漸くネタが降ってきました。
この作品、古いアニメを見ないと思いつかんのかも。
現内閣総理大臣である中丸慎太郎は会議を終え、自らの執務室へ入るなり頭を抱えた。
この数日、彼を襲っている難事はまさに悪夢染みていた。
まずは雄英高校へのヴィラン襲撃事件。
これは観客や職員などの数多くの犠牲を出し、その中には政権与党の重鎮やヒーロー公安や協会の要職に着く者がいた。
このために国の上層部は大荒れとなり、結果として犯人が犯行声明を出すまでロクな捜査もできなかった。
それに加えて事件で犠牲になった者の遺族や世論の反発も著しく、雄英に責任を押し付けはしたものの国立である為に政府へその矛先が向くのは避けられなかった。
そうして積み上がった厄介事を寝る間も惜しんで必死に処理をして、ようやく粗方の事に収束の目途が立ち始めたかと思った矢先に奴等が現れた。
「……なにが魔王だ! なにが世界が滅びるだ! 誇大妄想もいい加減にしろ、狂信者共めッ!!」
その時の事を思い出すだけで、中丸の胃壁はおろし金を掛けられたかのようにガリガリと削れていく。
奴等は何故かある人物を魔王と認定し、世の安寧の為に抹殺すると言い始めたのだ。
それがタダの一般人ならばこちらも目を瞑ったが、相手はアメリカの最重要人物の身内というではないか。
中丸は必死に止めたが、世界を救うという使命に憑りつかれた奴等は聞く耳を持たなかった。
通常なら警察かヒーローを呼んで拘束するところだが、奴等は二千年近く前からこの国に根を張って来た者達だ。
当然そのコネも膨大で政府はもちろん、皇室まで顔が利くという。
さらに奴等は十年前に四国で起きた惨劇を予言し、政府へ警告までしていたのだ。
当時の政府はあり得ないと無視していたが、それが仇となった。
無銘のカルト宗教がほざいた事なら信じなくても仕方がないが、相手はこの国の人間ならだれもが知っている巨大宗教の一大宗派だ。
そこからの警告を無視して事態を引き起こした事を公表されれば、現政権など容易く吹き飛ぶ。
「これだから妙な異能を持つ化け物は嫌いなんだ!」
オールバックにした髪を無茶苦茶に掻きむしって叫ぶ中丸。
宗教団体が引き起こす問題に、彼に出来る事は日米間に亀裂が入らないよう神に祈るだけというのは皮肉な話である。
◆
雄英体育祭を襲った悪夢は多大な血と命を奪いながら幕を閉じた。
ヴァジュラノイドは殲滅されたものの、その被害は決して小さくはなかった。
死者568名、負傷者3400名を超えるという近年稀に見る未曾有の犠牲を出してしまったのだ。
そして事件の翌朝には『ヴィラン連合』を名乗る連中から、犯行声明が発せられたらしい。
キャシーから聞いた話だと、私達がこの時代に転移した際に虐殺したチンピラ達がそう名乗っていたんだとか。
あの時に全滅させられれば今回の悲劇は防げたのではないかと思うと、人類大嫌いな私だって少しばかり心が痛む。
今回の件はヴィランの襲撃が原因だが、だからと言ってイベント主催者雄英高校の責任が無いワケじゃない。
警備上の不備や避難誘導が杜撰だったのではないかなど、世間からの風当たりは相当に厳しいモノとなっている。
マスコミは名門校の不手際という餌に飛びついたし、遺族達も消滅してしまったヴァジュラノイドの代わりに怒りの矛先を雄英へ向けた。
雄英にとって不運だったのは三つ。
一つは被害者の中にヒーロー協会の重鎮を始めとする社会的に有力者がいたこと。
一般市民の犠牲が軽いとは言わないが、この手の人間が失われれば影響は否応なしにも多大となる。
その怒りの声もまた通常のモノよりも大きく、支払うべき代償も同様だ。
二つ目はオールマイト赴任後の事件だったこと。
平和の象徴たる彼がいてこれだけの被害を許した事は、政府やヒーロー公安にとって大変都合が悪い。
オールマイトという大黒柱に傷があると分かってしまえば、現ヒーロー社会は崩壊する危険性もあるからだ。
なので、そのブランドを守る為に彼等はマスコミを使ってこう情報操作を行った。
『雄英側の采配が悪かった』と。
もちろん現場にいた業界関係者の多くはそうでない事は知っている。
しかし声を大にして否定の言葉を吐く者はいないだろう。
彼等の業界でヒーロー公安を敵に回すのは破滅と同義、一高校を守る為に負うにはあまりにもリスクが高すぎる。
最後の一つは犯人に止めを刺したのがキャシーだったということだ。
キャシーはアメリカに所属するヒーローである。
そんな彼女がこれだけの被害を出した事件のカタを付けたとなれば、日本のヒーローは面目が立たない。
現場に平和の象徴たるオールマイトがいたとなれば猶更だ。
個性の無断使用うんぬんという難癖は付けられなくも無いが、そんな物は緊急避難の一言で簡単に吹っ飛ぶしな。
そういう事情からか、事件から数日が過ぎてもテレビやネットでげっ歯類校長と関係者が頭を下げる光景をよく見る。
雄英も現在は無期限休校となり、保護されていた私達はベイト一家とホテルに居を移す事になった。
グランパ達はすぐに米国へ帰るつもりだったんだけど、キャシーの事情説明が長引いて待ちぼうけを食らっている。
訪日がヒーローとしていれば問題なかったんだけど、私達を引き取る為に観光という形で入国手続きをしていたのが仇となった。
あとキャシーの個性が米国の国家機密に当たるとかなんとかで、在日米軍基地にも顔を出さないといけないらしい。
お陰であと一週間はホテル暮らし確定だそうな。
ちなみに私達が事態を知ったのは、事件翌日の昼過ぎだった。
というのもヴァジュラノイドが消滅したのを確認した後、体力という電池が切れた私達はすぐに眠ってしまったからだ。
さすがに生身で虚界物質による純粋核爆発を制御するのは無茶が過ぎたらしい。
魔獣たんの時は息をするように出来た事なのに、幼女ボディではこの体たらくとは……人間とジェノサイバーのスペック差というものをまざまざと思い知った。
とはいえ、私達ものんびりはしていられない。
マンダラを製作した人間を見つけ出して、本人ごと研究データをこの世から消さなくてはならないからな。
そんな風に思考をグルグルと回している私は、現在グランパの膝の上で座っている。
ダイアナはニコニコ顔のグランマの隣で、昼食のデザート代わりで与えられたダッツを攻略中だ。
『……お姉ちゃん。なんなの、その不気味な歌』
まったりとした時間の中で上機嫌で歌っていると、ダイアナから念話で苦情が入った。
『不気味とは失礼な。この歌は世の中の無常と人間の儚さを唄った名曲だぞ』
『いやいや、そんな不穏な数え唄初めて聞いたよ。グランパ達が日本語に明るくないからいいけど、意味が分かったら泣くから』
むぅ、さすがに『妖魔数え唄』はダメだったか。
某有名実力歌手が歌ってた事もあって好きだったのになぁ……
妹のダメ出しに少し凹んでいると、部屋の隅に妙なモノがいるのに気が付いた。
視線を向けるとそこには小さな蜘蛛と蛾の姿。
奴等から感じるのはどこか虚界に似た、この世のものではないヴァジュラエネルギーだ。
ヴァジュラは生体エネルギーなので、虫が持っていても不思議ではない。
しかし奴等のそれはあまりにも異質過ぎる。
『ダイアナ』
『うん、分かってる』
私は気づかれないように注意しながら、念動の糸を奴等に向ける。
私が蜘蛛に、そしてダイアナが蛾にだ。
私達だけならこんな小細工はしないが、ここにはグランパ達がいる。
万が一にも暴れられるわけにはいかない。
時間にして一秒足らず。
糸が奴等の四肢と身体に巻き付いたのを確認した瞬間、私達は全力でそれにヴァジュラを通す。
「「ぎゃああああああああっ!?」」
瞬間、力の行使が呼び起す空間の軋みと共に老人と女の絶叫が部屋に響き渡った。
そう、絶叫だ。
そして例の蜘蛛たちに目をやれば、不可視の糸に締め上げられた奴等の身体はみるみるうちに大きくなると、人と虫が混ざり合った醜悪な姿へと変化する。
蜘蛛の方は複眼の上に老僧の頭を張り付け、一方の蛾は人間の女に腕を羽根に変えて両目を蛾の複眼として口はストロー状のモノに入れ替わっていた。
その不気味さは異形系の個性が蔓延る超常社会に慣れたグランパ達でも顔を顰める程だった。
そして私は奴等の姿に見覚えがあった。
もちろん今生で出会った等という訳じゃない。
それは薄れつつある私の前世の記憶に刻まれたヲタク知識の中に存在した。
『妖魔』という古いアニメ、そこに現れた名も無き敵役の化け物達だ。
「な…なんなのだ、この化け物は!?」
グランマを庇いながら慄くグランパ。
二人に負担を与えないのならこのまま引き裂くべきだが、私達が容赦なく生物を殺す様はあまり見せたくない。
さて、どうしたものか……
「お…お待ち下され! 鬼陸皇子様! 魔獣海皇子様!!」
奴等の対処に迷っていると、老僧が必死に声を上げる。
「きくがのみこ? まじゅうみのみこ?」
「それは私達に言っているのか?」
私の問いに老僧と蛾女は必死に首を縦に振る。
「さ…左様にござりまする! お二人方は我等妖の者達の長! 貴方様は陸の妖魔を統べる鬼陸皇子様!!」
老僧が視線で指したのは私。
「そして、貴方様は海の妖魔を統べる魔獣海皇子様の生まれ変わりにござります!!」
そして蛾女はその口でダイアナを示す。
待て待て、その話は覚えがあるぞ。
それってやっぱりアニメ『妖魔』の根幹設定じゃないか!
もしかして、『妖魔数え唄』を唄っていた事が原因で妙な因果を呼び込んだとでも言うのか?
「エレインとダイアナがお前達の王だと? ふざけるな、化け物め!!」
「この子達は私の大事な孫よ! お前達のようなデビルと同じであるものですか!!」
老僧達の言葉に怒りを露にするグランパ達。
こんな無茶苦茶な事に巻き込まれているのに、こちらを気味悪がる事無く怒ってくれるのは本当にありがたい。
しかし、そんな二人の憤りを老僧達は笑い飛ばす。
「我等が皇は貴様等人間の腹を利用して生まれてくるのよ! そして妖魔としての覚醒すれば、大地と海の皇は一つとなり、何者をも超越する絶対無敵の魔神となるのだ!!」
「10年前に妖気天を覆い、この地に数多の人間の血肉が降り注いだ! これこそ我等が復権の狼煙に他ならぬわ!!」
『……お姉ちゃん、それって四国消滅のことだよね?』
『間違いないな。それに一つになったら云々のくだりも当たってるのが腹が立つ』
どういう事だ?
本当に私達は奴等の王なのか?
だが、それだと魔獣たんや虚界と繋がっている理由がおかしい。
『ところでさ、奴等の言ってる王様ってアニメに出てたんだよね?』
『ああ』
グルグルと思考を巡らしていると、ダイアナがテレパシーを発してきた。
妹には奴等の正体が分かった時点で『妖魔』に関する情報は念話で渡してある。
つーか、こんなモン一人で抱えてられるか。
『それってどんな姿だったの?』
『鬼陸皇子は魔狼っていう名前の抜け忍でな、声がマ・クベなイケメン』
『へぇ……だったらもう一つは?』
『白い馬』
『馬!? 白馬に乗った王子とかじゃなくて?』
『馬。ちなみに二人が一つになるっていうのも奴等の言葉通り。その場合は上半身が狼男なケンタウロスになる』
『それって強いの?』
『主人公の忍者一人に殺されましたが、なにか?』
『弱いじゃん! だったら人違いだよ。魔獣たんだったらまずそんな事ないし』
『そうだよな』
偶然が重なり過ぎてビビったけど、そんなアホみたいな話があるわけがない。
というか、魔獣たんの案件だけでこっちは積載オーバーなのだ。
これ以上、妙な因果を背負ってたまるか。
「皇子様がた、どうか戒めをお解きください!」
「そしてこの彼方者の老いぼれ共の肝を共に食らい、人間との決別の証といたしましょうぞ!!」
そんな私の考えを知る由もなく、調子に乗って吼える化け物共。
「「ぎゃあああああああっ!?」」
しかし次の瞬間、どこか勝ち誇った奴等の声は悲鳴に変わった。
肉を断ち、固い物を砕く音と共に念動の糸がその蜘蛛足や羽根を削ぎ落したからだ。
「な…なぜぇっ!?」
緑色の体液を飛び散らせながらイモムシのように藻掻く老僧達。
そんな奴等を私とダイアナは文字通り虫けらに向ける視線で見下す。
「私達を皇に戴くには随分と勉強不足だな」
「アンタ達が担ぎあげようとしてる人間はね、身内に危害を加えられることを何より嫌うんだよ」
イモムシのようにもだえ苦しむ妖魔共を見下ろす私達。
その眼光はきっと氷のように冷たく見えるだろう。
しかしまあ、見事にこちらの地雷を踏み抜いてくれたものだ。
お陰で叩き潰す事になんの迷いも無くなった。
さて個人的には八つ裂きにしたい気分だが、それだとグランパ達の心臓に悪い。
それにホテルのクリーニング費用もかさむしな。
ここは窓から吹っ飛ばして、空中で爆砕が妥当だろう。
そう考えて奴等を念動で窓へ弾き飛ばそうとしたその時だ。
突然閉めていた筈の扉が外側から吹き飛ばされたのだ。
「な…なんだ!?」
「ダイアナ!」
「うん! これってなんかヤバい!!」
まるで火薬でも炸裂させたかのように濛々と立ち昇る粉塵。
私達はその中に蠢く人影と、常人よりもはるかに強大なヴァジュラパワーを見逃していなかった。
「オン・バサラ・ニーラサーガ!」
「オン・バサラ・ニーラサーガ! 来たれよ、風天神! その神風にて邪悪を切り裂け!!」
これは真言!?
驚く私を他所に粉塵を切り裂いて飛んできた真空の刃は、私達の張った結界に食らいついて火花を散らす。
図らずとも化け物共まで庇う形になったけど、その辺は仕方がない。
そして風に吹き散らされた煙の先から現れたのは、錫杖を手に仏僧衣の上から鋼の胸当てと兜を被った二人の僧兵だった。
「なんだ 奴等は?」
「……ウソやん」
襲撃者の奇抜な装いに戸惑うグランパの横で、私は唖然と口を開いてしまった。
何故なら奴等の姿には覚えがあったからだ。
「裏高野五輪坊見参!」
「鬼陸皇子! そして魔獣海皇子よ! その邪悪な魂の一切を闇に還す!!」
ちょっと待ってくれ!
この世界にあんのかよ、裏高野!?
『お姉ちゃん、なんなのアイツ等? ていうか、ヴァジュラ使ってなかった!?』
『真言密教の退魔師だ! しかし法力ってああいう風に機能していたのか!』
奴等は体内の氣、即ちヴァジュラを信仰心によって風の力に変えて真言で増幅して撃ち出していた。
これってエレイン・リードの記憶にあった超能力者の使用法よりよっぽど先進的だぞ。
「おのれ! 密教の坊主共が! こんなところにまで……」
「皇子様方! 早くあ奴等を血祭りにあげてください!!」
あと、化け物共は煩い!!
「ウラコウヤ? ゴリンボウ? いったい何のことなの?」
「貴様等! こんな真似をしていいと思っているのか!?」
戸惑うグランマと私達を庇うように先頭に立つグランパ。
「どうしますか?」
「目的は妖魔の皇を滅することだ、結界破りを使え。一般人は邪魔立てするなら排除しろ」
こちらの抗議の声を相手にすることなく、僧兵の一人は懐から取り出した独鈷杵を結界に叩き付ける。
「うっ!?」
「な…なにこれ!?」
ただ人間の力で叩いただけなのに、結界越しに私達へ伝わってきたのは巨大な鉄杭を機械で叩き付けたような衝撃だった。
「お姉ちゃん、ヤバいよ! 殴られたところの障壁が薄くなってる!!」
「まさか私達のヴァジュラに干渉しているのか!?」
二撃、三撃と独鈷杵が叩き付けられる度に、結界にひびが入っていく。
このままじゃあ結界を維持できない!
そして4度目の独鈷杵が叩き付けられた瞬間、私達の結界は音を立てて砕けてしまった。
「今が好機!!」
結界が消えると同時に、もう一人の僧兵は錫杖から仕込み刀を抜いて私へ襲い掛かってくる。
「エレイン!」
「やめてぇぇぇぇぇっ!!」
私と僧兵の間に割って入ろうとするも間に合わないグランパ。
そして悲鳴を上げるグランマ。
「死ね! 鬼陸皇子!」
仕込み刀を振り上げる僧兵が発する肌を刺すような殺気と憎悪、それは私にとって馴染深いものだった。
ジェノサイバーの中で体感した対人類戦争、そして四国を吹き飛ばした運命の日。
私は常に数多の人間からコレを向けられてきた。
だからだろう、私の中から容赦と言う名のリミッターが外れたのは。
裂帛の気合と共に振り下ろされる刃、私がそれに視線を向けると鈍く輝く刀はあっさりと砕け散る。
「ぎゃあああああああっ!?」
その崩壊は錫杖を伝い、それを握り締める僧兵の両腕も赤い霧となって消え失せた。
「うるさい」
怒号を悲鳴に変えた僧兵に視線を媒介として原子分解を叩き込めば、装備は勿論肉も骨も血も混ざり合った赤い霧となって消滅する。
「ひ…ひぃっ!」
そして同僚の死に情けない声を上げるもう一人の僧兵。
奴の四肢を念動の刃で叩き切った私はへし折った椅子の足を奴の両肩と太ももへ突き刺し、床へと縫い付けた。
「ぐおおおおおおおっ!?」
獣染みた悲鳴を上げる僧兵へ近づくと、うつ伏せの体勢から顔を上げた奴は兜を落として露になった顔で睨みつけてくる。
「ウラコウヤのゴリンボウと言ったな。何故私達を殺そうとする? 貴様等の背後にいるのはなんだ?」
「邪悪な妖魔に答える事など無い!!」
コイツ等の背後にいる者など真言宗の最高権力者たる座主しかいないのだが、その辺は知っていてはおかしいので敢えて惚けておく。
私の知識通りなら五輪坊は魔を討つ為ならどんな犠牲も厭わない戦闘マシーンだ。
同僚の死に様には情けない声を出していたけど、ビビって舌を滑らかにするなんて事は無いのだろう。
「そうか。なら直接頭から聞くことにしよう」
「や…やめ……ぎゃあああああああっ!?」
見上げた根性だとは思うが、グランパ達を巻き込んだ事を許す気はない。
私はヴァジュラで奴の脳へアクセスすると、必要な情報を根こそぎ引きずり出す。
人間の脳は電気信号で動いている。
それに外部から作用するとなれば、かなりの電力が必要だ。
なので情報を引き出し終わる頃には電気の熱量で沸騰した脳漿が、白くゆで上がった中身と共に頭の穴という穴から流れ出る結果となった。
「流石は鬼陸皇子───べっ!?」
家族たちが黙り込む中、賞賛の声を上げる老僧を私は念動で挽肉に変える。
「私はお前達の長になどなるつもりはない」
「あ…あぁ……お許しを! もう貴方様の前には現れませんから!!」
「とっとと消え失せろ」
そして命乞いをする蛾女も同様の末路へ叩き込んでやった。
血と臓物臭が混ざった悪臭が漂う室内に肌を切るような静寂が立ち込める。
そんな中、動いたのはグランパだった。
彼は私の方へゆっくりと近づくと、痛いくらいに強く身体を抱きしめてくれた。
「エレイン、気にしなくていい。お前は自分と私達を護ろうとしただけだ」
「グランパ……」
「ダイアナもよ。お婆ちゃん達を守ってくれてありがとう」
「グランマ……」
むこうではグランマがダイアナを思いきりハグしていた。
ここまでの事をし出かした以上、化け物扱いで嫌悪されると思っていたので正直嬉しい。
「あなた、早くアメリカに帰りましょう。こんな物騒な国、これ以上いられないわ」
「そうだな。今日の事を伝えたら、キャシーも予定を切り上げてくれるだろう」
祖父母達がこう言っている中、私は僧兵から引き出した情報を咀嚼していた。
まさか四国消滅を尼僧の主である月読が予言していて、当時四国に裏高野が動いていたとはな。
しかも消滅が現実のものになったから、そこから生まれる魔神を討つ為に鬼陸皇子と魔獣海皇子を血眼になって探していると来た。
私達の存在に気付いたのも、ヴァジュラノイドの一件で雄英に保護されたのを掴んでいたからだとか。
まったくもってシャレにならん。
僧兵の記憶が正しければ、法力も魔力も妖気も元を辿れば全部ヴァジュラだもんなぁ!
つーか、個性個性言ってる割にマジモンの超能力者結構いるじゃん。
日本はもちろん世界的にもその手の退魔組織は結構あるみたいだし
果たして私達はこの世界で本当に生きていけるのかねぇ……
【急募】チートしたい転生者募集!
ヒーローとヴィランが戦う裏側で、退魔士と妖怪変化共が血で血を洗う闘いを繰り広げているアットホームな職場です!
個性ガチャを狙ってヒーローに志すもよし!
無個性でも諦めずに寺生まれのKさん目指して退魔師の道を歩むもよし!
上手くいけば天津神(人食いの化け物)や歴史上の偉人(織田信長を始め、怨霊となって死と破壊を撒き散らす)に出会えるかも!!
ヴィランや魑魅魍魎を蹴散らして、素敵な恋人をゲットのチャンス!!
なお、今まで送り込んだ転生者の(この世からの)離職率は8割の模様