オフィウクスと共に色々と見て回った。芸術作品が飾ってあるところは面白かったと感じている。何を意味しているかさっぱりだったが、何かを訴えたいということが伝わった。電球のようなものが光り、獣のようなものが地に伏しているような絵。木で彫った騎士の像。宙に汽車が走るような絵もあった。
「よし。あとで呼ぶか」
「オフィウクス、ここで殺気を放つな」
オフィウクスが珍しく殺気を出していた。視線を辿っていくと、オフィウクスをモデルにした絵が飾っていた。許可を取らずに描いてしまったのか。アウトでは。そう思う。とりあえずオフィウクスを外に出した方がいいだろう。周りがビビっている。
「他のところに行こう。機械創作部の展示に行きたい」
「ああ。こっちだ」
どうにか殺気を抑えてくれた。俺としてもそちらの方が助かる。どうにか人が多い廊下を潜り抜け、外に出ることが出来た。白い何かが見えているがあれは一体何だろう。
「あれも恐らく機械創作部が手掛けたものだ。かなり大きい物にも手を出したという話があるからな」
奴らは一体何を作った。人型機動兵器の意味すら理解していない今、何も想像が出来ない。困惑を持ちながら、機械創作部の展示に行く。
「でかいな」
着いた途端、あまりの大きさに言葉が出てしまった。見上げる程大きい人型の機械。ツルツルとした金属。丸いものをいくつか組み合わせて出来たものだ。校舎から出て見えていたあの白いものはこれだった。
「ただ動くだけらしいな。大きいだけを追求したと書かれている」
オフィウクスが解説を要約してくれた。
「そうか」
戦場にいたら脅威そのものだろう。ホッとするべきだろうか。人型機動兵器。もしもあったら魔力に左右されないだろう。必要となるのは操作の技術と製作の技術だ。
「お。噂に聞くグリムリーパーが興味を持っているとは」
白衣を着た短い黒髪の……中等部の生徒でいいのだろうか。悪魔の尻尾がくねくねと動いている。
「あまり聞かないものだったからな」
「だろうね。人型機動兵器は本来空想上のものだったわけだし、再現されたのも最近だし、技術としての存在を知らない人の方が多いよ」
空想上のもの。再現。
「あれ。知らない? 原始のユニヴァースシリーズ、戦略宇宙世紀、星の旅路、鋼鉄の惑星、ダイナミックアトミックとか。人界でも知られてる作品だと思うけど」
全部知らない作品の名前だった。よく見たらオフィウクスが呆れている。頭を抱えているように見える。
「あれ。マジで知らない奴?」
「すまないが知らん」
ダメージを与えたつもりはない。しかし奴にとっては相当ショックだったのだろう。その証拠に凹んでいる。
「奥に行こう。他のもあるからな」
オフィウクスはスルーする気満々だった。既に歩き始めている。それでいいのか。
「放置でいいのか。あれは」
「ああ。そういうものだ。時間さえあったら復活するだろ」
匙を投げていいのか。しかし俺自身やれることがほぼない。そのままにすべきだろう。そこまでかからない距離に歴史解説があった。掲示板のようなものに紙が貼っている形だ。年代と絵。何が起きたかが書かれている。
「男達のロマンを再現。それが最初のきっかけだったんだよね」
後ろから先程ベラベラと作品を言っていた中等部の男の声が聞こえてくる。いくら何でも復活が早過ぎないか。
「だから機能なんてものがなかったんだよ。見た目だけ真似て、何も動かない。像に近い形だった。けど」
中等部の男が声に力を入れている。振り返ってみると、拳に力を入れている。何故だ。
「それだけじゃ満足できないんだ! 見知らぬ世界、広大な宇宙を翔ける姿を見たいんだ! それがロマンってものじゃないのか!?」
壊れている気がするのだが大丈夫か。いや。元からああいう者だったか。
「という研究者及び開発者の卵である若者達が知識をかき集め始めたんだ。流石に金がなかったし、ゼロからスタートしてたわけだし、相当苦労してるよ。ああ。もちろん今も」
むしろそういった奴が熱意を持ち、世界が変えていくのだろう。魔法を研究する奴ら皆がそうだった。今も昔もその辺りは変わらない。
「え。なんでそんな生暖かい目で見てるわけ」
しまった。表に出てしまっていた。
「知り合いに研究をする者がいるからな。熱意というものは誰でも持つと実感した」
「グ……グリムリーパーさあああん」
抱き着いてくる。大したことを言ったわけではないのに何故だろう。
「小さい天才君、確保!」
どこかから気配を感じていたし、近づいてくるなと思っていたら、ベラベラと喋っていた中等部の確保だった。丸い眼鏡をかけた先輩といったところか。中等部の首根っこを掴んで捕獲していた。
「なんで先輩がここに!? というか2人なら気付いてましたよね!?」
思わずさっと視線を空に移してしまう。ちらりと見たら、オフィウクスも似たようなことをしていた。
「先生が呼んでるってよ。ああ。二人とも失礼しました」
ズリズリと引きずりながら、中等部と共にどこかに行ってしまった。この機械創作部はマイペースな奴らが多いのかもしれない。この後も見て回って、1日が終わってしまった。楽しかった。普段通学しないから余計に。
「誘ってくれてありがとう。機会があればまた会おう」
人界に帰る時に校門で言ってみたのだが、何故かオフィウクスの頬が赤くなっていた。時間帯も夕暮れになっていたから当然なのかもしれない。