寄生獣~S~   作:証明

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第23話

『なんだ、これは? 酸……強い酸だ。 ……硫酸か? くそ……体内に取り込んでしまった……』

硫酸を取り込んでしまった寄生生物が、もがきながら歩を進めている。

 

「おい、どうした。 ……何があった? ……お前、それ頭に何被ってんだ?」

たまたま、近くを通りかかった教師と生徒が近づいていった。

 

 

 

  ズバッ ズドドドッ ズドッ

 

 

 

「うあああぁぁ__」 「キャアアァ__」

 

……かくして、惨劇は幕を空けた。

 

__

 

 

「何だ?」

私の良すぎる耳に、大勢の悲鳴が聴こえる。

「まさか……」

私が、少女を近くにいた人物に渡している間にその悲鳴は聴こえてきた。

手を出すなと言われていた。

黙って傍観してろと言われていた。

だから、少し安心していたのかも知れない。 

恐らく"泉達が何とかする"と心の何処かで安心していたのかも知れない。

先に教室を出ていった奴らが何とかすると思っていたのかも知れない。

だから、安心して少女を助けたのかも知れない。

 

 

__

 

 

「嘘だろう……!」

2階から聴こえた悲鳴を頼りに私は、走り出した。

それは、ある意味幸運で、私のいた教室とは別の棟から聴こえた悲鳴は、幸か不幸か私がいる校庭から先程より早くたどり着ける距離だった。

 

…………

 

嫌な匂いがする……

今世、嗅ぎなれた、嗅ぎなれてしまった鉄の匂いがする。

あの角の向こうから私の鼻に流れ込んでくるそれは、酷く大量の血の匂いだ。

 

「ハァ……ハァ」

私は柄にもなく、冷や汗を流しながらその匂いのする方へと歩みを進めた…… 

 

バッ

 

角から姿を出した私の目に飛び込んできたのは、惨劇の痕だった……

 

 

__

 

 

 

人がいる。 人が寝ている。 

今世見慣れた制服を着た人達が大勢寝ている。    

前世見慣れたスーツを着た人が少数寝ている。

 

 

でもそれは、みんなバラバラで死んでいた。

 

 

 

 

「ぅああああああああああああああっっっ!!!!!」 

 

 

 

 

何故だ寄生生物、手を出さない方が良いんじゃなかったのか?

何故だ泉新一、ミギー、傍観してれば良かったんじゃないのか!?

何故だ井上香織、力があるんじゃなかったのか!!?

 

 

 

 

何故だ 何故だ 何故だ 何故だ 何故だ 何故だ 何故だ

 

 

 

 

「何故、私の平穏を邪魔するんだ!!!!!!」 

 

私は、喉が裂ける程の雄叫びをあげた。

落ち着け? 落ち着ける訳が無い。 深呼吸? 大量の血の匂いで今にも吐きそうだ。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……ゲエェ__」

気づけば大量の血と死を目にした私は、こみ上げる吐き気を抑えられずその場に吐いてしまっていた。

 

__

 

 

 

あれから、何分経っただろう。

私の口には、吐いた胃液の後が残り、目にはもう出ない涙の後が残る。

 

私は、助けられると思っていた。私なら救えると思っていた。

これは、己の慢心がまねいた結末だ。

外からは、パトカーと救急車のサイレンの音がこだまして聴こえてきた……

警察が駆けつけて来たのだろう。

私は以前、泉新一とミギーと話した記憶を呼び起こす。

「……ああ、私が捕まったら、皆に迷惑をかけしまうんだったか……」

 

ユラリ

 

私は、幽鬼のように起き上がる。

それは端から見たらきっと、この世の者には映らないだろう。 

「……それじゃあ、"皆を守れない"な……」

 

ダンッ

 

そして私は、大勢の死体の上を踏まないように跳び越えたのだった。

 

 

__

 

 

 

『グルルル……』

 

意外にもヤツは近くにいた。

あの"惨劇"の痕からそう遠くない所に立っていた。

私は、ゆっくりとヤツに近づいていく。

「なあ、なんでだ? なんでそっとしといてくれない?…なあ、なんで邪魔するんだ?」

 

ヒュンッ

 

ヤツの遅すぎる攻撃が私に向けられる。

「遅い、遅いんだよなぁ……私は、いつも遅い。 私はただ、毎日を静かに平和に平穏に暮らしたいだけなのになあ」

酷く、ボンヤリとした思考で、そんな事を呟きながらゆっくりと化物へと歩を進める。

 

ズバッ

 

奴の攻撃が身体に当たる。 

肩口を切られたのだろうか、私の制服のその部分が朱で染まる。

そんな事は構わずに私は、更に歩を進め近づいていく。

「痛いじゃないか……どうした? 何をそんなに怯えている……」

『…ガアアアッ-!』

 

ズッズバッ

 

今度は、脇腹と胸を切られたようで、またも制服が朱に染まる。

後退り、怯えながら振るわれる攻撃は、まるで牽制してるかのように私に向けられ、その全ては致命傷にはいまだ至っていなかった。

 

 

__

 

 

あれから何度切られただろうか……

身体中のあちこちから血が流れ滴っている。

ポタポタ……ポタ…

止めどなく……止めどなく。

それでも私は、まるで痛みでも感じて無いかのように化物へと歩みを進める。

『グ……グルル……』

私は切られた足を引き摺り、近づいていく。

「ククク……そんなに怯えるなよ。 わたしは、"皆を守りたい"だけなんだから……」

 

 

__時は遡る。

 

  『しかし、香織それにしてもやはりおかしい』

  「何がだ?」  

  『先程の話しは、一見筋が通って聴こえるがやはり、変なんだ』

  「変とは?」

  『田宮良子を知っているだろう? ヤツの体内にいたのは人間の赤ん坊だ。わたしは新一の傷口から、侵入して新一に細胞を与えた。寄生生物を食べても、栄養になるだけだ。』

   

  

   

 

  『香織…。 いや、井上香織。君は一体何者なんだい?』

 

 

 

__________________……

 

 

 

 

地球上の誰かがふと思った

   「みんなの未来を守らなければ…………」

                    と。

________……

 

 

 

「"この種を食い殺せ"だったか? 貴様らに来た命令は……」

私はいつの間にか化物の前に立っていた。

「ようやく、思い出したよ。 "前世の"私がこの少女に憑依した時に受けた命令を……」  

私は、拳を強く強く握り締め、更に強く大地を踏んだ。

力を込めた私の身体からは、更に大量の血が吹き出している……。

『グ……グアアアア__!!』

 

__ズンッ

 

寄生生物から、放たれた刃は私の腹に深々と突き刺さった。

 

「【この種を護り抜け】だ……!」  

 

 

ズドン!!!!!!

 

 

 

__

 

 

警察が駆けつけた時には、腹に大きな穴の空いた寄生生物が瀕死の状態でいて、それは駆けつけた警察官は誰一人負傷することなく、射殺された__。

 

さらに、遠くの方には、化物にやられたであろう少女が血まみれで倒れていたが、不思議な事に外傷は流れている血液の量に比べてほぼ見当たらず、あったのは腹部にあった大きな刺し傷のみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             

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