【急募】私達が世界を滅ぼさずに済む方法   作:アキ山

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今回もヒロアカほぼ関係ねぇ!

この話のネタが分かる人はOVA黄金期を体験し、隠れキリシタンのようにオタクに厳しい世情を生き抜いてきた古強者達でしょう。

先達、同輩、後輩。

もしくは長い時を得て、何かの切っ掛けで古いアニメにハマった同好の士。

筆者は皆さんの事を心から尊敬しております。


マンガの主人公たちに囲まれているのに、ちっとも嬉しくない

 雄英襲撃事件から数日、出久は自宅に建設したラボでファイテックスの最終調整に追われていた。

 

『マスター、ターゲットを射出します』

 

「了解。アステナイト増幅機構、起動!」

 

 訓練場で出久が纏うのは今までのモノとは違う蒼銀を基調としたパワードスーツだ。

 

 機体の背部に背負ったバックパックが開くと、そこから銀色の燐光を放つ四枚の羽根が展開する。

 

 そしてバイパスを通って突き出された右掌に収束したエネルギーは、白い光の槍となって演習場に用意された的を吹き飛ばした。

 

「ふぅ……サイコブラストの方は問題ないみたいだね」

 

『お疲れさまです、マスター』

 

 演習場からラボに戻った出久はファイテックスをカプセル型のハンガーへ戻す。

 

 天井から降り注ぐ照明の光を反射する傷一つ無い蒼銀の横には、雄英体育祭の傷が残ったままのプロトタイプが収められている。 

 

 先ほど出久が纏っていたモノは、今後のヒーロー活動を行う際に使用する完成品。

 

 製作はプロトタイプと並行して行われ、銀色の兄弟機から得たデータを基に性能をブラッシュアップした物だ。

 

『アステナイトの調整も上手くいきましたね』

 

「うん。精神波を物理干渉レベルまで増幅できたのは今回が始めてだ。成功して嬉しいよ」

 

 トトの言葉に出久ははにかむように笑みを浮かべる。

 

 アステナイトとはファイテックスの根幹を担う、人間の精神波に反応し伝達を可能とする特殊金属だ。

 

 使用者の意志を感知して稼働するそれはフレームや人工筋肉に使用され、AI制御やモーター駆動よりも速くスムーズにファイテックスを操作する。

 

 出久が米国にいるシールド博士の力を借りて、これを実用化に漕ぎつけたのは3年前。

 

 今ではファイテックスのデータを流用して、肉体のように使用者の意志で動く義肢も開発中だ。

 

 だが、このアステナイトには一つ大きな欠点がある。

 

『しかし不思議な金属ですね、アステナイトは。同じ人間の精神波なのに何故無個性の人間にしか反応しないのでしょう?』

 

『それは僕もシールド博士にもまだ分からない。義肢制作プロジェクトもまだ半ばだし、使用者のデータが集まり次第精査するつもりだよ』 

 

『この謎は私としても興味深い、是非とも答えが出たならばお教え願いたいものです。そういえば、アステナイトはマスターが発見したと聞き及んでおりますが、その事も関係しているのかもしれませんね』 

 

『……さてね』

 

 興奮したように喋るトトへ曖昧に答える出久だったが、その顔に苦々しい色が浮かんでいる事を彼の従僕AIは見逃さなかった。

 

 そして彼が操作する監視カメラのレンズは、主の右肩に刻まれた傷痕を映す。

 

 横一文字に刻まれた傷の中央に浮かぶ赤い痣、それは自分が生を受ける前に主が巻き込まれた事件によって付いたものだという。

 

 ただ、トトはそこから小さなエネルギーが発生している事を知っている。

 

 それが起こるのはファイテックスの最大稼働、即ち出久がアステナイトに限界までアクセスしている時だ。

 

 そして最近気づいた事だが、その波動はエレイン・緑谷が超能力を使った時に発していたエネルギーと酷似していた。

 

【マスター、貴方はいったい……】

 

 傷が出久にとって触れられたくないモノだと知っているので、トトはこの事を主に報告できていない。

 

 それ故に彼の心配は募るばかりだった。

 

 そんなトトの内心を知らない出久がデータに目を通していると、携帯のアラームが甲高い音を立てた。

 

「もうこんな時間か。皆で集まる約束をしているから、待たせる訳にはいかないよな」 

 

 手の中の液晶画面に目を走らせながら呟くと、出久は慌てて身支度を整える。

 

『マスター、プロトの修理は完了していません。どうされますか?』

 

「皆と食事をするだけだからファイテックスは置いていく。一応護身用具は持っていくけどね」

 

 そう判断した出久が手にしたのは青い鞘に入った小太刀だった。 

 

『それは研究資料用のナイフ……』

 

「正確には小太刀っていうんだよ」

 

 言葉と共に鯉口を切ると、鞘の中から薄っすらと青み掛った刀身が姿を現す。

 

 これは引子の家に代々引き継がれてきたモノだ。

 

 無個性であることが判明した日、母は出久にこれを見せながらある事を伝えた。

 

 それは母の家系は戦国時代の終わりまで忍者だったという事実だった。

 

 肝心の忍術に関しては失伝してしまったが、母の父や兄弟は非戦闘系の個性でも身体能力はヒーロー候補に迫る程に高かったそうだ。

 

 そしてこの小太刀は一族に伝わる御神刀であり、かつて巨悪を討ったという逸話も残っている。

 

 そして最後に母は目を潤ませながらこう出久を励ました。

 

 オールマイトのようなヒーローは無理でも夢を諦めなければ別に道が開ける。

 

 だから将来に絶望しないで、と。

 

 当時の出久は母の言葉を話し半分にも聞いていなかったが、ある事件を切っ掛けに信じるようになった。

 

「まさか、これがアステナイト製だったとは思わなかったなぁ」 

 

 精神感応金属の存在を知った当初、出久はその正体を掴むべく既存物質との比較検証に躍起になっていた。

 

 そんな中で押し入れから出てきた小太刀を検査した結果、これもアステナイトによって打たれた事が判明したのだ。

 

 母の話ではこの小太刀は平安時代から存在していたのだという。

 

 ならば現代の自分に精製加工が出来ないはずがない。

 

 そう一念発起した事がアステナイト実用化の大きな力となった。

 

 自らの夢が実現するための一助となった先祖の遺産をジャケットの内ポケットに納めると、出久はラボを後にする。 

 

「母さん。雄英の友達と会ってくるよ」 

 

「わかったわ。今は世の中が物騒だから気を付けてね」

 

 母屋のベランダで洗濯に勤しんでいた母に一声かけて出久は級友の元へ向かうのだった。

 

 

 ◆

 

 

 雄英ヒーロー科1-Aの面々が揃ったのはカラオケボックスの大部屋だった。

 

『次のニュースです。数百年ぶりにアレクサンダー彗星が地球に接近していると天体観測家達の間で話題となっております』

 

「切島は流石に無理だったけど、それ以外は全員来たな! さすがの連帯感だぜ!!」

 

 モニターから流れるニュースを遮って、明るい声が室内へ響き渡る。

 

 声の主は入院中である切島鋭児郎を除く全員が参加した事に相好を崩す上鳴だった。

 

「切島君にはここに来る前にお見舞いに行ってきた。傷の縫合も済んでいたらしく、思ったよりも元気だったよ」

 

「うん。義肢のデータ取りで僕も顔を出したけど、空元気って感じじゃなかったね。注文の方もひたすら丈夫で固くしてくれって言ってたし。あ、そういえばかっちゃんも顔を出してよね?」

 

「うっせー。買い物ついでに近く通りかかっただけだ」

 

 飯田の言葉に続いて出久も陰気さなど欠片も感じさせずに、義肢のサンプル画像に目を輝かせていた切島を思い出す。  

 

 緊急避難とはいえ、右手を奪った張本人としては彼の態度に少し心が軽くなった。

 

 なお、爆豪が素直じゃないのは何時もの事なので気にしない。

 

「出久君が切島君の義手造るん?」

 

「うん。ファイテックスの技術も流用できるし、アメリカのシールド博士と義肢の共同開発もしているからね」

 

「そっか……切島の腕は大丈夫なんだ。よかった……」

 

「いや、いくら何でも頭良過ぎるだろ! 何モンなんだよ、お前!!」

 

 麗日の問いに頷く出久を見て罪悪感を抱き続けてきた芦戸は涙を流し、峯田は思わずツッコミを入れる。

 

「けれど、あの双子ちゃんは来ていないわ。体育祭から見ていないけど、大丈夫なのかしら?」

 

「私も気になってましたの。USJでの事が引っかかってあまり関われませんでしたけど、もしあの騒ぎに巻き込まれでもしたら……」

 

 蛙吹の言葉に悔恨と心配を滲ませる八百万。

 

 けれど、それも杞憂だとすぐに判明する事になる。

 

「エレイン達なら大丈夫だよ。キャスリーンさんが来ていたから、あの人に保護されてると思う」

 

「キャスリーン? いったい誰の事だ、緑谷」

 

「スターアンドストライプのこと。彼女は二人の母方の伯母なんだ。あの日雄英にいたのもエレイン達を引き取るためだったんじゃないかな?」

 

 常闇の問いかけにレモンスカッシュを手に答える出久。

 

「あー。十年前に死んだ姪っ子が生きてるって知ったら、そりゃあアメリカに居ても迎えに来るよね」 

 

「けれど、よくアメリカに連絡がついたね。普通だったら緑谷君の家に行くんじゃないの?」

 

「二人は特殊な立場だから僕の家じゃ預かれないよ。だから全米No1ヒーローのキャスリーンさんを呼んだんだと思う」

 

 納得する耳郎の横で首を傾げる口田に応える出久。

 

 そうして和気あいあいと話す中、テーブルに置かれたローストチキンの足にかぶり付いていた砂藤が口を開く。

 

「誰も言わねえからツッコむけどさ。轟、お前荷物多くね?」

 

 そんな彼の言葉で1-Aの視線が一斉に轟へ向く。

 

 たしかに轟は一人だけパンパンに中身が詰まった大きめのボストンバックを横に置いている。

 

 さらに言えば来ている服もどこか薄汚れていた。

 

「えっと……轟君、何かあったの?」

 

「糞オヤジに勘当された」

 

 さらりと言われた重すぎる事実に爆轟を除く全員が唖然とする。

 

「ええ!? どうして!」

 

「体育祭の成績とヴィランとの戦いに首を突っ込んだ事。あとは闘い方の話になって、アイツと大喧嘩した。それで『俺が気に入らないなら出て行け!』って言われたから家を出て来たんだ」

 

 瀬呂の驚きの声に帰って来たのは、何気に洒落にならないカミングアウトだった。

 

 あんな事件が起こった後なのに子供を追い出したエンデヴァーもアレなら、そのまま出てきた轟も大概である。

 

「それで、お前は今までどうしていたんだ?」

 

「昼はネカフェとかで時間潰して、公園とか山ん中で寝てた」

 

 障子の質問に平然と答える轟を見て、1-Aの全員は思った。

 

 コイツはアカンと。

 

「轟君、ウチにくる? ラボなら余っている部屋あるし」

 

 出久がそう声を掛けると轟は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。

 

「いいのか? お前、俺の事嫌っていると思ってたんだけど」

 

 轟の問いかけに試合の後に掛けたセリフを思い出した出久は笑みを少し苦いモノに変える。

 

「そのへんは『これはこれそれはそれ』という事にしておいて。僕は別に轟君を嫌っていないし、どうする?」

 

「すまん、世話になる」

 

 出久の提案に轟は一も二も無く飛びついた。

 

 正直なところ、かなりのおぼっちゃんである轟は野宿生活に嫌気がさしていたのだ。

 

「ラボって言ってたけど、緑谷って結構金持ちだったりする?」

 

「ちょっ!? 透ちゃん、アカンって!」

 

「ファイテックス関連の研究や発明で特許なんかがあるから少しはある方かな。ラボの中にもトレーニングルームや道場も造ったし」

 

「ハイスペック男子!?」

 

「お前、ヒーローじゃなくてもやっていけんじゃね?」

 

 出久の話を聞いて芦戸と上鳴が騒ぐ。

 

「だったら暇な時に俺も行っていいか? 緑谷って中国拳法や空手使うから手合わせしたいんだ」

 

「うん。大歓迎だよ、尾白君」 

 

 こんな感じで思わぬ事で離れた距離を取り戻す1-Aの生徒達。

 

 しかし楽しい時間は早くすぎるもの、彼等にも解散の時間が訪れる。

 

「それじゃあ、皆も気を付けて帰るように!」 

 

「何かあったら連絡してくださいね」

 

 クラス委員長である飯田と八百万の〆の言葉に口々に答えを返すクラスメイト達。

 

 そんな中、向かいのビルに備え付けられた大型モニターから一つのニュースが流れてくる。

 

『本日、誘拐されていた男の子をヒーローが保護しました。犯人はカルト教団ドルドの信者で、子供を彼等の崇拝する邪神サルドゥへ捧げると供述しており……』

 

「アイツ等、まだそんな事を……!」

 

 そのニュースを聞いた瞬間、出久は厳しい顔で自らの右肩を強く掴む。

 

「どうしたん、出久君?」

 

「なんでもないよ。それじゃあ轟君、行こうか」

 

「ああ」

 

 その様子を心配する麗日を笑顔で誤魔化すと、出久は轟を連れて帰路へ着く。

 

 日はすでに姿を消し、街灯はあるモノの辺りは夜闇に覆われている。

 

 そんな中でクラス会をしていた時の朗らかさがウソのように張り詰めた雰囲気を醸し出す出久に、対人経験の乏しい轟が言葉を掛ける事が出来ないでいた。

 

 そうして二人が人通りの少ない路地へ入った時だった。

 

 出久は足を止めると懐から例の小太刀を取り出した。

 

「付いてきている事は分かっているぞ! 出て来い、ドルド!!」

 

 出久がそう叫ぶと暗闇の中からズルリと漆黒のローブに獣を模した仮面を付けた集団が現れる。

 

 これこそがニュースにあったカルト集団ドルド、その司祭と信者達だった。 

 

「気付いていたか、緑谷出久。その知性、10歳にして我等の手から逃れた屈強な精神」

 

 集団の先頭にいた獣面の男は喉の奥でクックっと笑いながら、獣毛に塗れたライオンのような手で出久を指し示す。

 

「何より体育祭で見せたアステナイトとの高い親和性。やはり邪神サルドゥの依り代は貴様以外にない」

 

「ふざけるな! 貴様等の思い通りになるものか!!」 

 

 司祭の言葉に出久は怒りを露にしながら先祖伝来の小太刀を引き抜く。

 

 その刀身は出久の激情を映すかのように蒼く妖しい光を湛えている。

 

 そんな出久の横に低温の空気を纏った轟が立つ。

 

「緑谷、なんだコイツ等?」

 

「さっきニュースで言ってたカルト集団だ。ここは僕が抑えるから、轟君は逃げて!」

 

「パワードスーツも無い奴が何言ってんだ。お前こそ逃げろよ」

 

 互いを庇い合いながら立ち塞がるヒーローの卵たちを前に、ドルドの司祭は嗤う。

 

「ほう、その剣もアステナイトか。ならば、少し遊んでやろう。我等邪神の使徒の前ではヒーローなど幻想に過ぎん事を思い知るがいい!」

 

 

 

 

 どうも、アイゼンクロスすると恐竜じゃなくて人間を滅ぼすアイゼンボーガーになる業の深い姉妹の姉です。

 

 突然ですがヒーロー公安委員会オフィスの空気が最悪です。

 

 というのもここに集まった人間が一癖も二癖もあるデンジャーな奴等ばかりだからだ。

 

「ねえ、本当にあの子達がそうなの?」

 

「マスター、見た目に騙されてはいけませんよ。安全が確認されるまで気を抜かないように」

 

「それで何回痛い目を見たと思ってんだ、アホ女が」

 

 まずは陰陽師が着るような上着にミニスカを履いた黒髪ツインテールの女子高生。

 

 お供に連れているのは青髪のおかっぱ頭の男の子と、逆立った黒と赤のメッシュの髪に仏教の闘神像が着るような古めかしい鎧を付けた小学生くらいの子供ときた。

 

 この三人は役小明と彼女の式神である前鬼・後鬼に間違いない。

 

「見た目は普通の女の子なんじゃがのぉ」 

 

「さて、どうだろうな。少なくとも気配は普通じゃないぜ」

 

 そして作務衣を着た黒髪のイケメンと山伏姿でマル縁のサングラスを付けた三枚目のおじさん。

 

 あの二人は日輪黎とその父親の胎蔵だろう。

 

 レイはもちろんのこと、あのおじさんの方も三枚目を演じているだけで矜羯羅童子という神様の転生体である。

 

 絶対に油断できん。

 

「校長、オールマイト。オカルトがどうこうってのは、流石に冗談ですよね?」

 

「正直言って私もにわかには信じられないよ、相澤君」

 

「だけど、あの子達が真言密教衆に襲われたのは間違いないのさ。ドルドとかいうカルト宗教の件もある、ここで情報を仕入れるのは絶対に無駄にはならないよ」

 

 そして直接顔を見るのは雄英高校以来となるオールマイトにげっ歯類校長、さらにはイレイザーヘッドまでいる。

 

 これに鬼太郎が混じる上に、挙句の果てには───

 

「すみません、お待たせしました」

 

「もう、なにやってんのよ孔雀!」

 

 寺育ちのKさんまで来る始末。

 

 それに隣にいるのは阿修羅じゃねーか!

 

 事前情報で手に入れたヤバい霊能力者が3人。

 

 しかもヒーロー、妖怪、明王、鬼神、魔神そろい踏みとかふざけんな!!

 

「これはいったいどういう事だ? 我々は警備の挨拶と政府から謝罪があると聞いていたのだがな」

 

 険しい顔でキャシーが中央に置かれた委員長席に座る中年の女性、ヒーロー公安委員長を睨む。

 

 ここで激発しないのはイレイザーヘッドとオールマイトがいるからだろう。

 

「その通りです。警備に関してはこちらが用意したヒーローであるホークス、そして当建物に配置した警官が担う事になります。次に謝罪の方ですが、ここに集まった面々の協力で姪っ子さんの疑いを晴らす事で示したいと思います」

 

 そして鋭い針のような視線を受けながらも、委員長は少しも笑みを崩す事無くこう言った。

 

 さすがは曲者揃いのヒーローを取り仕切る公安の長、肝が太い。

 

「疑いなど晴らす必要はない、妖魔がどうこうなど与太話だ。お前達は一秒でも早くエレイン達の戸籍を復活させればいい。そうすれば私達はステイツに帰る」

 

「そうはいきません。彼女達はまだ我が国の国民。それが人非ざる者なら、こちらで対処する責任があります。そして本当に妖魔の皇だった場合、二人が四国消滅事件に関与した可能性も考えねばなりません」

 

 正直、委員長の言葉に私は内心ドキッとした。

 

「ふざけるな! この子達にそんな事が出来るワケがない!!」 

 

「そうでしょうか? 彼女達は現れてからすでに50人近い人間を殺しています。これは大量殺人としては十分な数。その幼さで殺せるなら妖魔と言われても納得がいくと思いますが」

 

「それは正当防衛よ! あなたはウチの孫に無抵抗で死ねというの!?」

 

 激昂するグランパ達に冷徹に返す委員長。

 

 たしかに正当防衛ではあるものの、私達の出した死者が膨大な数だという自覚はある。

 

 正直、これにはお手上げだ。

 

 しかし一触即発な空気が充満する両者を止めたのは穏やかな声だった。

 

「そこまでにしなさい。情報を出させるためとはいえ煽り過ぎじゃ」

 

 その声の主は鬼太郎の髪をかき分けて現れた。

 

 頭全体が人間の目玉になった小人。

 

 私達にとっては見慣れた鬼太郎の知恵袋にして妖怪の生き字引、情報面ではこの上なく頼りになる方だ。

 

「お初にお目にかかる。ワシはこの鬼太郎の父親、目玉のおやじとでも呼んでくだされ」

 

「ち…父親? 彼の?」

 

 これにはグランパ達はもちろん、雄英の面々も度肝を抜かれていた。

 

 まあ、妖怪と言っても鬼太郎は人間に限りなく近いからな。

 

 目玉のおやじみたいな人外と一目で分かる姿は、異形系個性が溢れるこの社会でも中々珍しいのだろう。

 

「ワシと妻は鬼太郎が赤子の時に、流行り病で命を落としましての。本来なら滅びるのが運命だったのじゃが、自分で歩く事も出来ぬ我が子を一人残すのがしのびない。なので辛うじて生きておった眼球に魂を移したのじゃ。そんなワケで、今もこうして生き恥を晒しておるのです」

 

 そう身の上を説明するおやじさん。

 

 それを聞いたグランパは表情を驚きから感銘へと変えていく。

 

「生き恥などとんでもない。貴方の行いは父親として当然だ。同じ立場なら私も、あらゆる手を使って生き延びる努力をしたでしょう」

 

「そう言ってくださいますか」 

 

「ええ」

 

 ……上手いな。

 

 同じ父親という立場を利用してグランパの警戒を薄めた。

 

 これが長年生きた年の功って奴か。 

 

「ワシはこの姿の関係上、少しばかり霊視を得手としておりましてな。お孫さんが妖魔の皇か否か見てしんぜよう」

 

「そんな事が分かるんですか、父さん?」

 

「これでも伊達に長くは生きておらんよ。鬼陸皇子や魔獣海皇子なら過去に何度か見たことがある」

 

 鬼太郎の問いかけに胸を張るおやじさん。

 

 そう言えば、この人って閻魔大王や古代インカ民族とも顔見知りだったな。

 

「それはデビル達が口にしていたエレインとダイアナを呼名ですね」

 

「左様。じゃが、見分ける前に妖魔とは何かを話させて欲しいのです」

 

「あ、それ訊きたい」

 

「私達も因縁を付けられただけで、何が何だかサッパリだからな」

 

 グランパ達が何か言うより早く私達はおやじさんに許可を出す。

 

 正直、この辺のことを知っておかないと何かあっても対処できない。

 

「当人が言うなら是非も無いのぅ。では最初に妖魔とは何かと言う事を説明しよう」

 

「あの! 妖魔と妖怪って違うんですか?」

 

 そう切り出したおやじさんに手を上げたのは役千明だ。

 

「うむ。我等妖怪は天然自然の氣が長い年月を掛けて生物や物に蓄積する事で誕生する。そういう意味では前鬼殿達のような鬼神や精霊等と同じと言えるの」 

 

「けっ! テメエ等みたいな奴と一緒にするんじゃねーや!」

 

「だめですよ、前鬼」

 

 おやじさんの説明を受けて生意気さ満載で吐き捨てる前鬼を後鬼が窘める。

 

「ホホホ、相変わらず我の強い御仁じゃ。さて一方の妖魔についてじゃが、彼奴等は人の業によって発生する」

 

「人の業?」

 

「戦争や災害、世情の乱れから来る殺人や強盗などの悪事。その際に人間が生み出す悪想念、それを基に彼奴等は生まれるのじゃよ、オールマイト殿」

 

 そんな事があるのだろうか?

 

 いや、思えば『妖魔』という漫画の舞台も戦国時代だった。

 

 そして老僧達も言っていたじゃないか、『妖気天を覆い、地に人の血肉が降り注いだ』と。

 

「妖魔は自らの勢力を拡大する為に人を食い殺し続ける。奴等に襲われた者が血肉と悲嘆を生み出せば、そこから彼奴らは発生するからの。そして一定の数となった妖魔たちは巨大な悪想念の渦となる。そして膨張した悪想念はやがて時空を歪ませ、二体が一つになった皇子はそれを取り込み魔神と化す」

 

「悪想念の魔神! まさか『羅睺』か!?」

 

「羅睺だって!?」

 

「知っておったか。さすがは───」

 

「おおっと、やめとくれ! ワシはタダの三流拝み屋だから、な!!」

 

 おやじさんの言葉に驚きの声を上げたのは日輪胎蔵氏、そして孔雀だった。

 

 まあ、二人なら知っていて当然だろう。

 

 というか、私もぶっちゃけ白目をむきたい気分だ。

 

 羅睺はインド神話に登場する4本の腕と1つの尾をもつアスラだ。

 

 彼は神々が持つ不老不死の神酒アムリタを盗み飲み、ヴィシュヌ神に首を断たれた。

 

 しかしアムリタの効果で不死となった羅睺の首はヴィシュヌに密告した月と太陽を恨み、天へ昇って日食や月食を引き起こす凶星となったという。

 

 こんな逸話を持つ存在なので羅睺は孔雀王でも強敵とされ、明王伝レイでは実質上のラスボスだったりする。

 

「話を戻すぞぃ。羅睺となった皇子は実体を捨てて悪想念の塊となる。そして腹の中に地獄を顕現させて、土地ごと飲み込んだ生物をそこへと送り込む。地獄に取り込まれたモノは死ぬことも出来ずに永劫の苦しみを味わうことになり、それで発生した悪想念を取り込む事で羅睺はまた大きくなり、最後にはこの地の全てを食い尽くすのじゃ」

 

「どういうことですかね? 俺はオカルトはさっぱりで……」

 

「私もだよ、相澤君」

 

「えっと……地獄というのはいささか大げさではないのかな? 人の意思でそんな事が出来るとは思えないんだけど」

 

「おや、雄英の校長とは思えんセリフじゃの。お主等の標語はPlus ultra、己の意思で限界を超えることじゃろ。個人の思いでそんな事が出来るのなら何十万、何百万の嘆きや憎悪が寄り集まれば地獄が口を開いてもおかしくあるまい」

 

 おやじさんにこう返されて、げっ歯類校長は黙り込む。

 

 まあ、あの人達ってオカルト関連には鈍いみたいだからなぁ。

 

 急にこんな事を言われて信じられるワケがないか。 

 

「そして皇子を祓う事は人間にしか出来ん。人から生まれた彼奴等を人間が打ち倒す事がある種の自浄作用となるからじゃ。故に大きな戦乱や災害が起こると裏高野や裏天台、光覇明宗等の退魔組織を持つ者達は日本全国に網を張り皇子を討ち取って来た。そうじゃな、孔雀殿?」

 

「え…ええ、そう聞いています」

 

 おやじさんに振られて思わずと言った感じで頷く孔雀。

 

 それを聞いたキャシーは私達の前に出る。

 

「お前はあのテロリストたちの仲間か!」

 

「テロリストぉっ!? ち…違います! いや、五輪坊のやらかした事を考えたら違わないけど!」

 

「落ち着いて下さい、スターアンドストライプ。彼と阿修羅嬢は問答無用であなた方を害する事はありません」

 

「何故そう言い切れる?」

 

「それは彼等が姪っ子さん達と似た身の上だからです。二人は魔神の転生と言われ、退魔組織に追われた過去がある。その辛さを知っている以上、容疑が確定するまでは手は出さないでしょう」

 

 そう、孔雀は孔雀王。

 

 阿修羅もまんま魔神阿修羅の転生だ。

 

 その壮絶な過去を思えば、私達が邪悪でなければ話し合いから入ってくれるだろう。

 

 もっとも───

 

『それって私達が例の皇子だって分かったら襲ってくるってことだよね?』

 

『転移で逃げる準備をしておくぞ。正直、このメンツを相手に魔獣たん無しで勝てる気はしない』 

 

 とりあえず念話でダイアナやキャシーへ警戒を密にするよう伝えておく。

 

 もっとも、このメンツでは傍受されてもおかしくは無いので気は抜けんが。

 

「さて妖魔についての説明が終わったところで、本題の二人が皇子であるか確かめるとしようかの」

 

「霊視と言っていたけど、そんな物で分かるんですか?」

 

「皇子は双方、もしくは片方は必ず人の胎を借りてこの世に生まれ落ちる。ただ世で言う生まれ変わりとは少し違うのじゃ」

 

 私の問いかけにおやじさんは答えを紡いでいく。

 

「そうなのですか?」

 

「奴等が人の胎を借りる方法は寄生に近い。母体の中で人の形を取り始めた時点で妖魔の皇は胎児の魂に憑りつくのじゃ。そして子が生まれ落ち成長するまで、宿主の魂を食らいながら身体を乗っ取っていく」

 

 目玉の親父が話す内容を聞いた面々の反応は様々だった。

 

 雄英関係者は半信半疑、役千明は顔色を青くして前鬼や後鬼は不快げに顔を顰めている。

 

 阿修羅は孔雀に縋り付き、日輪親子は大げさにビビる父親をレイが呆れた顔で見ている。

 

 そして公安委員長に関しては何か嫌な経験でもあるのだろうか、千明より酷い顔色で小刻みに震えているじゃないか。

 

 それとグランパ達やキャシーは此方を心配そうに見ている。

 

「なので、皇として生まれた者には魂に明確な印がある。それが無ければお主達は皇子ではないということになるの」

 

 そう言いながらおやじさんの目は何処か怪しい輝きを帯びていく。

 

 これが霊視というものだろう。

 

 なんとか手を打ちたいところだけど、下手に誤魔化せば事態が悪化しかねない。

 

 いくらおやじさんとはいえ、虚界にいる魔獣たんを見抜くことが出来ないと思うが……

 

 なんとも心臓に悪い時間がどれほど過ぎただろうか。

 

 怪しい雰囲気を霧散させると、おやじさんは腕で額を拭うしぐさをした。

 

「どうでした、父さん?」

 

「二人は皇子ではない。いや、正確に言えば皇子ではなくなったというべきかの」

 

 鬼太郎の問いかけにおやじさんが返したのは奇妙な答えだった。

 

「それはどういうことなのでしょうか?」

 

「たしかに、この子達は皇子として生まれるはずだったのじゃろう。しかし皇子よりも遥かに強大なナニカによって、それは阻まれたようじゃ。今は微かな痕跡があるだけで皇子の気配など微塵もない」

 

「その強大な存在というのは?」 

 

「そこまではワシの霊視でも───」

 

「カルキだ」

 

 委員長の問いかけに返そうとしたおやじさんの言葉を遮ったのは黎だった。

 

 視線を移せば、こちらを見る彼の双眸には異様な程のヴァジュラが宿っているのが分かった。

 

 そして両手が組んだ印を見て私は戦慄する。

 

「それは摩利支天の隠形印!」

  

 孔雀の声が示す通り、黎は摩利支天の呪法で私達の目を欺いていたのだ。

 

 摩利支天は陽炎を神格化されたモノ、霊視程度なら私達の感覚を誤魔化す事も可能だったのだろう。

 

 そして彼の霊視は不動明王のそれと同一だ。

 

 虚界へ届いていてもおかしくはない!

 

「お前達が背負っているのはインド神話の滅びと悪徳の末世カリ・ユガに現れる救世主にして、一切の悪を撃ち滅ぼす破壊神カルキ。そうだろう?」

 

 どうする!? どうする私!

         




このSSにおける世界の現状。

・大量の魑魅魍魎を乗せた彗星が地球へ近づいています。(戦国奇譚妖刀伝)

・日本の各地に天津神という名の化け物を封じた銅鐸が埋まっています。(孔雀王・退魔聖伝)

・田舎や山間では人と鬼の混血である人犬が繁殖の為に女性を攫っています。(孔雀王・退魔聖伝)

・AFOがいらない知識を得たようです。(僕のヒーローアカデミア)

・ヴィラン連合がネオ・ヴァジュラノイドの量産に乗り出しました。(僕のヒーローアカデミア・ジェノサイバー)

・カルト教団ドルドが邪神サルドゥ復活を目論んでいます。(聖獣機サイガード)

・妖魔が闇の中で人を狙っています。(妖魔)

・国津の鬼神達が天津神に復讐の機会を伺っています。(孔雀王・退魔聖伝)

・国外ではヴラド・ツェペッシュやエリザベート・バートリーを首魁とする吸血鬼たちがテスカトリポカの復活の為に霊能者の皮を集めています。(孔雀王・退魔聖伝)

・妖魔復活の影響で各地にある凶悪妖怪達の封印が綻んでいます。(ゲゲゲの鬼太郎、妖魔)

・悪想念の増強によって一般人がヴィラン堕ちしやすくなり、凶悪犯罪が増えています(明王伝レイ)

・怪しい呪術集団が憑依の実を使って異形の化け物を増やしています(鬼神童子ZENKI)

 来いよ、転生者達!

 ここがお前のヒーローアカデミアだ!!
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