寄生獣~S~   作:証明

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第3話

地球上の誰かが ふと思った

「人間の数が半分になったら、いくつの森が焼かれずにすむだろうか……」

 

地球上の誰かが ふと思った

「人間の数が、100分の1になったら、たれ流される毒も100分の1になるだろうか……」

 

誰かが ふと思った

「生物(みんな)の未来を守らねば………」

 

 

 

 

 

             原作「寄生獣」岩明均より

 

 

__

 

 

「…何?」

夏の暑い夜だった。 エアコンの無いこの部屋からようやく熱気が抜けていった頃。

突如として私の無駄に良い視力は、夜目も利くらしく、真っ暗な部屋の中、視界にヘビのようなものを捉えた。

 

「…蛇? それにしては形が変ね…」 

女性特有の話し方も板に付いたものである。

この身体の記憶との融合も相まって、仕草はもうすっかり女性のものとなっていた。

 

だが、そんなことはどうでも良い。 今、現在私の興味を強く引くものは別にある。

 

「えっ!?」

などと、考えるのも束の間、突如として"ソレ"は、先端をドリルのようにして、私に向かって飛んできた。

無駄に良い私の目は、その反応出来ないスピードで飛来してくるソレを、駒送りで捉えていた。

 

"ソレ"は入り口を探しているように見えた。だが、私の長い髪で覆われた頭を"見"て口元へと、飛来してきたのだ。

恐らくこの生物は、耳から入ろうとしていたのではないだろうか

 

そんなことを脳裏に浮かべながら、私は飛来してくるソレを見ていた。

 

 ……。 

 

「私、ベジタリアンなんだけどなぁ」

私の身体は、貧弱である。 徒競走で走れば常にビリだし。

鉄棒には、ぶら下がるのがやっとである。

こと運動に至っては何をやってもドベなのである。

 

ただ、そんな私も一つだけ人よりも速い事があった。

食べるスピードである。

普段、野菜や果物しか食べれない私は、異常な程に顎の力が強く発達したようで、他人よりも圧倒的に噛むスピードが早い。 学校や家での食事は常に私が一番で席を立つのであった。

 

 

 

故に私は、身の危険を感じた私は本能的に"ソレ"にかぶり付いた

 

 

ガリ!!……ミチ…クチャクチャ……ガリガリ……  ゴクン。

 

 

 

 

「……。」

不思議と吐き気は襲って来なかった。

「あれ? おかしいなぁ…」

 

 

 

……まぁ、いいか……

私は、自身が食べた生物に何ら疑問も持たず、自身が助かったのだから、まぁ、いいか。  と思い、再び眠りにつくのだった。

 

 

__

 

 

「おはよう」

「おはよう、香織」

「ずいぶん、お寝坊さんね。」

 

私は、昨夜の出来事を少し思い出し、母へと尋ねた。

「お母さん、お肉ある?」

母は、少し驚いた様子で、私に応えた

「あ、あるわよ。 えっでも? 大丈夫?食べられるの?

別に、無理しないで良いのよ」

「そ、そうだぞ香織!

それに、また吐いたりでもしたら……」

毎度のように、なんと優しい両親だろうか。

「ん。 大丈夫。今日は食べられそうな気がするの」

「そ、そう? じゃあはい。」 

そう言って母は、おそらく父のお弁当のおかずだったのであろう。

タコの形をしたウィンナーをフォークに刺してよこした。

私は、おもむろにかじりついた。

 

ミチャ…ミチャ…ゴクン。

 

 

「……」

 

ガタン、ダダダダダダ…!

 

「ウゲエェェェェ……」

 

 

駄目だったか…。私はひとしきり吐き終わり、ふと、自分の後ろに立っていた、両親二人に気付き、鏡ごしに謝罪を述べた。

「ゴメン。心配かけた。…今日は何だか調子が良くて食べられそうだと思ったんだけど…ゲホッ ゴメン。」

 

「良いのよ」

「ああ、気にするな」

        

「ありがとう。」

私がそう簡潔に礼を述べると、両親は心配しながらも、少し気まずそうに、鏡の中から姿を消した。

 

こういった関係性になってしまったのは、恐らく私という意識がこの子の中で覚醒してからであろう。

それまでは、表情変化に乏くも、多少なりとも時々笑顔を見せていた我が子が、ある日突然、全く笑わず、無表情になってしまったのだから。  

 

 

「これに関しては、責任を感じざるをえないな…」

私はそう溢しつつ、しかしやはり、…まぁ、いいか。

と考えながら、再び鏡へと目を向けた。

 

おかしいな…。

いつもは、吐いた後は大抵 顔色も悪いハズなのだが…

 

鏡に写った自分は何故かいつもより、健康そうに見えた。

 

 

____

 

 

「それじゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「気をつけてな」

 

お決まりの挨拶をし、家を出る。

あぁ、なんだろう…今日は身体がとても軽い…!

どうやら私は、自身の体調の良さに少し喜んでいるらしい。

このままでは、スキップでもしてしまうのではないだろうか?  と、自分自身を客観的に捉えていたときだった。

 

 

「か、香織!」

突如として、母に呼び止められた。

私が"香織" になってからの生活で初めてのパターンである。私は疑問に思いつつ振り返った

 

 

「…何?」

「…ヒッ…」

 

 

…

一瞬、母親がビクッとしたのは気のせいだろうか?

 

「あ、あなた香織よね?」

「?」 

「私の娘、井上香織よね!?」

「……っ静香!」

 

 

温厚な父には珍しい怒声が響いたその場で

私は相も変わらず無表情でこう応えるのだった。

 

 

「ええ、あなたの娘"井上香織"です。」

と。

 

 

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