寄生獣~S~   作:証明

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第17話

私は、ゆっくりと歩くように走る、ゆっくりとゆっくりと……

 

 

__

 

 

 

「香織、お母さんね あなたの事、例えあなたが何者だろうと愛する事にきめたわ」

「お前の好きに生きなさい。 俺も静香も例え何があろうと……お前の味方なんだから」

 

 

__

 

 

私は、今世の親を思いだす。

バカな程、甘く優しい親を思い出す。 始めて触れた親からの愛を思い出す。 

私を肯定し、何があっても離れなかったあの人達を思い出す。

 

目の前で守れなかった。

目の前で殺された。

目の前で離れていってしまった。

 

「何が……化物だ……。」

こんな力が何の役に立つという? いざという時に発揮出来なかった、こんな力が。

寄生生物を取り込んだ事によって、私は確かに力を得た。

一時でも、願いは叶った。

しかし、そんな両親を悲しませていたと気付いた今、私には後悔しかない。

 

それでも……それでも生きていく。

 

それが、私が今世の両親にできるただ一つの親孝行だろう。

例えこの先、泥にまみれようが、血にまみれようが……

 

"それでも生きていく"

 

これが私の新しい矜持だ。"平穏"と共に守らなければならない私の矜持だ。

だからかもしれない、彼の旅についてきたのは。

 

あの日、血まみれで起き上がった彼を見て、危うさを感じた。

敵を取ろうと決意した彼を見て、危うさを感じた。

自ら、死へと飛び込みそうな姿を見て、危うさを感じた。

 

「泉新一……道は違えてくれるなよ。」 

 

 

__

 

 

 

ようやく岬へと着いた私の前に、化物が映る。

かつて、彼の母親だっただろう存在が映る。

「貴様……何者だ……? 仲間のようでまるで違う……危険だな非常に危険だ……」

「誰が、仲間になどなりたいものか……危険? それをその姿で言うのか……寄生生物?」

 

ハァ……ハァ……ハァ……

 

「井上!!」

声のした方を見れば、泉新一が汗だくになりながら立っている。

どうやら、追い付いたようだ。

歩く程、ゆっくり走ったお陰だろう。

 

「泉か、ようやく来たか。 ……どうした? その手は?」

見れば、その手は不気味な刀の形をしていた。

「ミギーは、今は眠って………………母さん?」

 

 

__

 

 

「何故だ!? あの時、殺したハズなのに!? 心臓に狙いを定めて殺したハズだ!? ついでに首も切り落としておくべきだったか!?」

 

ギシリ

 

私の握り締めた拳が音を鳴らす。

「貴様……母親の姿で、それを言うのか……?」 

 

ジャリッ

 

私が砂を踏み込む音が鳴る。

 

「井上!!」

突如として、泉新一に呼び止められる。

「約束しただろう井上。 手は出さないって」

そして、泉新一は目の前の寄生生物に宣言する。

 

「一秒でもはやく……てめえを殺す」

 

 

__

 

 

ガンガン!!  ギギン!!   ガガガン!!!

 

 

「……成る程、30パーセントか。」

目の前で、常人なら既に死亡しているだろう攻防を、私は近くの岩場に座り観ていた。

泉新一の相方ミギーは、以前話には聞いていたが、どうやら1日に4時間程眠ってしまうらしい。そんなミギーの存在を差し引いて見ても、寄生生物を圧倒していた。

 

「あれで、30なら確かにヤツらが私を化物と呼ぶのも納得できるな……」

皮肉にもそんな感想を抱いていた時だった。

 

寄生生物を後一歩まで追い詰めた泉新一がトドメを刺そうとして、手が止まった。

 

「何だ? 何をしている? ……おい!」

 

 

 

 

泉新一の手がゆっくりと下がる。

倒されていた、寄生生物が酷くゆっくりと起き上がる。

 

私なら、今の私なら瞬時に解決できるだろう。

今の私なら、寄生生物を殺すのなんて赤子の手を捻るより遥かに簡単だろう。

今の私なら__

 

 

 

ザシュ

 

 

 

 

ポタポタポタ……

 

 

 

「井上!??」

 

……気付けば、私は彼を庇って斬られていた。

気付けば、私は背中に大きな切り傷が出来ていた……

 

「な……んで」

 

ああ、また傷が増えるなぁと、この身体の元の持ち主に申し訳ない気持ちになりながら私は言う。

 

「いいから、ヤツを殺せ……泉! 約束しただろう!! お前の敵なんだろう? アレは母親ではないぞ……母親を殺した敵なんだろう? お前が自分の手でケリをつけないでどうする!!!!」

 

「う、うあああああああ____!!」

 

 

ザンッ!

 

 

 

     

ドボォ---ン!!     

 

 

 

 

そうして、泉新一に斬られた寄生生物は崖下にある海へと落ちていった……。

 

 

__

 

 

 

-数日後-

 

あれから、私はというと、そのまま彼の父親が入院する病院で手当てをして貰い、跡は残るかも知れないが、そこまで深い傷では無いらしく。医者からの説明中、隣で心配そうな顔をしていた泉新一はホッとしていた。  

 

そして、どうやら退院した父親と一緒に帰ることになった私達は、この前とは別の……恐らく母親が殺されたであろう崖へと来ていた。

 

「新一……上手く話せないが、ただ……ただこれだけは信じて欲しい。 母さんは、最後まで……いや、今もお前を愛している。そして、俺もお前と、母さんを__」

 

そう、彼の父親が口を開くと……

「父さん、一つだけ……父さんが見た夢の中で、母さんは苦しい思いとかしたのかな……?」

 

どうやら、彼の父親は雑誌記者上がりのフリーライターだったらしく、今回の件を世に出そうとしたが、認められず泣く泣く夢という形で息子に納得して貰うようだった。

 

「いや……全てが一瞬の事だったからな」

 

「……そう」

 

 

 

ボスッ

 

 

 

   

 

「新一……!」 

「ちょっと……!?」

そう返事をした泉新一は、相当疲れが溜まっていたのだろう。

一応、怪我人でもある私に、こともあろうか、身体を預けて寝てしまった。

 

「ったく、こいつは……。 すまなかったね井上香織さん。 ……色々と」

「あら、やっぱり気付かれてたんですね?」

「ああ、あの後思い出したよ。 君があの残酷な事件の被害者であり、唯一の生き残りだったってことに……」

「別に、忘れたままでも良かったんですよ……?」

私は、少し笑ってそう答えた。

 

「新一とは、同じクラスで?」

私は、未だ自分の肩に寄りかかり、寝息をたてる少年を見て返事をした。

「ええ」

すると、父親は少し考えこんだ後に

「……そうか、やはり……うん。」

 

バッ

 

「今後とも息子の事、宜しく頼む。」

そう言って私に頭を下げてきた。

 

 

「…………だ、」

 

「え?」

 

 

「だから、違うっつーーーーーーの!!!!!」

 

そう言った、私の今世初めての絶叫は崖の先へと、夕陽が半分溶け込んだ水平線へと一緒に沈んでいった……。

 

 

 

 

              ー第3章「親愛」完ー

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