黒雷の戦士ショールが歩く道   作:いちのさつき

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第3章 ザガン学院で
第23話 学校の祭り


 オフィウクスと戦ってから1週間後。俺はザガン学院にいた。先日そのオフィウクスから来た祭りの招待状に応じたためだ。白亜の校舎と言っていたが、年数が重なっていることもあり、黒くなりつつあるのは指摘しない方がいいだろう。建物の劣化はどの時代も免れない。そういうものだ。異様に建物に拘るかつての友が言っていたからそれに従うまでだ。

 

「あの。グリムリーパー様、サインを!」

「分かった」

 

何度かセーラー服とやらを着た女子生徒らしき者からサインの要求をしてきている。周りを見てみると男の割合が少ないように感じる。そういうところなのだろう。

 

「終わっても人気者だな」

 

 オフィウクス本人が来た。人気者なのはお互い様だと思うが口にしない。奴自身も分かっているはずだからだ。

 

「案内する。付いて来い」

 

 付いて行く。屋台が並ぶ通りだ。甘い匂い。菓子の類を売っているところが多いみたいだ。学校とやらは生まれてから初めて来た。通信教育で学んでいる身からすると新鮮だ。

 

「初めてか」

 

 流石に周囲を見ていたら、オフィウクスにバレてしまった。ここは素直に答えよう。

 

「ああ。通信で学んでいる身だからな」

「凄いな」

 

 どの辺が凄いというのだろうか。

 

「通信教育は課題を出される。上手く計画を立てていかないと、卒業できないという話をよく聞くぞ」

「仕事をやりながらではないからな。やりくりは容易だ」

「それでも先生となるものがいないと厳しい。内容によりけりだとは思うが、分からないところをすぐ聞けるわけではないからな」

 

 教材に様々な情報が載ってあり、それらを理解して自分なりにかみ砕く必要がある。ひとりで全部できるわけではない。正直動画の使い方すら知らない俺にとって、アーリーは友でもあり、先生でもある。今更だがそう思う。

 

「同居してる友が優秀だからな。分からない時に質問してる」

「そうなのか。順調か」

「何とかな」

 

 数。文字。歴史。社会制度。現象。属性や文字魔法を含む基礎魔法。生きる上で必要かと思う時もあるが、何も知らないからただひたすらガムシャラにやっている。そのお陰か、順調だと感じている。さて。こちらが答えてばかりだ。今度は俺から質問をする。

 

「オフィウクス。ここはどうなんだ」

「進学校と呼ばれるからな。勉強に関しては難易度が高い。それと行事が色々とあるから退屈しない。この祭りも行事の一環だ。宣伝が主な目的らしいが、楽しみのひとつだ。純粋に楽しいし、学生で店を立ち上げて売上を打ち上げ会で使えるからな」

「なるほど。活気があると思ったらそういうことか」

 

 祭りは盛り上がる。どの時代も変わらないというわけか。オフィウクスがひとつの屋台に立ち寄った。短い金髪の女が着ているのはセーラー服だがワンピースのようにも見える。同じ制服でもバリエーションがあるということか。鳥の翼のようなものを腰から生えており、腕にも羽根みたいなものがある。鳥人の類か。

 

「アリシー先輩、来てくださったんですね!」

「ああ。2つくれ」

「分かりました!」

 

 アリシー。やり取りを見ている限り、オフィウクスの本名であることが分かる。

 

「あの。アリシー先輩。グリムリーパーさんとどこまで?」

 

 金髪の女、何故そういう発想に至った。

 

「そういう関係ではない。好敵手同士。それだけだ」

 

 オフィウクスがすぐ否定した。動じていない辺り、本当に好敵手だと思っているのだろう。同じ気持ちで良かった。

 

「えー」

 

 金髪の女にとっては不服のようだが。

 

「それじゃあ行くぞ。グリムリーパー」

「ああ」

 

 放置しておいていいのかという疑問を持つが、オフィウクスの判断ならそれに従おう。屋台から離れ、ドーム状の温室にあるベンチまで移動する。鮮やかな花があり、魔力が籠っている。魔界特有のキテレツなものばかりだ。

 

「園芸科が育てているところだ。普段は立ち入り出来ないようになっているが、祭りの時だけ開けている。丁度いいタイミングというのも大きいかもしれない」

「そうだな」

 

 オフィウクスの言う通り、丁度いいタイミングなのだろう。青。赤。紫。ピンク。様々な花が咲き誇っている。かつて訪問したことがある天空庭園に匹敵するぐらいだ。よく考えたら庭園の主はたくさんの植物を育てていたことになるのか。今更ながら凄さに気付いた。

 

「パンフレットは受け取ったか」

「一応」

 

 学校の敷地に入る時に受け取ったものをショルダーバッグから出す。様々な催しが行われている。

 

「見たいものはあるのか」

 

オフィウクスから質問が来た。全部は流石に無理だろう。だが出来るだけ見たいものは回っていきたい。個人的に最も気になるものを言おう。

 

「デビルバスケ部を見てみたいのだが」

 

人界にはない競技で、ボールを使うものだ。10mもある高いゴールにボールを入れ、点数を競うというものだ。力があるから有利とも限らない。独自のセンスと読みが必要なものだと動画を見て分かった。

 

「デビルバスケか。ここからだとそこまでかからない。共に行こう」

 

 あっさりと望みが叶いそうだ。実物を見られるというのは滅多にない。こうした交流は戦では出来なかったことだ。良い経験になるのかもしれない。

 

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