黒雷の戦士ショールが歩く道   作:いちのさつき

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第34話 空に浮かぶ水の都市オフィエル その②

 翌日にオフィエルの神殿ツアー(運良く取れた)を参加した。天使はいない。地上や地下の住民たちしかいない。天使はどこかで学んで、自力で楽しめるからだろう。

 

「どうぞ。こちらがオフィエルの神殿でございます」

 

 男の天使がにこにこと、小さい旗を振りながら、案内をしてくれる。真っ白な大理石で出来ているが、古い時代に出来たとは思えない程の綺麗なところだ。清らかな水が重力に逆らって流れたり、霧のように放出したりしている。穢れというものに無縁なところだとすぐに理解できた。聖女がいたら、一歩も動けないだろう。寧ろ泡を吹いて気絶する。

 

「水を司る天使ですので、その力が都市にも反映されているのです。水というものは生きるために必要なものです。いえ。様々なものが水を求めていると言えます」

 

 男の天使が旗で神殿の中の古い時代の絵を指した。天使が暮らしている、様々な色の土で塗られた絵だ。古き友と共にいた時代の代物だ。アーリーのように断定したというわけではない。ただの直感だ。

 

「このオフィエルは古き時代……つまり神々がいた時代の頃は幼かったと言われています。また、大天使と異なる性質を持っていたとも言われています。ですので、神々の時代にあった、とある大きな過ちと言われる……天の火と呼ばれるものに参加していない貴重な天使だとか」

 

 天の火。言葉通りに解釈すると、天から降り注ぐ火だろう。まだ戦士として戦っていたあの時代のことを考えると、天罰に等しいものが地上に降り注いだと考えた方がよいか。

 

「察しのいい方もいらっしゃるでしょう。ええ。過ちをおかしたのですよ。魔界と人界の大きな戦争が終わった後。人間と言う種族が住む都市の二つを無関係の者まで巻き込んだ天罰と言いますか。今の我々から見たら、虐殺に等しいものです。おっと。お話が逸れますので、オフィエルの方に戻りましょうか」

 

 奥の方に進む。通りかかった白い布を纏う神官を見る。手元に壺がある。輝いているように見えるが、オフィエルの神殿が纏う魔力がそうさせている。

 

「水の精霊と言う側面がございます。過敏な方と言いますか。有名なグリムリーパーはお気付きかと思いますが、独自の魔力がここにございます」

 

 視線が集まった。案内人の男の天使は見た目の割に俗っぽいことも知っていた。見た目だけで判断してはならないことを学んだ。昔も今も、そこで判断してはならない。

 

「水というものを媒介し、全てを浄化させる。神殿でもあり、装置でもあるのですよ。ここは」

 

 なるほど。研究者らしい、地上の住民がいるのもそれが理由か。

 

「さて。ここからは神官がやっていることを見てみましょうか」

 

 オフィエルの神殿にいる神官の術を見させてもらった。静かな広間だと思ったら、魔法陣が床にあった。いや。建物全体に魔法陣が貼られている。他の奴らが気付いていない辺り、隠ぺいしていると考えた方がいいだろう。それにしてもこの手際の良さ。無駄がない。神々に仕えていると同時に、優れた術師でもあるのが神官という者か。

 

「これにて神殿ツアー終了といたします。あとは各自、自由に行動をしてください」

 

 ツアーというものが終わった。どうしようか。

 

「すまない。グリムリーパー殿。お渡ししたいものがありまして」

 

 青色の刺繍がある、白い衣装を着た神官が近づいてきた。布に包まれているものがある。

 

「ああ。持ち帰れるものならば問題ないが」

「ええ。問題ないよ。どうぞ」

 

 重さは想像よりもない。何かの板だろう。

 

「地上で開いてください。あなたならどういったものか、すぐ理解できるでしょう」

 

 その神官はどこかに去った。何かがある。古い時代の、かつての自分しか分からない。そう断言しているようなものだ。とんでもない土産を入手してしまった。いざとなったら、アーリーに見せよう。

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