寄生獣~S~   作:証明

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第19話

「いやー、悪かったね。 ゴメンゴメン」

 

「いえ、お気に為さらず……」

 

ズズ-ッ……

 

私達は何故か、現在とある喫茶店へと来ていた。

「てか、アンタ。 随分、前と雰囲気変わったよな?」

そう話す彼女の手元には、アイスコーヒーがあり、今世も前世も大の甘党である私は、ミルクセーキをすすっていた。

 

「そうですか?」

「ああ、前のアンタとだったら、こうしてここに居ないよ。」

そう言って、快活に答える彼女は、どこか祖母を思い出させる。

 

「と、そういやアンタ、名前なんてーんだい?」

「井上香織です。」

私は、深々と頭を下げてそう返した。

 

「ちょっ! やめなよ恥ずかしい!! ……あー、アタシは加奈ってーんだ、宜しくな。」

前世の影響からか、初対面の相手に名前を名乗る時に出る癖は、どうやら彼女には合わなかったようだ。

「宜しくお願いします。」

 

しかし、そう言ってまたも頭を下げる私を見て彼女は、少し恥ずかしそうに困ったように笑うのだった。

 

 

__

 

 

「泉新一くんですか?」

「そ! ソイツとアンタを間違えたってこと!」

どうやら、彼女は泉新一と私を間違えて声を掛けてしまったようで、今はそれの言い訳とやらを聴いていた。

 

……しかし

「どうしてです?」

「ん?」

「どうして、私と彼を間違えたんです? 彼は男性で、私は女性。

見た目も性別も何もかも違いますが?」

私は、不思議に思い尋ねた。

 

「いや、それはなんて-か、その…………!? アンタ、知ってんのかい? ソイツの事!?」

「クラスメイトです…………一応。」

私は、何だか素直に応えるのが嫌になり、そう返した。

 

「はー……成る程ねぇ。アンタみたいな別嬪さんとねぇ……こりゃ、ウカウカしてらんないな……」

そう、最後の方は私に聴こえないように言ったであろう言葉を、私の耳はしっかりと捉え、こう思うのだった……

 

(-趣味悪ッ)

 

__と。

 

 

 

……

 

 

「テレパシー? ……ですか?」

「ちょっ、何だい!? その可哀想な者を見る目は!?」

どうやら、話を聞けば彼女は特別に泉新一を見分ける能力があるらしく、彼が近付くと何かテレパシーのようなものを感じるらしい。

 

「危ないですね……」

「私かい!? 私の事言ってんのかい!?」

 

私は、そんな彼女に少し笑ってしまい、こう言う。

「フフッ、…違いますよ、加奈さん。 私が言ってるのは、そういう意味ではなくて、問題なのは彼と私に似た何か……テレパシー?ですか? それを感じて間違えた事を言ってるのです。」

 

「また、馬鹿にして……。 にしてもアンタ、やっぱり変わったね」

「そうでしょうか?」

「ああ、全然違うよ、前のアンタとは。 そりゃあ、やっぱ危ない雰囲気……近寄ったらマズイみたいなオーラは変わらないけどさ……」

「……今度は、オーラですか」

「~もう、いいよ! …んで? それの何が問題なんだい?」

少し、からかいが過ぎたのか、彼女は外方を向いて聞いてきた。

 

「……私だけですか?」

「ん?」

「私だけですか? 彼と間違え声をかけたのは? 私だけですか、彼と似た何かを感じ取れたのは?」

「いや、それは……」

恐らく心当たりが有るのだろう彼女に、私は雰囲気を少し変えて、それこそ彼女が言う以前の私のように、そう尋ねた……。

 

 

__

 

 

 

「気をつけて下さいね、加奈さん。 今日、こうやって少し話しただけですが……嫌なんですよ、私はもう……周りから人が居なくなるのが……」

そう、私はもう嫌なのだ……。

自分の周囲から、知り合いが居なくなるのが……。

自分の周囲から、誰かが居なくなるのが……。

それは、もしかしたら、少し会話をしただけの人間も当てはまるかも知れない。

もしかしたら、同じ学び舎に通っているだけの人間にも当てはまるかも知れない。

それは、もしかしたら通行人にさえも当てはまるかも知れない。

 

一度、自ら死んだ人間が何を言う? と思うかも知れないが、だからこそ嫌なのだ。 

 

今にして思う。

 

ー私が死んでも誰も悲しんでくれる人はいないー

 

そんな事を考えてた自分を、今だからこそ恥じる。 そんな愚かで卑屈で手に届かない夢物語を追い続けた私を恥じる。

 

それでも、親は私を愛していたのだろう……と。 自分で責任をとれと、私が何を言ってもそう返した親は、歯痒かったのだろうと、本当なら、抱きしめて甘やかしたかったのだろうと。

 

これは、4人の両親がいたから解るのである。

もう存在しない、私が私の手でなくしてしまった4人の両親がいたから気付いたことである。

 

だから、私は思うのだ。

 

もう、誰にもそんな思いはさせたくないと……そんな思いはしたくないと。

 

 

__

 

 

「……アンタ、名前なんだっけ?」

「井上香織ですよ? もう忘れたんですか?」

私は、わざとふざけるように言う。

 

「~また!…………井上? 井上香織? ……そうか、あの事件の…」

どうやら、私に起こった事件はそこそこ有名らしく、普段ニュースや新聞を目にしなさそうな彼女も知っているらしかった。

 

そして、彼女はゆっくりと言う

「アンタ……危ないね……」

 

「あら、仕返しですか?」

私は、ふざけてそう返す

 

「ーだから、そうやってー、まぁ、いいや私は加奈、君嶋加奈だ。

なぁ、井上……いや、香織。 アンタ、私のダチになってよ?」

 

「え? 嫌です」

 

「いいから!!!」

 

突然、叫んだ彼女が手を差し出してきた。 

それは、恐らく握手の意味で、私はため息をつきその手を握る

 

ハァ……

 

「わかりました、加奈さん。 ……ですが、一つだけ約束をして下さい。」

 

「ん? なんだい?」

 

「絶対に私の前で死なないで下さいね?」

 

「プッ。 なんだいそりゃ……いいよ! その代わりアンタも死ぬんじゃないよ!」

 

 

 

__この日、私に友人が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作にはない、加奈の名字入れさせて頂きました。
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