黒雷の戦士ショールが歩く道   作:いちのさつき

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第24話 球技初挑戦!

 オフィウクスの案内でデビルバスケ部がいる競技場に到着した。ドーム状で白い何かで覆われている。人気があるのか、賑わっていることが分かる。

 

「地域との合同チームで魔界の中でトップクラスの実力を持つ」

 

 解説が入って来た。入り口付近にある黒い板に『魔界球技大会デビルズバスケットボール優勝』と魔法で書かれており、蛍光色で輝いている。確かにトップクラスだ。

 

「あ。アリシーだ」

 

 ひょっこりと顔を出す女がいた。獣の細い尻尾と耳。獣人族系統だろう。恰好からしてチアと呼ばれる露出度の高い応援専門のものだ。どこでもいるものだなと学んだ瞬間だ。

 

「本当にグリムリーパー来てたんだ」

 

 チアの様子からして、俺が来ていたことを信じていなかったみたいだ。

 

「信じてなかったのか」

「無理もない。偽者の状態で目の当たりにしたことがあるから……許してくれ」

 

 申し訳なさそうにオフィウクスが言った。

 

「主犯はマスカレードだ。彼奴は変装も得意だからな。何故かここに来て、有名人の格好をしたことがある」

 

 更に付け加えた。疲れたような顔だ。マスカレードは変装以外でも相当何かやらかしたのだろう。

 

「流石に魔界警察のお世話になってたし、二度とやらないっしょ。さ。どーぞどーぞ」

 

 チアの女の案内で中に入る。鍛えるトレーニングルームが4つ。生徒や大人に見守られながら、子供が体験している様子が見られる。更に奥に行き、自然の光がある場所へ向かう。

 

「建物だと真ん中に当たるわけなんだけど。ここで試合を行うわけよ」

 

 芝生があった。白い線がいくつも引いている。線引きの目的もあるのだろう。そして宙に浮く黄金のリングはゴールとなるものだ。コートであることをすぐに理解した。中心からゴールの近くまで全速力で走っても10秒だろう。ジャンプについては魔法の行使は違反行為、魔力による身体能力向上は可能だと書かれていたから……出来るはずだと思いたい。

 

「お。有名人が2人も来るとはな」

 

 褐色肌で屈強な男が近づいてきた。大きい。まるで岩が立ちはだかるようにどっしりとしている。袖のない上の服と短パン。2本の槍を持つ仮面のマーク。紺色と黄色で落ち着いたような印象だ。どこかで見た記憶がある。

 

「ディオア先輩、お疲れ様です」

 

 チアの女が頭を下げた。ディオアという名で思い出した。魔界の中でも1位2位争う点取り屋だということを。

 

「おう。ご苦労さん。カジャ。そろそろ休憩に入ってくれ」

「はい。アリシー、またね」

「ああ」

 

 チアの女がどこかに行った。

 

「さて。君がグリムリーパーでいいのか」

「ああ」

「ディオアと言う。知ってるかもしれないが、ポジションはフォワードだ」

 

 

 握手を交わす。攻撃を専門とする選手。記事のままだった。

 

「君は人界で暮らしているのだったな。経験は」

「ない。だが動画で見たことがある。ある程度、ルールの把握もしているつもりだ」

 

 ディオアが何か考える仕草をした。手でひらひらと動かし、誰かを招く。確認をしている。そして何故かオフィウクスが頭を抱え始めた。念のため聞いた方がいいだろう。

 

「どういう展開になると読んでいる」

「十中八九、デビルバスケでのお前と真っ向勝負だろう。ルールだけ知っていて、未経験の状態でやれると思うか」

 

 スピードだけなら負けない。しかしテクニックと読みが確実にいるであろう勝負となると……話は別だ。

 

「……分からない。お前はこの競技の経験は」

「身内でやった程度だ。普段は体を動かさない友もいるから加減は出来るだけした。本気でやったのはディオアさんぐらいだな」

「なるほど。そういうことだったのか」

 

 戦闘狂というわけではない。しかしそれに通ずる何かを持っている。経験が少なくても、素質のある奴と勝負して、何かを学んで、競技に活かすという形だろう。

 

「すまん。待たせたな。恐らくだが、アリシーが既に読んでいた通り、俺はグリムリーパーと1対1の勝負に挑みたい」

 

 読んでいたことを想定しての発言だ。ポジションはフォワードと司令塔ではないが、ある程度頭がキレると考えていい。断る理由はない。

 

「分かった」

 

 承諾した後、コートの簡単なセッティングをし、勝負に臨む。攻め手である俺がディオアを突破し、跳躍してリングの中にボールを入れる。特定の高さから魔法が施されているが、試合のようにボールの反射の類で合っているはずだ。

 

「いつでもかかってこい」

 

 ディオアはいつでも動ける体勢だ。ドリブルとやらをして、フェイントを仕掛けるしかないが、その技術を知らない。また経験が少なく、奴に通じるほど甘くない。魔法の行使は禁止されているため、それは最初から除外だ。そうなるとどうすべきか。魔力による身体能力向上をさせ、反応できない速度で前に押し進めるしかない。

 

「行くぞ」

 

 不慣れなドリブルをしながら、ゴールに向けて進んで行く。

 

「はっや!」

 

 ドリブルの回数を出来るだけ少なくし、スピードをあげる。無事にディオアを抜いていく。流石に追いかけてくる。なるべく早めに終わらせておこう。高く跳躍し、リングめがけて、ダンクとやらをやる。ビーという音が鳴り響く。

 

「数秒で終わらせやがった」

 

 大体の奴らは驚いている一方で、オフィウクスは冷静なままだ。どう動くかを予想していたからか。

 

「そういりゃアリシー先輩も同じ感じでしたよね。うわー。グリムリーパーとの試合、絶対ヤバかったよ」

「ああ。事件があったから中止になったが……滅多に見られないものになってただろうよ」

 

 こそこそと見ていた奴らが話す。ディオアは気にすることなく、俺に近づいてくる。屈託のない笑顔で話してくる。

 

「流石だ。スピードが素晴らしかったが、戦略の判断も良かった」

 

 拍手に包まれて、この勝負は終わった。人に囲まれてしまったが、バンダナをしたたれ耳の男が注意してくれたお陰で脱出することが出来た。感謝したい。そしてほんの少しだったが、攻防を味わうことが出来て良かった。

 

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