申し込みをしたら、一瞬で運営の元に届いたという通知が来た。どこにあるかは分からないが、いくら何でも早すぎるのではないか。そう思う。アーリーが言うには、
「これが当たり前だぜ」
らしい。慣れているといった印象が強かった。かつて戦っていた時代と比べて偉い進歩をしたものだと思った。続きがあるため、読んでいこう。魔界、つまり魔族が住んでいる地下の世界、そこで手続きを行うということか。戦でしか出向いたことのない場所だ。正直想像が付かない。とりあえず行き方を調べて、時間に間に合うように行こう。
「魔界行きの転移陣スポット、この辺りなら結構あるから大丈夫だぜ。ほれ」
アーリーが汚い机にある棚から第一区の地図を取り出す。いい加減にアーリーの寝室を綺麗にしたい。その思いを抑えながら、地図を受け取る。確かに言っていた通りだった。歩きで行ける。あとは手続きを行うという場にどう行くのかを調べるのみ。
こうして万全を期して、久しぶりに地下の世界に行く。数秒で着くというのも奇妙な感じはする。交流を重ねていたというのもあながち嘘ではなかった。転移陣のある部屋から出る。魔界と呼ばれる地下の世界だ。暗い世界に魔法の光で照らされ、様々な見た目を有するもの達が歩いている。あの頃と変わらない魔力の感じ方、懐かしい。
「魔法総合格闘技エクストリームファイトの登録手続きに行く人、こっちに乗ってくださーい」
金属の箱が3つ連結しているような乗り物、魔界電車と呼ばれるものに乗り、手続きを行う場に到着する。ドーム型の建物だ。動く硝子の扉を潜り、中に入る。何人かが受付でやり取りをしているのが見える。やった方がいいだろう。
「はい。こんにちは。エクストリームファイト初登録者ですね?」
「ああ」
「個人部門でよろしかったでしょうか」
そう言えば魔法総合格闘技は個人部門と団体部門があった。流石に受付の女は人数を見て個人参加であることは分かっていたようだ。
「分かりました。こちらでお待ちくださいませ」
右側に行けということか。既に何人も集まっている。邪魔にならないよう、端で待機しよう。ついでに持ってきた教材を読んで勉学をやっていこう。
「これで初登録者は全員だな」
足音と強力な魔力の気配。教材を閉じて、背負い鞄の中に入れておく。額に小さい角2つがあり、耳の先が尖った褐色肌の男の魔族が案内役か。体を見ただけで分かる。あれは戦ってきた者だ。
「付いて来い」
どこかに移動する。廊下に案内が書かれている。記憶が正しければ、ここは競技場と書かれていたはずだ。初めての者に控室などを教える形なのだろうか。いや違う。初登録者限定で試験が行われるのか。観客席に囲まれているフィールドに着いたから間違いない。
「これから試験を行う。起動開始」
魔法で構築された立方体が一瞬で建つ。結界のような役割か。
「この中に入り、魔獣を倒してもらう。少しずつ難易度をあげ、力がなくなった段階で終了だ。滅多にいないが、50体全てやった時点でも終了だ。これを元に参加するランクを決めさせてもらう。もちろん希望通りにはするがな」
希望があっても、魔法の力量で大体は下のブロンドからのはずだ。仮に実力があったところで、1つ上のシルバーランクからだろう。魔法の力量がある場合はゴールドランクだろう。プラチナに行けるのは難しいはずだ。最初からプラチナランクで参戦しているのは、女王オフィウクスのみ。俺がどこまでやれるのかどうかで変わってくる。少なくともゴールドになりそうだが、どうなるのかは不明だ。
「最初に1番来い」
1人ずつ呼ばれ、結界内で戦っていく。弱い1体を倒すだけで息切れしている奴が多い。単純な動きですら対応出来ない時点でブロンドからだろう。少々戦えても、5体程度しか倒せない場合はシルバー。アーリーの助言で相棒を置いていったが、やることは変わらないし、大した支障ではない。
「45番」
結界の中に入る。特に制限がかかるわけではなさそうだ。動ける範囲ぐらいか。問題はない。最初の魔獣はただ突進するだけか。文字魔法でやるか、接近戦でやるか。慣れた手法でやろう。両手で角を掴む。ぐるりと回して、地面に叩きつける。消えたか。魔法で再現した魔獣はこういう感覚なのか。感心している場合ではなかった。次々と魔獣が出て来る。来い。とことん戦ってやる。
「ふぅー……」
30分経過と言ったところか。討伐数は49だったか。肩慣らしとしては良い運動になったし、相棒無しでの戦闘は久しかったからいい勉強になった。さて次はどういったものかを見よう。翼を持つ4つ足、最強の魔物ドラゴンか。いきなり火を吹いた。文字魔法で防御を貼ろう。指で空中に書いただけで発動するのはとても楽だ。覚えるまで苦労するが、それさえ突破できれば、便利なものだ。あとは凍らせれば問題はない。
「いい出来だ」
氷に該当する文字を書き、発動させ、ドラゴンをカチカチに凍らすことが出来た。ひんやりとした手触り、しばらくは維持できるだろう。この騒ぎは何だろうか。
「おいおい。なんでプラチナ級の奴らがここにいるんだよ」
「知るか」
プラチナ級の選手がわざわざ目的もなく、見学するわけがない。有力な選手を探しに来たのだろう。どの辺りにいる。見つけた。観戦席にいた。頬が赤く、べろんべろんで、額に2つの小さい角を生やしている褐色肌の赤いトゲトゲ頭の男。その隣に周りがキラキラしている金髪の男か。
「45番。出ていい」
案内役の男の指示に従う。信じられないような顔で見ている。50体全てを倒し切ったからだろう。正直2倍でも問題なかったが、更にドン引かれそうなので発言はやめておく。
「次!」
残っていた数人がやり、参加者全員が試験を受け終わった。基本ルールや選手名の提出などの説明を講義室のような部屋で受け、あとは結果を待つのみ。ということもあり、ロビーで解散した。思ったよりも早く帰れそうだ。買い物してから家に戻ろう。そう思っていた矢先、
「よお。ちょっと付き合ってくれ」
俺達を見ていた例のプラチナ級の奴らに話しかけられた。