仕事の司令塔から昼休憩と言われ、俺はたくさんの飲食店が集まるところに行く。若い天使と一緒だった。タイミングが重なったのだろうな。
「どうしよっか」
「ああ。どうしよう」
そして俺達は迷っていた。チェーン店とやらで幅広い地域にあるものらしいが、普段は外食というものをしない。てっきり俺だけかと思ったら、天使の方も知らないらしい。オススメとか聞いて食べるつもりだったが……計算外だった。すぐに決められない。
「久しぶりの地上だからさ。どれが主流になってるかとか分からないんだよね」
天使は普段、天の世界にいるのだろう。知らないのも当然と言える。とりあえず記憶している限りのことを伝えておけばいいのだろうか。奴が好むかどうかは別だが。
「そうか。広告の数だけならフレンドバーガーだろう。白と黒の大戦とかいう訳分からんものをやっているぞ」
真っ白いバーガー。真っ黒いバーガー。何を使ったらそうなる。何処から発想した。そういった疑問を思い浮かべるものだ。かつての大戦とは違って、食事の保証はできている。その時代に味の保証ができないものを出す。初めて見た時は困惑したものだ。
「ほほう。こういう見た目は面白いね。ようし。ここにすっぞ!」
天使は普通に受け入れられていた。見た目と俺の情報だけで判断するというのは……凄いものだ。しかしそれは博打に近いだろう。大丈夫か。無事に仕事場に戻って来られるのか?
「本気か?」
「え。何でそんなマジな顔になるわけ」
「いや。変わり種だからな。味の保証なんてものはないぞ。下手したらあの世行きかもしれないだろ」
天使が楽しそうに笑う。
「だからこそ、冒険するんだよ。それにチェーン店でそういうのは流石にないと思うよ」
幅広い地域に展開している。珍味は良しとしよう。外れだとしてもまだいい。問題は食して体調を崩す。食中毒とやらで集団の入院をする。或いは死に至るか。そういった類だと罰を受ける。この間の問題は莫大な金を払い、制限がかかったはずだ。長もそれぐらいは知っているはずだ。天使が言っていることは理解できる。
「てなわけでおっちゃん、ホワイトバーガーとブラックバーガーのセット、一つずつで!」
天使が勝手に頼んでいた。しかも俺の分含めて払いやがった。まあいい。苦手なものは特にないし、後で金を出しておけば。
「ほいありがとう」
天使はバーガーセットを受け取る。空いているところに座って、黒いハンバーガーを取る。材料が不明だ。どうやったら黒くなる。焦げているわけではない。何かを混ぜている。味は普通のものだ。分からん。
「お。めっちゃクリーミー」
「そうか」
ホワイトバーガーはクリームの類のものらしい。天使が庶民的なものを頬張る。大昔なら見られない光景だろう。いや。我が友なら話が分かると言って、酒とかで絡みそうだが。
「そっちは」
天使の質問が来た。食べられるものがあれば、何でも口に入れるのが常識だった。味のこだわりは前より増えてきたが、伝えようとしても……通じるのかどうかが不安だ。
「辛いな。たくさんの香辛料を使っている。黒いドロドロのは間違いなく海のものなのは分かるが……すまない。これが精一杯だ」
「いやいや分かるよ」
俺も奴も食事に専念する。暫くのことだ。粗方食べ尽くした後に気付く。天使の名を知らない。ここで聞かないと難しいのは確かだ。聞こう。
「すまないが……名を教えてもらえると助かる」
「あ。ごめん。忘れてた」
パチパチと瞬きしている。素で忘れていたな。この天使。
「えへへ。ルークって言うんだ。グリムリーパー君、君の本当の名前は」
ああそうか。確かにルークという天使は俺のことを知っている。しかしその名前はあくまでも競技者の登録名でしかない。知りたいという気持ちはあるのだろう。
「ショールだ」
ルークが驚く表情をした。何故だろうか。警戒する必要はないのは確かだが。