寄生獣~S~   作:証明

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第13話

こんなことを思った事は、無いだろうか?

 

友人や知り合い等にたまに居る、親のどちらかが早死にして、それでも懸命に生きてる人を好ましく思う異性がいるのを見て、妬ましく思ったりしたことは無いだろうか?

 

映画やドラマ等で良く題材に使われる、幼少期事故等により家族を失ったものが頑張って這い上がる所謂『悲劇のヒーローやヒロイン』

等をみて、正直羨ましく思った事は無いだろうか?

 

少なくとも、私はある。

いや、あった……というべきか。

毎日毎日、生きるのが辛くて辛くて仕方なかった。 そんな日常から抜け出したかったのだろう。 

だから、妬ましく思ったりもしたんだろう……。

だから、羨ましく思ったんだろう。

 

__

 

 

「何が、羨ましいだ? そんな事になっても只生きるのが辛くなるだけだというのにな……。」

 

あの事件から、1ヶ月が経った。

医者も驚く程の早さで回復した私は、あの後早々に退院し、現在は自宅にいる。

 

自宅と言っても、あの家にはもう住めなくなってしまった為、母親の祖母の家にお世話になっている。

どうやら、一人暮らしだったらしい祖母はすんなりと私を受け入れてくれた。

学校に通う距離は以前より20分程遅れてしまうが、それでも通え無い距離では無いという事もあり、転校などといった事は断り、今も以前と同じ高校へと通うことにした。

 

「香織ー、準備出来たのかーい? 今日から、また学校だろ?

遅れるんじゃないよー!」

元気な祖母である。 年齢はもうすぐ70になるらしく、母親を産んだのはこの時代では、遅い方に見受けられた。

私は、事件の被害者という事もあり、しばらく学校を休んでいたのだが、ようやく今日から復帰ということになった。

 

「はーい、今行きまーす。」

私は、そう返事をしてからようやく着替えを始めた。

「やはり、傷痕は残ったか……」

自身を写す等身大の鏡には、痛々しい自分の身体が写っていた……。

 

いくら、治りが早いと言っても、寄生生物を取り込んだと言っても、所詮は人の身体である。

「元々、無かった女性らしさが、さらに薄くなったか……」 

 

私の右胸には、大きな刺し傷が残り、そう自虐した私の顔は以前とは違い笑っていた。

しかしそれは、なんだかとても悲しい笑顔のように見えた……。

 

 

__

 

 

 

学校に復帰してからの、私はというと、それは大変だった。

以前のような無表情では無くなってしまった為に、幸か不幸か周りの同情を集めてしまい、前世も今世も人混みとは無縁であった私は、それだけで何故か、乗り物にでも酔ってしまったような気分になった。

 

ちょうど、そんな騒動が落ち着いてきた時である。

そういえば、今日、幸いにも未だ見かけていなかった泉新一が、何故かボロボロの喧嘩でもしてきたといった様相で登校してきた。

 

「おい泉、長井から聞いたぜ北高の奴らとやりあったんだって?」

そんな会話を廊下で気合いの入った少年としている所だった。

偶然にも、そこに居合わせた私は静かにそこを通りすぎようとしたのだが、見つかってしまった。

「おま……、井上……」

今日、最も会いたくなかった人物に。

「はい、そうですが?」

私は、少し気まずそうに笑ってそう答えた。 すると、件の少年泉新一は驚いた顔をしてから、私の腕を掴んで急にはしりだした。

「……ちょっと、来てくれ!」 

「おーい、泉ー、香織嬢には手ぇーだすなよークラスの男子全員敵に回すことになるぞー」

等と先程の少年にからかわれつつ、私は屋上へと向かうことになった。 

 

 

__

 

 

 

「…ハァ…ハァ」

 

「……泉くん、痛いんですが……。」

「あ、ゴメン……!」

そう言って、泉新一はようやく左手を離した。

 

仕方ないと思い、私は喋りだす。

あの日と同じように空を見上げれば、染み渡る青空が広がり、雲一つ見当たらないそれは、あの日とは違い、夏の暑さを表しているようだった。

…そうして、私は喋りだす。

「まったく、乙女の柔肌に傷がついたらどうするんです?」

私は私らしくない口調で喋りだす。

「あ、そうそう泉くん、私笑えるようになったんですよ! ビックリしたでしょう? 前の私、無表情でしたもんね?」 

私は、自分でもこれは誰だと思いながら喋る

「あ、事件の事ですか? 全然、気にしないで下さいよ! もう、全然この通り元気なんで!」

私は喋る

「まったく、クラスの皆も心配し過ぎというか__」

私はー

 

 

「井上!!  もう、もう止めてくれ井上……もう、大丈夫だから、解ってるから止めてくれ……」

 

 

そして、私は真顔になった。

「何が解るんです?」

「そ、それはその……」 

 

さらに、私は彼の右手へと目を向けた。

「ミギーさ……いいや、寄生生物。 …聞いているんだろう? 貴様の仲間に私の両親は殺されたぞ……」 

『ああ』

「……貴様の仲間に私の平穏は壊されたぞ。」

『……そうか』

「どう思う?」

私は、目の前の寄生生物へと問いかけた

 

『……以前、田宮良子が言っていた。 わたしの仲間達には、わたしには来ていないある命令が来ていると』

「なんだ? それは……」

 

ー『この種を食い殺せ』ー

 

……。

私は、必死に産まれたてのソレを抑えながら尋ねる

「だから、仕方ないと? 殺されても命令だから、仕方ないと?」

『……わたしは、そう思う。現にわたしも、もし本体である新一が何らかの形で私を害するなら、わたしも新一の両親を殺すだろう』

「ミ、ミギー!」

ー瞬間、それは暴走した。

 

 

   

ズダァン!!!!

 

 

 

 

私は、ドアの方へ歩きながら彼らに告げる

「……良いか、泉新一……それにミギー?  忠告しておくぞ、もし貴様らが私の平穏を脅かすようなら、その時は……」

 

ガチャリ

 

「__殺す。」 

 

私は、そう言い残し屋上をあとにする。

ふと、後ろを見れば私が立っていた場所のタイルは粉々になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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