黒雷の戦士ショールが歩く道   作:いちのさつき

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第2章 魔法総合格闘技
第6話 興味を持つ


 通信教育とやらで文字や歴史を学び、それ以外は家事と文字魔法の習得をして過ごしていた。お陰でどういったものがあるのかを知ることが出来た。手はずを整えてくれたビッグボスにお礼を言いたい。だが相当多忙だと聞いている。難しいだろう。

 

 あの頃と違い、のんびりと過ごす平和な日々。それでも学ぶべきことが多く、満喫をしている。とは言え、ずっとアーリー達の庇護下にいるわけにかいかない。どうすべきかソファーとやらで考え始めた時、ある記事を見つけた。

 

「魔法総合格闘技、エクストリームファイト、通称エックス。950年度シーズン4参加者募集中。資格に制限……あまりないか」

 

 魔法総合格闘技、クロスファイトの存在を知った。年に4度、1ヶ月の期間に行われるようだ。勝利すればするほど、獲得賞金が増える仕組み。制限は予想よりも厳しくないのも嬉しい。ただ俺はこの時代に生まれ育ってきているわけではない。実際に見ておくべきだろう。

 

「ただいまー」

 

 この部屋の主のアーリーが戻って来た。第一区の近くの遺跡探索をしたのか、泥だらけだ。

 

「おかえり。随分と汚れたな」

 

「ははっ。途中ぬかるんでるとこがあったからな。多分そのせいだ。そういうことでちょっと綺麗にしてくる」

 

「ああ」

 

 家にある端末機器を使い、蜘蛛の巣という魔法を使い、ネットとやらに繋げる。映像が見られる場所があったはずだ。そのマークを突っつく。そして不慣れな操作でどうにか入力。前のシーズンらしき最新の動画を見つけた。

 

『第3シーズン! プラチナ級最終日! 見て見て! この大盛況! 観戦客がたくさんいるぜええ! それもそのはず。オフィウクスとレオの試合だからだ! 女王と黄金獣という実力者となると、ワクワクするしかないよね!』

 

 やたらとテンションが高い女の実況者だ。喉が潰れたりしないのだろうか。

 

『早速入場だ!』

 

 ドーム状のようなとこで試合を行うみたいだ。周りに観客がいる中で戦うのも少し妙な気になりそうだ。実力者と言っていたが、どういった展開になるのかが気になる。拍手と歓声の中、出てきた。獅子の耳と尻尾を有する屈強な男が黄金獣と呼ばれるレオだろう。もう片方の短い金髪と2つの角と竜のように太い尻尾を持つ褐色肌の女がオフィウクスか。どちらも動きやすい服装だ。鎧を着ていないのは、身軽さ重視なのだろう。

 

『デュエルスタンバイ』

 

 アーリーが言う機械っぽい女の声。映像の下にあるカウントがどんどん小さくなっている。

 

『スタート』

 

 そして0になり、どちらも動き始めた。先に仕掛けてきたのはレオか。派手な光で目をくらませ、拳で殴り始める。オフィウクスはそれに応じている。一旦距離を取ったか。オフィウクスの頭上に光の大剣。

 

『おっとお!? ここでレオ選手、擬似聖剣を使ったああ!』

 

 聖剣はそう簡単に作られないと記憶している。擬似と言っている辺り、恐らく魔法で再現しただけの光の大剣なのかもしれない。正直直接見たいところだ。

 

『そして鎖がオフィウクスを封じる!』

 

 よく考えている。拳の撃ち合いの段階で仕掛けていたものだ。2つの魔法の同時使用、ダブルスペルと呼ばれる名称だったか。懐かしい。

 

『オフィウクス、絶体絶命だあ!』

 

 これで試合が終わるとは思えない。擬似聖剣が試合会場の土と衝突する。煙で見えないが、奴は無事だろう。ちらりと動いている様子があった。

 

『流石女王! 無傷だったあ!』

 

 やはりそうだった。体内にある魔力を放出して、鎖をちぎったと推測する。この映像を見終わるまでそのままにしておこうと思っていたが、隣にいる同居人に声をかけておこう。夕食を待っているはずだ。

 

「すまん。もう少し待ってもらえると助かる」

 

「俺が隣にいるのバレてたか。夢中になってたから気付いちゃいねえと思ってた。つーか。前のシーズンとか懐かしいのを見てるな。俺も直接見に行った」

 

「見に行ったのか」

 

 アーリー、この試合を直接見たのか。ならこの映像は停止だ。

 

「いやちょっと待て。何で止めた」

 

「試合を見た奴に聞いた方が早いからだが?」

 

「俺、お前みたいに戦う仕事してねえよ」

 

 アーリーが勝手に端末を操作した。映像が再生する。

 

「だからコイツを見ちゃった方がいいし、気になるとこがあったら、再生速度を調整するのがオススメだぜ」

 

 気になるところは既に何ヶ所もある。腹を空かせているアーリーを待たせるわけにはいかない。この続きは後にしよう。

 

「ひとつ聞いていいか」

 

 準備をしようと思って立ち上がったら聞かれた。何か気になることがあるのだろうか。

 

「エックスに参加するつもりか」

 

 参加か。どういった競技かを知ってから判断することになるだろう。だからこう答えるしかない。

 

「それは分からない。どういったものかを知っているわけではないからな」

 

「そうか。ま。特に制限ねえし、何事も挑戦だ。やってみろよ」

 

 アーリーが笑いながら背中を叩いた。俺は使命を持っているわけではない。行動の制限がかけられているわけでもない。それなら……参加しよう。魔法総合格闘技を。

 

 

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