寄生獣~S~   作:証明

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第22話

プルルルル…………ガチャ

 

「どう? 調子は?」

『ああ、争いもなく上手くやってる……ただ、食事が不便ではあるがね』

「そう、そのまま"平穏"に頼むわ……。」

それは、島田秀雄を観察する、元"田宮良子"からの電話であった……。

 

 

__

 

 

 

「__話ってなに?」

 

 

__

 

 

……

時は遡り、ここに一人の少女がいた。 眼鏡をかけたその少女は、彼女「井上香織」や、彼「泉新一」と同じ学校に通う生徒であり、彼女や彼の一つ上の先輩であった。

 

所属する部活動は「美術部」であり、見た目といえば髪形はオカッパで、容姿の方は決してお世辞にも華やかとは言い難く、所謂日常に紛れ込む少女Aや脇役といった存在であった。

 

しかし、誰にでも特技はあるようで、その少女は美術部で、本人が生まれ持ったものも有るだろうが、日頃から観察眼を鍛えていた事も合わさったのだろう……

 

……故に、悲劇は起きてしまった。

 

 

__

 

 

 

その少女は、人を観察する事が好きだった。 町行く人、すれ違う通行人、同じ学校の友人や生徒に教師。 その全ては、自身の絵画力を鍛える為であったが、それはいつの日か立派な自分の趣味となり、自身の人間観察力に自惚れもあったのかも知れない。

 

「え?」

その少女の目の前で、それは起きた。かねてより噂の人物、島田秀雄に関心をもち、彼を影では「能面男」と比喩し呼んでいたバチが当たったのかも知れない。もしかしたら少女の兄が警察官という事も災いしたのかも知れない。

その日も、表情にほぼ変化の見られない彼をたまたま見かけ、観察していた時だった。

 

その少年、島田秀雄の顔に、たまたま飛んできたボールが当たったのは

 

ベシッ  ……テンテンテンテン

 

「す、すいません……大丈夫スか?」

「……ああ」

彼に当たったのは、野球ボールであり、彼の顔はそれを形造るように丸くへこんでいた。

 

「つ……造り物の顔……」

 

 

__

 

 

 

その少女の話を聴けば恐らく大多数の人間は、こういうだろう。

「お人よし」「自業自得」「傍迷惑」と。

 

そんなお人好しな少女は、警察官の兄にも彼の存在を打ち明けず、事もあろうか、彼…島田秀雄と話で解決しようと試みたのだ。

 

 

__

 

 

「話ってなに?」

「見たのよ……島田くん、こうして同じクラスになれたんだし……島田くんの事……そんな……あたし達と別の世界の人間だなんて思いたくないんだけど……もし、一部の気付いた人達が言うように、人間を殺したりする生き物なら……もし、そうならそのまま帰って、もう学校に来ないで欲しいのよ……! ねえ、あなた本当に人を殺すの?」

少女はまくし立てるように、必死に嶋田に訴えかける。

 

「……おまえ……」

「どうしたらいいか分からないのよ! 同じ人間なら、警察に…!」

しかし、それは彼女が言うように同じ人間同士だったら、通じたもので、その"情"に訴えかける行動は、全てが……そう、全て裏目にでるのだった。

 

「まずい、まずいな……」

 

そう言った島田の顔は変形していく、それは不気味で、もし日常で目撃するようなら、瞬時に"死"を悟るだろう……。

 

バラッ

 

「ファフ……」

 

故に惨劇は免れない。

 

 

__

 

 

 

「ばっかやろう!! まっ昼間だぞ!!!」

 

突如として、隣の席の泉新一が授業中叫んだ。

私は、何事かと思い隣の立ち上がった人物を見上げれば、顔色は悪く、汗を異常な程流している。

「おい、泉……」

私は、猫を被る事も忘れて彼に話しかけた。

 

『スマン……香織……』

すると、珍しく彼の右手から、そう小声で謝罪された。

 

ガタン…… スタスタ……

 

泉新一は、私の方を申し訳なさそうに見てから、席を離れ教室を出ていった……。

故に、私は悟る

 

「ああ、またしても平穏が壊されたか……」

 

そして、また私も席を立つのだった……。

 

-ガタン

 

__

 

 

 

「動くな……動くと余計痛いぞ」

目の前の化物にそう"死"の宣告を受けた少女は後ずさる。目線の先には、自身が恐らく化物に対して有効だろうと用意した、硫酸があった。

 

ガアン

 

間一髪、化物からの攻撃を椅子で防ぎ、少女はぶつかった机の上からタイミング良く手元に転がってきたソレを投げた。

 

パァンッ

 

『グオオーッ』

全てが裏目にでるとは、この事を言うのだろう。

 

少女が兄に相談してれば、

少女が話し合いをしようとしなければ、

少女が絵が好きでなければ、

少女が硫酸を手にしなければ、

少女がもう少し謙虚だったら……

そう人々は言うに違いない。事件の真相を知れば言うに違いない。

 

端からみたら、どちらが悪者か分からない。 

しかし、人間とはそういう生き物である。自身に何か悪事が降りかかった時、人は誰かのせいにするのである。時には、悪事を働いた者より他の誰かを糾弾するのである。

 

そんな、可愛そうな、生きるのに必死で優しく真面目なだけの少女は、窓から身を乗り出した。

『キ……サ…マァ……』

硫酸を、取り込んで気が狂った化物から逃げる為に、生きる為に窓から飛び降りたのだった。

「キャアアアア-!!」

きっと後から、真実を知ったものは言う筈だ「自業自得だ」と……

 

 

 

ガシャアアアン!!

 

 

 

ガシィッ

 

 

 

……「え……?」

 

 

 

 

それでも、手を差しのべた人間がいた。

見た目には、自身より体格の良い少女を助ける為に、窓から飛び出して助けた少女がいた。

 

「やってくれるじゃないか寄生生物。 私の平和な学園生活をここ迄壊すか……?」

 

 

そう言って、華麗に着地した少女をみれば、窓ガラスの破片で制服のあちこちから血が滲んでいて……制服のネームプレートには"井上"とあり、それさえ自身の血で濡れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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