【急募】私達が世界を滅ぼさずに済む方法   作:アキ山

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孔雀王のアニメをがっつり見たぜ!

超懐かしかった!

やはり古いビデオショップ巡りは宝の山だなぁ


雄英襲撃事件の影響と厄介事

 ヴィラン連合。

 

 ヒーロー育成機関のトップである雄英高校に消えない傷を負わせた彼等は、アジトで祝杯を上げていた。

 

 今回の成果で名うてのヴィランが複数加入し、その他にも多くの人員が死柄木の下に集まった。

 

 勢力の拡大という組織立ち上げにおける最初の一歩を成功させたものの、死柄木の機嫌は最悪だった。

 

「どうじゃ、死柄木。ワシの作品は役に立つじゃろう」

 

 しかめっ面で黒霧の入れた琥珀色の酒精に口を付ける死柄木。

 

 その横で上機嫌にビールジョッキを傾けているのは、こう言う会合にはほぼ顔を出さない氏子だ。

 

「おいドクター」 

 

「なんじゃ?」

 

「アレはなんなんだ?」

 

 死柄木はアルコールを含んだ吐息と共に質問を吐き出す。

 

 彼が不機嫌な理由はこれだった。

 

 今回の件、死柄木が知る脳無が成し遂げたなら彼も上機嫌に笑っていただろう。

 

 連合に所属するヴィランがやったとしたら、一気に幹部へと引き上げたかもしれない。

 

 しかし現実は違う。

 

 組織を躍進させる快挙を達成したのは、正体不明の怪物だった。

 

 死柄木は雄英体育祭の中継で怪物の所業を見た時、本能的にこう悟った。

 

 あれは人間の敵だと。

 

 ヴィランだのヒーローだの、そんな区分けなど関係ない。

 

 あの化け物は存在するだけで人類を脅かす怪物なのだと。

 

 だからこそ、死柄木は喜ぶことはしない。

 

 自分達は人間だ。

 

 悪一文字を背負ってはいても人間なのだ。

 

 この社会秩序の崩壊を目的にしているが、それはあくまで人間の手で行わなければならない。

 

 飼いならされているとはいえ、化け物に頼って行ってはヴィランという存在に意味が無くなってしまう。

 

「あれはヴァジュラノイド。個性とは全く違う超常の力を使って産み出した新機軸の改造人間じゃ」

 

「人間だと? 俺には出来の悪い悪食の化け物に見えたけどな」

 

 死柄木の皮肉に氏子は二ヤリと笑って見せる。

 

「人間だとも。肉体を構成する素材はあるモノを除いて全て人体から構成されている。そして超常の力も人間由来のもの。これが人間でないはずがあるまい」

 

 そう言い切る氏子に死柄木は聞こえるように舌打ちをする。

 

「それで、個性じゃない超常の力ってのは?」

 

「ヴァジュラ、ワシはそう呼んでおる。研究中なので詳しい事は言えんが、全ての生き物に宿る生命力のような物と思っておけばよい」

 

 東洋思想でいう氣のような物という説明に返って来たのは、死柄木の胡散臭そうなモノを見る目だった。

 

「オカルトかっつーの。ドクター、俺はまじめに聞いてるんだけど?」 

 

「真面目に答えとるぞ。実際、この世界は人間の精神面に関する研究が足りておらん。精神、魂、氣。そちら方面に目を向ければ、個性に代わる異能は確かに存在するのにだ」

 

「……そういうのはいいや。それで、ヴァジュラノイドってのはこれからも使えんのか?」

 

「当面は要研究じゃ。雄英に送ったモノも途中で出力が下がりおったし、実戦に出すにはいささか不安が残るからの」

 

 氏子がそう答えた後、バーに置かれた通信機が起動した。

 

「弔、今いいかい?」

 

 そこから聞こえてきたのは闇と威厳を感じさせる壮年の男性の声だった。

 

「ああ、何か用かよ先生?」

 

「組織も拡大したところで一つ君に頼みがあるんだ」

 

「頼み? なんだよ?」

 

「君がUSJ襲撃の際に見たという子供。出来れば両方、無理なら片方でいいから攫ってきてくれないか」

 

 声からの依頼に死柄木の機嫌はまたしても急降下する。

 

「あのガキ共を? あんなヤバい奴等、簡単に捕まえられるかよ」 

 

 チンピラとはいえ、40人以上の人間を問答無用で皆殺しにしたのである。

 

 調べたところ、表向きには個性の暴走となっているらしいが死柄木は確信していた。

 

 あれは意図的に殺したのだと。

 

「弔、君は十年前に起きた四国消滅事件は知っているかい?」

 

「当たり前だろ」

 

「あの子供達はその生き残りなんだ」

 

「……なんだと?」

 

 思わぬ事実に死柄木は耳を疑った。

 

 あの惨劇は当時四国に住むモノの全てを奪い去った、これが常識だったからだ。

 

 それなのに十年経った今になって生存者が現れるなど、あり得るのだろうか?

 

「政府の方に送り込んだ耳が情報を送ってきたよ。あの娘達の名はエレイン・緑谷とダイアナ・緑谷。事件当時は四国地方の住人で、親族も当人だという証言がある。さらには出生時に採取したモノとDNAが一致したそうだ」

 

「あの爆発ってのは核によるものだったはずだぜ。どうやって生き残った? それにガキ共の年齢はどう見ても一桁だった。十年生きているのを考えれば計算が合わねえだろ」

 

「そこは彼女達を招いてみれば分かるだろう。あの惨劇から命を拾った絡繰り、解明できればドクターのヴァジュラノイドは更なる強さを得る事が出来る」

 

「……わかったよ」

 

 不気味に笑う声の主に死柄木は不快げに吐き捨てる。

 

 まったく気は進まないが、師の頼みを無下にするわけにはいかない。

 

 忌々しく思いながらも死柄木は人員を選出すべく頭を動かすのだった。

 

 そして通信機越しに後継者と目する青年に不機嫌な声を聞きながら、巨悪は自らの生命を繋ぐ黒いマスクの中でニヤリと笑う。

 

「あの時見る事ができなかった君達の顔と力、確かめる日を楽しみにしているよ。我が娘たちよ」 

 

 

 

 雄英体育祭の様子を部下に持たせたカメラ越しにライブで見ていたリ・デストロこと四ツ橋力也は、ヴィラン消滅の瞬間を映すモニターを前に目を見開いていた。

 

「あの光は……間違いない」 

 

 それは数年前から何度も夢に見る人類終末の光景。

 

 その世界である財閥の会長となっていた彼は、あの黄金の光によって多くの都市が、兵器が、人が消え去るのを何度も見ていた。

 

 夢の中で破滅の黄金を振るっていたのは一匹の魔獣だった。

 

 彼は部下達が人類の敵を討つべく部下たちが心血を注いで造り上げた兵器達が、まるで玩具のように蹴散らされる光景を嫉妬を噛み締めながら見ていた。

 

 何故ならあの魔獣は彼が望んでいた究極の兵器そのものだったからだ。

 

 自らの手でアレを作り出す為にケネス・リードに甘言を弄し、ヴァジュラ研究の第一人者であるグエン・モルガン博士を裏切らせたのだ。

 

 しかし研究を任せたケネスの才は師に遠く及ばず、他の人材もヴァジュラノイド等の試作体を生み出しただけで研究は頓挫してしまった。

 

 そうしてヴァジュラなど無用の長物と思われた時、奴は現れた。

 

 彼等の研究をあざ笑うかのようにあり得ない出力のヴァジュラエネルギーを振るい、如何なる兵器をも凌駕する戦闘力を見せる魔獣。

 

 その世界で四ツ橋はそれに魅了された。

 

 彼は私財の全てを投じてヴァジュラの獣を我が物にしようとした。

 

 しかし獣は彼が用意した枷に囚われる事はなかった。

 

 用意した刺客全てを破壊し、世界の盟主へと上り詰めた彼に牙を剥いたのだ。

 

 可愛さ転じて憎さ百倍という言葉の通り、彼の欲望が抵抗を続ける獣への憎悪へと転化されるのに時間はかからなかった。

 

 彼の私欲で始めた戦いは、気が付けば人類対獣の全面戦争へと変化していた。

 

 その頃には総人口の半数が獣によって消滅し、人類も後には退けない状態になっていた。

 

 彼等は自らの生存を掛けて獣に挑んだ。

 

 しかし百年に渡る戦いの結果は人類の敗北だった。

 

栄華を極めた文明は滅び去り、人類も九割以上が獣の手によって無へと還った。

 

 絶望と身を焦がすような敗北感に溺れながら彼が最後に見た光景、それが監視モニターを突き破って襲い来る破滅の黄金だった。

 

「ふ…ふふふ……まさか、リベンジの機会が巡ってくるとは思わなかったよ」 

 

 恐怖による震えか武者震いか、自分でもどちらか分からぬ震えを押さえながら呟く四ツ橋。

 

 彼は画像を止めると携帯で腹心の一人であるトランペットこと花畑孔腔へと連絡を取る。

 

「トランペット、雄英襲撃事件を徹底的に調べろ」

 

『例の事件を、ですか?』

 

「そうだ。その結果が人類の存亡を左右する事を決して忘れるな!」

 

 そう告げて電話を切ると、四ツ橋はモニターの中で静止画となった黄金の光を睨みつける。

 

「見ていろ、獣め。九竜大二郎に二度の敗北は無い! 今度こそ私が勝利を掴んで見せる!!」

 

 薄暗い部屋の中、夢の中の己である九竜の雪辱を果たすべく四ツ橋は高らかに宣戦を布告するのだった

 

 

 

 

 雄英襲撃事件から数日が経ったある日。

 

 有名校の不始末と被害の大きさに世間が騒ぐ中、夜の帳が降り始めた居酒屋に二人のヒーローが盃を交わしていた。

 

「本当にそれでいいのか?」

 

 ビールジョッキ片手に眼前に座る金髪の美女へ問いを投げるのは、シンリンカムイこと西屋森児。

 

 そしてその言葉に沈んだ表情で頷いたのは新人ヒーローMt.レディこと岳山優だ。

 

「私もう無理です。ヒーローになる時に殉職する覚悟はしていました。でも、あんな死に様なんて絶対に嫌っ!」

 

 雄英の惨劇を思い出したのか、涙を流しカチカチとなる歯を食いしばって絞り出した後輩の答え。

 

 それに西屋は励ます言葉を窮してしまう。

 

 岳山の言い分に彼自身も思わず同意してしまったからだ。

 

 雄英を襲ったヴァジュラノイドが齎した災禍はすさまじいモノだった。

 

 観客はもちろん、護衛を買って出たヒーローも犠牲となった者は少なくない。

 

 そして現場にはいなくとも、テレビ中継を見ていた一般市民の中にも被害を受けた者が現れた。

 

 PTSDを患う者、地獄のような光景に発狂した者、ショック死した者、その惨状は全国の精神科医が舌を巻くほどだった。

 

 テレビ越しの光景だけで新人を中心とするヒーローから廃業する者が続出しているのだ。

 

 現場であの地獄を目の当たりにした岳山の心が折れるのも無理はない。

 

 実際西屋もヒーロー廃業を真剣に考えた。 

 

 だが彼には今まで助けたファンや民衆からの声援や感謝という歯止めがあった。

 

 彼等の期待と安全を背負っているという矜持が逃げようとする足を止めた。

 

 しかしデビュー間もない後輩には、それがまだ少ない。

 

 だからこそ心が折れてしまったのだろう。

 

 彼女の怯えも決断も尤もである事は西屋も理解している。

 

 それでも先輩として平和を守る同志として、頑張って欲しいと思ってしまう。

 

「岳山、もう一度───」

 

「やめときな」

 

 西屋が告げようとした励ましの言葉、それは野太い声にさえぎられた。

 

 声の方を見れば、ウイスキーをグラスで飲む屈強な男の姿があった。

 

 長い黒髪をオールバックに目元を赤いレイバンで隠し、エンデヴァ―に負けず劣らずの屈強な体躯を革のジャケットとズボンで包む。

 

 なにより彼が纏う威圧感は一般市民とは隔絶していた。 

 

「そのお嬢ちゃんの判断は正解さ。アンタ等ヒーローは悪人とは戦えても、化け物を相手にはできねえだろ」

 

「化け物…だと?」 

 

 あまりにも突拍子の無い言葉に我が耳を疑う西屋。

 

 しかし男はそんな彼の意など気にした様子も無く言葉を続ける。

 

「ああ。雄英襲撃犯は世間的にはヴィランと言われているが、実際はそうじゃねえ。何らかの形で人為的に造られた化け物だ」

 

「馬鹿な……」

 

 男の言葉に呆然となる西屋。

 

 普段であれば酒場の妄言と一笑に付していただろうが、あの地獄を目の当たりにしてはそんなことは出来やしない。

 

 そして言われてみれば、例のヴィランが化け物という意見はストンと胸に落ちた。

 

 なるほど、あれがフィクションに登場する化け物だとすれば名だたるヒーロー達がいても被害が出るのは当然だ。

 

 同じ人間なら他者をあそこまで惨たらしく嬲りはしない。

 

 人間であるならば、同じ人間を食ったりなどするものか。

 

「闇に潜み、光と闇の境界線からゆっくりと手を伸ばすのが奴等の常套手段だった。だがある切っ掛けからソイツが崩れちまった」

 

「その切っ掛けとはなんなんだ?」

 

「奴等の一勢力を率いる新たな皇が生まれたんだとよ。これからは奴等も日の下に出てくる可能性が高い。そうなったらそこの姉ちゃんなんかは、最悪化け物の子を孕まされるかもな」

 

「ひぃっ!?」

 

 ニヤリと男から凄みのある笑みを向けられ、岳山は引きつった悲鳴を上げる。

 

「やめてくれ。冗談でも言っていい事と悪い事があるぞ」

 

「……冗談じゃねえんだがな。ところで、例の化け物の王だが、噂だと事件の時に雄英にいたらしいんだけどよ。アンタ等何か聞いてねえか?」

 

「本当なのか!?」

 

「噂だよ、噂。だが、そういった小さな情報をかき集めていれば、案外真実にたどり着けたりするもんさ」

 

「すまないが、俺達は何も知らない」

 

「そうか。ヒーローのお前さん達に聞けば何か掴めるかと思ったんだがな」

 

 そう言って席を立つ男に岳山が半ば叫ぶように問いを投げる。

 

「そんな事を調べてアンタはどうするつもりなの? 化け物にはヒーローだって敵わないのよ!」 

 

 挫折した悔しさ自己嫌悪への八つ当たりを多分に含んだ一人の女の声に、その男はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

「決まってんだろ、ぶっ殺すんだよ。それが俺の仕事だからな」 

 

 そう言い残すと男は伝票を片手にレジへと歩いていく。

 

「大将、おあいそだ。前までのツケも払う」

 

「ありがとうよ、王仁丸のアンちゃん!」

 

「オニマルか、名は体を表すだな」

 

 そう呟きながら、西屋は夜闇に消える巨漢の背中を見送るのだった。 

 

 

 

 

 どうも。

 

 スイートクロスするとマグネロボじゃなくて大魔獣激闘になって、世界を破壊するヴァジュラマン・プラスな幼女です。

 

 現在は夜の7時なのですが、私達は政府が用意したホテルへと移動する事になった。

 

 というのも私達が裏高野に狙われた事を知ったキャシーが大激怒してしまい、クレームを入れた事で政府がこう動いたのだ。

 

 キャシーとしては在日米軍基地へ逃げ込んで保護を求める腹積もりだったらしいのだが、そこは私達の戸籍がネックになった。

 

 現在私とダイアナの国籍は死亡という形で処理されている。

 

 社会的に見れば双方ともに死人ということだ。

 

 これを復活させないと海外移住のビザを取得する手続きもままならない。 

 

 実はキャシーとグランパ達は事件の対応に追われながらも、私達の戸籍復活手続きも並行して行っていたらしい。

 

 しかし雄英襲撃の社会的ショックへの対応もあって、手続きは難航しているんだそうな。

 

 今のままでアメリカに行っても、私達は入国すら出来ない可能性がある。

 

 それに米軍へ保護されると日米関係は悪化すること間違いなしだ。

 

 なにせ日本仏教の二大宗派である真言宗の僧侶が宗教テロで自国民を殺そうとしたのだ

 

 それが英雄であるスターアンドストライプの身内(私達は死人扱いなので除外するとしても、グランパやグランマがいる)となれば、世論の反発は強烈なモノになるだろう。

 

 グランパ曰く、最悪アメリカから日本に何らかの制裁措置が飛んできてもおかしくはないらしい。

 

 そんなワケでキャシーの抗議を受けた警察や政府は警備の行き届いた宿泊施設を用意したのだ。

 

「随分と移動するんだな。まさか邪魔な私達を秘密裏に消すつもりか?」

 

「そ…そんなワケ無いじゃないですか」

 

 私達と共に後部座席に座っているキャシーはドスの利いた邪推と共に運転席の座席を軽く蹴る。

 

 そんな彼女にハンドルを握るホークスというヒーローがトンデモないと言わんばかりに首を横に振る。

 

 ヒーローとしてその態度はどうかと思うけど、私達が狙われた怒りが収まっていないのだから仕方ない。

 

 例の事件の所為で、家族に危険が及ぶというのはキャシーにとってはトラウマになっている。

 

 ホテルに帰って来た時なんて、米軍の衛星兵器を使って真言宗ごと高野山を吹っ飛ばすってブチキレてたからなぁ。 

 

 もっともそれが可能なのかと問われれば、私は首を傾げざるを得ない。

 

 日本の上層部……それもごく一部しか知らない事だが、この国は私達は思う以上に魔境なのだ。

 

『お姉ちゃん、そんなに日本ってヤバいの?』

 

 ちょうどその事を説明していたダイアナがテレパシーで私に問いかけてくる。

 

『正直言ってシャレにならん。闇社会に潜れば、キャシーレベルの能力者は少なくても4人はいるらしい』

 

『4人!? キャシーってアメリカNo1ヒーローだよ!』

 

『妹よ。裏高野をはじめとする日本の闇に住む者達は、数千年前から化け物と血で血を洗う闘いを繰り広げて来たんだ。相手は世界を闇に包もうとする闇の密教衆やら、神話に出てくる化け物や英雄の怨霊やらだ。死亡率も含めた過酷さや力の研鑽方法なんかはヒーローとは桁が違う』

 

『それでヤバい人って誰なのさ?』

 

 ダイアナの問いに私は五輪坊から奪った知識の中にある要注意人物を挙げていく。

 

『まずは東京に住む拝み屋親子の息子である日輪黎(ひなわれい)。彼は表向きには無個性という事になっているけど、その実態は不動明王の化身だ』

 

『不動明王!?』

 

『しかも不動は数いる明王達の頂点に君臨するらしくてな、状況に応じて他の明王に変化するらしい』

 

『平成ライダーのフォームチェンジかな?』

 

 ちなみにこの日輪黎、『明王伝レイ』という古いオカルト漫画の主人公である。

 

 昭和期の漫画に相応しく内容はエログロ全開であり、人だってポンポン死んでいく今の時代では出せないでろうヤバい代物だ。

 

『ちなみに私達が本当に妖魔の王だった場合、彼は敵です』

 

『Oh……』

 

 妹よ、『MRインクレディブルとみる』の動画に出てくる某パパさんヒーローみたいな顔は止めなさい。

 

『次は役小角の末裔である役千明。彼女自身の戦闘力は高くないが、前鬼と後鬼という二匹の鬼神を使役しているそうだ』

 

『前鬼と後鬼かぁ。なんか聞いた事あるかも』

 

『役行者は日本屈指の呪術師だからな』

 

 実はと言うべきか、この役千明も『鬼神童子ZENKI』という漫画の主人公である。

 

『姉上、もしかしなくても私達が例の王様だったとしたら……』

 

『敵です』

 

『…………』

 

 だからその虚無の表情は止めろって。

 

『次は寺育ちのKさんこと、裏高野退魔師の孔雀だな。彼は孔雀王っていう最強の魔神の転生で、普通は守護神のモノしか使えない密教の法術を多数使いこなすヤベー坊主だ』

 

『あ、知ってる。たしか『破ぁっ!』ってかめはめ波みたいなのを出すお坊さんでしょ?』

 

『そう、それ』  

 

 彼の場合は無印が終わって退魔聖伝までのインターバル期だから、孔雀王も役目を終えた為に弱体化しているのが救いか。

 

『でもってやっぱり……』

 

『裏高野の坊さん殺ってるんで敵です』

 

『…………』 

 

 ついにドクロ面になってしまったか、妹よ。

 

 しかしなんつーメンツが揃ってるんだ。

 

 これだと2年に一回間隔で世界の危機が訪れているんじゃないか?

 

 いやいや、ヤバい想像は止めにして次に行こう。

 

『最後の一人はカムイさんというらしいんだが、この男だけは全く分からんのだ』

 

『なにか手がかりは無いの? お姉ちゃんのマンガ知識の中とかに』

 

『名前だけではなぁ……ただ五輪坊の記憶によると【凄い漢】らしい』

 

 カムイって名前は漫画なんかだとありふれているからなぁ。

 

 そこから的中させるのはさすがに困難だ。

 

 ただ、この男についてはとてつもなく嫌な予感がするんだよなぁ。

 

 肉体じゃなくて尊厳的な意味で。

 

「エレイン、ダイアナ、着いたわよ」

 

 そんな事を考えている内に車はホテルへと着いていた。

 

 どうやらここは低層階をオフィス、高層階がホテルになっているらしい。

 

「申し訳ありませんが、チェックインの前にヒーロー公安委員会の事務所へ寄ってもらえませんか? 委員長から護衛に着く際の挨拶と政府からの謝罪の品があるということでして」

 

 ホークスの言葉にキャシーはあからさまに顔を顰めてみせる。

 

「謝罪などする暇があるのなら、少しでも早くこの子達を連れて国へ帰れるようにしてもらいたいものだな」

 

「やめなさい。非を認めている者に鞭打つのは自らの品位を下げる事になる」

 

 キャシーは行く気なんてさらさら無かったようだが、そこを執成したのはグランパだった。

 

 父親にこう言われては分が悪いと思ったのか、頼れる伯母様は不満げな顔で私達を抱き上げる。

 

「わかった、行ってやる。だけど、妙な事をしたら即国際問題だからな」

 

「承知してます」

 

 そうしてホークスの先導で私達が向かったのはオフィス区画の一室だった。

 

「この部屋で委員長が待っています」

 

「待ってくれ」

 

 ホークスが扉を開けようとするけど、私はそれに待ったを掛ける。

 

「エレイン、どうしたの?」

 

 グランマが心配そうに声を掛けてくる中、私はドアノブに手を掛けたホークスを睨みつける。

 

「この部屋、何がいるんだ?」

 

「偉い組織のトップを務めるオバサンだけだよ」

 

「私達は気配を読むことが得意なの。そんなウソは通用しないよ」

 

 ホークスが何を言っているのか分からないと言った風に首を傾げるが、そこにダイアナが追撃を掛ける。

 

 ここへ着いた瞬間、ドア越しに妙な気配を感じた。

 

 このヴァジュラの波動は妖魔を名乗った老僧達によく似たものだ。

 

 恐らくは人間じゃないだろう。

 

「私は言ったな、ホークス。妙な真似をすれば即国際問題だと。全米No1の看板を随分とナメてくれるじゃないか」

 

 私達を庇うように憤怒の形相で前に出るキャシー。

 

 怒りの為か画風の濃さも通常より五割り増しである。

 

「ま…待ってください! 俺は何も……!?」

 

 焦るホークスの後ろで彼が手放したドアノブが微かな金属音と共に回る。

 

 そして開かれた扉の向こうから現れたモノに、私とダイアナは目を見開いた。

 

「何をしているんですか、ホークスさん?」

 

 そこにいたのは小学生高学年程度の少年。

 

 片目を隠す栗色の髪にトラジマ模様のチャンチャンコ、そして足を踏み出せば廊下に鳴り響く下駄の音。

 

「「き…鬼太郎ぉぉぉぉぉっ!!」」 

 

 そこにいたのは恐らく日本で最も有名な妖怪、ゲゲゲの鬼太郎だった。

  




父を名乗る不審者「娘よ、その性能を見せてくれ」

某サポート器具メーカー社長「今こそリベンジの時! つーか、九竜の最終兵器負けたんかい!!」

不動明王の化身「破邪ぁぁぁぁっ!!」

役行者の末裔「なんとか助けられないかなぁ」

使役鬼A「下らねえ事考えるんじゃねえ! とにかくぶっ潰せばいいんだよ!!」

寺育ちのKさん「破ぁ!!」

凄い漢「俺のセンサー(マーラ様)がビンビン反応しやがる」

魔獣たん「(ママ達を)守護らねばならぬッッ!!」

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