に舗装された石床がめくれ上がる程の威力だ。

 

「うわっ!?」

 

「ちぃっ!」

 

 直撃を受けた孔雀と前鬼は大きく後ろへ吹き飛ばされてしまう。

 

「おっと!」

 

「あっぶなぁ!!」

 

 前鬼はともかく孔雀は、ホームランボールさながらのスピードで壁に叩きつけられたら無事じゃすまない。

 

 私達は何とか二人を念動の見えざる手でキャッチして、結界の中へと引き寄せる。

 

「ありがとう、助かった!」

 

「余計な事するんじゃねえよ、ガキ!」

 

 素直に礼を言ってくれる孔雀と不機嫌丸出しな前鬼。

 

 なんとも対照的なことだ。

 

 しかしさっき念動越しに感じたのはかなりの衝撃だった。

 

 生身だったら腕がちぎれていたな。

 

『チッ、いらねえ真似しやがって! だったら、そのクソ生意気な殻をブチ壊して生きたまま食ってやるぜ、クソガキ共!!』

 

 風毒龍のイキリまくった声と共に結界の周りを旋風が覆った。

 

「そうはさせん! テキサススマッシュ!!」

 

 奴の行動を阻害せんとオールマイトが結界から飛び出し、奴の声がした方向に向けて右拳を振るう。

 

 剛腕から放たれた衝撃波はつむじ風を突き破るが、肝心の風毒龍を捉える事無く虚空へと消えてしまう。

 

「へへへっ! どれだけ力があろうと風を殴る事なんてできはしねえ!」 

 

 巻いた風はすぐに竜巻へと成長し、その中心にいる私達に生み出したカマイタチを次々と浴びせてくる。

 

「テメエ等に出来るのは細切れ肉になって、俺に喰われることだけよ!!」

 

 いくら後鬼の結界を私達が補強しているといっても、長々とアナグマを決め込むのは無理だな、これは。

 

 それに風毒龍から放たれる思念、奴は私達の事を食いたくて仕方ないらしい。

 

 最初に現れた時も千明や私達に妙にねっとりとした視線を送っていたけど、あの時からロックオンしていたのだろう。

 

 さて、早々に攻めあぐねることになってしまった私達。

 

 物理攻撃は透過して同属性でも効果なしとは……原作ではかませ犬だったくせに妙に強いぞ。

 

『お姉ちゃん、アイツってマンガに出てきた敵なんだよね?』

 

『ああ』

 

『どうやって倒したの?』

 

『一般の女の人を囮にしたんだ。奴も食事の時には実体化する必要があるみたいでな、女の人が食われている隙を突いて頭にある竜玉を抜き取って消滅させた』

 

『うぇぇ……割とエグい手だね。不動明王って神様なのに、そんな事をしたの?』

 

『いや、倒したのは黎じゃない。策を実行したのは法水という彼の生き別れた双子の弟、それに取り憑いていたルシフェルだ。魔王だけあって、非情な策はお手のモノだったんだろうさ』

 

『あのさ、それって魔王がこの世界にいるって事にならない?』

 

『やめてくれ、今の時点でもうお腹いっぱいなんだ』

 

 魔王云々は置いておくとして、あの手が風毒龍対策に有効だったのは揺るがない事実だ。

 

 結界も延々とはもたない以上、余力も考えて決断は早い方がいい。

 

「父さん、何か手はありませんか?」

 

「うむ。あ奴の術を破るには、風毒龍が身体を使ってこちらへ干渉させねばならん」

 

「つまり直接攻撃を誘えと」 

 

「そうじゃ。いかに風を操るといっても、身体が気体のままでは相手へ触れられないからの」

 

 目玉のおやじさんが策を出してくれたけど、それを聞いた他の皆の表情は硬い。

 

 そりゃあそうだ。

 

 相手は竜巻やら風の刃やら遠距離攻撃をバンバン撃ってきている。

 

 そんな奴を肉弾戦の土俵に乗せるなんて無理ゲーである。

 

 ───まあ、それは普通の手だけをこうじるならの話だけどな。

 

『これは私達がやるしかないよね』

 

『イヤだったら残っていいんだぞ。囮役は私だけで十分だし』

 

『冗談。お姉ちゃん一人危険に晒すのなんてゴメンだよ』

 

 まったく、私はいい半身を持ったよ。

 

 思わず緩んだ頬をそのままに、私は外界と隔絶するレベルで守護天蓋を覆う結界強度を強くする。

 

 ここからは作戦タイム、風毒龍に聞かれる訳にはいかない。

 

「みんな、聞いてくれ。奴を実体化させる方法を思いついた」

 

「なんだって!?」

 

「それはどういうモノなんだい、緑谷少女?」

 

 私の発言に皆が驚く中、代表としてオールマイトがこちらへ問いかけてくる。

 

「私達が囮になることだ」

 

「アイツ、さっきから私達のこと餌として狙ってるみたいなんだよね。だから私達がパニックになったフリをして結界から飛び出したら、食べに来ると思うんだ」

 

「目玉のおやじさんの言う通りなら、奴はその際に風にしていた身体を実体へ戻すはずだ。皆はそこを狙ってくれ」

 

 これが私達の小さな脳みそで考えた原作知識と目玉のおやじさんの知恵に裏打ちされた策だ。

 

 なかなかの出来だと思うのだが───

 

「却下」

 

「ダメだ」

 

「エレイン、ダイアナ。馬鹿な事を言うんじゃない」

 

 ノータイムでバッサリと没にされてしまった。

 

 まあ、常識的に考えても『ですよねー』と納得してしまうのだが、こちらも引き下がるわけにはいかない。

 

「じゃあ、他に代案があるの?」

 

「それは……」

 

 ダイアナが問いかけると大人たちは苦い顔で黙り込む。

 

「言っとくけど、囮が務まるのは私達以外には千明さんしかいないぞ。この三人以外は餌と認定されていないからな」

 

「だったら私がやるわ!」

 

「千明お姉さん、アイツの牙を防げる結界張れる? 万が一の時に自衛できる手段が無かったら囮なんてダメだよ」

 

「その点、私達は障壁なんてお手の物だからな。しかも子供で二人となれば、術師である役お姉さんよりも確実に奴の警戒心を緩める事が出来る」 

 

「ぶっちゃけ、今の状況で私達以外の囮役はいないと思うけど?」

 

 そんな彼等に私達は畳みかけるようにメリットを説明する。

 

 今皆を納得させないと『子供が危ない事をするな』という正論パンチが飛んでくる。

 

 あの言葉だけは、こっちも納得してしまうのでどうあっても勝てないのだ。

 

「む…むぅ……」

 

「私は反対だ! たとえ力があるとしても、孫を危険な目に合わせられるものか!!」

 

「そうよ! この子たちがこんな怪事件で身を削る理由はないはずだわ!!」

 

 戦闘を知る人たちを納得しかける中、反対の声を上げたのはやはりグランパ達だった。

 

 その心はありがたい、本当にありがたい!

 

 でも、ここで奴を殺っておかないと皆死ぬ事になるんだよ。

 

 主に刻一刻と圧が強くしている魔獣たんのせいでね!

 

「心配しないでいいよ、グランパ。ここにはオールマイトがいる」

 

「そうそう。オールマイトは『もう大丈夫!  何故って? 私が来た!』って言いながら颯爽と現れて、どんな事件も解決するんだもん。そのオールマイトがもうここにいるんだから、小さな子供を危ない目に遭わせる訳ないよ」

 

 『だよね?』と二人で視線に信頼を込めると、当のヒーローは一瞬呆けた顔をしたがすぐに不敵な笑みを浮かべる。

 

「もちろんだ! 君達には指一本触れさせないとも!!」

 

 かなりの無茶ぶりな筈なのに迷わず答えるとは、まさにヒーローの鑑である。

 

 キャシーの憧れの人であり、No1ヒーローの彼がこう言ったのならグランパ達も強く言えない。

 

 それじゃあ誰かの心が変わる前に、チャッチャと済ませてしまおう。

 

「それじゃあ今から結界を解除するから、皆の防御よろしく!」

 

「わかった。君達も気を付けて」

 

 メインの結界を維持している後鬼に声援を送ると、私達は外へ目を向ける。 

 

 竜巻は未だに渦巻いているしカマイタチも健在だ。

 

 そして風毒龍は姿を消しながら上空でこちらを観察している。

 

 障害は多いが虎穴ならぬ龍穴に入らずんば龍を得ず、だ。

 

 多少の危険は仕方ないだろう

 

「お姉ちゃん、ちゃんと演技してよね!」

 

「ふん! 天然ビビりな私を舐めるなよ!!」

 

 ダイアナと軽口を叩きあうと、私達は大声を上げながら結界を飛び出した。

 

「うわぁぁぁぁぁぁん! こわいよぉぉぉっ!!」

 

「しにたくなぁぁぁぁい!! たすけてぇぇぇぇっ!!」

 

 二人してダイコン丸出しの演技と共に走る私達。

 

 その演技のしょっぱさには我ながら泣きそうである。

 

 いや、この場合は涙が出た方が良いんだけどね。

 

「へへへ…ようやく音を上げやがった! 馬鹿なガキ共だぜぇ!!」

 

 上空で大きなヴァジュラの塊が動くのがわかった。

 

 そして結界へ降り注いでいるカマイタチは私達の方は狙わず、竜巻の方もこちらの進行方向に穴まで空いた。

 

 どうやら上手く釣れたらしい。

 

「はぁ…はぁ……おねえちゃん……」

 

「が…がんばって……!」

 

 割と本気でバテ始めた私達。

 

 こちらは必死に足を動かしているけど、宙を泳ぐ風毒龍が相手では速さで勝てるわけがない。

 

「それじゃあ……いただきまぁぁぁす!!」

 

 上機嫌な声と共に奴は私達の前に姿を現すと、人と竜が融合したような不気味な顔に付いた大きな口を開ける。

 

 背後から襲わずわざわざ正面に回ったのは、私達が絶望する顔を見たいなんて下種な理由だろう。

 

 しかしそれが命取りとなる。

 

 奴が馬鹿面を晒した瞬間、竜巻を突き抜けて突撃する一つの影があった。

 

「ようやく顔を出したな! 私の目が黒い内はその子達を食わせはしない!!」

 

 それは鍛え上げられた筋肉で全身をパンプアップさせたオールマイトだ。

 

「な…なにっ!? 人間ごときが俺の風を越えてきただと!?」

  

「デトロイト……スマァァァァッシュッッ!!」

 

 淡い光を宿す固く握りしめられた拳、全力で振り抜かれたそれは驚愕に顔を歪める風毒龍の頬へ突き刺さった。

 

「ぐべぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 その威力はすさまじく、風毒龍の人を遥かに超える巨体を一撃でビルの三階まで吹っ飛ばすほどだ。

 

 オールマイトの一撃でビルの壁に叩きつけられた風毒龍。

 

「髪の毛針! 指鉄砲!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁ……破ぁ!!」

 

「紅蓮招来! くらいやがれぇ!!」

 

「風毒龍、貴様を降伏する! 破邪ぁぁぁっ!!」

 

 落ちてくるのを待ち構えていたかのように、日本有数の術師たちから様々な攻撃が飛ぶ。

 

「ぎゃあああああああっ!!」

 

 ダメージによって実体を現した風毒龍に突き刺さる発勁、鬼神の炎、そして鋭い針のような髪の毛と弾丸となった指の第一関節。

 

 それらによって奴の体からは剥がれた鱗や血肉が飛び散る。

 

 だけど、それでも奴を倒すには至らない。

 

「ぐ…おぉ……低脳な猿共がぁ!! テメエ等の身体をミンチにして、街中にバラまいてやるぜぇ!!」

 

 ふわりと宙に浮きあがると、奴は再びその体を大気へ溶け込ませようとする。

 

「な…なんだ!? 身体を風にできねえ!!」 

 

 しかしそうは問屋が卸さない。

 

 酷く狼狽しながら周囲を見回す風毒龍は私達に視線を向けると怒気と共に叫ぶ。

 

「ガキ共ぉ! テメエ等の仕業かぁ!!」

 

「御名答」

 

「可愛い女の子と思った? 残念! 超能力少女でしたー!」

 

 額に浮かんだ血管がブチ切れそうな風毒龍に私達は不敵な笑みを返す。

 

 実は私達は奴が実体化した時からヴァジュラを糸のようにして奴の体を侵食していたのだ。

 

 これはオリジナルのヴァジュラノイドが人間ごと空母アレキサンドリアを乗っ取ったのと同じ原理だ。

 

 規模の大小はあれど、奴のできる事はたいがい私達にも出来るからな。

 

 流石に本家みたく丸々融合捕食するのは無理だが、ヴァジュラを身体の中に浸食させて能力を封じるくらいは朝飯前だ。

 

「ぐ…ぐぐ……ふざけやがって!」

 

「緑谷少女達、バリアの中へ戻りなさい。あとは私達に任せてくれ」

 

「ああ……」 

 

 そうさせてもらう、オールマイトへそう答えようとすると私の脳裏にあるモノが過った。

 

 そう、それは虚界からのメッセージ。

 

 魔獣たんからのオーダーだ。

 

 だが……これはどういうモノだろうか?

 

 新しい能力なのは分かるんだが、その内容がイマイチ掴めない。

 

『お姉ちゃん。魔獣たん通信、来た?』

 

『来た。けど、これはいったい何なんだ?』

 

『あぁ…お姉ちゃんは分からなかったか。私は分かったよ、理屈はさっぱりだけど感覚的に』

 

『じゃあ、教えてちょうだいな』

 

『うぃ。多分、こういうこと』

 

 ダイアナが念話でそう言うと、次に頭へ送られてきたのはある国民的アニメの1シーンだった。

 

 私は脳内で再生されたそれに、思わす天を見上げる。

 

『そうか、あっちに目覚めちゃったかぁ……』

 

『目覚めちゃったみたいだねぇ。それで使ってみろって意味なんだろうけど、どうする?』

 

『やるしかないだろう。拒否したら魔獣たんが出てくるだろうし、万が一誤チェストしたら街がこの世から消える』

 

 そうなるくらいなら言う通り私達がテストした方が百倍安全だ。

 

 覚悟を決めた私は隣にいるダイアナの手を握ると深く深呼吸をした。

 

「緑谷少女?」 

 

「悪いね、オールマイト。諸事情があって試さないといけない事が出来た」

 

「危ないから後ろに下がって」

 

 私と同じく深い呼気と共にヴァジュラを練り上げるダイアナ。

 

 妹のそれを私が取り込み、私が練り上げたヴァジュラもつないだ手を通してダイアナが吸収する。

 

 互いの力を融合させて、練り上げ、そして高める。

 

 それは虚界との扉を開き、ジェノサイバーを呼び出す時の工程と酷く似ている。

 

「創世・滅亡・輪廻。今こそ粛清の時、今こそ壊劫の時」

 

「善性なるものには生を、悪性たるものには裁きを。我が剣は末世に蔓延る一切の悪を断つ」

 

 そして私達の意思とは無関係に唇は祝詞を紡ぐ。

 

「どういう事だ? 緑谷少女達の瞳が真っ赤に……」

 

 今までどんな力を使う時もこんな事は無かった。

 

 おそらくは破壊神認定を受けて魔獣たんの在り方が少し変わった影響だろう。

 

「くそ…何かヤベェ! こうなったら先に食い殺してやるわァァァ!!」

 

 上空から襲い来る風毒龍、けれどまったく恐怖は無い。

 

 何故なら本能で分かっているからだ。

 

 コレは悪しきモノ、罪穢れに塗れし滅ぶべきモノ。

 

 だからこそ私たちの足元にも及ばない、と。

 

 そして私達は奴に右手をかざして力ある言葉を紡ぐ。

 

「「───はかい」」

 

 瞬間、周囲に響いていた全ての音が止んだ。

 

 空気が凍るという言葉があるが、それが実際に起こったらこんな感じだろうか?

 

「あ…あぁ……ぎゃあああああああっ!?」

 

 そんな静寂を破ったのは、風毒龍の魂切るような悲鳴だった。

 

 何故なら奴の体は全身のあらゆる個所が末端から文字通り消滅し始めたからだ。

 

「消える! 消える! 身体が! 魂が! 違う!! 俺が消えちまうぅぅッ!! 助けて…助けてくれぇェェェェ!!」

 

 あまりにも悲痛な声だが、それを聞く私達の心は一ミリも動かない。

 

 悪性たるモノは必滅すべし、それが世の定めだからだ。

 

 そうして風毒龍が虚空へと消えるのを見届けた私達は、終わった途端にその場でへたり込んでしまった。

 

「き…きっつぅぅぅ……」

 

「ちょ…こんなしんどいとか…聞いてないんだけど……」

 

 ヴァジュラはもちろん、スタミナの減りも半端ない!

 

 一発撃ったら全部スッカラカンとか、どこぞの爆裂魔法かよ!?

 

「今のはいったい……」

 

 そして私達のやらかしを見てしまった皆は当然のごとく唖然呆然である。

 

「あれは破壊神の権能じゃ」

 

「破壊神って…レイさんが言っていたあの子達の背後にいる存在ですか、父さん?」

 

「そうじゃ。末法の世において全ての邪悪を滅ぼす力。風毒龍は肉体や魂だけでなく、存在そのものを消されたのじゃ」

 

「存在って……どういうことなの?」

 

「簡単に言えばこの世界に風毒龍というモノは初めからいなかった事にされたんだ。新たな創世において、滅びし世界の残滓は不要。その一切を無に帰すことがカルキの役割だからな」

 

 説明ありがとう、目玉のオヤジさんに鬼太郎。

 

 そして千明さんと黎さんよ。

 

 私達もその辺のことはよく分からんので、どういうことかと聞かれたら答えられないのだ。

 

 こうして強敵を片付けた私達だが、騒動はまだ終わりではなかった。

 

 皆が気を緩ませたその陰で、黒い影が蠢き始めたのだ。

 

 夜闇に紛れたそれは、地を這って進むごとに己の面積を広げていく。

 

 その標的は私達だった。

 

「ッ! ダイアナ!!」

 

「やばっ!?」

 

 疲労と気を抜いていたのが災いしたのだろう、気が付いた時にはこちらを取り込もうとする影から逃げる事が出来なかった。

 

「緑谷少女!?」

 

「エレイン! ダイアナ!!」

 

 ギリギリ障壁を張るのは間に合ったけど、ヴァジュラは無限に供給されても私達の体はまだまだ幼い。

 

 それを使いこなすだけの体力が残っていない。

 

 辛うじて結界で影が身体に触れるのを防ぐのが精いっぱいだった。

 

「みんな! これってヴァジュラノイドが出してる! アレをなんとかして!!」

 

 そう、コイツはカムイによって浄化された女型ヴァジュラノイドの残骸だった。

 

「わかった! 「大気」は私の1,000倍の大きさで固まる! フィスト・バンプ・トゥ・ジ・アース!!」

 

 ダイアナの声に応じてキャシーが気圧の拳で残骸を叩き潰す。

 

 しかし影の活動はまったく衰えを見せない!

 

「緑谷少女!」 

 

「オールマイト! あの影は個性だ! しかも複数のモノが絡み合っています!!」

 

「複数の!? まさか!!」

 

「とにかく、あの子達を助けるぞ!」

 

「うん!」

 

 孔雀をはじめとして皆は私達へ駆け寄ろうとする。

 

 だけど、それを阻んだのは影だった。

 

「くっ!?」

 

「野郎! 邪魔しようってのか!」

 

「その影には猛毒が含まれています! 傷つけられないように注意して!!」

 

 奴は身体の一部を硬化して刃物のように振り回したり、毒らしき黒い液体をまき散らすなどして救助を寄せ付けないのだ。 

 

『お姉ちゃん! こうなったら……』

 

『ああ。無理にでも脱出するしかない!!』

 

 重力を遮断するレベルで障壁を強化して、念動で皆の方へ投げる!

 

 間違いなくガス欠を起こすだろうけど、あそこにいるのは漫画の主人公たちだ。

 

 あとは何とかしてくれるだろう!!

 

 そうしてヴァジュラを高めようとしたのだが、なんとここで二人そろって操作をミスってしまった。

 

 強化するはずが障壁を通じてサイコメトリーを発動させてしまったのだ。

 

 途端に頭の中に流れる様々な情報と風景。

 

 その中に私達には絶対に見逃せないモノがあった。

 

『なるほどねぇ。どうりでマンダラもヴァジュラノイドも作れるわけだよ』

 

『これは奴の誘いに乗るしかないな』

 

 これが本当なら世に出まわろうとしているヴァジュラ関連の技術を根絶やしに出来るチャンスだ。

 

 こちらが抵抗を止めたのが分かったのだろう、影は触手のように自分の身を障壁に巻き付けてズブズブと私達を呑み込んでいく。

 

「エレイン!」

 

「ダイアナぁ!!」

 

 グランパ、グランマ、申し訳ない!

 

 ここは二人の心労を少しでも軽減する事に務めるのが孫の務めという奴だろう!

 

「ダイアナ!」

 

「うん!」

 

 そんな訳で私達はサイコメトリーで影から読み取った情報を皆にテレパシーで送りつけた。

 

 バテてるから手元が滑って妙なところに思念波が飛んで行ったみたいだけど、その辺は誤差という事で!

 

 最後に『ヘルプミー! ヘールプ! 助けてクレメンス!!』と救出希望を残せばOK。

 

 それじゃあ、いざ黒幕とご対面だ!

 

 

 

 

 黄金のバリアに包まれたエレインとダイアナを呑み込むと、個性によって作られた黒い影は地面へ染み込むように姿を消した。

 

「父さん、今のはいったい……」

 

「超能力の中にはサイコメトリーというものがある。その力は特定の人物の所有物に触れて,そこから所有者に関する情報を読み取ること。あの子達は障壁に触れた影から使い手の情報を引き出し、それをこちらへ伝えたのじゃろう」

 

「おい、千明。このアホってのは何モンなんだ?」

 

「オール・フォー・ワンよ! オール・フォー・ワン!!」

 

「かなりの悪人みたいですけど、聞いた事がありませんね。マスターはご存じですか?」

 

「……ほら、私って拝み屋じゃない。悪霊とか妖怪は詳しくても、ヴィラン関係についてはあんまり……」

 

「オール・フォー・ワン、かつて裏から日本を支配していた『悪の帝王』だ。そしてオールマイトの宿敵だよ」

 

「雄英襲撃や例の怪人事件など、その全てに奴が関わっていたとは……。それにしてもUSJ襲撃の時点であの二人に目を付けていたのか」

 

 突如頭の中に叩き込まれた情報に退魔師たちが戸惑いを見せる中、ヒーロー達は事の重大さを理解していた。

 

「エレイン…ダイアナ……」

 

「どうして? どうしてあの子達ばかりがこんな目に!!」

 

「ダディ、マム、心配いらないわ。あの子達は私が必ず助けるから」

 

 泣き崩れる母を支える父親にキャスリーンは決意を込めて言葉を掛ける。

 

 姪たちは拉致される寸前に必要な情報の全てを伝えてくれた。

 

 犯人や敵組織の規模、そして奴等の潜伏先までも。

 

 攫われようとしている中、よくここまでやってくれたものだ。

 

 そしてあの子達は最後にこう言い残した。

 

 「まっている」と。

 

 これを聞いたならヒーローとして、そして伯母としてどうして奮起せずにいられようか?

 

「あの子達はセレナの忘れ形見、絶対に守ってみせる!」

 

 そしてもう一人、闘志と使命感を滾らせるものがいた。

 

「根津校長、行きます」 

 

「待つのさ、オールマイト。今回は相手が相手だ、他のヒーローとも連携して万全を期した方がいい」

 

「いいえ。奴の目的が緑谷少女である以上、あの子達の力を悪用されれば被害は予想もつかない。そうなれば例え助け出しても、あの子達に重い十字架を背負わせる事になる」

 

 異能にオカルト関連のことなど、ただでさえ子供には不相応なモノが圧し掛かっているのだ。

 

 超常社会における彼女達の立場を思えば、これ以上負荷を押し付けるわけにはいかない。

 

 それにオール・フォー・ワンも自分の個性から情報を抜き取られているなど思ってもいないはずだ。

 

 今襲撃を掛ければ、あの男の虚を突く事が出来る。

 

「待っていてくれ、緑谷少女。───私が行く!」 

 

 

 

 

「やった! やったぞ!!」

 

 ダイアナとエレインが拉致されたのと時を同じくして、カルト教団ドルドの聖殿に司祭の歓喜の声が木霊する。

 

 出久とファイテックスを取り込んだ後、沈黙を保っていた邪神サルドゥの鎧がゆっくりと動き始めたからだ。

 

「まさかここまで適合するとは、さすがは緑谷出久だ!」

 

 人の三倍はある巨体を両肩と兜に獣の顔を模した意匠を持つ漆黒の鎧で覆い、長い鬣で天を衝く邪神は獣に覆われた剛脚で聖殿の床を踏み砕いて大地に立つ。

 

「さあ、サルドゥよ! 破壊の限りを尽くすがいい!! 世に蔓延る失敗作共の屍を積み上げ、歪んだ世界に混沌を!!」

 

 我が世の春とばかりに興奮して叫ぶ司祭だが、それは長続きする事は無かった。

 

「な…なに!?」

 

 何故なら心血を注いで復活させた邪神が憎しみの籠った眼で己を見ていたからだ。

 

「サルドゥよ、なにを……ぎゃああああああっ!?」

 

 司祭が見せた戸惑いに付け込むように剛腕を一閃させ、その上半身を粉砕するサルドゥ。

 

 その殺意は肉片と千切れた内臓をまき散らして倒れる司祭の後ろで祈りを捧げていたドルド信徒へ向かう。

 

「グオオオオオオオオオオッ!!」 

 

 獣の咆哮を合図に巻き起こる殺戮劇、それはステンドグラス越しに映る月をも紅く染めた。

 

 むせ返るような血と臓物臭の中、命だったモノを辺り一面にぶち撒けたサルドゥは窓から天を睨む。

 

「エレ…イン…ダイア…ナ……」

 

 しゃがれた緑谷出久の声でそう呟くと、サルドゥはステンドグラスを突き破って聖堂から姿を消した。

 

 

 

 

 さて、AFOの影に取り込まれた私達は気が付くと応接室のような部屋で円卓を前に椅子に座っていた。

 

 私の右隣にはダイアナ、そして左隣には見たことがないセーラー服姿で背中まで届くほどの栗色の髪が特徴の女子高生が座っている。

 

 いや、ちょっと待て。

 

 この子、どこかで見たことがあるような……

 

「ねえ、貴方達も攫われてきたの?」

 

 こちらの幼さから警戒心より心配が勝ったのだろう、私の手を取る女の子。

 

 サイコメトリーを切り忘れていた所為か、次の瞬間には脳裏に不思議な光景が広がった。

 

 和風の祭壇でこと切れた巫女姿の隣の女の子、その傍らには青みかかった黒髪をショートにした女の子と瓜二つの顔をした少女が死んでいる。

 

 そして祭壇の下では数多のくすんだ蒼い勾玉を埋め込まれた植物が枯れ果てており、さらには祭壇の奥では巨大な陰があった。

 

 高層ビルをも軽く上回る背丈を持ったそれは、体を起こすと天へ吼える。

 

 その咆哮は日本人なら誰しもが聞いた事のある漆黒の災厄のモノだった。

 

「ねえ、大丈夫? ねえってば!」

 

「はっ!?」

 

 女の子の声で現実へと引き戻されたけど、私の背中がぐっしょりと冷や汗で濡れていた。

 

『お姉ちゃん、今のってまさか……』 

 

『落ち着くんだ、ダイアナ。そうと決まったわけじゃない。けど途轍もなく嫌な予感がするな』

 

 同じモノを見たであろうダイアナの念話に答えながら、私は思考を巡らせる。

 

 あの巨大な陰は本当にアレなのか?

 

 それに勾玉が付いた植物、そんな設定の漫画があったような……

 

 しかし悲しい事にヴィジョンの真相を探る時間は無かった。

 

 何故なら私達をここへ招待したホストが現れたからだ。

 

「はじめまして。お目にかかれて光栄だよ、当代櫛名田第二の姫。そして我が娘達よ」

 

 男は黒いスーツを身に纏い、顔には漆黒の仮面をつけていた。

  

 言葉遣いは柔らかいが、その雰囲気は不穏の一言。

 

 それも当然、奴は日本のヴィランを束ねる大悪党だからな。

 

「お招きいただき感謝する、オール・フォー・ワン」

 

「それともこう呼んだ方がいいかな? ───グエン・モルガン」

 

 私達の言葉に漆黒の仮面の奥で奴が笑った気がした。

                 




【悲報】洗脳は出来ずともテッカマンブレード(偽)の体内に寄生したままのラダム寄生体が放つ思念波によって、宇宙の彼方から侵略者ラダムが地球へ向かっています。(宇宙の騎士テッカマンブレード)

【悲報】帝都壊滅を目論む魔人が暗躍をしているようです。(???)

【悲報】蒼い勾玉を付けた謎の植物生命体が人を襲っているようです。(???)

【悲報】邪神サルドゥ復活?(聖獣機サイガード)

【凶報】ジェノサイバーが破壊神としてレベルアップしました(ジェノサイバー)

【悲報】地球産のアルティメット・ワンがアップを始めたようです(???)



オマケ【転生者目録】

Cボーイ・テッカマンブレードの能力を転生特典で得た転生者。
スパロボ勢で原作は未視聴。テッカマンブレードの強さを知っていたので迷わず選んだのだが、まさか欠陥まで再現されているとは知らなかった。
肉体の組織崩壊によって余命は5年。
できれば二度とブレードにはなりたくない。
無自覚ながらも転生者の中では特級レベルの厄ネタとなっている。
容姿は相羽タカヤそっくりだが、声は初代テッカマンこと森功至氏によく似ている。
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