黒雷の戦士ショールが歩く道   作:いちのさつき

22 / 37
第22話 グリムリーパーVSオフィウクス

 何もない広い野原で戦うことになった。存分に戦える唯一の場所らしい。確かにそうかもしれない。規模の大きい魔法を使っても、届くことはないだろう。

 

「ルールはシンプルにしておく。地に倒れるまでだ」

「ああ」

 

 審判がいない。客がいない。この戦いは俺とオフィウクスの我儘で出来たものだ。それでも構わない。望んでいたことだ。

 

「いつでもかかってこい」

 

 とオフィウクスが言っているが、そう簡単に間合いを詰めよることは困難だ。既に大蛇を召喚し、奴の周りを守るように傍らにいる。小さく本来の武器を持つように書かれていたのも分かる。確かに普通の攻撃魔法だと通用しない。それに本気でやろうとなると、必要になってしまう。だから嬉しい。立場を考えず、相棒の武器と共に戦えるのだから。

 

ずっと喜んでばかりはいられない。大蛇をどうにかしないといけない。雷神の魔法とも呼ばれるものを使わせてもらおう。

 

「モードチェンジ」

 

大鎌からハンマーに変化させる。魔力を込め、雷を纏う。これなら貫通出来るはずだ。

 

「これほど強力なものだとはな」

「いや。これをくらって無傷なのは滅多にいない」

 

 大蛇もろとも吹き飛ぶ。だがこの様子では大したダメージを与えてはいないだろう。防御の魔法と魔力量の賜物だ。感心している場合ではなかった。既にオフィウクスは攻撃に準じている。目に魔力を集めている。光線に似たものだ。防御は間に合わない。転移で避けるしかない。

 

「魔眼の類の恩恵という奴だな。凄まじい」

 

 破壊力は相当なものだ。通ったであろう部分を見てみると焦げている。掠っただけでもこれだ。もろに喰らったら、体は無事ではないだろう。足に繋がっている地の鎖は瞬時に組み立てたものだ。上空に大蛇がいるか。魔力放出で十分対処が出来る。

 

「な!?」

 

 魔力放出することで鎖と大蛇が消える。これぐらいなら力でねじ伏せることが可能。とはいえ、オフィウクスが驚く辺り、そう簡単にやられるつもりでやったわけではないか。さて。この魔力をどうしようか。いくつかの槍を模したものを形成させ、狙い撃ってみることにする。勝手に付いてくる仕様だ。オフィウクスはどうする。右手を前に出している。

 

「はあっ!」

 

 知らない魔法を使った。槍を模したものが全てかき消された。流石に単純な術式ではないから、すぐに消されたか。だが個数を考えると、一度で全部消えるものではない。純粋な力がある。魔法同士の衝突だけではだめだ。ならば武器でやり合うしかない。隙を見て、魔法を使う。

 

「近接戦か。こちらも望むところだ」

 

 オフィウクスが乗ってくれた。両手に剣。援護をする蛇。手数では俺の方が不利だ。だが負けるつもりは一切ない。この相棒は頑丈だ。折れはしない。金属同士がぶつかり合う。こちらはただ振るうだけ。美しさなんてものはない。ガムシャラにやる型のない動き。一方でオフィウクスは舞うように戦っていた。見る者を魅了させるようなものがあった。それでいて攻撃が重い。魔法も剣も一流。

 

「流石に蛇には引っ掛からないか」

 

 ああ。何か変だと思っていたら、そういうことかと理解する。抵抗力があるから、引っ掛かっていないだけだ。動きづらくなる魔法を仕掛けていたか。

 

「ああ。俺に小手先は通用しない」

 

 オフィウクスが離れる。×を描くように剣を振るっている。風に関する魔法と剣の組み合わせか。受けて立とう。

 

「モードチェンジ」

 

 元の大鎌に戻して、攻撃を受け止める。重い。だがどうにかなる。

 

「ふん!」

 

 すぐに大技の魔法を仕掛ける。無詠唱でも発動できるが、それだと普通に凌ぐだろう。

 

「太鼓の音が鳴り響き、黒い幕が下りる。神の怒りが地上に落ちる」

 

 広範囲の雷神の魔法だ。ライジングロードと呼ぶ奴がいたことを思い出す。結界の中でランダムに黒い雲から雷を落とす。これでやりづらくなるのだが、甘くはない。むしろ本番はここからだ。

 

「地上の者よ。受け止めるがいい」

 

 最大火力でオフィウクスに攻撃をする。口を動かしている辺り、カウンターとなるものを使うつもりだろう。白い槍。魔力の塊みたいなものだ。投げた。空に向かって。黒い雲がなくなっていく。大魔法でも解除される要素がある。それをストレートにやった形だ。簡単に出来ない仕組みだが、それを出来てしまうのは流石といったところか。

 

 実に見事だ。時代が違ったら、どうなっていただろう。あれだけの才とたゆまぬ努力があれば、どの分野でも偉業を成し遂げられただろう。残りの魔力は大魔法でも10回以上撃てるぐらい余裕がある。だが一撃で仕留めるしかない。甘い相手ではない。

 

「モードチェンジ!」

 

 大鎌から鎖鎌に変える。長い鎖分銅を飛ばし、オフィウクスを拘束したい。だがそう簡単には捕まらない。これは予想していたことだ。蛇と共にやっている。ならば微々たる電気を飛ばそう。

 

「ぐっ」

 

 動きが止まった。鎖分銅で縛っておく。オフィウクスの目を見てはいけない。そう直感して、目をつぶりながら、魔法を使う。

 

「天の怒りの音が鳴り響く。地上の者に雷の鉄槌を与えたまえ」

 

 雷の音が鳴り、落ちていくだろう。こちらもちょっとだけ痺れるが、肉を切らせて骨を切るともいう。仕方のないダメージだ。

 

「ああ!」

 

 不意に引っ張られる感覚。オフィウクスはまだ動けるみたいだ。並みの戦士なら倒れるものを堪えるとは思ってもみなかった。だが甘い。指先から魔法を発動させる。黒い雷を放つ。

目で見えていないが、どこにいるかぐらいは把握できる。問題は奴の耐久力だ。地に落ちる音を聞き、目を開ける。

 

「もう動けない。降参だ」

 

 オフィウクスが前に倒れていた。試合終了の合図。近づいて、奴を起こす。

 

「試合の提案、感謝する」

 

 感謝の言葉を告げてみた。これぐらい思いきりやれたのはこちらとしても満足の行く結果だ。オフィウクスが静かに笑う。

 

「こちらもお礼を言いたい。ありがとう。ある意味私の我儘に等しいものだったのだが」

「いや。こちらも望んだことだ」

「そうか。また……次の試合があれば」

「ああ」

 

 拳と拳が軽くぶつかる。試合の主導権は俺が握っていた。しかしそれでも、ありとあらゆる手を尽くし、全力で戦う純粋な試合ほど、燃えるものはない。本当にいい試合だった。そう思う。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。