寄生獣~S~   作:証明

20 / 24
第20話

「君のそのボディーの年齢は、確か10代後半だったか?」

 

薄暗い、明かりの無い部屋で椅子に座りお腹を大きくした女性がそう語りかける……  

部屋には、およそ生活に必要な家具は一切無く、あるのは女性が座っているパイプ椅子のみであり、周りにはおびただしい血痕が散りばめられていた。

 

女性が語りかけた存在も、今まさにそれを増やしている最中であった……。

 

ガリ…ガリ!  バキ……クチャ……

 

『ちゃんと確認をした訳じゃないが、まぁそんな所だ……』

「では、やはり頼もう。 その少年、泉新一を殺さず監視してほしい。」

 

クチャ……

 

『……意味があるのか?』

「ある。 多少危険な存在ではあるが、我々の今後の可能性を占う上でも、必要な資料だ。」

『…分かった。』

 

ゴリ……ブチリ……!

 

「それともう一人」

『……何だ?』

「恐らく、出会ってしまうだろうから先に忠告をしておく。 井上香織という少女には近付かない事だ…………」

 

その存在は衣服を纏っておらず、恐らく返り血がつくのを防ぐ為だろう……。

さらに、その頭部は人間では無く。

しかし、手にしているソレは、人間の足であった。

『何故だ』

 

その何処かで、見た事のある女性は、その存在__寄生生物に先程より強い口調で告げた。

 

「……殺されたいのか?」

 

__と。

 

 

__

 

 

 

それは、とある日の出来事だった。

 

現在の私の周りは至って静かで、平和で、平穏だった。

 

かの少年、泉新一の周囲はというと……

どうやらあれ以来、村野里美と未だ仲直りしていないようで、落ち込んでいたかと思えば、上級生の教室に殴り込んで、転校生に喧嘩を吹っ掛けたりと何かと忙しい様子であった。

 

私も少し気になり相棒であるミギーを問い詰めたのだが、一向にして口を割らず、何を聞いても 『香織には関係ない』 と言うばかりで、それに少し腹を立てた私は、屋上の手すりにヤツを縛り着けて、泉新一もろとも放置してくる事もあった。

 

それでも静かで、平和で、平穏だった…。

 

 

__この時までは……

 

 

 

「オースッ!」

 

バシッ

 

それは、何処かで聞いた声で何処かで体験したシチュエーションで、恐らくデジャヴとは、こういう事を言うのだろう……と思った。

 

しかし、それは平和ボケした私の頭を醒ますには酷く効果的だった。

 

「……何だ?」

「ご、ごめん人違い。 ……アタシてっきり泉ってヤツかと」

「泉? ……ちょっとキミどういう事かな? 人違いってのは顔が似てたり、後ろ姿が似てたりする時に使うものだろう? ……変だなぁ、僕と泉と何処が似てる?……キミ、ちょっとこっち来て。」

 

ガシッ

 

「ハァ? 痛っ! おい、ちょっと離せよ!!」

 

私の初めての友人である君嶋加奈が、目の前の校門で誰かに連れ去られそうになっていた。 

 

「ちょっと、何してるんです?」

 

「香織!?」

 

「…………チッ!」

私が少し焦って、そう声をかけると、どうやら観念したようで手を離した。

 

「……話を聞こうと思っただけだよ」

そう話す目の前の少年の顔を見て、私の頭は完全に覚醒した。

 

「……貴様。 ……寄生生物か?」

 

「か、香織?」

私が、そう凄むと目の前の化物は、急に態度を変えた。

 

「香織? ……キミはもしかして、井上香織か?」

 

「何故、知ってる?」

 

「その、信号の強さ、そして異質さ……やはりそうかキミが……」

 

ギシリ……

 

私が持っていた学生カバンを握りしめる音が大きくこだまする。

「邪魔するか寄生生物……そこまでして私の平穏を乱すか……」

 

「か……香……織……?」

隣で、君嶋加奈が驚いた顔をして、こちらを見ている。

 

「私の友達に、手を出すなら……この場で殺すぞ」

 

「香織ーっ」

隣で、君嶋加奈が何故か喜んでいる。

 

「……成る程こういうことか、確かに危険だな。 ……友達か……その子はキミにとって大切な人という事だな?」

目の前の、寄生生物はしばし考え込んだ後、そう尋ねて来た。

 

「だから、そう言ってるだろう?」

しかし、隣の君嶋加奈のニヤケ顔は激しさをますばかりだった。

 

ジャリッ

 

私が大地を踏みしめて、攻撃態勢に移ろうとすると__

         

「すまなかった。 ……非礼を詫びよう。 彼女には手を出さない」

 

そう言って目の前の寄生生物は、頭を下げ去っていった。

私は、珍しくその姿を呆然と見て

「何だ?  ……あれは?」

そう、漏らしていた。

 

__

 

 

 

バシッ

 

「嬉しい事言ってくれるねぇ~。」

 

「え?」

何故か、突然背中を叩かれた。

 

「そうかぁ、アタシはあんたの大切な友人かぁ……そうかぁ」

「あの? そのニヤケ顔やめてくれません?」

……何故だろう、彼女といると不思議と気が抜ける。 

 

そして__

 

「成る程、これが友達というものか……」

私は、そう感じたままに呟くのだった。

 

「ん? なんか言ったー?」

「いいえ! なにも!」

 

 

__

 

 

「で? さっきの男……寄生生物って何だったんだい?」

あの後、私達は帰り道を一緒にし、電車を待ってる時に彼女にそう尋ねられた。

私は、静かで、平和で、平穏が好きで、だから彼女に話すのをためらってしまった……。

巻き込みたくないと思い、ためらってしまった。

後で、悔やむ事になるのだが……私はこの時ためらってしまった。

 

「……あだ名です。」

「ハァ!??」

「ああいう、危ない人達をそう呼ぶのです。」

あながち、間違いではない。

 

「ですから、気を付けて下さい加奈さん。 私や泉くんに声をかける時は必ず顔を確認してからにして下さい。」

 

「アンタらも、危ない人達ってか?」

「いいえ、泉くんは……まだ……。 でも、私は__」

 

バシッ

 

「痛っ!?」

 

「オーケーオーケー、分かったよ。 ……分かったから、そんな暗い顔するんじゃないよ……香織……。」

 

彼女には、何度背中を叩かれるのだろう。

 

「加奈さん……。」

 

それが、限りあるものだと、この時の私はまだ知る由も無かったのだった……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。