地上に戻ってお土産をアーリーに渡す。ついでに受け取った例のブツを渡したが……アーリーは頭を抱えていた。確かに魔力が込められている、魔道具の分類だと分かる。そういえば俺は布を取ったことがなかった。忘れていた。大事なものだと思い、ついそっとしていた。岩でできた円盤のようなものに文字が刻まれている。この時代になってから、久しぶりに見た、かつて使われていたものだ。
「お前……読める?」
アーリーの声が震えている。めんどくさそうな顔が全面に出ている。その手に連絡で使う端末機器がある。俺は円盤の文字を読む。私の友ショールへ。ユーリ国王より。
「友でもあり、王でもあった。そういう男から俺へ。と言ったところか。アーリー、連絡してくれ」
この円盤の使い方は知っている。声を収録して、長く保てるようにしたものだ。今は軽い素材で可能となっているが、当時は神々との戦などで壊れる可能性もあった。重くて頑丈。よくも神殿で維持できたものだ。賞賛を送りたい。
「お前が運べよ」
「当然だ。これは俺宛てのものだからな」
まさかただの旅行でこういった代物を持ち帰れるとは。我が王は。わが友は。どういった気持ちで声を当てていたのだ。
「よかったな。再生できる伝手があって」
「そうだな。俺はつくづく幸運な戦士だ」
「俺もそうかもしれねえな。とりあえず車で行こう。時短できるし、目立つこともないだろ」
今の俺は有名になっている。ただ歩くだけで声をかけられるぐらいだ。そしてこの重たい荷物を持っての移動となると時間がかかってしまう。アーリーの提案を素直に受け入れ、三十分も経たない内に研究室へ。
「丁度使っていないな。よし」
カーター博士が準備していたみたいだ。俺は持ってきた円盤を装置の上に置く。光って読み込み始めた。複数の小さい文字が出て消えての繰り返しだ。
「流石に古代レベルとなると、時間がかかるな」
何度も見て、経験を積んでいるアーリーはいつの間にか珈琲という飲み物を用意していた。
「見ていてだいぶ複雑な術式だったから、予想よりも読み込みが遅くなっちまう」
「分かるのか。ひとめで」
「そりゃ俺も研究者の端くれみたいなもんだし」
遺跡調査など、外での活動を主にしている仕事も、知識が要る。出会った当初からカーター博士は助手という表現を使っていた。俺は当時生きていたからこそ、分別が付くが、それ以外はさっぱりだ。圧倒的知識量の不足だ。
「しかしなんつーか。暇だな」
ポリポリと頭を掻いたアーリーが本音を漏らした。気持ちは分かる。
「ぶっちゃけたな。アーリー」
「そりゃあ。ここまでかかるの初めてだぜ?」
「腐っても千年以上経つ。これぐらいはかかる」
苦い。酸っぱい。不思議な味が口の中に広がる。こういった類はかつて手に入らなかったものだが、時代が進んでいることの良い証拠だ。
「調査も時にはのんびりとするときもあるしな。気長に待とうぜ」
「それもそうだな」
ゆっくりとした時間だった。喋ったり、寝たり、噂を聞きつけた他の研究者にサインを書いてあげたり。そうこうしている内に読み込みがようやく終わる。
「おーし。じゃあ。再生するぜ」
久しぶりの我が友の声が聴ける。それだけで俺の心臓が鳴っている。戦闘でも緊張するが、これは……別の緊張なのかもしれない。それでもいいと感じてしまうのは……不思議だ。