正々堂々とした。どこか胸が熱くなるような友の声が流れる。古代の言葉だ。久しぶりに聞く。それだけだが、不思議と懐かしさがある。
「こんにちは。遥か未来に生きる者。人間の王として。声を送りたい。魔界、そして我々も、疲弊した。提携をした後、地上に厄災が降って来た。規模の大きい都市二つがやられてしまった。いや。文明ごと滅んでしまった。一部の者から天へ復讐すべきだと言う声もある」
オフィエルで聞いた話がここで出て来るとは。
「それは不可能に等しかった。大規模な戦争があった後で、再び戦争を仕掛ける程の余力はない。結局はその提案は却下され、復興を専念した。天からの襲撃に怯えながら」
当時は謎に等しい存在だった天界。強大な力を見聞きした後だと、更にそうなってしまうか。
「だが私は信じている。苦難を経て、高い空にいる住人と交流し、行き来できる……平和な世界を。きっと笑うだろうな。夢物語だと」
いつだって友は理想を描こうとする。きっと周りの連中は反対をしていたはずだ。というか俺が記憶している限り、全部反対意見が多かった。
「いきなり出来るわけではない。それを理解している。故に。未来の者に託すことになってしまう。もちろん、私も準備をしているさ」
友が笑った。穏やかな笑みを浮かばせているはずだ。
「さて。私の声を聞いている者。今はどうなっている」
俺が答えたい。紆余曲折を経て、天界へ旅行出来るようになったと。
「この言葉を聞くことが出来る者は限られるだろうな。いつ聞いてくれるかさっぱりだし。ああ。でも。私は望んでいるさ」
何を望んでいる。
「友が聞いてくれることを。きっと起きていることを。謳歌していることを。信じている」
プツリと音声が止まった。温かいものが目から出ている。涙か。悲しいわけでもない。不思議なこともあるものだ。
「我が友よ。我が王よ」
俺の声が震えている。いつもよりも声が出づらい。気にしない。
「私はここにいる。目一杯楽しんでいる。もしも……黄泉の世界でまた出会えるのなら、酒を交わそう」
アーリーが静かにハンカチを渡してきた。拭けと。それもそうだ。
「ありがとう。アーリー」
「気にするな。これも研究者の端くれの仕事だ」
研究か。歴史を研究するのだったか。俺の知らない、王が知る世界がきっとそこに含まれている。黄泉に行って、友と会えた時に何も知らないというわけにはいかない。未来だからこそ知り得たことを伝えたい。
「決めた」
「何をだ」
アーリーが驚いているが……気にしない。
「俺がやりたいこと。友が歩んできた道。歴史というものを。遺跡を。そういったものを調べたい」
戦士ではない。俺個人のやりたいこと。これも平和な時代になり、友の声を聞くことが出来たからだ。