【急募】私達が世界を滅ぼさずに済む方法   作:アキ山

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 爆豪君が誰これ?状態に!

 彼は負けず嫌いでクソを下水で煮詰めた性格とか言われてるけど、自分に並ぶと認めた人間がいたら性格もある程度落ち着くとおもうのだ。

 というわけで、この先生き残れたらいいね!!


イッくんと夢の結晶

 蛇腔総合病院の特別棟の地下深くにある研究室。

 

 そこでは病院の設立者であり主でもある氏子達磨が眠りについていた。

 

 死柄木弔より現状の最高傑作と言える怪人脳無が一瞬にして破壊されたと聞いて、氏子は数日前から不眠不休で更なる研究に没頭していた。

 

 脳無を倒したのがオールマイトなら、いや他のプロヒーローでも彼はここまで研究にのめり込まなかっただろう。

 

 しかしそれが10歳にも満たない幼子だというなら話は別だ。

 

 死柄木は憤慨しながらも自分の最高と位置付けた作品を役立たずのゴミと称した。

 

 反論しようにも幼女に負けたという結果を突きつけられては氏子に返す言葉はない。

 

 そんな氏子が選んだのは、胸に抱えた屈辱を研究という形で発散させる事だった。

 

 次こそは、オールマイトすら容易く葬るだけの力を持った怪人を作り出してやる!

 

 そうすれば、あの王様気取りのクソガキも生意気な口を閉じるだろう。

 

 しかし決意とは裏腹に研究は遅々として進まない。

 

 能力開発に必要な個性は盟友から得る事ができる。

 

 だが、複数の個性に耐えうる素体を生み出す事が出来ないのだ。

 

 悩み、試行錯誤し、失敗し、そして問題を洗い出す。

 

 その工程を何度も繰り返したが、どうしても満足する成果が表れる事はない。

 

 そんな中、集中力や頭の回転に陰りが見えた氏子は仮眠を取ることにした。

 

 ソファに身を横たえて瞼を閉じれば、間を置かずに睡魔が訪れる。

 

 ゆらゆらと意識が闇に沈みゆく最中、氏子は不思議な夢を見た。

 

 そこでは彼は今よりもずっと若い30代の迫水という研究者になっていた。

 

 迫水は九竜という財閥の中で兵器開発に関わっていた。

 

 驚いた事に迫水のいる世界には個性が無かった。

 

 当然ヒーローという職種は無く、犯罪者もヴィランで統合される事なく罪状によって様々に区分されていた。

 

 街の治安を守るのは警察であり外敵と相対するのは軍隊、そこに彼等以外が立ち入る余地はない。

 

 紛争や貧富の差、さらには犯罪と世界で起こる様々な問題に対して、人類は科学技術の発展で対応しようとしていた。

 

 超常社会が訪れる事無く、旧社会のまま進んだような世界。

 

 そんな中で迫水が追い求めていたのは科学とは一線を画すモノだった。

 

 それはグエン・モルガンという天才科学者が発見した異界からのエネルギー『ヴァジュラ』だった。

 

 その力は人間の誰しもが極少量保有しており、ヴァジュラを多く持つ者は超能力を扱う事が出来るという。

 

 この個性とはまったく違う超常の力を知った時、今までに無い未知の世界との出会いに迫水は歓喜した。

 

 それは中にいる氏子も同様だ。

 

 彼はすでに故人となっていたモルガン博士の残した数少ない資料を読み漁った。

 

 残念な事に数年前に起きた香港島消失の影響で詳細なデータは残っていなかったが、迫水は少ない資料から自然界のヴァジュラを生成・増幅する超能力増幅装置『マンダラ』を復元した。

 

 そしてマンダラが生み出すヴァジュラエネルギーを用いて、最強の兵士の研究を始めたのだ。

 

 素材となる人体は九竜財閥が用意するのをいい事に繰り返される実験に次ぐ実験。、

 

 何十人、何百人死んだかわからない。

 

 マンダラから発せられるヴァジュラを過剰に浴びて、人体を保てなくなった者。

 

 苦し紛れに研究員を掴み、そのまま融合して醜悪な化け物となった者。

 

 異常肥大した頭部が身体全てを飲み込み、巨大な脳の化け物になった者。

 

 犠牲になった者達には故郷で起こった戦乱から逃げてきた外国人がいた。

 

 生活に困窮して路上で暮らしていた老人がいた。

 

 将来に夢など持たずに日々遊び歩いていた若者がいた。

 

 何も知らない幼児がいた。

 

 新たな命を腹に宿し、最後まで命乞いをしていた妊婦がいた。

 

 しかし迫水も氏子も彼等の事など気にも留めなかった。

 

 二人にとって、犠牲者はタダの木偶でしかないからだ。

 

 なので彼等の命を、血肉を、変質した体の全てを、その怨嗟の叫びすらも無駄なく使用した。

 

 こうして長い試行錯誤の末、迫水はヴァジュラの戦士を誕生させた。

 

 ヴァジュラノイドと名付けられたソレは、戦乱を収めるべく中東へ向かう国連軍空母アレキサンドリアへ、迫水達研究チームと共に配備された。

 

 しかし、ヴァジュラノイドが戦場に立つことは無かった。

 

 迫水の最高傑作は空母アレキサンドリアで遭遇した敵に敗れて破壊されたのだ。

 

 その敵こそがグエン・モルガン博士が我が子を利用して生み出したヴァジュラの獣だった。

 

 初戦では右腕を融合捕食したものの、上半身を粉砕されて敗北。

 

 その後、獣の腕を乗っ取って生き延びたヴァジュラノイドは助けを求めた迫水の手によって、融合捕食能力を強化。

 

 乗員ごとアレキサンドリアを食い尽くして、生ける巨大空母にまで進化した。

 

 その際、迫水もまたヴァジュラノイドの餌となったが、その事に彼は悔やんではいなかった。

 

 自分の最高傑作と一体になる幸福感とヴァジュラの素晴らしさを身をもって知ることになったのだから。

 

 惜しむらくはヴァジュラの獣を打ち倒す、自分の最高傑作の姿をこの目で見られない事か……

 

 こうして飢え狂うヴァジュラノイドの本能に飲み込まれ、迫水の…氏子の意識は闇へと消え果てた。

 

 次に氏子が目を覚ますと蛇腔総合病院の研究室だった。

 

 酷く不思議な夢だったが、それは氏子に大きな恩恵をもたらした。

 

 夢の中で迫水と共に積み重ねた研究、それを氏子は憶えていたのだ。

 

 彼は早速パトロンである悪の帝王へ連絡し、必要な資材を注文した。

 

 脳無の強化に必要と言えば帝王はすぐに用意してくれたが、送られてきた物資は氏子を満足させるには程遠かった。

 

 夢の世界と現世では科学技術に大きな隔たりがあり、その差が資材一つ取っても顕著に表れていたからだ。

 

 とはいえ、迫水の記憶もさすがにマテリアルの製造法までは網羅していない。

 

 氏子は妥協したくないと叫ぶ本心と何とか折り合いを付けて、手に入るパーツを使って作業を進めた。

 

 その結果、次なる脳無にはこの世界の誰も知り得ない力を与える事が出来た。

 

 素体は前回破壊された対オールマイトと同タイプだが、注目すべきはその腹に備わった超能力炉『マンダラ』だ。

 

 このマンダラによって改良型には常に周囲から収集増幅されたヴァジュラエネルギーが供給される。

 

 それによって身体能力は更なる強化を見せ、身体から伸びる触手を介せばヴァジュラエネルギーによって機械の操作や支配も可能となった。

 

 それに加えて外部からの攻撃で身体が傷つけば有機物・無機物問わずに融合捕食を行い、強化修復を繰り返すことで更なるバトルクリーチャーとして進化する能力も身に着けた。

 

「これこそが我等の求めていた究極のヴァジュラの戦士! ネオ・ヴァジュラノイドじゃ!!」

 

 身体を起こすネオ・ヴァジュラノイドを見ながら、氏子は狂ったように笑う。

 

「こ奴の前ではオールマイトはおろかオール・フォー・ワンも敵ではない! 戦場に投入した際に、どれだけ死体を積み上げるか楽しみじゃわい!!」

 

 そんな狂気に取り付かれた自分を、病院や研究室で犠牲になった多くの者が背後で嘲笑っていたのを、氏子は終ぞ気が付かなかった。 

 

 

 

 

 どうも、6歳にしてピカピカの高校一年生になったエレイン・緑谷です。

 

 何を言っているか分からないって?

 

 大丈夫だ、私達も分かっていない。

 

 事の始まりは雄英高校宿泊4日目となる今朝だった。

 

 朝食を摂ってまったりしていると、ブラドキングとかいうゴッツなおっさんに呼ばれて、私達は職員室に行くことになった。

 

 いったい何の用だと入ってみれば、そこには雄英の教職員が勢ぞろい。

 

 殆どが現役ヒーローだという彼等の視線が集中するのは結構な圧である。

 

 そんな中、例のげっ歯類校長がトンデモない爆弾をブチかましてくれた。

 

「彼女達はある事情からウチで保護しているエレイン君とダイアナ君だ。二人には今日からヒーロー科の一年で授業を体験してもらおうと思うのさ!」

 

 下等生物よ、お前はいったい何を言っているんだ?

 

 脳裏に思わず『解剖してみるか』なんて物騒な考えが浮かんだ私を、いったい誰が責められるだろうか?

 

 さらに驚いたのはこのトンデモ意見に教職員の誰も反対しなかった事だ。

 

 精神的にはともかく、肉体的には我等姉妹は6歳の幼女ぞ?

 

 こんなの放り込んだら、受け入れ先に混乱しか起きんだろうに。

 

 もちろん私達は嫌がったのだが、体験入学だと半ば無理やりに押し切られてしまった。

 

 本気でトンズラしてやろうかとも思ったが、外に出て妙な事に巻き込まれても困る。

 

 仮に逃げてヴィランのやらかした犯罪に巻き込まれようものなら、よくてスプラッター&ゴア祭りだし、下手をしたら都市一つくらいは吹っ飛ぶ。

 

 流石に我儘の代償としては大きすぎるだろう。

 

 そんなワケで私達はキャシーが迎えに来るまでの辛抱だと、渋々校長の案を受け入れたのだ。

 

 でもって肝心のクラス分けだが、嘆かわしい事に1年A組だった。

 

 元々この学校のヒーロー科は1-Aと1-Bの2クラスしか存在しない。

 

 そして私達の人間関係を考慮してか、知り合いのいない1-Bよりもイッくんがいる1-Aの方がいいと判断したそうだ。

 

 こちらへの配慮はありがたいが、よりにもよって例の虐殺を見た生徒の下に入れるというのはどうなのか?

 

 これは高校生が幼稚園児をいじめるという、ヒーロー養成校としてはあまりにも痛すぎる結果が待っているのではなかろうか?

 

 そんなワケでイレイザー・ヘッドこと相澤教諭の先導を受けて1-Aの教室へ向かっているのだ。

 

 その道すがら、先の懸念を問いかけてみると相澤教諭はこう返した。

 

「あれが不可抗力なのは誰が見ても明らかだ。その辺を飲み込めんようではヒーローとしてやっていけん。何かされるようなら俺に言え。ソイツを除籍処分にしてやる」

 

 なんともはや過激なセリフである。

 

 んな簡単に生徒をクビしていたら、PTAが黙っていませんぜ?

 

「除籍って……やり過ぎじゃないの?」   

 

「小学校にも通っていないお前達を無理言って高校生活へ放り込むんだ。せめて不快でない環境くらいは作ってやらんとな」

 

「ヒーローの卵を潰してやることじゃないだろうに……」

 

「その程度で潰れるなら今の内に間引いてやった方が奴等の為だ」

 

 ふむ、芸能人っぽいイメージがあったんだが、ヒーローとやらは想像以上に過酷な商売のようだ。

 

 益々なりたくなくなったぞ。

 

 そんなワケで相澤教諭に続いて教室へ入ると、ざわついていた教室が静寂に包まれた。

 

 生徒達から漏れ出る感情は驚きや戸惑いと怖れ、あとは憐憫と……歓喜はイッくんだな。

 

「おはよう諸君。今日は授業の前に体験入学者を紹介する。───緑谷姉妹、挨拶しろ」

 

「エレイン・緑谷だ。校長の命令で諸君らと机を並べる事になった。短い間だがよろしく頼む。あと例のげっ歯類は、チュールを全身に塗りたくって校舎の裏にいる黒猫の又五郎に差し出す予定だ」

 

「ダイアナ・緑谷です。お兄さん、お姉さん、よろしくお願いします。校長先生だけど、又五郎がダメなら向かいに住むピットブルのジョンに始末を頼むから安心してね」

 

「おい、緑谷姉妹。さらりと根津校長の殺害計画を立てるな」

 

「「うそやで~」」

 

 あまりに重苦しい雰囲気なのでギャグの一つでもと思ったのだが、どうやらスベってしまったらしい。

 

 輪をかけて何とも言えない空気になった教室に相澤教諭の声が響く。

 

「お前達が何を気にしているのかは察しが付く。だがな、あれは不可抗力であり正当防衛だ。コイツ等を責める権利は誰にもない」

 

 相澤教諭の言葉に反論する生徒たちはいないが、全員が納得している訳でもない。

 

 まあ、それも仕方が無いだろう。

 

 今まで殺人は悪と教えられてきたのだ、自分の中に根付いた常識を変えるのは簡単じゃないだろうさ。

 

「どんな理由であれ殺人は行われるべきではない、たしかにこの考えは正しい。だがな、それは理想論だ。ヒーローとして現場に出れば、どうしても命を天秤に掛けなければならない場面が出てくる。それはヒーローだけじゃなくて、被害に遭った者達も同様だ」

 

 恐らくは体験談なのだろう、相澤教諭の声音が一段低くなる。

 

「災害に巻き込まれたりヴィランに人質にされれば、他者を犠牲にしないと自分の命を守れない状況もある。そんな極限状態を生き抜いた人に嫌悪や猜疑の目を向ける奴に、ヒーローが務まると思うか?」

 

 教壇に立つ先達の問いに答えられるヒーローの卵はいなかった。

 

「本気でヒーローになりたいのなら割り切る精神的強さを身に着けろ。人を殺した者を前にした程度で動揺する奴など、使い物にならんぞ」

 

 とまあ、実に実践的なアドバイスを最後に私達は特別に用意された最前列の席へと向かった。

 

 出来れば最後列が良かったんだが、この身長では後ろに回ると黒板どころか前すらも見えんのだ。

 

 そんなワケで久方ぶりに高校の授業を受けた訳だが……

 

「───わからん」

 

「右に同じ」

 

 正直に申し上げて授業の7割がたがサッパリだ。

 

 数学と語学は辛うじてついていける。

 

 しかし前世の記憶が通じないヒーロー社会の情勢に関するモノは理解できん。

 

 というか、逮捕権のある警察がどうして個性の使用を禁止されているんだ?

 

 個性を使うヴィランはヒーローが鎮圧するから大丈夫って、それはただの二度手間だろう。

 

 警官に個性の使用を認めたらヒーローがいなくても事件解決するし!

 

 警察は国家の治安を守る組織だぞ!

 

 凶悪犯に武力行使できなくてどうするんだ!? 

 

『もしかして、私達の方がおかしいのか?』

 

『かもね、常識の基準がどうしても前世に偏っちゃうし。この世界で言えば旧時代的な考え方っていうのかな』

 

 やれやれ、なんともはや生き辛いものだ。

 

 午前中の授業が終わって昼休みになると、生徒たちは思い思いに昼食を摂りに行く。

 

 もちろん腫物扱いの私達に声を掛けるモノ好きはいない。

 

 一名を除いてだが。

 

「エレイン、ダイアナ! ご飯食べに行こうか」

 

「私達と一緒でいいのか、イッくん?」

 

「そうそう。お友達、待ってるんじゃないの?」

 

 笑顔満面で私達を誘いに来るイッくんに、私達は思わずそう聞いてしまう。

 

 この前の丸い女の子とか眼鏡君達がチラチラこっちを見てるんですよ、うん。

 

 あれって絶対イッくん誘うつもりだったよね。

 

「今日はエレイン達は初日でしょ。僕が付いた方がいいと思って」

 

 あぁ、そりゃそうだ。

 

 訳アリの従姉妹が高校にいるのに、それを放っておいて学園生活を満喫するような性格じゃないな、イッくんは。 

  

「そういう事ならお言葉に甘えようか」

 

「ここの学食っておいしいんでしょ? エスコートお願いね」

 

「うん、任せて!」

 

 そんなワケでイッくんの先導によって私達は学食へやってきた。

 

 昼時の学食はさながら戦場のようだったが、イッくんのお陰で3人分の席も確保完了。

 

 注文した料理をカウンターで受け取る事が出来ずに、わざわざ調理師のオバちゃんが持ってきてくれた。

 

 ……我がボディの低身長が恨めしい。

 

「えーと、二人共多かったら残していいからね?」   

 

「いいや、出された以上は食べるのが礼儀だ」

 

「オバちゃん達も少なめにしてくれたしね」

 

 本日の献立はイッくんがかつ丼、私達はカルボナーラだ。

 

 これはお母さんの得意料理だったので食べるのはしんみりするんだが、何時までも引き摺っていては天国へ逝った両親が心配する。

 

 悲しさも寂しさも少しづつ飲み込んで行かないとな。

 

「そういえば、生徒達が浮ついてるよね?」

 

 懸命にパスタを攻略していると、ダイアナがこんな事を言い出した。

 

「うん。雄英の体育祭が近いからね」

 

 イッくんの話ではこの学校の体育祭は個性の使用が許可されており、事務所を営む現役ヒーローも注目する好成績を残すとスカウトも狙える就職活動の場でもあるらしい。

 

 さらに言えば一般大衆からの注目も凄まじく、オリンピックに代わる一大イベントなんだとさ。

 

 この世界で六年生きて来たけど、テレビ中継すら一回も見た事ないっスわ!

 

「体育祭がそんな凄い事になってるとはねぇ……」

 

 つくづく私の常識とはかみ合わない。

 

 私にとって体育祭は面倒・しんどい・恥をさらす場とぶっちゃけ雨乞いレベルの嫌なイベントだったけどなぁ。

 

 しみじみとそんな事を思っていると、隣のテーブルに陣取る一団があった。

 

 見れば三人とも1-Aの生徒で、一人は白い髪の爆発ヘアーに目つきの悪い男の子。

 

 もう一人が赤い髪を逆立てたこれまた目つきの鋭い男の子、最後は黄色い髪の少し軽そうな男の子だ。

 

 そして白い髪の男の子は私とダイアナをマジマジと見つめてくる。

 

 一見すればガンを付けてる風だが、込められた感情は興味や色々な感情が混ざっていた。

 

「出久、コイツ等なんか。お前の原点ってのは?」

 

「そうだよ、かっちゃん」

 

 ツンツン君はずいぶんとイッくんと親しそうだ。

 

「彼は爆豪勝己、僕の幼馴染なんだ」

 

 なるほど、そりゃああだ名で呼ぶわけだ。

 

「エレイン・緑谷だ。イッくんが世話になっている」

 

「ダイアナ・緑谷だよ、よろしく」

 

「おう」

 

 そういう事ならと自己紹介をすると、彼は短くこう答えた。 

 

「あんな事があったからちょっとビビってたけど、改めてみると普通の子だよな。俺、切島鋭児郎ってんだ。よろしくな」

 

 爆豪君に挨拶すると、今度は赤い髪の切島君が声を掛けてきた。

 

 ヤンキーみたいな見た目と違って随分と明るい少年である。

 

「よろしく。あの事に関しては気にしないで……というのは難しいだろうな。だが妹を護る為だ、後悔はしていない」

 

「うん。だから責めるなら気絶してヴィランに捕まった私にしてね。あれが無かったらお姉ちゃんも暴走しなかったし」

 

「イヤイヤ、さすがにそれは責められないよ。あ、俺上鳴電気ね」

 

「よろしく、上鳴君。しかし君達はよく話しかける気になったな」

 

 あの時にやらかしたデンジャラスゴア祭りを思うと、イッくん以外は総スカン食らうのが普通だと思うんだが。

 

「今朝の相澤先生の話聞いて思うところあったんだよ」

 

「俺だって気が付けば家族がヴィランに捕まってたら、暴走の一つもするだろうしな」

 

「ヒーローやってりゃあ殺しの現場なんざ嫌でも出くわすんだ。ならガキなんかにビビってらんねーだろ」

 

 それが彼等の考えなら、こちらから言う事は無い。

 

 例のヴィジョンクエストで人間嫌いになったけど、誰彼構わず噛み付くというわけでもないしな。

 

 こうして何時もよりも賑やかな昼食が終わると、私達はイッくんと共にサポート科へ行くことになった。

 

 目的はイッくんが造り上げたパワードスーツ『ファイテックス』を見る事。

 

 この見学だが、何故か爆豪君達も付いてくることになった。

 

 爆豪君曰く『敵情視察』だそうな。

 

「バクゴーよぉ。敵情視察ってお前、B組とか普通科の奴等なんて歯牙にも掛けてなかったじゃねーか」

 

「あんなモブ共なんざ眼中にねー。俺が敵だって認めてんのは出久だけだ」

 

「どっちがナンバー1ヒーローになるかって勝負してる最中だからね」

 

 切島君の問いかけに不愛想にそう答える爆豪君。

 

 その言葉にイッくんが少し苦笑いを浮かべる。

 

 そしてこの言葉に感嘆の声を上げたのが、上鳴君とダイアナだ。

 

『驚いたなぁ。爆豪君がイッくんの事を、こんなに認めてるとは思わなかった』 

 

『原作とやらでは違うのか?』

  

『かなり屈折した感じだったと思う。なんていうか、自分を追い抜きそうないじめられっ子的な感じ?』 

 

 少々聞き捨てならん言葉があったような気がするが、それはこの世界とは違う話。

 

 目くじらを立てる事もあるまい。

 

 そんなこんなでサポート科へ辿り着くと、ドレッドヘアーのように纏まったピンクの髪に、妙なゴーグルを付けた女の子が私達を迎えた。

 

「お帰りなさい、緑谷さん! トトも首を長くして待っていましたよ!」 

 

「ただいま、発目さん。トトもご苦労様」

 

『この程度、何の問題もありません』

 

 発目と呼ばれた少女に答えると、イッくんの付けたブレスレッドから渋い感じな初老の執事の立体映像が現れる。

 

「うおっ!? 緑谷、なんだよそれ!?」

 

「僕のパワードスーツ、ファイテックスのシステム管制と開発サポートをしてくれているAIのトトだよ」

 

『爆豪様以外は初めまして。私、緑谷出久様に仕えるトトと申します。私の名前はマスターがエジプト神話の知恵と書物の神から付けてくださいました』

 

「あ、私は発目明です! 目的は緑谷君のファイテックスでしょうけど、時間があれば私のドッ可愛いベイビー達も見てくださいね!」

 

 トトは立体映像の中で優雅に頭を下げ、発目さんはテンション高く手にしたスパナを振り回していた。

 

『マスター。プロトの調整ですが、脚部ロケットエンジンの出力を5%増強しました。後ほど確認をお願いします』

 

「うん、ありがとう」

 

 多くの人達が作業をする中を進んだ私達は、ラボの一角にある格納庫へ収納された見覚えのある銀色の鎧と出くわした。

 

「あれが僕の作ったファイテックス、そのプロトタイプだよ」

 

「おお! あれだ、あれ!! 緑谷の身体をガーって覆ってさ、凄かったんだよ! マジで漫画みたいだった!!」

 

「けど、最初の戦闘訓練の時は使ってなかったよな。なんでだ?」

 

 はしゃぐ切島君をよそに、上鳴君がイッくんへ質問を投げかける。

 

「あの時はまだ最終調整の途中だったんだ。だからUSJが初めてなんだ」

 

「それで、コイツは使えんのか?」 

 

 苦笑いで答えるイッくんに爆豪君が質問を重ねる。

 

「今はUSJの時に出た問題を洗い出してる。体育祭までには万全に仕上げるさ」

 

「上等だ。戦闘訓練の時みてーに生身のお前と戦うんじゃ興ざめだからな」

 

「あれ? あん時ってバクゴー勝つには勝ったけど、けっこうキワキワだったんじゃね?」

 

 そう言った瞬間、上鳴君は爆豪君の裏拳を食らってのけ反った。

 

「うっせー! あんなん余裕だったわ!!」

 

 うん、アレは痛いわ。

 

 口は禍の元だねぇ。

 

 その後、イッくんはファイテックスに付いて色々と説明してくれたのだけど、私のダメな脳みそではほとんど理解できんかった。

 

 まあ、それに関しては他の皆も同様なので大丈夫だろう。

 

 上鳴君なんて途中で「うぇーい」と連呼しながら謎のサムズアップしてたし。

 

 それとイッくん説明の時もの凄く早口になってたなぁ。

 

 あの得意分野を怒涛の如く話す感じ、オタクっぽくて親近感が持てます。

 

 そんなイッくんの熱が入った説明のお陰で見事にお昼休みは潰れ、私達は教室へ戻る事となった。

 

『お姉ちゃん、雄英の体育祭はどうするの?』

 

『ここに残るにせよキャシーが迎えに来るにせよ、多分私達に見る機会は無いだろう。せいぜい、部屋かアメリカでイッくんや爆豪君達の健闘を祈るとするさ』

 

 袖すり合うのも他生の縁。

 

 そのくらいはしても罰は当たらないだろうさ。

 

 

 

 

 サポート科のラボから教室へ戻る最中、出久はトトから通信を受けていた。

 

「どうしたの、トト?」

 

『マスター、例の件です』

 

 トトの言葉に出久の目が鋭さを増す。

 

『通信方法を思考スキャンに切り替えて。あと周りに盗聴や電波取得は無いね?』

 

『サーチしましたが、その気配はありません』

 

 素早く防諜の確認を行った出久は従者の言葉に一端は胸を撫で下ろす。

 

『それでエレイン達の力の件だね。データを精査したいって言ってたけど、何か分かったのか?』

 

『はい、この件は絶対に他言無用でお願いします。ご本人に確認するのも信頼関係を築くまでは控えた方がいいでしょう』 

 

『それだけ重要な事なんだね。わかった』

 

 出久はUSJの事件から、エレイン達の個性が念動ではないと辺りを付けていた。

 

 だからこそ、万が一の時に役立つように彼女達の事を正確に把握したい考えていたのだ。

 

 叔父達が個性の届け出を偽ったのも、きっと何か理由があるのだと信じて。

 

『結論から言えば、彼女達の力は個性ではありません』

 

「……なんだって?」

 

 しかし、自らの最高傑作が告げたのは予想だにしない答えだった。

 

 出久を襲った衝撃は、防諜の為に封じていた言葉が思わず口を衝くほどだった。

 

『力を発動した彼女達からは個性因子特有の反応は出ませんでした。つまり、世間一般の判定方法からすれば彼女達も無個性であると言えます』

 

『待て、トト! あの時、たしかにエレインは暴走させていたじゃないか!』

 

『はい。ですから私はこう結論づけたのです』

 

 混乱する自分に冷静に答えを返す従者の声に、出久は思わず固唾をのみ込んだ。

 

『エレイン・緑谷は個性とは全く異なる超常の力を持つモノ。すなわち、旧世界における超能力者ではないかと』     




爆豪・この世界では自分を差し置いて天才少年と呼ばれた出久をライバルとしてみている。

 とはいえ、幼馴染が積み上げてきた狂気じみた努力やその理由を知っているので、嫌悪や憎悪はない。

 自分が認めた男として純粋に超えるべき壁という認識。

 原作とは違い、初回の戦闘訓練では爆豪が勝った。

 ただ出久のヒーローとしての完成形はパワードスーツありきと聞いていたので、勝利だとは認めていない。

氏子・ウエルカム・トゥ・クレイジーワールド。

   ヴァジュラに関わったので死亡が確定しています。

   遺体が残れば超ラッキー!
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