寄生獣~S~   作:証明

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第16話

『ふむ、ところで香織……』

「何だ?」

『100パーセント寄生生物を取り込んで、君の体調に何か変化はなかったのか?』

泉新一の右手は、相変わらずの不気味な愛らしさを振り撒き、私にそう質問した。

 

「あるな……以前の私は病弱だった。 しかし、取り込んでからの私はとても健康になった。」

私が、そう簡潔に話すと泉新一とミギーは無言になった。

 

「健康か……」

『健康すぎるがな』

何故か、寄生生物に突っ込まれた。

 

「ええい、うるさい! それで?だからどうしたと言うんだ、ミギー!!」

私は珍しく感情的になり、そう聞き返した。

 

『……今日、近くに仲間がいる気配がした時だ。 わたしから、それを聞いた新一は300メートル程離れた浜辺に、オリンピック選手並の速さで駆け、3メートル程の高さの塀をジャンプして乗り越えた、まぁ本人に自覚は無かったらしいが……』

「成る程な……」

『ああ、30パーセントで其れなのだ。 だから聞く井上香織、君は一体どれ程の力をもて余している?』

 

 

私は、暫し黙考した後、こう答えた。

「さぁな、私にもわからん。…………それに、そんな事はどうだって良いことだろう?  私が、速く走れようが、高く跳べようが……。

私は私の平穏を守りたいだけだ。」

『そうか……』

「さ、さっきの感情がどうのってのは……?」

今度は、泉新一が聞いてきた。

 

私は、飲みかけの水分を喉に流しこんで、彼に答える。

「……親や君と仲の良い村野里美から何か言われた事はないか?」

「……あっ!」

 

 

泉新一は、何かに思い当たったようで、ちょうど私の手にある飲み物も空になった。 

私は、立ち上がりこう告げる。

「まぁ、そういうことだ。 あまり気にしない方がいいぞ……」

「井上……」

「おやすみ、泉新一。 それに、ミギー」

 

そうして、その場を去った私は、部屋に戻りながらこう呟くのだった。

 

「どうせ、すぐにそんな事も気にしなくなる」

 

横にあった振り子のついた掛け時計には、2時半を指しており、窓から吹き込む風は冷たく、外からは夏の夜を感じさせる鈴虫の鳴き声が聴こえてきた……。

 

 

__

 

 

 

それから、さらに数日後の事である。 

 

相変わらず父親の病院の前で、監視を続ける彼の姿にどこか面白さを感じながらも、暇をもて余した私は、どうせなら観光でもと思い、となり町まで足を伸ばした時だった。

 

「何だ、あれは?」

ふと、私の良すぎる目に遠くにいる人物を見れば、私の鋭すぎる五感には、それはとても異質で、異様なもののように捉えた。

 

「……まさか、あれが?」

私は、以前対峙した田宮良子の姿を思いだし、すぐに理解した。

それは"寄生生物"だと。

 

瞬時に私の中に殺意が芽生える。

しかし、彼と約束した事も思い出した私は、近づけば厄介な事になると判断しその場を急いで離れる事にした。

 

どうやら、この身体は寄生生物と似た何かを発しているらしく、この距離では、まだ気づかれていないようで安心していた。

「気づかれれば何するか分からんからな……私が。」

 

 

__

 

 

 

ピ、ポ、パ…… トゥルルル……

 

私は、近くにあった電話ボックスから、宿泊先の旅館へと電話をかけた。

「頼むから、宿に戻っていてくれ……泉。」 

前世、友達もいなく付き合いは会社の同僚だけで、たまに掛かってくる通知といえば仕事の内容だけだった私は、なんど投げ捨てようとしたか分からないソレが、今は途轍もなく欲しくてたまらなかった。

 

「失って初めて分かる利便性とはこのことか……」

 

ガチャ

 

『はい、もしもし◯◯旅館です。』

 

「あ、すみません。そちらに宿泊中の泉新一さんはいらっしゃいますか? 私、同じく宿泊中の井上と申すものですが……」

 

「あ、いらっしゃいますか! 良かった、少し替わって頂けますか?」

 

「ええ、ええ、はい。  -だから、彼女じゃないですってば!!」

 

どうやら、宿泊先の方では、訳ありの高校生カップルと認識されているらしく、宿泊中ずっとその勘違いは続いていた_。

 

『はい、もしもし井上か?』

「……泉か……?」

私は、怒気をこめて電話先の泉へそう言った。

 

『ど、どうした何か怒ってないか?』

「黙れ。 ……良いか、良く聴け貴様の敵が現れたぞ。」

『え』

「正確ではないが、恐らく間違い無いだろう。 年の頃は30後半といった所で、長い髪を後ろでひとくくりにしている女だ。」

 

そう説明すると

『母さ……い、いや、わかったすぐ行く! 場所は? 今何処にいるんだ? 井上は無事なのか?』

随分と焦りながら、私に聴いてきた。

「場所は、今私は隣町にいる……いや、まて近づいてきたぞ。どうやら私に気づいたようだ。……仲間だと思ったのか? いや、違うな興味本位といった所か……」

『な!? だったら逃げろ井上!』

 

フッ

 

「フフフフ……」

『井上?』

私は、気づけば今世初めて笑っていた。

 

「……誰の心配をしている泉新一。私が寄生生物共になんて呼ばれているか知っているか?」

『……』

「"化物"だ。」

 

 

__

 

 

 

「良いか、泉? 私がこのまま、そっちの町との境にある岬へとヤツを誘導しよう。……なに、今のお前の足でなら直ぐにこれるだろう?」

 

『いや、でも……』

 

「なぁに、安心しろ。もしもの場合は見せつけてやる。      

……本当の化物というヤツをな?」

 

そう言って私は、電話を切りゆっくりと、追い付いてこれるようにゆっくりと走り出した。

 

 

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