黒雷の戦士ショールが歩く道   作:いちのさつき

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第30話 天界の神と地上の大昔のお話

 驚いて……その後ニヤリと笑ったルークが静かに語る。俺はただ食べながら、奴の語りを聞く。語りの途中で質問することはしない。物語が中断してしまうこと自体がダメだと、昔から言われていたためだ。

 

「ショールっていうとね。こういう話があるんだよ。昔々。神々の頂点に立つ者は天の神だとされていました。その名はユピテル。空という空を支配する、天帝とも呼べるような者です」

 

 そう言えば聞いたことがあるなと思い出す。ユピテェルと呼ばれていたから、やや違和感あるものだが、時が経てば多少変わるものだ。気にする必要はないだろう。

 

「天の世界を作り、女神と結び、たくさんの子供が生まれ、繁栄したとされています。というか普通に栄えてたね。色々と見つけてるし」

 

 ルークはさり気なく、昔の情報を教えてくれた。想像はあまり付かないが、天界の住人が言うのなら間違いないだろう。

 

「天が栄えたため、天の神は地上を見ます。確かに天の神によって、恵みをもたらされたこともあり、文化が生まれていました。国がいくつも生まれ、衝突がありながらも、地上でも豊かな生活がありました。誰もが懸命に働いている中、ただ一つだけ違うものもありました」

 

 俺でも聞いたことのあるものだ。働かずに女と遊び、貪るような、汚い世界があった。そしてそれは天の神に見つけられ、罰を受けたという逸話だ。天から火が落ち、全てを焼き尽くし、一つの文明が滅んだ。天の罰を受けないために我々は懸命に働き、健全な生活をしないといけないのだと。

 

「おや。知っていたみたいだね」

「ああ。話を聞いただけだがな」

「それなら話が早い。あまりにも汚いという国が一つありまして。それは働かず、女と遊び、酒と穀物で腹を満たす、欲望のみで生きる世界だったとされています。これは流石に天の神もカンカンでした。寛大だと言われているお方の怒りの沸点まで行ってしまったのです」

 

 そこまで寛大だったのか、天の神は。

 

「権能の一つを使い、天から雷を起こし、地上に大火が生まれました。何もかも燃やし尽くす。そういう性質を持っていましたので、文明ごとなくなりました。これはいくら何でもという話が出ていて……まあまだ調査中だけどね」

「そうか」

「うん」

 

 笑顔で返事をするとは。いや。大昔の人間じゃないからこその反応だろう。

 

「そうして地上で愚かな行為をしなくなったとされています。それでも定期的に見に行って、地上の人間の動きを観察していました。この時に恋をした……とされています。いくら天の神とはいえ、地上に降りる時はそれにふさわしい恰好をしました。絶世の美青年といった感じで、名もなき地上の民と交流をしていました。どこかは分かりません。しかし。ある人間の女性に心を奪われました」

 

 恋はいつでもあるんだよ。というのが確か音楽であったはずだ。なるほど。それは大昔からあるものか。

 

「ショール、自分で納得しないで!?」

 

 顔に出ていたみたいだ。

 

「すまん。つい」

「いやこっちが突っ込んじゃっただけだからいいんだけどね。えー。ごほんと」

 

 ルークは誤魔化すように咳をした。

 

「何故その女性に恋をしたかは天の神ですらわかりません。天の世界では何も考えず、女神と戯れていれば良かったのにと悩む時もありました。そもそも神が人に恋をするなんてやってはいけないことだろうと悶々と。天の世界に戻ってからもそうでした」

 

 天の神、大丈夫か。

 

「天から地上を見る回数が増えました。自分は結ばれない恋をしたのだと。ならばせめて死ぬまでは見守ろうと。その時でした。弱くなっていた時でした。腹の中に子がいました。彼女は呟いていました。せめて我が子を守りたいと。それを聞いた天の神は小さい雷を。誰も感知しない雷を天から解き放ちました。その名をショールと名付けるとよいと声を出して。そして声を聞きとることが出来た女性は無事に子を世に出す事が出来たのです。そして名を……ショールと名付けました。これこそ天の神の優しい恵みです。めでたしめでたし。そういう感じですね」

 

 古い時代の名前にあやかるために、俺はショールという名を貰ったのか。天の神から受けたという話は聞いたことがないが……それは単純に俺が知らないだけだろう。

 

「天の神の話、とても興味深かった。ショールという俺の名の由来はそこからあやかった形なのだろう」

「かもしれないね」

 

 互いに笑う。こういう機会はめったにない。感謝を伝えたい。そういえばと時計を見る。しまった。あと数分で作業再開だ。急がなくてはいけないだろう。

 

「そろそろ行こう。ルーク、貴重な話、ありがたかった」

「いやそれはこっちこそ。聞いてくれてありがとねぇ」

 

 全速で片付けをして、迷惑が掛からない程度に走る。即座に作業再開した。いずれ天界に行ってみたいと思った。ルークという天界の民と出会ったからだろうか。怖さとかそういうのがなくなっていた。そうなると……金は足りるのか?

 

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